「食べて出る」か「触れて出る」か―即時型食物アレルギーの検査をアレルギーの型で仕分ける
第115回医師国家試験 F問題 第23問
国試問題にチャレンジ
即時型食物アレルギーの検査として誤っているのはどれか。
- a.パッチテスト
- b.プリックテスト
- c.食物経口負荷試験
- d.ヒスタミン遊離試験
- e.抗原特異的IgE検査
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
即時型食物アレルギーはIgEとマスト細胞・好塩基球が関与するI型アレルギーであり、その検査は感作を調べる抗原特異的IgE検査・プリックテスト・ヒスタミン遊離試験と、実際の症状誘発をみる食物経口負荷試験に大別されます。食物経口負荷試験は確定診断と耐性獲得の判断のゴールドスタンダードですが、アナフィラキシーの危険があるため救急対応可能な体制で行います。一方、パッチテストは感作T細胞によるIV型(遅延型)アレルギーの検査で、48時間以降に判定し、接触皮膚炎などの原因検索に用いるため、即時型食物アレルギーの検査には当たりません。特異的IgE陽性は感作を示すにすぎないため、病歴と負荷試験を組み合わせて不要な除去を避けることが重要です。各検査を「アレルギーの型」と「判定までの時間」で整理しておくと、アレルギー診療全般の理解につながります。
解答・解説
正解はaです
即時型食物アレルギーは、主にIgE抗体が関与するI型アレルギーである。原因食物に含まれる抗原(アレルゲン)が、マスト細胞(肥満細胞)や好塩基球の表面に結合した特異的IgE抗体を架橋すると、これらの細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質が放出され、摂取後おおむね数分〜2時間以内に蕁麻疹、口腔内違和感、嘔吐・腹痛、喘鳴、血圧低下(アナフィラキシー)などが出現する。 したがって即時型食物アレルギーの検査は、(1) 特異的IgE抗体が存在するか(感作の有無)を調べる検査と、(2) 実際に食べて症状が出るか(臨床的な反応性)を確かめる検査に大別できる。前者には血液中の抗原特異的IgE検査、皮膚で反応をみるプリックテスト、好塩基球を用いるヒスタミン遊離試験があり、後者が食物経口負荷試験である。 一方、T細胞が主役となるIV型(遅延型)アレルギーを調べる検査は、IgEを介した即時型反応の評価には用いない。本問は「誤っているもの」を選ぶ問題であり、各検査がどの型のアレルギーを評価するものかを整理できていれば解答できる。
選択肢考察
- ○a. パッチテスト
誤りであり、これが正解である。パッチテスト(貼付試験)は、被疑物質を絆創膏状の検査用パッチに付けて背部などの皮膚に貼り、48時間後に除去して判定し、さらに72時間後〜1週間後にも判定する検査である。感作T細胞による細胞性免疫反応、すなわちIV型(遅延型)アレルギーを評価するもので、アレルギー性接触皮膚炎(金属、化粧品、ゴム製品、外用薬など)や一部の薬疹の原因検索に用いる。IgEを介する即時型食物アレルギーの診断には用いない。
- ×b. プリックテスト
正しい(即時型食物アレルギーの検査である)。前腕屈側などにアレルゲン液を1滴置き、専用の針(プリック針)でその部位の表皮を出血しない程度に浅く刺して抗原を侵入させ、約15〜20分後に膨疹と紅斑の大きさで判定する。皮膚マスト細胞上の特異的IgEとの反応をみるI型アレルギーの検査である。陽性対照としてヒスタミン、陰性対照として生理食塩水を同時に置いて比較する。市販の抗原エキスがない食物では、生の果物・野菜などに針を刺してから皮膚を刺す方法(prick-to-prick test)も用いられ、口腔アレルギー症候群の診断に有用である。抗ヒスタミン薬内服中は偽陰性になりうるため、検査前に休薬する。
- ×c. 食物経口負荷試験
