その往診、誰が払う?―医療保険・介護保険・行政サービスで仕分ける在宅医療
第117回医師国家試験 C問題 第15問
国試問題にチャレンジ
医療保険による在宅医療サービスはどれか。3つ選べ。
- a.在宅看取り
- b.歯科訪問診療
- c.妊産婦訪問指導
- d.訪問リハビリテーション
- e.訪問看護ステーションへの指示書の交付
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
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医学生
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医学生
ドクターまとめ
在宅医療サービスの財源は、医師・歯科医師が行う診療行為は医療保険、介護保険と重なるサービスは要介護者では介護保険優先、治療ではない保健サービスは行政事業、という3つの軸で整理できます。在宅看取り、歯科訪問診療、訪問看護指示書の交付はいずれも診療報酬で算定される医療保険のサービスです。訪問リハビリテーションは要介護者には介護保険が優先され、妊産婦訪問指導は母子保健法に基づく市町村の事業です。訪問看護は末期の悪性腫瘍など特定の疾病や急性増悪時の特別訪問看護指示書の場合に要介護者でも医療保険となり、居宅療養管理指導は医師が行っても介護保険となる点も重要です。制度の仕組みを理解しておくことは、退院調整や多職種連携、患者の負担への配慮といった実際の在宅医療に直結します。
解答・解説
正解はa, b, eです
※この問題は、厚生労働省の発表により採点対象から除外されています。
問われていること
在宅で提供される各種サービスが、医療保険(健康保険などの診療報酬)、介護保険、あるいはそれ以外の制度(母子保健法などによる行政サービス)のどれによって提供されるかを区別できるかを問う問題である。
考え方
整理の基本は次の 3 点である。 1. 医師・歯科医師が行う診療行為(往診、訪問診療、看取り、指示書の交付など)は医療保険の診療報酬で算定される。 2. 介護保険の要介護・要支援認定を受けている者に対し、介護保険にも同じ種類のサービス(訪問看護、訪問リハビリテーションなど)があるときは、原則として介護保険が医療保険より優先される(介護保険優先の原則)。ただし、末期の悪性腫瘍などの特定の疾病や、病状の急性増悪で頻回の訪問看護が必要な場合などは、要介護者であっても医療保険で提供される。 3. 傷病の治療ではない保健サービス(妊産婦や新生児の訪問指導など)は、市町村が母子保健法などに基づいて行うものであり、医療保険の対象ではない。 この考え方に照らすと、在宅看取り、歯科訪問診療、訪問看護ステーションへの指示書の交付の 3 つが医療保険によるサービスである。訪問リハビリテーションは介護保険が優先されるサービスとして扱われ、妊産婦訪問指導は行政の母子保健サービスである。
本問の取り扱い
本問は採点対象から除外された。試験実施側からは、問題としては適切であるが受験者のレベルには難しすぎたためと説明されている。医療保険と介護保険の適用区分は診療報酬・介護報酬の細かな規定に基づくもので、卒前教育で深く扱われる内容ではないことが背景にあると考えられる。
選択肢考察
- ○a. 在宅看取り
正しい。医師が自宅で患者を看取る際の訪問診療や死亡診断、在宅でのターミナルケアは、診療報酬の在宅患者訪問診療料や看取り加算・在宅ターミナルケア加算などとして医療保険で算定される。また、末期の悪性腫瘍の患者に対する訪問看護は、要介護認定を受けていても医療保険で行われるため、癌末期の在宅看取りでは訪問診療・訪問看護ともに医療保険が用いられる。
- ○b. 歯科訪問診療
正しい。通院が困難な患者の自宅や施設を歯科医師が訪問して行う歯科診療(う蝕や歯周病の治療、義歯の作製・調整など)は、歯科診療報酬の歯科訪問診療料として医療保険で算定される。なお、歯科医師や歯科衛生士が行う療養上の管理・指導のうち、要介護者に対する居宅療養管理指導は介護保険で算定される点は区別しておく。
- ×c. 妊産婦訪問指導
誤り。妊産婦訪問指導は母子保健法に基づき市町村が実施する保健サービスで、保健師や助産師が家庭を訪問して妊娠・出産・育児に関する保健指導を行う。傷病の治療ではないため医療保険の給付対象ではなく、介護保険とも無関係である。新生児訪問指導や乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)も同様に行政サービスとして行われる。
- ×d. 訪問リハビリテーション
誤り(本問の正解には含まれない)。訪問リハビリテーションは介護保険の居宅サービスの一つであり、要介護・要支援認定を受けている者には介護保険が優先して適用される。ただし、要介護認定を受けていない者(40 歳未満の者や、認定を受けていない 40 歳以上の者)に対しては、医療保険の在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料として提供されることがあり、医療保険で全く提供されないわけではない。また、要介護者でも急性増悪時などに一時的に医療保険で行われる場合がある。
- ○e. 訪問看護ステーションへの指示書の交付
正しい。訪問看護を開始するには、主治医が訪問看護ステーションに対して訪問看護指示書を交付する必要がある。この指示書の交付は医師が行う医療行為であり、訪問看護指示料として医療保険で算定される。訪問看護そのものが介護保険で行われる場合であっても、指示書交付の費用は医療保険から支払われる点がポイントである。
在宅サービスの財源の整理
・医療保険(診療報酬):往診、訪問診療、在宅での看取り・ターミナルケア、歯科訪問診療、訪問看護指示書の交付、在宅療養指導管理(在宅酸素療法、在宅自己注射など)、要介護認定を受けていない者への訪問看護・訪問リハビリテーション ・介護保険(介護報酬):要介護・要支援者への訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所介護、通所リハビリテーション、短期入所、居宅療養管理指導など ・行政サービス(母子保健法など):妊産婦訪問指導、新生児訪問指導、未熟児訪問指導など
介護保険優先の原則とその例外
要介護・要支援者が介護保険と医療保険の両方に同種のサービスがある場合は介護保険が優先する。ただし訪問看護では、次の場合は要介護者でも医療保険で提供される。 ・厚生労働大臣が定める疾病等(末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、Parkinson 病関連疾患の一部、人工呼吸器を使用している状態など) ・急性増悪などで主治医が特別訪問看護指示書を交付した場合(原則として月 1 回、最長 14 日間)
医師が行うが介護保険で算定されるもの
居宅療養管理指導は、医師・歯科医師・薬剤師・管理栄養士・歯科衛生士などが要介護者の自宅を訪問して療養上の管理や指導を行い、介護支援専門員(ケアマネジャー)へケアプラン作成に必要な情報提供を行うサービスで、介護保険で算定される。「医師が行うものはすべて医療保険」とはならない例として押さえておく。
訪問看護の流れ
主治医が訪問看護指示書(有効期間は最長 6 か月)を交付 → 訪問看護ステーションが訪問看護計画を立てて実施 → 訪問看護報告書を主治医へ提出、という流れで行われる。
POINT
・医師・歯科医師が行う診療(訪問診療、看取り、歯科訪問診療、訪問看護指示書の交付)は医療保険。 ・要介護者には介護保険が優先(訪問看護、訪問リハビリテーションなど)。 ・末期の悪性腫瘍など厚生労働大臣が定める疾病等の訪問看護は、要介護者でも医療保険。 ・居宅療養管理指導は医師が行っても介護保険。 ・妊産婦訪問指導は母子保健法に基づく市町村の事業で、医療保険の対象外。 ・本問は難易度が高すぎるとして採点除外となった。
