StudyMed医師国家試験

日本の人口はいつ減り始めた?―2005年、戦後初の「自然減」が告げた転換点

第118回医師国家試験 F問題 第10問

国試問題にチャレンジ

第118回 F問題 第10問

我が国で日本人の総人口が減少に転じた時期はどれか。

  1. a.1980年代
  2. b.1990年代
  3. c.2000年代
  4. d.2010年代
  5. e.2020年代

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、日本の人口がいつ減少に転じたかという、公衆衛生の基本的な数字を問う問題だ。ポイントは「初めて減少に転じた時期」と「減少が定着した時期」を区別すること。まず、人口の増減は何で決まるか覚えているかな。
医学生医学生
出生数から死亡数を引いた自然増減と、転入と転出の差の社会増減の合計です。
ドクタードクター
その通り。国全体で見ると、社会増減は主に海外との出入りによる。日本の場合は自然増減の影響がとても大きいんだ。では、日本の人口が減り始めたのはいつだと思う?
医学生医学生
少子化がずっと言われているので、1990年代にはもう減っていた気がします。
ドクタードクター
そう感じる人は多いね。でも少子化と人口減少は時間差があるんだ。出生数が減っても、死亡数のほうが少ないうちは人口は増え続ける。順に見ていこう。1980年代はどうだった?
医学生医学生
出生数は減りつつあったけれど、死亡数よりは多かったので、まだ自然増だったということですね。
ドクタードクター
そう、人口は毎年増えていた。合計特殊出生率は1970年代半ばから人口置換水準、おおむね2.1前後を下回り続けていたけれど、人口が実際に減るまでには時間がかかる。次に1990年代だ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で習った「1.57ショック」ですね。1989年の合計特殊出生率が1.57になって、少子化が社会問題になりました。
ドクタードクター
よく覚えているね。ただ、1990年代は人口の伸びが鈍っただけで、増加は続いていた。転機は2005年だ。高齢化で死亡数が増え、死亡数が出生数を初めて上回る自然減となり、総人口が戦後初めて前年を下回った。だから正解は2000年代だ。
医学生医学生
2005年に減って、そのまま減り続けたんですか。
ドクタードクター
そこが注意点だ。その後数年は横ばいに近い状態が続き、総人口は2008年に約1億2,808万人でピークを迎えた。ピークの年は統計の取り方によって多少記述が分かれるけれど、2011年以降は毎年減少が続いている。
医学生医学生
じゃあ2010年代を選びたくなる人もいそうですね。私もピークの後だから2010年代かと一瞬迷いました。
ドクタードクター
まさにそれがひっかけだね。2010年代は減少が毎年続くようになり、定着した時期であって、初めて減少に転じた時期ではない。2020年代になると、減少幅が年間数十万人規模に広がっていて、もう長い人口減少の最中だ。
医学生医学生
「減り始め」は2005年、「ピーク」は2008年、「連続減少」は2011年から、と分けて覚えればいいんですね。
ドクタードクター
完璧な整理だ。発展として、人口減少と高齢化の関係も押さえておこう。出生数の減少と平均寿命の延伸で、65歳以上の割合である高齢化率は約3割に達している。生産年齢人口の15〜64歳は1990年代半ばにピークを迎えて、すでに減少しているんだ。
医学生医学生
総人口より先に、働く世代が減り始めていたんですね。
ドクタードクター
そう。それが社会保障や医療提供体制に大きな影響を与えている。地域医療の担い手不足や、高齢者の多疾患併存への対応、医療需要の地域差など、これから臨床に出る皆さんが直面する課題の背景には、こうした人口構造の変化がある。
医学生医学生
地域医療の実習で回った町でも、患者さんのほとんどが高齢者で、医師も少ないと聞きました。
ドクタードクター
統計の数字は、そういう現場の実感とつながっている。国試の衛生統計は暗記項目と思われがちだけど、流れで理解しておくと忘れにくいし、医療政策を考える土台にもなるよ。

