12か月でフェンシング姿勢は要注意―原始反射が「消える」ことの意味
第117回医師国家試験 F問題 第30問
国試問題にチャレンジ
月齢とその時期にみられる反射との組合せで誤っているのはどれか。
- a.1か月 ―― Moro反射
- b.3か月 ―― 足底把握反射
- c.6か月 ―― Landau反射
- d.9か月 ―― パラシュート反射
- e.12か月 ―― 非対称性緊張性頸反射
対話形式の解説
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ドクターまとめ
乳児の反射は、脳幹・脊髄レベルで統合され上位中枢の成熟とともに消えていく原始反射と、遅れて出現し粗大運動を支える姿勢反射に分けて整理すると理解しやすくなります。Moro反射は定頸のころ(3〜4か月)、非対称性緊張性頸反射は寝返りのころ(4〜6か月)、足底把握反射はつかまり立ちのころ(9〜10か月)に消え、Landau反射は3〜6か月ごろ、パラシュート反射は6〜9か月ごろに出現します。したがって12か月で非対称性緊張性頸反射がみられるのは異常であり、脳性麻痺などの中枢神経障害を疑う所見です。反射の時期は文献により幅があるため、運動発達の節目と結びつけて覚えると応用が利きます。原始反射の残存、姿勢反射の出現遅延、左右差を見逃さないことが、乳幼児健診で発達の異常を早期に発見する基本となります。
解答・解説
正解はeです
乳児期の反射は、大きく「原始反射」と「姿勢反射(立ち直り反応・平衡反応・保護伸展反応)」に分けて整理すると覚えやすい。 原始反射は脳幹・脊髄レベルで統合される反射で、出生時から存在し、大脳皮質や中脳など上位中枢が成熟して抑制がかかるにつれて生後数か月のうちに消えていく。一方、姿勢反射はより上位の中枢が成熟してから出現する反応で、原始反射が消えるのと入れ替わるように現れ、首のすわり・寝返り・お座り・つかまり立ち・歩行といった粗大運動の獲得を支える。 本問は「誤っている組合せ」を選ぶ問題である。各反射のおおよその出現・消失時期を思い出し、その月齢で見られない反射が組み合わされている選択肢を探せばよい。12か月の乳児ではすでに原始反射の大部分が消失しており、非対称性緊張性頸反射(ATNR)が通常みられることはない。 なお、反射の出現・消失時期は文献によって1~2か月ほどの幅がある。細かい数字にこだわるよりも、「原始反射は早期に消え、姿勢反射は遅れて現れる」という流れと、どの運動発達の節目と関連して消える・現れるのかを結びつけて理解しておくと、こうした問題に対応しやすい。
選択肢考察
- ×a. 1か月 ―― Moro反射
組合せとして正しい。Moro反射は、仰臥位で頭部を支えた手を急に下げるなど頭の位置を急に変えたり大きな音を聞かせたりすると、両上肢を伸展・外転して手指を開き(第1相)、その後に抱きつくように上肢を内転・屈曲させる(第2相)原始反射である。出生時からみられ、定頸(首のすわり)が完成する生後3~4か月ごろに消える(遅くとも6か月ごろまでに消失)。したがって1か月では当然みられる。左右差があれば分娩麻痺(腕神経叢麻痺)や鎖骨骨折を、新生児期に欠如していれば重い中枢神経障害を疑う。
- ×b. 3か月 ―― 足底把握反射
組合せとして正しい。足底把握反射は、足の母趾の付け根付近(母趾球)を指で圧迫すると足趾全体が屈曲して握り込むような動きをする原始反射である。出生時から存在し、つかまり立ちや立位の準備が進む生後9~10か月ごろに消える。手掌把握反射(3~4か月ごろ消失)より長く残るのが特徴で、3か月では十分にみられる。
- ×c. 6か月 ―― Landau反射
