StudyMed医師国家試験

「予防因子」を数字で証明する―症例対照研究のオッズ比0.4を読み解く

第116回医師国家試験 F問題 第74問

国試問題にチャレンジ

第116回 F問題 第74問

ある疾患Aの予防因子を調査した症例対照研究のデータを表に示す。予防因子の曝露レベルは3段階に分類されている。表中の数値は人数を示す。 症例 疾患Aあり 対照 疾患Aなし  曝露なし 50  50  低曝露あり 40  70  高曝露あり 30  80 疾患Aに対する,「曝露なし」を基準とした時の「高曝露あり」のオッズ比を計算せよ。  ただし,小数第2位以下の数値が得られた場合には,小数第2位を四捨五入すること。 解答:① . ②

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は症例対照研究の表からオッズ比を計算する問題だ。ポイントは2つ。曝露レベルが3段階ある表から「どの行とどの行を比べるのか」を正しく選ぶこと、そして症例対照研究でなぜオッズ比を使うのかを理解しておくことだ。
医学生医学生
3行あると、全部使って計算しなきゃいけない気がして焦ります。
ドクタードクター
そう感じる人は多いね。でも問われているのは「曝露なし」を基準とした「高曝露あり」のオッズ比。だから使うのは「曝露なし」と「高曝露あり」の2行だけで、低曝露の行は今回はいったん脇に置いていい。まずはこの2行で2×2表を作ろう。
医学生医学生
曝露群の症例をa、曝露群の対照をb、非曝露群の症例をc、非曝露群の対照をdとおく、と疫学の講義で習いました。
ドクタードクター
その置き方で進めよう。高曝露ありの症例30人がa、対照80人がb、曝露なしの症例50人がc、対照50人がdになる。オッズ比はどう計算する?
医学生医学生
たすき掛けで(a×d)÷(b×c)ですよね。30×50が1500、80×50が4000なので…0.375です。
ドクタードクター
正解。小数第2位を四捨五入するから、答えは0.4になる。たすき掛けを丸暗記するだけでなく、意味も確認しておこう。症例群の中で「高曝露ありと曝露なしの比」、つまり曝露オッズは30÷50で0.6。対照群では80÷50で1.6。この2つの比をとると0.6÷1.6で、やはり0.375になる。
医学生医学生
症例群のほうが曝露している人の割合が低い、ということですね。
ドクタードクター
その通り。病気になった人ほど曝露していなかった、という関係だ。オッズ比が1より小さいので、高曝露は疾患と負の関連、つまり予防的にはたらいている可能性を示しているんだ。
医学生医学生
そもそも、なぜリスク比ではなくオッズ比なんでしょう。CBTの勉強のときも、ここがあいまいなまま覚えていました。
ドクタードクター
大事な疑問だね。症例対照研究では、研究者が「症例を何人、対照を何人」と決めて集める。だから表の人数から集団の罹患率を出すことはできない。罹患率が出せなければ、相対危険(リスク比)や寄与危険も直接は計算できない。一方、オッズ比は症例と対照をどんな割合で集めても値が変わらない性質があるから、症例対照研究でも使えるんだ。
医学生医学生
なるほど、対照を2倍集めても、bとdが両方2倍になるだけで比は変わらないわけですね。
ドクタードクター
よく気づいたね。それに、まれな疾患ならオッズ比は相対危険のよい近似値になる。症例対照研究はまれな病気を調べるのに向いた方法だから、この性質がとても役に立つ。
医学生医学生
ちなみに低曝露ありの行も、同じように計算すると意味がありますか。
ドクタードクター
計算してみると、(40×50)÷(70×50)で約0.57。高曝露の0.375と並べると、曝露が多いほどオッズ比が小さくなっているよね。これを量反応関係といって、Hillの因果関係の判断基準でいう「生物学的勾配」にあたる。因果関係を支持する所見の一つなんだ。
医学生医学生
問題では使わない行にも、ちゃんと意味があったんですね。
ドクタードクター
そう。最後に注意点もまとめておこう。症例対照研究は過去の曝露を思い出してもらうため、思い出しバイアスが入りやすい。対照の選び方による選択バイアスも問題になる。それから、実際の論文ではオッズ比の値だけでなく95%信頼区間を見て、1をまたいでいないかで統計学的に意味のある関連かを判断する。
医学生医学生
公衆衛生の実習で論文抄読をしたとき、信頼区間が1をまたいでいて「関連なし」と結論されていたのを思い出しました。
ドクタードクター
いい経験だね。数字を計算できるだけでなく、研究デザインの長所と限界を踏まえて結果を読めることが、臨床で論文を使うときの力になるよ。

