子どもを守る最後の砦―児童相談所の「できること」と「他機関の仕事」を見分ける
第114回医師国家試験 F問題 第13問
国試問題にチャレンジ
児童相談所について正しいのはどれか。
- a.国の機関である。
- b.療育の指導を行う。
- c.乳児健康診査を実施する。
- d.被虐待児の一時保護を行う。
- e.所長は医師でなければならない。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
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医学生
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医学生
ドクター
医学生
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医学生まとめ
児童相談所は児童福祉法に基づき都道府県と指定都市に設置が義務付けられた地方公共団体の機関で、子どもに関する相談・調査・判定を行い、一時保護や施設入所措置、里親委託などの措置をとります。とくに被虐待児の一時保護は中核的な機能で、緊急時には保護者の同意なく実施でき、期間は原則2か月以内、保護者の意に反する延長には家庭裁判所の承認が必要です。一方、乳児健康診査は市町村、身体障害児などへの療育の指導は保健所の業務であり、所長が原則医師とされるのも児童相談所ではなく保健所です。似た名前の機関を「設置主体」と「業務」の2つの軸で整理しておくと混同を防げます。医師は虐待を発見しやすい立場にあり、疑った段階で通告する義務があることも、臨床に出る前に必ず押さえておきたい知識です。
解答・解説
正解はdです
テーマ
児童相談所の設置主体・業務・職員を問う問題である。子どもに関わる行政機関には、児童相談所のほかに保健所、市町村保健センター、福祉事務所などがあり、それぞれの役割分担を区別して覚えることが求められる。
児童相談所の要点
児童相談所は児童福祉法に基づく行政機関で、都道府県と指定都市に設置が義務付けられている。中核市や東京都の特別区も設置することができる。原則18歳未満の子どもに関するあらゆる相談(養護相談〔虐待を含む〕、障害相談、非行相談、育成相談など)に応じ、専門的な調査・社会診断・心理診断・医学診断・行動診断を行い、その判定に基づいて指導、一時保護、児童福祉施設への入所措置や里親委託などの措置をとる。児童虐待への対応では中心的な機関であり、子どもの安全確保のための一時保護は児童相談所長(または都道府県知事)の権限で行われる。
正解を導く考え方
各選択肢を「どの機関の業務か」という観点で整理すると、乳児健康診査は市町村、療育の指導は保健所の業務であり、児童相談所の業務として正しいのは被虐待児の一時保護である。設置主体は国ではなく地方公共団体であり、所長の資格も医師に限定されていない。
選択肢考察
- ×a. 国の機関である。
児童相談所は国の機関ではなく、地方公共団体の機関である。児童福祉法により都道府県と指定都市に設置が義務付けられており、中核市と特別区も設置できる(2019年の法改正で中核市・特別区での設置促進が図られた)。国(こども家庭庁)は制度設計や運営指針の策定を担うが、児童相談所そのものを設置・運営するわけではない。
- ×b. 療育の指導を行う。
児童福祉法上、身体に障害のある児童や、疾病により長期の療養を必要とする児童に対する「療育の指導」は、保健所長の業務として規定されている。また、実際の療育(発達支援)は児童発達支援センターなどの障害児通所支援や、障害児入所施設などの障害児入所支援で行われる。児童相談所も障害相談に応じ、知的障害児の療育手帳の判定などを担うが、療育の指導そのものを行う機関として位置付けられているのは保健所である。
- ×c. 乳児健康診査を実施する。
乳児健康診査は母子保健法に基づき市町村が実施する(市町村保健センターや委託医療機関で行われることが多い)。母子保健法では1歳6か月児健康診査と3歳児健康診査が市町村の義務として定められ、乳児健康診査も市町村が必要に応じて行う。1997年の母子保健法改正以降、身近な母子保健サービスは市町村に一元化されており、児童相談所の業務ではない。
- ○d. 被虐待児の一時保護を行う。
一時保護は児童福祉法に定められた児童相談所の重要な機能である。虐待などにより子どもの安全が脅かされている場合、児童相談所長は子どもを一時保護所に保護するか、適当な施設・里親などに委託して一時保護することができる。緊急時には保護者の同意がなくても実施できる。期間は原則2か月以内であり、保護者の意に反して2か月を超えて延長する場合には家庭裁判所の承認が必要である。一時保護の間に子どもの心身の状態や家庭環境を調査・診断し、家庭復帰、施設入所、里親委託などの方針を決める。
- ×e. 所長は医師でなければならない。
児童相談所長の資格は医師に限定されていない。児童福祉法では、精神保健に関して学識経験を有する医師のほか、大学で心理学などを修めた者、社会福祉士、精神保健福祉士、公認心理師、一定期間以上の勤務経験のある児童福祉司などが所長になることができると定められている。なお、保健所長は原則として医師であることが求められる点と混同しないようにする。
児童相談所の職員
児童福祉司(相談・調査・指導を担うソーシャルワーカー)、児童心理司(心理診断・心理療法)、医師(精神科医・小児科医)、保健師、弁護士(法的対応)、一時保護所の児童指導員・保育士などが配置される。虐待対応体制の強化のため、児童福祉司や児童心理司の増員、弁護士・医師・保健師の配置が法改正のたびに進められている。
子どもに関わる主な機関と業務
児童相談所(都道府県・指定都市):子どもに関する専門的相談・判定、一時保護、施設入所措置、里親委託、療育手帳の判定、虐待対応。 市町村(市町村保健センター):乳幼児健康診査、妊娠届の受理と母子健康手帳の交付、新生児・乳児訪問指導、子育て相談、虐待の第一次的な相談窓口。 保健所:身体障害児・長期療養児への療育の指導、小児慢性特定疾病の医療費助成に関する業務、専門的・広域的な保健サービス。 福祉事務所:生活保護、助産施設・母子生活支援施設への入所、家庭児童相談室での相談。
児童虐待の通告
虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、市町村、福祉事務所または児童相談所に通告する義務がある(児童虐待防止法)。通告は守秘義務違反に当たらない。医師などは虐待を発見しやすい立場にあるため、早期発見に努めることが求められている。
POINT
・児童相談所は児童福祉法に基づき、都道府県・指定都市に設置義務がある(中核市・特別区も設置可能)。国の機関ではない。 ・主な業務は相談・調査・判定、一時保護、施設入所措置・里親委託である。 ・一時保護は原則2か月以内で、親権者の意に反する延長には家庭裁判所の承認が必要。 ・乳児健康診査は市町村、療育の指導は保健所の業務である。 ・児童相談所長は医師に限らない(保健所長は原則医師)。
