StudyMed医師国家試験

カルシウムとリンが「そろって下がる」とき―3つのホルモンで解くミネラル代謝

第118回医師国家試験 A問題 第3問

国試問題にチャレンジ

第118回 A問題 第3問

低カルシウム血症と低リン血症を同時にきたす病態はどれか。

  1. a.腫瘍性骨軟化症
  2. b.甲状腺機能亢進症
  3. c.ビタミンD欠乏症
  4. d.副甲状腺機能低下症
  5. e.慢性腎臓病に伴うミネラル骨代謝異常

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、低カルシウム血症と低リン血症が同時に起こる病態を選ぶ問題だ。丸暗記で挑むと混乱しやすいけれど、CaとPを調節するホルモンの働きを整理すれば一本道で解ける。CaとPを動かす主なホルモンを挙げてみてくれるかな。
医学生医学生
副甲状腺ホルモン(PTH)と活性型ビタミンDです。あとはカルシトニンでしょうか。
ドクタードクター
カルシトニンはヒトでは生理的な影響が小さいので、ここでは代わりにFGF23を覚えておいてほしい。主に骨細胞が分泌するホルモンで、腎でのPの再吸収を抑え、活性型ビタミンDの産生も抑える。結果として血清Pを下げる。
医学生医学生
FGF23は生理学の講義で名前だけ聞いた気がします。PTHはCaを上げて、Pは下げるんでしたよね。
ドクタードクター
そう。PTHは骨吸収と腎でのCa再吸収を促してCaを上げる一方、近位尿細管でのP再吸収を抑えてPを下げる。つまりPTHが主役の病態では、CaとPは逆向きに動く。では活性型ビタミンDは?
医学生医学生
腸管からのCa吸収を促す……あ、Pの吸収も促すんでしたっけ。
ドクタードクター
その通り。活性型ビタミンDは腸管からCaとPの両方の吸収を促すから、ビタミンDが主役の病態ではCaとPは同じ向きに動く。ここが今回の最大のポイントだ。
医学生医学生
ということは、CaとPがそろって下がるのはビタミンD欠乏症ですね。
ドクタードクター
正解。吸収が落ちて両方が下がるうえに、低Caに反応してPTHが上がる、つまり二次性副甲状腺機能亢進症になると、腎からPがさらに失われて低P血症はより目立つ。逆にCaはPTHのおかげである程度持ち直して、正常下限にとどまることもある。
医学生医学生
CaとPの積が下がると骨の石灰化がうまくいかないので、小児ならくる病、成人なら骨軟化症になるんですよね。小児科の実習で、O脚のお子さんの話を聞きました。
ドクタードクター
よく結びつけたね。ALPが上がるのも特徴だ。原因は日光照射不足、摂取不足、脂肪吸収障害などが代表的。では、ほかの選択肢を確認しよう。副甲状腺機能低下症は?
医学生医学生
PTHが足りないのでCaは下がりますが、Pの排泄が減るので高P血症になります。低Ca・高Pの組み合わせですね。
ドクタードクター
その通り。テタニーやTrousseau徴候、Chvostek徴候、大脳基底核の石灰化が知られている。OSCEの身体診察でChvostek徴候の手技を練習した人もいるかもしれないね。次は慢性腎臓病に伴うミネラル骨代謝異常だ。
医学生医学生
腎臓で活性型ビタミンDが作られないので、低Caにはなりますよね。Pも下がりそうな気がしてしまいます。
ドクタードクター
そこが引っかけだ。腎不全ではPを尿へ排泄できなくなるから、Pは上がる。初期はFGF23やPTHの上昇で代償されて正常に保たれるけれど、進行すると高P血症が顕在化する。腎不全ではP排泄の低下が前面に出る、と覚えておこう。
医学生医学生
腫瘍性骨軟化症も骨軟化症なので、ビタミンD欠乏と同じパターンかと思いました。
ドクタードクター
似た名前だけど機序が違う。小さな間葉系腫瘍がFGF23を過剰に分泌する病態で、腎からPが失われ、活性型ビタミンDも抑えられて低P血症になる。でもCaは通常正常範囲にとどまる。FGF23過剰ではPだけが選択的に下がるのが特徴で、原因腫瘍を取りきれば治癒が期待できる。
医学生医学生
甲状腺機能亢進症は、骨吸収が進むのでむしろCaが上がる方向ですか。
ドクタードクター
そう。甲状腺ホルモンは骨形成も骨吸収も亢進させるけれど、吸収が優位になるのでCaは正常上限から軽度高値になり、Pも正常〜やや高値のことが多い。長期的には骨粗鬆症の原因になる。
医学生医学生
PTHなら逆向き、ビタミンDなら同じ向き、腎不全ならPが上がる、FGF23ならPだけ下がる。この4パターンで整理できそうです。
ドクタードクター
見事なまとめだ。発展として、ビタミンD中毒では逆に高Ca・高Pになること、悪性腫瘍がPTHrPを産生するとPTHと同じように高Ca・低Pになることも確認しておこう。臨床では、低Ca血症を見たらまずPと一緒に眺め、さらにPTHやビタミンDを測ってどのホルモンが原因かを考える。ALPが上がっていれば骨軟化症も視野に入れる。電解質を単独で見ないことが大切だ。

