StudyMed医師国家試験

塩は肺ではなく胃に効く―生活習慣とがんの「正しい組合せ」を英語で見抜く

第118回医師国家試験 E問題 第4問

国試問題にチャレンジ

第118回 E問題 第4問

Which is NOT the correct combination between the risk factor and its associated disease?

  1. a.smoking ―― bladder cancer
  2. b.lack of physical activity ―― colon cancer
  3. c.obesity after menopause ―― breast cancer
  4. d.excessive alcohol consumption ―― esophageal cancer
  5. e.excessive dietary sodium intake ―― lung cancer

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は英語で出題された公衆衛生の問題で、生活習慣などのリスク因子とがんの組合せを問うている。まず注意したいのは「NOT the correct combination」、つまり誤った組合せを選ぶ問題だという点。そのうえで、それぞれのリスク因子がどの臓器のがんと結びつくかを整理しよう。
医学生医学生
英語問題はつい「正しいもの」を探してしまいそうです。CBTの英語問題でも否定形を読み飛ばして失点したことがあります。
ドクタードクター
英語の否定形は日本語より目立たないから要注意だね。では内容に入ろう。まず喫煙と膀胱癌。喫煙というと肺癌のイメージが強いと思うけど、どうかな。
医学生医学生
肺から吸った煙が膀胱に関係するのは少し意外です。でも泌尿器科の講義で、膀胱癌の最大のリスク因子は喫煙と聞いた気がします。
ドクタードクター
その記憶で正しい。膀胱癌の約半数は喫煙に起因すると推定されている。たばこ煙に含まれる芳香族アミンが吸収され、その代謝物が尿に濃縮されて排泄される。尿にさらされ続ける尿路上皮が発がん物質と長く接触するわけだ。染料工業での芳香族アミンへの職業性曝露も同じ理屈でリスクになる。
医学生医学生
なるほど、尿が発がん物質の通り道になるんですね。身体活動の不足と結腸癌はどうでしょう。
ドクタードクター
身体活動が結腸癌のリスクを下げることは、国際的な評価で「確実」とされている。腸管運動が促されて便の通過時間が短くなり、発がん物質と粘膜の接触が減ること、インスリン抵抗性や内臓脂肪、慢性炎症の改善などが機序として考えられている。裏返せば、運動不足はリスク因子ということだね。
医学生医学生
閉経後の肥満と乳癌も正しいと思います。でも「閉経後」とわざわざ書いてあるのが気になります。
ドクタードクター
鋭いね。閉経後は卵巣からのエストロゲン分泌がほぼ止まり、脂肪組織のアロマターゼが副腎由来のアンドロゲンをエストロゲンに変える経路が主な供給源になる。だから脂肪が多いほどエストロゲンが増え、ホルモン受容体陽性乳癌の増殖を促すんだ。一方で、閉経前の肥満はむしろ乳癌リスクを下げる方向に働くと報告されていて、この違いはよく問われる。
医学生医学生
アロマターゼ阻害薬が閉経後乳癌の治療に使われるのも、同じ理屈ですね。
ドクタードクター
その通り、病態と治療がつながったね。次は過度の飲酒と食道癌。
医学生医学生
消化器内科の実習で、少量の飲酒で顔が赤くなる人は食道癌に注意と指導医の先生が言っていました。
ドクタードクター
まさにそれ。アルコールの代謝産物アセトアルデヒドには発がん性があり、それを分解するALDH2の活性が遺伝的に低い人は日本人に多い。そういう人が飲酒を続けると、特に扁平上皮癌のリスクが高くなる。喫煙が重なると相乗的にリスクが上がるし、熱い飲食物もリスク因子だ。
医学生医学生
そうすると、食塩の過剰摂取と肺癌が誤りですね。塩分は胃癌のはずです。
ドクタードクター
正解。食塩や塩蔵食品の過剰摂取は胃癌のリスク因子で、日本の評価では「ほぼ確実」とされている。高濃度の塩分が胃粘膜を傷つけて萎縮性胃炎を促し、ピロリ菌感染の持続や発がん物質の作用を強めると考えられている。肺癌との関連は確立していない。肺癌の主なリスク因子は喫煙で、受動喫煙も含まれる。ほかにアスベスト、ラドン、ヒ素、PM2.5などの大気汚染、COPDがある。
医学生医学生
臓器ごとにリスク因子をまとめておくと、組合せ問題に強くなりそうです。
ドクタードクター
いい方法だね。加えて、感染症とがんの関係も押さえておこう。ピロリ菌と胃癌や胃MALTリンパ腫、B型・C型肝炎ウイルスと肝細胞癌、HPVと子宮頸癌や中咽頭癌、HTLV-1と成人T細胞白血病・リンパ腫、EBウイルスと上咽頭癌やBurkittリンパ腫だ。国立がん研究センターは、禁煙、節酒、減塩などの食生活の見直し、身体活動、適正体重の維持の5つに、感染の検査・治療を加えた予防法を提唱している。
医学生医学生
患者さんへの生活指導でも、そのまま使える知識ですね。
ドクタードクター
そうなんだ。外来で禁煙や節酒、減塩を勧めるとき、どのがんの予防につながるのかを具体的に説明できると、説得力がずっと増すよ。