まとめ

症例対照研究のオッズ比は、曝露群の症例a・対照b、非曝露群の症例c・対照dとして(a×d)÷(b×c)で求め、本問では(30×50)÷(80×50)=0.375を四捨五入して0.4となります。3段階の曝露がある表では、基準群と比較群の2行だけを取り出して2×2表を作ることが重要です。症例対照研究は症例と対照の人数を研究者が決めるため罹患率が求められず、相対危険の代わりに抽出割合に左右されないオッズ比を用い、まれな疾患ではオッズ比が相対危険の近似値になります。オッズ比が1未満なら予防的な関連を示し、曝露量が増えるほどオッズ比が小さくなる量反応関係は因果関係を支持する所見となります。バイアスや信頼区間も含めて結果を解釈する姿勢は、日常診療で論文を読み解く基礎となります。

解答・解説

正解は0.4です

問われていること

症例対照研究のデータから、「曝露なし」群を基準(リファレンス)としたときの「高曝露あり」群のオッズ比を求める。曝露レベルが3段階あるが、比較に使うのは「曝露なし」と「高曝露あり」の2行だけであり、「低曝露あり」の行は計算に用いない。

2×2表の作成

必要な2行を取り出して2×2表に整理する。 ・高曝露あり:症例(疾患Aあり)30人、対照(疾患Aなし)80人 ・曝露なし :症例(疾患Aあり)50人、対照(疾患Aなし)50人 一般に、曝露群の症例をa、曝露群の対照をb、非曝露群の症例をc、非曝露群の対照をdとおくと、a=30、b=80、c=50、d=50 となる。

計算方法1:曝露オッズの比として求める

症例対照研究では、症例群と対照群のそれぞれで「曝露していた人のオッズ」を求め、その比をとる。 ・症例群の曝露オッズ=高曝露あり/曝露なし=30/50=0.6 ・対照群の曝露オッズ=高曝露あり/曝露なし=80/50=1.6 ・オッズ比=0.6÷1.6=0.375

計算方法2:たすき掛けで求める

オッズ比=(a×d)/(b×c)=(30×50)/(80×50)=1500/4000=0.375 曝露群と非曝露群それぞれの「疾患ありのオッズ」の比((30/80)÷(50/50)=0.375÷1=0.375)として計算しても、同じ値になる。

端数処理

0.375 の小数第2位(7)を四捨五入すると 0.4 となる。したがって解答は ①=0、②=4 である。

結果の解釈

オッズ比が1より小さいことは、曝露が疾患の発生と負の関連をもつ(予防的にはたらく)ことを示す。本研究では高曝露群の疾患Aのオッズは曝露なし群の約0.4倍であり、高曝露が予防因子であることと矛盾しない。また、低曝露ありのオッズ比は (40×50)/(70×50)=2000/3500≒0.57 であり、曝露が多くなるほどオッズ比が小さくなる量反応関係がみられる。これは因果関係を支持する所見の一つ(Hillの基準の「生物学的勾配」)である。

症例対照研究とは

疾患のある人(症例)と、その疾患のない人(対照)を集め、過去にさかのぼって曝露の有無や程度を比較する観察研究である。時間をさかのぼって調べるため後ろ向き研究に分類される。 ・長所:まれな疾患や発症までの期間が長い疾患でも、少ない対象者・短期間・低コストで実施できる。複数の曝露要因を同時に検討できる。 ・短所:過去の曝露を思い出してもらうため思い出しバイアス(想起バイアス)が入りやすい。対照の選び方による選択バイアスが生じやすい。

なぜオッズ比を用いるのか

症例対照研究では、症例と対照の人数比を研究者が決めて集めるため、集団における罹患率(発生率)を求めることができない。したがって、コホート研究で用いる相対危険(リスク比)や寄与危険は直接計算できない。一方、オッズ比は症例と対照の抽出割合に左右されないため、症例対照研究でも求めることができる。

オッズ比と相対危険の関係

疾患の頻度が低い(まれな疾患)場合、オッズ比は相対危険のよい近似値となる。症例対照研究はまれな疾患を対象とすることが多いので、オッズ比を相対危険とほぼ同じ意味で解釈できる場合が多い。

オッズ比の読み方

・オッズ比>1:曝露は疾患と正の関連(危険因子の可能性) ・オッズ比=1:関連なし ・オッズ比<1:曝露は疾患と負の関連(予防因子の可能性) なお、統計学的に意味のある関連かどうかは、95%信頼区間が1をまたぐかどうかで判断する。

コホート研究との比較

コホート研究は曝露の有無で集団を分け、将来の発症を追跡する(前向き研究が基本)。発生率を求めることができ、相対危険・寄与危険を計算できるが、まれな疾患では大規模・長期間の追跡が必要となる。

POINT

・オッズ比=(a×d)/(b×c)(a:曝露あり・症例、b:曝露あり・対照、c:曝露なし・症例、d:曝露なし・対照)。 ・本問:(30×50)/(80×50)=0.375 → 四捨五入で 0.4。 ・比較に不要な行(低曝露あり)は使わない。どの群が基準かを必ず確認する。 ・症例対照研究では罹患率が求められないため相対危険は直接計算できず、オッズ比を用いる。まれな疾患ではオッズ比≒相対危険。 ・オッズ比<1は予防的な関連を示す。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。