「何人集めるか」は効果の見込みから―ランダム化比較試験の設計と解析の基本
第114回医師国家試験 E問題 第17問
国試問題にチャレンジ
ランダム化比較試験〈RCT〉について正しいのはどれか。
- a.二重盲検は必須である。
- b.プラセボは現在では使用が禁止されている。
- c.ランダム割付は症例数を少なくするために行われる。
- d.症例数の設定のためには治療効果の推定が必要である。
- e.Intention to treat〈ITT〉による解析は実際に行った治療に基づいて行われる。
対話形式の解説
ドクター
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ドクターまとめ
ランダム化比較試験(RCT)は、無作為割付によって既知・未知の交絡因子を両群に均等化し、選択バイアスを防ぐことで因果関係を強く示せる研究デザインです。症例数は試験前に、期待する治療効果の大きさ、ばらつき、有意水準α、検出力1−βをもとに設計するため、治療効果の推定が欠かせません。二重盲検は情報バイアスを防ぐうえで望ましいものの必須ではなく、プラセボ対照もヘルシンキ宣言の条件のもとで認められています。解析は割り付けた群のまま行うITT解析が主解析の原則で、実際の治療に基づくper protocol解析やas-treated解析とは区別されます。各手法の目的を理解しておくことは、国試対策だけでなく、臨床論文を批判的に読み解く力の基礎になります。
解答・解説
正解はdです
ランダム化比較試験(RCT: randomized controlled trial)は、研究対象者を無作為(ランダム)に介入群と対照群に割り付け、両群の転帰を比較して介入の効果を評価する介入研究である。個々の研究デザインの中では、因果関係を最も強く示せる方法とされ、エビデンスレベルが高い(複数のRCTを統合したメタアナリシスがさらに上位に位置づけられる)。 RCTを理解するうえでの要点は次のとおりである。 ・ランダム割付の目的: 年齢や重症度などの既知の因子だけでなく、測定されていない未知の交絡因子も両群に均等に分布させ、選択バイアスと交絡を防ぐこと。これにより、群間の差は「介入の効果」と「偶然」だけで説明できるようになる。 ・盲検化(マスキング)の目的: 誰がどちらの群か分かっていることで生じる情報バイアス(観察者バイアスやプラセボ効果など)を防ぐこと。望ましいが、すべてのRCTで可能なわけではない。 ・症例数(サンプルサイズ)の設計: 期待する治療効果の大きさ、有意水準α、検出力(1−β)などをもとに、試験開始前に計算する。 ・解析方法: ランダム割付の利点を保つため、主解析は割り付けた群のまま解析するITT解析で行うのが原則である。 これらを踏まえると、症例数の設定に治療効果の推定が必要であるという記述が正しい。
選択肢考察
- ×a. 二重盲検は必須である。
二重盲検(double blind)とは、被験者(患者)と、治療を行い評価する医師(研究者)の双方に、どちらの群に割り付けられたかを知らせずに試験を行う方法である。観察者バイアスや被験者の期待による効果などの情報バイアスを減らせるため望ましいが、RCTの必須条件ではない。例えば手術と薬物療法の比較、運動療法・食事療法・生活指導などの介入では、本人や施術者が介入内容を知らずにいることが事実上不可能であり、盲検化しない(オープンラベル)RCTや、結果を評価する者だけを盲検化する方法(PROBE法など)が用いられる。誤りである。
- ×b. プラセボは現在では使用が禁止されている。
プラセボ(偽薬)は、有効成分を含まないが外見上は試験薬と区別できないもので、プラセボ効果を差し引いた真の薬効を評価するために用いられる。世界医師会(WMA)のヘルシンキ宣言では、新しい介入は原則として現時点で最善と証明された介入と比較すべきとし、プラセボの使用には慎重さを求めている。しかし、証明された治療法が存在しない場合や、やむを得ない科学的理由があり、プラセボを用いても被験者に重大または不可逆的な害が生じない場合などには、プラセボ対照試験は認められている。使用が禁止されているわけではないため誤りである。
- ×c. ランダム割付は症例数を少なくするために行われる。