正しい(即時型食物アレルギーの検査である)。原因と疑われる食物を、症状が落ち着いている時期に少量から段階的に増量しながら摂取させ、症状が誘発されるかを観察する。誘発症状が出た時点で負荷を中止し、治療する。特異的IgEが陽性でも実際には食べられる例(感作されているだけの例)は少なくないため、食物アレルギーの確定診断、および耐性獲得(食べられるようになったか)の判断における最も信頼性の高い検査(ゴールドスタンダード)である。ただしアナフィラキシーを誘発する危険があるため、救急対応が可能な体制のもとで行う。
- ×d. ヒスタミン遊離試験
正しい(即時型食物アレルギーの検査である)。患者の血液中の好塩基球に試験管内でアレルゲンを加え、好塩基球表面に結合している特異的IgEが抗原と反応して放出されるヒスタミン量を測定し、陽性・陰性を判定する。生体内で起こるI型反応の過程(IgEを介した脱顆粒)を試験管内で再現する検査であり、患者に危険がない利点がある。同様に好塩基球の活性化をみる検査として、活性化マーカー(CD203cなど)をフローサイトメトリーで測定する好塩基球活性化試験もある。
- ×e. 抗原特異的IgE検査
正しい(即時型食物アレルギーの検査である)。血清中の、特定のアレルゲンに対するIgE抗体量を測定する検査で、蛍光酵素免疫測定法などで定量する。採血のみで多くの抗原を調べられるため、食物アレルギーだけでなく花粉・ダニなどの吸入アレルゲンの検索にも広く用いられる。ただし陽性は「感作されている」ことを示すにとどまり、値が高いほど症状が出る確率は上がるものの、陽性イコール症状が出るとは限らない。近年は、食物全体の抽出物(粗抗原)に加えて、個々のアレルゲン蛋白質を測るアレルゲンコンポーネント検査(例: 鶏卵のオボムコイド、小麦のω-5グリアジン、ピーナッツのAra h 2)が可能となり、診断精度が向上している。
アレルギーの型(Gell & Coombs分類)と主な検査
I型(即時型): IgE、マスト細胞・好塩基球が関与。食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、アナフィラキシーなど。検査は特異的IgE検査、プリックテスト・スクラッチテスト・皮内テスト、ヒスタミン遊離試験、好塩基球活性化試験、誘発試験(食物経口負荷試験、吸入誘発試験)。皮膚テストは15〜20分後に判定する。 II型(細胞傷害型): IgG・IgMが細胞表面抗原に結合し、補体などを介して細胞を傷害。自己免疫性溶血性貧血、不適合輸血など。検査は直接・間接Coombs試験など。 III型(免疫複合体型): 抗原抗体複合体の沈着。血清病、ループス腎炎など。皮内テストではArthus反応(数時間後にピーク)がみられる。 IV型(遅延型): 感作T細胞が関与。接触皮膚炎、ツベルクリン反応、移植片拒絶など。検査はパッチテスト(48時間後以降に判定)、ツベルクリン反応、薬剤リンパ球刺激試験(DLST)。
食物アレルギー診断の流れ
詳しい病歴(どの食物を、どれだけ食べ、何分後にどんな症状が出たか)が出発点である。そのうえで特異的IgE検査やプリックテストで感作を確認し、診断が確定しない場合や除去解除を検討する場合に食物経口負荷試験を行う。感作の検査結果だけで不必要な食物除去をしないことが重要である。
補足
乳児の消化管アレルギー(新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症)のように、IgEを介さない(非IgE依存性)食物アレルギーも存在し、特異的IgEが陰性のことが多い。
POINT
・即時型食物アレルギーはIgEを介するI型アレルギーである。 ・I型の検査: 抗原特異的IgE検査、プリックテスト(15〜20分で判定)、ヒスタミン遊離試験、食物経口負荷試験。 ・食物経口負荷試験は確定診断のゴールドスタンダードだが、アナフィラキシーの危険を伴う。 ・パッチテストはIV型(遅延型)アレルギーの検査(48時間以降に判定)で、接触皮膚炎などに用いる。 ・特異的IgE陽性=感作であり、必ずしも症状が出るとは限らない。