まとめ

血清CaとPは主にPTH、活性型ビタミンD、FGF23の3つのホルモンで調節されており、どのホルモンが増減するかでCaとPの動き方が決まります。活性型ビタミンDは腸管からのCaとPの吸収をともに促すため、ビタミンD欠乏症では低Ca血症と低P血症が同時に起こり、二次性副甲状腺機能亢進症によって低P血症はさらに顕著になり、くる病・骨軟化症とALP上昇を伴います。一方、副甲状腺機能低下症は低Ca・高P、慢性腎臓病に伴うミネラル骨代謝異常はP排泄障害による高P、腫瘍性骨軟化症はFGF23過剰によりPのみが低下し、甲状腺機能亢進症は骨吸収亢進でCaがやや上がる傾向です。「PTHは逆向き、ビタミンDは同じ向き」という原則を押さえておけば、電解質異常の鑑別を論理的に進められるようになります。

解答・解説

正解はcです

血清カルシウム(Ca)とリン(P)の濃度は、主に副甲状腺ホルモン(PTH)、活性型ビタミンD〔1,25-ジヒドロキシビタミンD、1,25(OH)2D〕、線維芽細胞増殖因子23(FGF23)の3つのホルモンによって調節されている。各病態でCaとPがどちらに動くかは、どのホルモンが増減するかを考えると整理しやすい。 ・PTH:骨吸収と腎でのCa再吸収を促し血清Caを上げる。一方、腎近位尿細管でのP再吸収を抑えるので血清Pは下げる。さらに腎で活性型ビタミンDの産生を促す。 ・活性型ビタミンD:腸管からのCaとPの吸収をともに促進し、両者を上げる。 ・FGF23:主に骨細胞が分泌し、腎でのP再吸収を抑えるとともに活性型ビタミンDの産生を抑える。結果として血清Pを下げる。 このうち、CaとPを「同じ方向に」下げるのはビタミンDの作用不足である。PTHの異常ではCaとPは逆方向に動き(PTH低下なら低Ca・高P)、腎機能低下ではPの排泄が落ちて高Pとなる。したがって低Ca血症と低P血症を同時にきたすのはビタミンD欠乏症である。

選択肢考察

  1. ×a.  腫瘍性骨軟化症

    誤り。腫瘍(多くは間葉系由来の小さな良性腫瘍)が過剰なFGF23を分泌する腫瘍随伴症候群である。FGF23により腎尿細管でのP再吸収が低下して尿中P排泄が増え、低P血症となる。活性型ビタミンDの産生も抑えられるため腸管からのP吸収も減る。慢性の低P血症により骨の石灰化が障害され骨軟化症を生じる。血清Caは通常は正常範囲にとどまる(低下しても軽度)ことが多く、本症の主体は低P血症である。原因腫瘍を完全に摘出すれば治癒が期待できる。

  2. ×b.  甲状腺機能亢進症

    誤り。甲状腺ホルモンは骨形成と骨吸収をともに亢進させるが、骨吸収がより優位となるため骨からCaが動員され、血清Caは正常上限〜軽度高値となる。これを受けてPTHは抑制され、活性型ビタミンDも低下し、腸管でのCa吸収低下と尿中Ca排泄の増加が起こる。長期的には骨量が減少し骨粗鬆症の原因となる。血清Pは正常〜やや高値を示すことが多く、低Ca血症・低P血症の組み合わせにはならない。