ランダム割付の目的は、研究者の意図や患者の背景によって群分けが偏ること(選択バイアス)を防ぎ、既知・未知の交絡因子を両群に均等に分布させて、比較可能な2群をつくることである。必要な症例数を減らすための手法ではない。症例数は、期待する効果の大きさ、有意水準、検出力などによって決まり、ランダム化の有無で決まるものではない。誤りである。
- ○d. 症例数の設定のためには治療効果の推定が必要である。
RCTでは、試験開始前に必要な症例数(サンプルサイズ)をあらかじめ計算しておく。症例数が少なすぎると、実際に効果があっても統計学的有意差を検出できない(第2種の過誤、β)おそれがあり、多すぎると不必要な数の被験者を試験に参加させることになり、倫理的・経済的に問題となる。症例数の計算には、期待される治療効果の大きさ(両群の差、例えばイベント発生率の差や平均値の差。先行研究や予備試験から推定する)、結果のばらつき(標準偏差や対照群のイベント発生率)、有意水準α(通常0.05)、検出力1−β(通常0.8~0.9)が必要である。期待される効果が小さいほど、それを検出するのに必要な症例数は多くなる。正しい記述である。
- ×e. Intention to treat〈ITT〉による解析は実際に行った治療に基づいて行われる。
ITT解析(intention-to-treat analysis)は、プロトコールからの逸脱、治療の中断や変更、群間の移行(クロスオーバー)があっても、当初ランダムに割り付けられた群のまま全対象者を解析する方法である。ランダム割付によって得られた群間の比較可能性を保つことができ、実臨床に近い条件での効果を評価できるため、RCTの主解析として推奨される。一方、プロトコールどおりに治療を完遂した対象者だけを解析するのがper protocol(PP)解析、割り付けにかかわらず実際に受けた治療に基づいて群分けし直して解析するのがas-treated解析である。これらは逸脱者・脱落者の偏りによってランダム化の利点が失われ、バイアスが入りやすい。実際に行った治療に基づくのはITT解析ではないため誤りである。
疫学研究デザインとエビデンスレベル
一般に、エビデンスレベルは高い順に、RCTのシステマティックレビュー・メタアナリシス、RCT、非ランダム化比較試験、コホート研究、症例対照研究、横断研究、症例報告・症例集積、専門家の意見とされる。
RCTにおけるバイアス対策
・ランダム化: 選択バイアス・交絡の防止。割付順を事前に予測・操作できないようにする割付の隠蔽(allocation concealment)も重要である。 ・層別ランダム化・ブロックランダム化: 重要な予後因子や各群の人数を均等にするための工夫。 ・盲検化: 単盲検(被験者のみが知らない)、二重盲検(被験者と医師・評価者が知らない)、さらに解析者も知らない三重盲検などがある。情報バイアスを防ぐ。
サンプルサイズ設計に必要な要素
・検出したい効果の大きさ(効果量、群間差) ・データのばらつき(標準偏差、対照群のイベント発生率など) ・有意水準α(第1種の過誤: 実際には差がないのに差があると判断する確率。通常0.05) ・検出力1−β(βは第2種の過誤: 実際には差があるのに見逃す確率。検出力は通常0.8~0.9) ・脱落の見込み(予測される脱落率の分だけ症例数を上乗せする)
解析方法の比較
・ITT解析: 割り付けた群のまま全例を解析。ランダム化の利点を保つ。効果はやや控えめ(保守的)に推定されやすい。主解析として推奨される。 ・per protocol解析: プロトコールを遵守した例のみを解析。理想的な条件下での効果を見るのに使うが、バイアスが入りやすい。 ・as-treated解析: 実際に受けた治療で群分けし直して解析する。
プラセボ使用の倫理
ヘルシンキ宣言では、新しい介入は現在最善と証明された介入と比較することが原則とされ、プラセボ対照は、証明された介入が存在しない場合や、やむを得ない科学的理由がありかつ被験者に重大・不可逆的な害が及ばない場合に限って許容される。
POINT
・RCTはランダム割付により既知・未知の交絡因子を均等化し、選択バイアスを防ぐ。症例数を減らすためではない。 ・二重盲検は望ましいが必須ではない(手術・運動療法などでは不可能なこともある)。 ・プラセボ対照試験は条件付きで認められており、禁止されていない。 ・症例数の設計には、期待される治療効果、ばらつき、有意水準α、検出力1−βが必要である。 ・ITT解析は割り付けた群のまま解析する。実際に行った治療で解析するのはper protocol解析・as-treated解析である。
