StudyMed医師国家試験

7つの質問で高齢者を見抜く―CGA7が「測らないもの」は何か

第118回医師国家試験 C問題 第18問

国試問題にチャレンジ

第118回 C問題 第18問

高齢者機能評価簡易版〈CGA7〉の項目に含まれないのはどれか。

  1. a.意欲
  2. b.経済状況
  3. c.認知機能
  4. d.基本的ADL
  5. e.手段的ADL

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は高齢者機能評価簡易版、CGA7の構成項目を問う問題だ。CGA7が何のための道具で、どんな領域を、どうやって評価するのかを押さえれば迷わない。まず、元になっている高齢者総合機能評価、CGAとはどんなものか覚えているかな。
医学生医学生
病気だけでなく、生活機能や精神面、社会環境まで含めて高齢者を多面的に評価する方法、と老年医学の講義で習いました。
ドクタードクター
その通り。高齢者は複数の疾患を抱え、身体機能・認知機能・気分・社会環境が互いに影響し合うから、診断名だけでは治療やケアの方針が決めにくい。ただ、CGAは多くの尺度を組み合わせるので時間がかかる。そこで外来や病棟で短時間にスクリーニングできるよう、7つの質問・課題にまとめたのがCGA7だ。
医学生医学生
7項目なら、7つの領域を1つずつ見ているんでしょうか。
ドクタードクター
惜しい。7項目で5つの領域を見ているんだ。順に挙げると、意欲、認知機能の復唱、手段的ADL、認知機能の遅延再生、基本的ADLの入浴、基本的ADLの排泄、そして情緒・気分。認知機能と基本的ADLが2項目ずつある。
医学生医学生
意欲はどうやって判定するんですか。質問で「やる気はありますか」と聞くわけではなさそうですが。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。外来なら診察時に自分から挨拶をするか、入院中なら自分から起床するかを観察する。低下が疑われればVitality indexで詳しく評価する。
医学生医学生
認知機能は、3つの言葉を覚えてもらって後で思い出してもらうやつですね。OSCEの練習で長谷川式をやったときと似ています。
ドクタードクター
そう。「桜・猫・電車」などの3語を復唱させ、しばらくしてから遅延再生させる。遅延再生は早期のアルツハイマー型認知症で障害されやすい記憶機能を反映する。異常があればHDS-RやMMSEへ進む。
医学生医学生
手段的ADLと基本的ADLの違いが、いつも曖昧になってしまいます。
ドクタードクター
基本的ADLは入浴・排泄・食事・移動など身の回りの基本動作。手段的ADL、IADLは買い物・服薬管理・金銭管理・交通機関の利用など、自立した社会生活に必要なより複雑な動作だ。CGA7ではIADLをバスや電車、自家用車で一人で移動できるかで、基本的ADLを一人で入浴できるか、失禁せずトイレで排泄できるかで判定する。詳しく見るならIADLはLawtonの尺度、基本的ADLはBarthel indexだね。
医学生医学生
最後の情緒・気分は「自分が無力だと感じるか」でしたっけ。異常ならGDS-15でうつを評価する流れですね。
ドクタードクター
その通り。ここまでで意欲、認知機能、基本的ADL、手段的ADLはすべて含まれていることになる。では、含まれないのはどれだろう。
医学生医学生
経済状況ですね。でも、お金がないと受診や介護サービスの利用に影響するので、大事な項目のような気もします。
ドクタードクター
その感覚は正しい。経済状況は受療行動や介護サービス利用、栄養状態まで左右する重要な社会的因子で、包括的なCGAでは家族構成や介護者、住環境とともに評価されることがある。ただCGA7は、医療者がその場で観察・質問して判定できる本人の心身機能に絞ったスクリーニングだから、社会・経済的背景は対象外なんだ。
医学生医学生
つまりCGA7は入口で、引っかかった領域だけ詳しい尺度で掘り下げる、という二段構えなんですね。
ドクタードクター
そういうこと。もう一つ臨床で役立つ知識として、生活機能は一般に社会的役割や手段的ADLが先に落ち、その後に基本的ADLが低下する。基本的ADLの中でも入浴は比較的早く介助が必要になり、食事は最後まで保たれやすい。
医学生医学生
だから一人で電車に乗れなくなった、というのが認知機能低下の早いサインになり得るわけですね。
ドクタードクター
その通り。家族の「最近一人で出かけなくなった」という一言を聞き流さないことが大切だ。そして社会・経済的な問題はCGA7では拾えないから、退院支援などではソーシャルワーカーと連携して別途確認しよう。

まとめ

高齢者機能評価簡易版(CGA7)は、高齢者総合機能評価(CGA)を外来や病棟で短時間に行えるよう7項目にまとめたスクリーニングで、意欲・認知機能(3語の復唱と遅延再生)・手段的ADL(交通機関での一人での移動)・基本的ADL(入浴と排泄)・情緒/気分の5領域を評価します。経済状況や家族・介護環境といった社会的因子は包括的なCGAでは重要ですが、本人の心身機能に絞ったCGA7には含まれません。異常があれば、意欲はVitality index、認知機能はHDS-R/MMSE、IADLはLawton尺度、基本的ADLはBarthel index、気分はGDS-15で詳しく評価する二段階の流れで用います。手段的ADLは基本的ADLより先に低下しやすく、生活機能低下や認知症の早期の手がかりとなるため、この評価の考え方は高齢者診療の基本として重要です。