まとめ

生活習慣とがんの関連は、エビデンスの強さとともに国際的・国内的に整理されており、代表的な組合せを押さえておくことが重要です。喫煙は肺癌だけでなく芳香族アミンを介して膀胱癌の最大のリスク因子となり、飲酒はALDH2低活性者を中心に食道癌のリスクを高めます。身体活動は結腸癌を予防し、閉経後の肥満は脂肪組織のアロマターゼによるエストロゲン産生を介して乳癌のリスクを高めます。食塩の過剰摂取は胃癌のリスク因子であり、肺癌との関連は確立していないため、この組合せが誤りです。英語問題では否定形の設問を見落とさないことに加え、臓器別・リスク因子別に知識を整理しておくことが、試験対策にも日常の生活指導にも役立ちます。

解答・解説

正解はeです

和訳

リスク因子とそれに関連する疾患の組合せとして誤っているのはどれか。 a 喫煙 ―― 膀胱癌 b 身体活動の不足 ―― 結腸癌 c 閉経後の肥満 ―― 乳癌 d 過度の飲酒 ―― 食道癌 e 食塩(ナトリウム)の過剰摂取 ―― 肺癌

考え方

生活習慣と各種がんの関連は、国際がん研究機関(IARC)や世界がん研究基金(WCRF)、日本の「科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」などで、エビデンスの強さ(確実・ほぼ確実・可能性あり等)とともに整理されている。本問は、そのうち評価が「確実」または「ほぼ確実」とされる代表的な組合せを知っているかを問う。 喫煙は肺癌だけでなく、口腔・咽頭・喉頭・食道・胃・膵・肝・腎・膀胱・子宮頸部など多くの臓器のがんの原因となる。飲酒は口腔・咽頭・喉頭・食道・肝・大腸・乳房のがんと関連する。身体活動は結腸癌の予防因子であり、閉経後の肥満は乳癌のリスク因子である。一方、食塩の過剰摂取(塩蔵食品の摂取)が関連するのは胃癌であり、肺癌との関連は確立していない。したがって誤った組合せは e である。 英語問題では "NOT the correct combination" のように否定形で問われることが多く、「誤っているもの」を選ぶ設問であることを読み落とさないことも重要である。

選択肢考察

  1. ×a.  smoking ―― bladder cancer

    正しい組合せである。喫煙は膀胱癌の最大のリスク因子で、膀胱癌の約半数は喫煙に起因すると推定されている。たばこ煙に含まれる芳香族アミン(4-アミノビフェニル、β-ナフチルアミンなど)が体内に吸収され、代謝物が尿中に濃縮・排泄される。そのため、尿にさらされる尿路上皮(移行上皮)が長期間発がん物質と接触し、がんが発生すると考えられている。膀胱癌の90%以上は尿路上皮癌で、男性・喫煙者に多い。染料工業などでの芳香族アミンへの職業性曝露もリスク因子である。