  3. ○c.  ビタミンD欠乏症

    正しい。活性型ビタミンDは腸管からのCaとPの吸収を促進するため、その不足により両者の吸収が低下し、低Ca血症と低P血症を同時にきたす。さらに低Ca血症に反応してPTHが上昇する(二次性副甲状腺機能亢進症)と、腎でのP再吸収が抑えられて尿中へPが失われ、低P血症はより顕著になる(このPTH上昇によりCaはある程度補正され、正常下限にとどまることもある)。CaとPの積が低下して骨の石灰化が障害され、小児ではくる病、成人では骨軟化症を生じる。血清アルカリホスファターゼ(ALP)は上昇する。原因は日光照射不足、摂取不足、脂肪吸収障害などである。

  4. ×d.  副甲状腺機能低下症

    誤り。PTHの分泌が低下すると、骨からのCa動員と腎でのCa再吸収が減り、活性型ビタミンDの産生も低下するため低Ca血症となる。一方、PTHによる腎でのP排泄促進作用が失われるため、P再吸収が増えて高P血症となる。すなわち「低Ca血症・高P血症」の組み合わせであり、テタニー、Trousseau徴候・Chvostek徴候、大脳基底核石灰化などがみられる。

  5. ×e.  慢性腎臓病に伴うミネラル骨代謝異常

    誤り。慢性腎臓病に伴うミネラル骨代謝異常(CKD-MBD:chronic kidney disease-mineral and bone disorder)では、糸球体濾過量の低下によりPの排泄が障害され、高P血症となる。また腎での活性型ビタミンDの産生が低下するため腸管からのCa吸収が減り、低Ca血症となる。高P血症・低Ca血症・活性型ビタミンD低下はいずれもPTH分泌を刺激し、二次性副甲状腺機能亢進症を引き起こす。初期にはFGF23やPTHの上昇によりPは代償的に正常に保たれるが、進行すると高P血症が顕在化する。低P血症にはならない。

主な病態とCa・P・ホルモンの動き

・原発性副甲状腺機能亢進症:Ca↑、P↓、PTH↑ ・副甲状腺機能低下症:Ca↓、P↑、PTH↓ ・偽性副甲状腺機能低下症(PTH不応):Ca↓、P↑、PTH↑ ・ビタミンD欠乏症:Ca↓(〜正常下限)、P↓、PTH↑(二次性)、ALP↑ ・FGF23関連低P血症性くる病・骨軟化症(腫瘍性骨軟化症、X連鎖性低P血症性くる病):Ca正常、P↓、1,25(OH)2D低値〜不適切に正常、FGF23↑ ・慢性腎臓病(進行期):Ca↓、P↑、PTH↑、1,25(OH)2D↓、FGF23↑ ・悪性腫瘍に伴う高Ca血症(PTHrP産生):Ca↑、P↓、PTH↓

考え方のコツ

PTHが主役の病態ではCaとPは逆向きに動く。ビタミンDが主役の病態(欠乏または過剰)ではCaとPは同じ向きに動く(ビタミンD中毒では高Ca・高P)。腎不全ではPの排泄低下が前面に出る。FGF23過剰ではPだけが選択的に下がる。

くる病・骨軟化症

骨基質(類骨)の石灰化障害であり、成長板が閉鎖する前の小児に起こるとくる病、閉鎖後の成人では骨軟化症と呼ぶ。原因はビタミンD欠乏・代謝異常、FGF23過剰などによる低P血症、腎尿細管障害(Fanconi症候群など)が代表的である。

POINT

・活性型ビタミンDは腸管からのCaとPの吸収をともに促進する → 欠乏で低Ca血症+低P血症。 ・PTHはCaを上げPを下げる → 副甲状腺機能低下症は低Ca血症+高P血症。 ・FGF23過剰(腫瘍性骨軟化症など)は低P血症が主体でCaは通常正常。 ・CKD-MBDはP排泄障害による高P血症と活性型ビタミンD低下による低Ca血症。 ・甲状腺機能亢進症は骨吸収亢進により軽度高Ca血症傾向。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。