まとめ

日本の人口は戦後増え続けましたが、1970年代半ばから合計特殊出生率が人口置換水準を下回り続け、1989年の「1.57ショック」で少子化が社会問題化しました。それでも人口は増加を続け、2005年に死亡数が出生数を初めて上回る自然減となって、総人口が戦後初めて減少に転じました。その後、2008年頃に総人口はピークを迎え、2011年以降は毎年減少が続いています。人口増減は自然増減と社会増減の和であり、日本では自然減の規模が大きいことが人口減少の主因です。「減り始め(2005年)」「ピーク(2008年頃)」「連続減少(2011年以降)」を区別して理解しておくことは、高齢化や生産年齢人口の減少がもたらす医療・社会保障の課題を考えるうえでの基礎になります。

解答・解説

正解はcです

我が国の人口の推移を、おおまかな時期とともに押さえているかを問う問題である。 第二次世界大戦後、日本の人口はベビーブームや死亡率の低下によって増え続けた。しかし1970年代半ば以降は合計特殊出生率が人口を維持できる水準(人口置換水準、おおむね2.1前後)を下回り続け、出生数は長期的に減少した。一方で高齢化が進んで死亡数は増え、2005年には死亡数が出生数を初めて上回り(自然減)、人口推計で総人口が前年を下回った。これが戦後初めての人口減少である。 その後数年間は横ばいに近い状態が続き、総人口は2008年に約1億2,808万人でピークを迎えた。2011年以降は毎年減少が続き、人口減少社会が定着している。 したがって「減少に転じた」最初の時期は2005年を含む2000年代と考えるのが妥当である。2010年代は減少が継続的・確定的になった時期であって、初めて減少に転じた時期ではない。

選択肢考察

  1. ×a.  1980年代

    1980年代は出生数の減少が進んではいたが、死亡数は出生数より少なく(自然増)、人口は毎年増加していた。人口減少はまだ始まっていない。

  2. ×b.  1990年代

    1990年代は1989年の合計特殊出生率1.57(いわゆる「1.57ショック」)を契機に少子化が社会問題として認識された時期である。ただし人口の伸びは鈍化しつつも増加は続いており、減少には転じていない。

  3. ○c.  2000年代

    2005年に死亡数が出生数を上回る自然減となり、総人口が戦後初めて前年より減少した。その後も増減が小さい状態が続いたのち、2008年をピークとして人口は減少局面に入った。人口が初めて減少に転じた時期として最も適切なのは2000年代である。

  4. ×d.  2010年代

    2010年代は2011年以降毎年連続して人口が減少し、減少傾向が定着・加速した時期である。しかし初めて減少に転じたのはそれより前の2005年であり、「減少に転じた時期」としては適切でない。

  5. ×e.  2020年代

    2020年代はすでに長期の人口減少が続いている時期であり、減少幅が年間数十万人規模に拡大している。減少に転じた時期ではない。

人口増減の2つの要素

人口の増減=自然増減(出生数-死亡数)+社会増減(転入数-転出数)である。国全体では社会増減は主に国際的な人の移動(入国・出国)による。自然減であっても、外国からの流入による社会増がそれを上回れば総人口は減らない。我が国では外国人の流入はあるものの、日本人の自然減の規模が大きいため、総人口は減少を続けている。

日本の人口の主な節目

・1974年頃以降:合計特殊出生率が人口置換水準を下回る状態が続く ・1989年:合計特殊出生率1.57(1.57ショック) ・2005年:死亡数が出生数を初めて上回り、総人口が戦後初めて減少 ・2007年以降:自然減が毎年続く ・2008年:総人口がピーク(約1億2,808万人) ・2011年以降:総人口が毎年減少 ・2022年10月1日現在の人口推計:総人口約1億2,494万人、前年比約55.6万人(0.44%)減で12年連続の減少

人口減少と高齢化

出生数の減少と平均寿命の延伸により、65歳以上人口の割合(高齢化率)は上昇を続け、現在は約3割に達している。生産年齢人口(15〜64歳)は1990年代半ばをピークに減少しており、社会保障や医療提供体制に大きな影響を与えている。

POINT

・2005年:自然減となり、総人口が戦後初めて減少(=減少に転じたのは2000年代) ・2008年:総人口のピーク(約1億2,808万人) ・2011年以降:毎年連続して減少 ・人口増減=自然増減+社会増減

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。