「等張」はひとつじゃない―25%アルブミン液が教える2つの浸透圧
第114回医師国家試験 E問題 第20問
国試問題にチャレンジ
等張液でないのはどれか。
- a.生理食塩液
- b.5%ブドウ糖液
- c.酢酸リンゲル液
- d.乳酸リンゲル液
- e.25%アルブミン液
対話形式の解説
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ドクターまとめ
等張液とは血漿(約285 mOsm/kg H2O)とほぼ同じ浸透圧をもつ液で、生理食塩液、5%ブドウ糖液、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液はいずれも等張液です。これに対し25%アルブミン液は、血漿の約4〜5倍の膠質浸透圧をもつ高張アルブミン製剤で、間質から血管内へ水を引き込み、難治性の腹水・胸水や大量腹水穿刺後の循環不全予防などに用いられます。5%ブドウ糖液は投与時こそ等張ですが体内では自由水として全体液に分布し、生理食塩液の大量投与は高Cl性代謝性アシドーシスの原因となる点も重要です。晶質浸透圧と膠質浸透圧を区別し、各輸液が体内のどこに分布するかを理解することは、病態に応じた輸液選択の基礎になります。
解答・解説
正解はeです
等張液とは、血漿とほぼ同じ浸透圧をもつ液体をいう。血漿浸透圧は約285±5 mOsm/kg H2Oに保たれており、これより浸透圧が低い液を低張液、高い液を高張液と呼ぶ。 輸液製剤は大きく、①電解質輸液製剤(生理食塩液、リンゲル液類など)、②栄養輸液製剤(ブドウ糖液など)、③血漿増量薬・血漿分画製剤(アルブミン製剤、人工膠質液など)に分けられる。選択肢のうち生理食塩液、酢酸リンゲル液、乳酸リンゲル液は電解質によって、5%ブドウ糖液はブドウ糖によって、いずれも血漿に近い浸透圧に調整された等張液である。 これに対し、25%アルブミン液はアルブミンを高濃度に含む製剤で、血漿の膠質浸透圧(蛋白質が血管内に水を引き寄せる力)の約4~5倍に相当する膠質浸透圧をもつため「高張アルブミン製剤」と呼ばれる。したがって等張液でないものはeである。 なお、浸透圧には、小さな溶質(電解質やブドウ糖)が細胞膜を介して水を動かす「晶質浸透圧」と、血管壁を通過しにくい蛋白質が血管内外の水分配を決める「膠質浸透圧」がある。アルブミン製剤の等張・高張は後者を基準にした呼び方である点を押さえておくとよい。
選択肢考察
- ×a. 生理食塩液
生理食塩液は0.9%塩化ナトリウム水溶液(Na 154 mEq/L、Cl 154 mEq/L)であり、血漿とほぼ等しい浸透圧をもつ等張液である。細胞内へは移行せず細胞外液に分布するため、細胞外液補充液として脱水、出血、ショック時の初期輸液などに用いる。ただしCl濃度が血漿(約100~108 mEq/L)より高く、アルカリ化剤も含まないため、大量投与で高Cl性代謝性アシドーシスをきたしうる。
- ×b. 5%ブドウ糖液
5%ブドウ糖液は電解質を含まないが、ブドウ糖濃度を5%(50 g/L、約278 mOsm/L)とすることで血漿とほぼ等張に調整されている。投与時に溶血を起こさないための等張化である。投与されたブドウ糖は速やかに代謝されて水だけが残るため、実質的には電解質を含まない自由水の補給となり、細胞内液を含む体内の水分全体に分布する(体内に入った後は低張液として振る舞う)。このため水分補給(水欠乏性脱水、高Na血症など)に用いられる。
- ×c. 酢酸リンゲル液
酢酸リンゲル液は、Na、K、Ca、Clを細胞外液に近い組成で含むリンゲル液に、アルカリ化剤として酢酸Naを加えた等張電解質輸液(細胞外液補充液)である。酢酸は肝臓以外の筋肉などでも代謝されて重炭酸イオン(HCO3-)を生じるため、肝機能低下時にも使いやすい。
- ×d. 乳酸リンゲル液
乳酸リンゲル液(ハルトマン液)は、リンゲル液にアルカリ化剤として乳酸Naを加えた等張電解質輸液(細胞外液補充液)である。乳酸は主に肝臓で代謝されてHCO3-となり、アシドーシスを補正する方向に働く。そのため高度の肝障害や乳酸アシドーシスでは注意を要する。アルカリ化剤として炭酸水素Naを直接含む重炭酸リンゲル液もある。
- ○e. 25%アルブミン液
25%(または20%)アルブミン液は高張アルブミン製剤であり、等張液ではない。ここでいう高張とは膠質浸透圧についてであり、血漿の膠質浸透圧の約4~5倍に相当する。投与すると組織間液から血管内へ水を引き込み、投与量を上回る循環血漿量の増加と浮腫の軽減をもたらす。そのため、低蛋白血症に伴う難治性の腹水・胸水や肺水腫など、限られた病態で用いられる。これに対し、5%アルブミン液(等張アルブミン製剤)は血漿とほぼ等しい膠質浸透圧をもち、出血性ショックなどでの循環血漿量の補充に用いる。
浸透圧の分類
・血漿浸透圧:約285±5 mOsm/kg H2O。概算は 2×Na+血糖/18+BUN/2.8 で求められる。 ・晶質浸透圧:電解質やブドウ糖など小分子による浸透圧。細胞内液と細胞外液の間の水の移動を規定する。 ・膠質浸透圧:主にアルブミンなど血漿蛋白による浸透圧(約25 mmHg)。毛細血管壁を介した血管内と間質の水分配を規定する。
主な輸液製剤と分布
・細胞外液補充液(等張電解質輸液):生理食塩液、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液、重炭酸リンゲル液。細胞外液(間質液と血漿)に分布し、血管内に残るのは投与量のおよそ1/4程度である。 ・5%ブドウ糖液:ブドウ糖が代謝された後は自由水として細胞内外の全体液に分布し、血管内に残るのはごくわずかである。 ・維持液などの低張電解質輸液(1号液~4号液):電解質濃度は低いが、ブドウ糖を加えて浸透圧を調整している。 ・高張液:3%食塩液(重症低Na血症の補正)、10%以上のブドウ糖液(栄養輸液)、20~25%アルブミン液、マンニトール(脳圧降下)など。
アルブミン製剤
・等張(4.4~5%)製剤:循環血漿量の補充(出血性ショックなど)。 ・高張(20~25%)製剤:膠質浸透圧を上げて間質から血管内へ水を引き込む。難治性腹水・胸水、低蛋白血症に伴う肺水腫、肝硬変での大量腹水穿刺後の循環不全予防などに用いる。単なる栄養補給目的での使用は適切でない。
POINT
・等張液=血漿(約285 mOsm/kg H2O)とほぼ同じ浸透圧の液。生理食塩液、5%ブドウ糖液、乳酸・酢酸リンゲル液は等張液である。 ・20~25%アルブミン液は膠質浸透圧が血漿の約4~5倍の高張製剤で、間質から血管内へ水を引き込む。5%アルブミン液は等張製剤。 ・5%ブドウ糖液は投与時は等張だが、体内では自由水として全体液に分布する。 ・生理食塩液の大量投与は高Cl性代謝性アシドーシスの原因となる。
