転んだら折れる場所は決まっている―骨粗鬆症と「四大骨折」の地図
第118回医師国家試験 D問題 第15問
国試問題にチャレンジ
骨粗鬆症の既往を持つ高齢者が転倒した際,骨折をきたしやすい部位はどれか。3つ選べ。
- a.脊椎
- b.膝蓋骨
- c.足関節
- d.橈骨遠位端
- e.大腿骨近位部
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
骨粗鬆症では、骨代謝が活発で骨量減少の影響を受けやすい海綿骨の多い部位に、軽い外力による脆弱性骨折が起こりやすくなります。代表は脊椎椎体、大腿骨近位部、橈骨遠位端、上腕骨近位部の四大骨折で、しりもちでは胸腰椎移行部の椎体、手をつくと橈骨遠位端、横向きの転倒では大腿骨近位部が折れやすいと、転び方と結びつけて整理できます。膝蓋骨や足関節の骨折は直達外力やひねりによる外傷が主で、骨粗鬆症に特徴的な部位ではありません。椎体または大腿骨近位部の脆弱性骨折があれば骨密度にかかわらず骨粗鬆症と診断でき、骨折が次の骨折を招く連鎖を断つために、初回骨折時から骨粗鬆症治療と転倒予防を始めることが重要です。
解答・解説
正解はa, d, eです
骨粗鬆症に伴う脆弱性骨折の好発部位を問う問題である。 骨粗鬆症は、骨量の減少と骨質の劣化によって骨強度が低下し、骨折しやすくなった状態である。こうした骨では、立った高さからの転倒程度の軽い外力でも骨折が起こる。これを脆弱性骨折という。 脆弱性骨折が起こりやすいのは、骨梁が網目状に集まった海綿骨(骨梁骨)の割合が多い部位である。海綿骨は表面積が大きく骨代謝が活発なため、閉経や加齢による骨量減少の影響を皮質骨より早く強く受ける。代表的な部位は、脊椎(椎体)、大腿骨近位部(頸部・転子部)、橈骨遠位端、上腕骨近位部であり、これらは高齢者の四大骨折と呼ばれる。このほか肋骨、骨盤(恥骨・坐骨など)、下腿骨も脆弱性骨折を起こしやすい。 選択肢のうち、脊椎・橈骨遠位端・大腿骨近位部が四大骨折に含まれ、正解となる。膝蓋骨や足関節は、ふつうの転倒による軽い外力で骨粗鬆症を背景に骨折する代表的な部位ではない。
選択肢考察
- ○a. 脊椎
椎体は海綿骨が豊富で、骨粗鬆症による骨折が最も多い部位である。特に、可動性の大きい腰椎と動きの少ない胸椎の境目である胸腰椎移行部(第11胸椎〜第2腰椎付近)に好発する。しりもちなどの転倒のほか、重い物を持ち上げる、くしゃみをするといったごく軽い負荷でも起こり、自覚のないまま進む例(いわゆる「いつの間にか骨折」)も多い。椎体が楔状につぶれる圧迫骨折となり、背部痛、身長低下、円背(背中が丸くなること)の原因となる。
- ×b. 膝蓋骨
膝蓋骨骨折は、転倒して膝を強く打ちつける直達外力や、大腿四頭筋が急に強く収縮する介達外力で起こり、年齢を問わず生じる。骨粗鬆症を背景とする脆弱性骨折の代表的な部位には挙げられない。
- ×c. 足関節
足関節(果部)骨折は、足を強くひねる捻挫型の外力で起こることが多く、若年者のスポーツ外傷などでもよくみられる。骨粗鬆症に伴う脆弱性骨折の代表的部位ではない。
- ○d. 橈骨遠位端
転倒時にとっさに手をついた際、手首から伝わる介達外力で起こる。四大骨折のうち比較的若い年代(閉経後まもない女性など)から発生しやすく、骨粗鬆症を見つけるきっかけとなる骨折でもある。手関節を背屈した状態で手をついた場合は遠位骨片が背側にずれるColles骨折となり、側面から見ると食器のフォークを伏せたような変形(フォーク状変形)を示す。掌屈位で手をついた場合は掌側にずれるSmith骨折となる。
- ○e. 大腿骨近位部
大腿骨頸部骨折と転子部骨折を合わせて大腿骨近位部骨折という。主に横向きに転倒して大転子部を打つ直達外力で起こるが、骨が非常にもろい場合は下肢をひねっただけで骨折し、その結果転倒することもある。高齢者が歩けなくなり寝たきりにつながりやすく、生命予後や生活機能に大きく影響する重要な骨折である。原則として早期の手術(人工骨頭置換術や骨接合術)とリハビリテーションが行われる。
骨粗鬆症の概要
骨量(骨密度)の低下と骨質の劣化により骨折リスクが高まった全身性の骨疾患である。閉経後のエストロゲン低下や加齢による原発性骨粗鬆症が多く、ステロイド薬の長期使用、甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能亢進症などによる続発性骨粗鬆症もある。
診断(原発性骨粗鬆症の診断基準の要点)
・椎体骨折または大腿骨近位部骨折といった脆弱性骨折があれば、骨密度にかかわらず骨粗鬆症と診断する。 ・その他の脆弱性骨折(肋骨、骨盤、上腕骨近位部、橈骨遠位端、下腿骨)がある場合は、骨密度が若年成人平均値(YAM)の80%未満で骨粗鬆症と診断する。 ・脆弱性骨折がない場合は、骨密度がYAMの70%以下または−2.5SD以下で骨粗鬆症と診断する。 骨密度は主に二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)で腰椎や大腿骨近位部を測る。
脆弱性骨折の部位
・四大骨折:脊椎椎体、大腿骨近位部、橈骨遠位端、上腕骨近位部 ・その他:肋骨、骨盤、下腿骨など 一度骨折すると次の骨折が起こりやすくなる(骨折の連鎖)ため、初回骨折後の骨粗鬆症治療と転倒予防が重要である。
転倒の仕方と骨折部位
・手をつく → 橈骨遠位端、上腕骨近位部 ・横向きに倒れて腰を打つ → 大腿骨近位部 ・しりもち → 脊椎椎体(胸腰椎移行部)
POINT
・骨粗鬆症による脆弱性骨折の好発部位(四大骨折)は、脊椎椎体、大腿骨近位部、橈骨遠位端、上腕骨近位部。 ・いずれも海綿骨の多い部位である。 ・椎体骨折は胸腰椎移行部に多く、自覚症状のないこともある。 ・大腿骨近位部骨折は寝たきりの原因となり、早期手術が原則。 ・椎体または大腿骨近位部の脆弱性骨折があれば、骨密度によらず骨粗鬆症と診断できる。