解答・解説

正解はbです

テーマ

高齢者総合機能評価〈CGA:Comprehensive Geriatric Assessment〉は、高齢者を病気だけでなく生活機能・精神心理・社会環境の面から多角的に評価する手法である。本来は多くの評価尺度を組み合わせるため時間がかかるので、外来や病棟で短時間にスクリーニングできるよう7つの質問・課題にまとめたのがCGA7(高齢者機能評価簡易版)である。

CGA7の構成

CGA7は次の7項目からなり、評価領域としては「意欲」「認知機能」「手段的ADL」「基本的ADL」「情緒・気分」の5領域をカバーする。 (1) 意欲:外来では診察時に自分から挨拶をするか、入院では自分から起床するかを観察する。 (2) 認知機能(復唱):「桜・猫・電車」などの3語を復唱させる。 (3) 手段的ADL:外来ではバスや電車、自家用車を使って一人で移動できるかを尋ねる(入院では「普段」の状況を尋ねる)。 (4) 認知機能(遅延再生):(2)で覚えた3語を、しばらくしてから思い出させる。 (5) 基本的ADL(入浴):一人で入浴できるか。 (6) 基本的ADL(排泄):失禁せずにトイレで排泄できるか。 (7) 情緒・気分:自分が無力だと感じるか。

考え方

CGA7は、医療者がその場で観察・質問して判定できる「本人の機能」に絞ったスクリーニングである。経済状況や家族構成・介護者の有無といった社会環境因子は、CGA全体では重要な評価対象であるが、簡易版の7項目には含まれない。したがって「含まれないもの」を問う本問では、経済状況が正解となる。

選択肢考察

  1. ×a.  意欲

    CGA7の第1項目である。外来では患者が自分から挨拶をするか、入院中であれば自発的に起床するか、といった日常の行動から判定する。低下が疑われた場合は、起床・意思疎通・食事・排泄・リハビリや活動への参加の5項目からなるVitality index(意欲の指標)で詳しく評価する。

  2. ○b.  経済状況

    CGA7の7項目には含まれないため、本問の正解である。経済状況は受療行動、介護サービスの利用、栄養状態などを左右する重要な社会的因子であり、包括的なCGAでは家族・介護環境などとともに評価されることがある。しかしCGA7は短時間で本人の心身機能を拾い上げることを目的としたスクリーニングであり、社会・経済的背景は評価対象としていない。

  3. ×c.  認知機能

    CGA7に含まれる。3語の復唱(即時記憶)と、時間をおいた遅延再生の2項目で判定し、7項目のうち2つを占める。遅延再生は早期のアルツハイマー型認知症で障害されやすい記憶機能を反映する。異常があれば、改訂長谷川式簡易知能評価スケール〈HDS-R〉やMini-Mental State Examination〈MMSE〉で詳しく評価する。

  4. ×d.  基本的ADL

    CGA7に含まれる。基本的ADL(日常生活動作:Activities of Daily Living)は食事・移動・入浴・排泄など身の回りの基本動作であり、CGA7では入浴と排泄の自立度の2項目で判定する。入浴は基本的ADLのなかでも早期に介助が必要になりやすい動作である。異常があれば、食事・移乗・整容・トイレ動作・入浴・歩行・階段昇降・更衣・排便・排尿の10項目からなるBarthel index(バーセル指数)で詳しく評価する。

  5. ×e.  手段的ADL

    CGA7に含まれる。手段的ADL〈IADL:Instrumental ADL〉は、買い物・服薬管理・金銭管理・交通機関の利用など、自立した社会生活に必要なより複雑な動作である。CGA7では、バス・電車・自家用車などを使って一人で外出・移動できるかで判定する。IADLは基本的ADLより先に低下しやすく、認知機能低下の早期の手がかりにもなる。付き添いが必要などの異常があれば、LawtonのIADL尺度(女性8項目、男性5項目)で詳しく評価する。

高齢者総合機能評価〈CGA〉とは

高齢者では複数の疾患を併せ持ち、身体機能・認知機能・精神状態・社会環境が相互に影響し合うため、疾患の診断だけでは適切な治療・ケア方針が立てにくい。CGAはこれらを系統的に評価し、治療目標の設定、介護サービス導入、退院支援などに活用する手法である。主な評価領域と代表的な尺度は次のとおりである。 ・基本的ADL:Barthel index、Katz index ・手段的ADL:Lawton IADL尺度 ・認知機能:HDS-R、MMSE ・情緒・気分(うつ):高齢者抑うつ尺度〈GDS:Geriatric Depression Scale〉15項目版など ・意欲:Vitality index ・社会・環境:家族構成、介護者、住環境、経済状況など(CGA7には含まれない)

CGA7の使い方

CGA7はあくまでスクリーニングであり、いずれかの項目で異常があれば、その領域に対応する詳細な尺度(上記)へ進んで評価する、という二段階の流れで用いる。情緒・気分の項目で異常があればGDS-15で抑うつの有無を評価する。

関連:高齢者の生活機能の低下順序

一般に、社会的役割や手段的ADLが先に低下し、その後に基本的ADLが低下する。基本的ADLのなかでは入浴などが比較的早く、食事は最後まで保たれやすい。

POINT

・CGA7は7項目で、意欲・認知機能(復唱と遅延再生)・手段的ADL・基本的ADL(入浴と排泄)・情緒/気分の5領域を評価する。 ・経済状況や家族・介護環境などの社会的因子はCGA7には含まれない。 ・異常時に進む詳細評価:意欲→Vitality index、認知機能→HDS-R/MMSE、IADL→Lawton尺度、基本的ADL→Barthel index、情緒・気分→GDS-15。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。