組合せとして正しい。Landau反射は、乳児を腹臥位のまま腹部を手で支えて水平に持ち上げると、頭部を挙上し、体幹と下肢を伸展して弓なり(反り返った姿勢)になる反応である。頭部を他動的に前屈させると体幹・下肢が屈曲する。定頸後の生後3~6か月ごろから現れ、6か月ごろには完成した形でみられ、独歩が安定する1~2歳ごろに消えていく。したがって6か月で観察されるのは妥当である。
- ×d. 9か月 ―― パラシュート反射
組合せとして正しい。パラシュート反射(保護伸展反応の一つ)は、乳児の体幹を支えて腹臥位で持ち上げ、頭から急に下降させると、両上肢を前方に伸ばして手を開き、体を支えようとする反応である。転倒時に頭部を守る防御反応であり、生後6~9か月ごろに出現して生涯にわたって保たれる。9か月ではすでにみられるのが正常で、この時期になっても出現しない場合や左右差がある場合は、運動発達の遅れや片麻痺などを考える。
- ○e. 12か月 ―― 非対称性緊張性頸反射
これが誤っている組合せであり、正解である。非対称性緊張性頸反射(asymmetric tonic neck reflex:ATNR)は、仰臥位の乳児の顔を一方へ向けると、顔が向いた側の上下肢が伸展し、後頭側の上下肢が屈曲する原始反射で、フェンシングのような姿勢をとることから「フェンシング姿勢」とも呼ばれる。新生児期から生後1~2か月ごろに最もはっきりみられ、寝返りができるようになる生後4~6か月ごろまでに消える。12か月で認められることは通常なく、もしこの時期まで残存していれば、上位中枢による抑制がかからない状態、すなわち脳性麻痺などの中枢神経障害を疑う所見となる。
主な原始反射とおおよその消失時期
・探索反射(口角や頬に触れるとそちらへ顔を向け口を開く)、吸啜反射(口に入ったものを吸う):授乳に必要な反射。生後4~6か月ごろまでに消える。 ・Moro反射:出生時~3~4か月(定頸とともに消える)。 ・手掌把握反射:出生時~3~4か月(随意的につかむ動作の獲得とともに消える)。 ・非対称性緊張性頸反射(ATNR):出生時~4~6か月(寝返りの獲得とともに消える)。 ・自動歩行(原始歩行):出生時~1~2か月。 ・足底把握反射:出生時~9~10か月(つかまり立ちのころ消える)。 ・Babinski反射(足底外側をこすると母趾が背屈し他趾が扇状に開く):1~2歳ごろまでは陽性でも正常。
主な姿勢反射とおおよその出現時期
・Landau反射:3~6か月ごろ出現し、1~2歳ごろに消える。 ・パラシュート反射(保護伸展反応):6~9か月ごろ出現し、生涯持続する。 ・座位での側方保護伸展反応:6~8か月ごろ出現(お座りの安定と関連)。 ・ホッピング反応・立位平衡反応:1歳前後以降に出現(独歩と関連)。
臨床的意義
原始反射が本来消えるべき時期を過ぎても残存する、あるいは新生児期に出現しない・左右差がある場合は、中枢神経障害(脳性麻痺など)や末梢神経障害(腕神経叢麻痺など)を疑う手がかりとなる。姿勢反射が出現すべき時期に出現しない場合も、運動発達の遅れを示唆する。乳幼児健診では、これらの反射と粗大運動の発達(定頸3~4か月、寝返り5~6か月、お座り7か月前後、つかまり立ち9~10か月、独歩1歳~1歳半)を合わせて評価する。
POINT
・原始反射は出生時から存在し、上位中枢の成熟とともに生後数か月で消える。 ・ATNRは寝返りのころ(4~6か月)までに消えるので、12か月で認めるのは異常。 ・Moro反射は定頸のころ(3~4か月)に、足底把握反射はつかまり立ちのころ(9~10か月)に消える。 ・Landau反射は3~6か月ごろに出現し1~2歳で消える。 ・パラシュート反射は6~9か月ごろに出現し、生涯持続する。 ・原始反射の残存、姿勢反射の出現遅延は中枢神経障害(脳性麻痺など)を疑う。