  2. ×b.  lack of physical activity ―― colon cancer

    正しい組合せである。身体活動が結腸癌のリスクを下げることは、国際評価で「確実」とされている。機序としては、身体活動によって腸管運動が促進されて便の通過時間が短くなり、発がん物質と腸粘膜の接触時間が減ること、さらにインスリン抵抗性・高インスリン血症の改善、内臓脂肪の減少、慢性炎症の抑制などが考えられている。言い換えれば、運動不足は結腸癌のリスク因子である。

  3. ×c.  obesity after menopause ―― breast cancer

    正しい組合せである。閉経後女性の肥満は乳癌リスクを高めることが確立しており、BMI(body mass index)が高いほどリスクが上昇する量反応関係も示されている。閉経後は卵巣からのエストロゲン分泌がほぼ止まり、脂肪組織のアロマターゼが副腎由来のアンドロゲンをエストロゲンに変換する経路が主なエストロゲン源となる。そのため脂肪量が多いほどエストロゲン濃度が高くなり、ホルモン受容体陽性乳癌の増殖を促す。なお閉経前の肥満は、乳癌リスクをむしろ下げる方向に働くと報告されており、閉経前後で関連が異なる点は試験でも問われやすい。

  4. ×d.  excessive alcohol consumption ―― esophageal cancer

    正しい組合せである。飲酒は喫煙と並ぶ食道癌(特に扁平上皮癌)の主要なリスク因子であり、両者が重なるとリスクは相乗的に高まる。アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドに発がん性があり、アセトアルデヒドを分解するアルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)の活性が遺伝的に低い人(少量の飲酒で顔が赤くなる体質で、日本人に多い)が飲酒を続けると、食道癌のリスクが特に高くなる。熱い飲食物の摂取もリスク因子として知られる。

  5. ○e.  excessive dietary sodium intake ―― lung cancer

    誤った組合せであり、これが正解である。食塩の過剰摂取や塩蔵食品の多い食事は胃癌のリスク因子である(日本の評価で「ほぼ確実」)。高濃度の塩分は胃粘膜を傷つけて萎縮性胃炎を促し、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)感染の持続や発がん物質の作用を強めると考えられている。食塩と肺癌との関連は確立していない。肺癌の主要なリスク因子は喫煙(受動喫煙を含む)であり、そのほかにアスベスト、ラドン、ヒ素、大気汚染(PM2.5など)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などがある。

主な生活習慣・環境要因とがんの関連(代表例)

・喫煙:肺、口腔・咽頭、喉頭、食道、胃、肝、膵、腎、膀胱、子宮頸部など ・飲酒:口腔・咽頭、喉頭、食道、肝、大腸、乳房 ・肥満:大腸、閉経後乳癌、子宮体部、腎、食道腺癌、肝、膵など ・身体活動の不足:結腸(身体活動は予防因子) ・食塩・塩蔵食品:胃 ・赤肉・加工肉:大腸 ・熱い飲食物:食道 ・野菜・果物の摂取:食道・胃の予防因子の可能性

感染症とがん

・ヘリコバクター・ピロリ:胃癌、胃MALTリンパ腫 ・B型・C型肝炎ウイルス:肝細胞癌 ・ヒトパピローマウイルス(HPV):子宮頸癌、中咽頭癌、肛門癌など ・ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1):成人T細胞白血病/リンパ腫 ・EBウイルス:上咽頭癌、バーキットリンパ腫など

日本人のためのがん予防法(5+1)

国立がん研究センターは、禁煙、節酒、食生活の見直し(減塩、野菜・果物の摂取、熱い飲食物を避ける)、身体活動、適正体重の維持の5つの生活習慣に、感染の検査・治療(肝炎ウイルス検査、ピロリ菌検査など)を加えた予防法を推奨している。

POINT

・食塩の過剰摂取は胃癌のリスク因子であり、肺癌とは関連しない。 ・喫煙は肺癌以外にも膀胱癌・食道癌・膵癌など多くのがんの原因となる。 ・飲酒は食道癌(特にALDH2低活性者)、肝癌、大腸癌、乳癌のリスクを高める。 ・閉経後の肥満は乳癌のリスク因子(脂肪組織でのアロマターゼによるエストロゲン産生)。 ・身体活動は結腸癌のリスクを下げる。 ・英語問題の "NOT" を見落とさない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。