血のついたガーゼはどこへ捨てる?―5つのマークで学ぶ感染性廃棄物の分別
第114回医師国家試験 F問題 第45問
国試問題にチャレンジ
16歳の男子。前腕部の切創を主訴に来院した。高校の部活動中に転倒し,前腕部に3cmの切創を負い受診した。意識は清明。体温36.7℃。脈拍100/分,整。血圧110/60mmHg。呼吸数20/分。受傷部位以外に打撲,創傷は認めず,前腕部エックス線写真でも異常を認めない。 創部の洗浄,縫合処置を終えて,血液が付着したガーゼを廃棄する容器の表示はどれか。

- a.
- b.
- c.
- d.
- e.
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
血液や体液が付着した物は病原体を含むおそれがあるため感染性廃棄物として扱い、バイオハザードマーク付きの容器に廃棄します。マークの色は内容物の性状を示し、赤は液状・泥状、橙は血液付着ガーゼなどの固形状、黄は注射針などの鋭利なものに対応するため、本例のガーゼは橙色の容器が適切です。よく似た三つ葉マークは放射性物質の標識であり、どくろ・感嘆符・健康有害性の絵表示はGHSによる化学品の危険有害性の表示なので、感染性廃棄物とは区別します。針はリキャップせず耐貫通性容器へ捨てることも含め、廃棄物の正しい分別は医療者自身と周囲を感染から守る基本的な感染対策です。
解答・解説
正解はbです
状況の整理
16歳の男子が部活動中に転倒し、前腕に3cmの切創を負った。意識は清明で、脈拍がやや速いほかはバイタルサインに大きな異常はない。受傷部位以外に外傷はなく、エックス線写真で骨折などもない。創の洗浄と縫合を行えば外来で対応できる症例であり、臨床経過そのものは設問の焦点ではない。
設問の考え方
本問の選択肢a〜eは、問題に添付された図に示された5つの標識(記号)である。問われているのは、処置後に出た「血液が付着したガーゼ」をどの容器に捨てるか、つまり医療廃棄物の分別と表示の知識である。 人の血液や体液が付着した物は、病原体(B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HIVなど)を含んでいるおそれがある。そのため廃棄物処理法に基づき「感染性廃棄物」として扱う。感染性廃棄物を入れる容器には、バイオハザードマークを付けることが推奨されている。バイオハザードマークは、中心の小円を3つの三日月形が囲んだ形の記号である。 選択肢のうちバイオハザードマークはbである。他の選択肢は、放射性物質の標識(a)と、化学品の危険有害性を示すGHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)の絵表示(c〜e)であり、感染性廃棄物とは無関係である。 なお、バイオハザードマークの色は廃棄物の性状を表す。血液が付着したガーゼは固形状の感染性廃棄物にあたるため、本来は橙色のマークの容器(ビニール袋を二重にして使うなど丈夫な容器)に入れる。
選択肢考察
- ×a.
黒い3枚の扇形が中心の円を囲む「三つ葉(トレフォイル)マーク」で、放射線・放射性物質の存在を示す標識である。放射線管理区域の出入口や、放射性同位元素(RI)を使った検査・治療で生じる放射性廃棄物の容器などに用いる。放射性廃棄物は医療廃棄物とは別の法律と経路で処理される。縫合処置で生じた血液付着ガーゼは放射性物質を含まないため、この容器に捨てるのは誤りである。
- ○b.
中心の小円を3つの三日月形が囲むバイオハザードマークであり、感染性の生物学的危険があることを示す。環境省の「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」では、感染性廃棄物の容器にこのマークを付けることを推奨している。血液が付着したガーゼは感染性廃棄物に該当するため、この表示の容器に捨てるのが正しい。マークの色は内容物の性状を表し、赤色は液状・泥状のもの(血液など)、橙色は固形状のもの(血液が付着したガーゼなど)、黄色は鋭利なもの(注射針、メスなど)を示す。本例のガーゼは橙色のマークの容器に入れる。
- ×c.
「どくろ」の絵表示で、GHSにおいて急性毒性が強い化学物質(区分1〜3)を示す。飲み込んだり、吸入したり、皮膚に付いたりすると、少量でも生命に危険を及ぼしうる化学品の容器やラベルに表示される。感染性廃棄物の表示ではないため、誤りである。
- ×d.
「感嘆符(!)」の絵表示で、GHSにおいて比較的程度の軽い健康有害性を示す。急性毒性(区分4)、皮膚刺激性、眼刺激性、皮膚感作性、気道刺激性・麻酔作用などが該当する。化学品の危険有害性の表示であり、感染性廃棄物の容器の表示ではないため、誤りである。
- ×e.
人の上半身の胸部に星形の破裂のような模様が描かれた「健康有害性」の絵表示で、GHSにおいて慢性的・重篤な健康影響を示す。呼吸器感作性、生殖細胞変異原性、発がん性、生殖毒性、特定標的臓器毒性、誤えん有害性などをもつ化学品に表示される。感染性廃棄物の表示ではないため、誤りである。
医療廃棄物の分類
・医療機関から出る廃棄物は、感染性廃棄物と非感染性廃棄物に分かれ、それぞれ産業廃棄物と一般廃棄物に分類される。感染性廃棄物は「特別管理廃棄物」として、排出から最終処分まで厳重に管理する。運搬・処分の委託時にはマニフェスト(産業廃棄物管理票)で追跡する。 ・感染性廃棄物かどうかは、主に次の観点から判断する。(1)形状:血液、血清、血漿、体液、病理廃棄物(臓器・組織など)、病原微生物に関連した試験・検査に用いたもの、血液などが付着した鋭利なもの。(2)排出場所:感染症病床、結核病床、手術室、緊急外来室、集中治療室、検査室で治療・検査などに使用した後に排出されたもの。(3)感染症の種類:感染症法で定める特定の感染症の治療・検査などに用いたもの。 ・注射針などの鋭利なものは、血液が付着していなくても感染性廃棄物として扱い、耐貫通性の容器に入れる。
バイオハザードマークの色分け
・赤色:液状・泥状のもの(血液、体液など)→ 密閉できる容器。 ・橙色:固形状のもの(血液が付着したガーゼ、包帯、チューブ、手袋など)→ 丈夫なプラスチック袋を二重にして使う、または堅牢な容器。 ・黄色:鋭利なもの(注射針、メス、破損したガラス器具など)→ 耐貫通性のある堅牢な容器。分別排出が困難なものも黄色の容器を用いる。
その他の標識
・放射能標識(三つ葉マーク):放射性物質や放射線管理区域を示す。放射性医薬品で汚染された廃棄物は、医療廃棄物とは別に専門機関が回収する。 ・GHS絵表示:化学品の危険有害性を、9種類の絵表示(どくろ、感嘆符、健康有害性、炎、円上の炎、爆弾の爆発、ガスボンベ、腐食性、環境)で国際的に統一して示す制度である。日本では労働安全衛生法などで、ラベル表示や安全データシート〈SDS〉の交付が定められている。
POINT
・血液・体液が付着した物は感染性廃棄物として扱い、バイオハザードマーク付きの容器に捨てる。 ・バイオハザードマークの色:赤=液状・泥状、橙=固形状(血液付着ガーゼなど)、黄=鋭利なもの(注射針など)。 ・三つ葉マーク=放射性物質。どくろ・感嘆符・健康有害性はGHSの化学品の危険有害性を示す絵表示である。 ・針は使用後リキャップせず、そのまま耐貫通性容器に捨てる(針刺し事故の防止)。
