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乳頭は腫れても目はよく見える―うっ血乳頭が最初に告げるのは「頭痛」

第113回医師国家試験 E問題 第18問

国試問題にチャレンジ

第113回 E問題 第18問

うっ血乳頭に随伴する初期症状はどれか。

  1. a.眼痛
  2. b.頭痛
  3. c.眼精疲労
  4. d.視力低下
  5. e.求心性視野狭窄

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は眼科の問題だけど、実は脳とのつながりを考える問題なんだ。うっ血乳頭がなぜ起こるのかという「原因」から考えると、初期に何が起こるかが自然に見えてくる。まず、うっ血乳頭とはどんな状態か説明できるかな。
医学生医学生
眼底で視神経乳頭が腫れて見える状態ですよね。眼の病気なので、視力低下が最初に出るのかなと思ってしまいました。
ドクタードクター
そう考える人は多いね。でも、うっ血乳頭は頭蓋内圧亢進が原因で起こる乳頭の腫脹を指す言葉なんだ。視神経は脳と同じく髄膜に包まれて眼球の後ろまで続いていて、周囲のくも膜下腔も頭蓋内とつながっている。だから頭蓋内圧が上がると、その圧が視神経のまわりにも伝わるんだよ。
医学生医学生
解剖の講義で、視神経は末梢神経ではなく中枢神経の一部だと習いました。だから髄膜に包まれているんですね。
ドクタードクター
その通り。圧がかかると、視神経が眼球壁を貫く篩状板のあたりで軸索の中の物質輸送、つまり軸索流が滞り、軸索が腫れて乳頭が盛り上がる。原因が頭蓋内にあるから、通常は両眼に起こるのも特徴だ。
医学生医学生
ということは、うっ血乳頭に「随伴する」症状は、原因である頭蓋内圧亢進の症状と考えればいいんですね。
ドクタードクター
まさにそこが着眼点。頭蓋内圧亢進の三主徴は頭痛・嘔吐・うっ血乳頭だ。初期から出やすいのは頭痛で、悪心・嘔吐を伴うことが多い。臥位で頭蓋内圧が上がりやすいことなどから、起床時に強い頭痛が典型的だ。だから正解は頭痛になる。
医学生医学生
脳神経外科の実習で、脳腫瘍の患者さんが「朝起きたときの頭痛がひどい」と話していたのを思い出しました。
ドクタードクター
いい経験だね。では、ほかの選択肢も確認しよう。視力低下はどうだろう。
医学生医学生
乳頭が腫れているなら、視神経の働きも落ちていそうな気がしますが……。
ドクタードクター
そこが大事なポイントで、初期には乳頭腫脹が目立っても視神経線維の伝導機能はしばらく保たれるから、視力はほぼ正常なんだ。数秒だけ視界が暗くなる一過性視覚障害を訴えることはあるけれど、持続的な視力低下は、うっ血乳頭が長く続いて視神経が萎縮した後期の所見だよ。
医学生医学生
求心性視野狭窄も、同じく後期の所見ということですか。
ドクタードクター
そう。初期の視野異常は、腫れた乳頭の周りが見えなくなることによるMariotte盲点の拡大くらいだ。求心性視野狭窄は視神経萎縮に至ってから現れる。ちなみに網膜色素変性や進行した緑内障でもみられる所見だね。
医学生医学生
眼痛はどうでしょう。乳頭が腫れたら痛そうですが。
ドクタードクター
うっ血乳頭は通常、眼痛を伴わない。眼痛を伴う乳頭腫脹といえば、眼球運動時痛が特徴的な視神経炎が代表で、急な視力低下や中心暗点を伴い、多くは片眼性だ。眼精疲労は、屈折異常の矯正不良やドライアイなどで眼の疲れが休んでも取れない状態で、頭蓋内圧とは関係がない。
医学生医学生
「乳頭が腫れているのに視力は良い」ならうっ血乳頭、「乳頭が腫れて視力が急に落ちて眼を動かすと痛い」なら視神経炎、と整理できそうです。
ドクタードクター
完璧な整理だ。CBTでもよく問われる対比だよ。ほかに虚血性視神経症は高齢者に多く、突然の無痛性視力低下と水平性の視野欠損が特徴だね。最後に臨床での注意点を2つ。まず、うっ血乳頭を見たら頭蓋内の占拠性病変を疑い、腰椎穿刺の前に必ず頭部CTやMRIで確認すること。脳ヘルニアを誘発する危険があるからね。
医学生医学生
頭蓋内圧亢進のときに腰椎穿刺は禁忌、と神経内科の講義でも強調されていました。もう1つは何ですか。
ドクタードクター
外転神経麻痺による複視だ。外転神経は頭蓋内での走行が長く圧の影響を受けやすいので、頭蓋内圧亢進だけで麻痺を起こすことがあり、病変の場所を示す局在徴候にはならない。さらに急激な圧上昇で血圧上昇と徐脈が出たら、Cushing現象として脳ヘルニアの切迫を考える。眼底一つから命に関わる病態を拾えることを覚えておいてほしい。

まとめ

うっ血乳頭は、脳腫瘍や頭蓋内出血などによる頭蓋内圧亢進が視神経周囲のくも膜下腔に伝わり、軸索流が滞って生じる両眼性の乳頭腫脹です。随伴する初期症状は原因である頭蓋内圧亢進の症状であり、起床時に強い頭痛や悪心・嘔吐が代表的です。初期には視力は保たれ、視野異常もMariotte盲点の拡大程度にとどまり、視力低下や求心性視野狭窄は視神経萎縮に至った後期の所見です。眼痛や急激な視力低下を伴う乳頭腫脹は視神経炎を考え、うっ血乳頭を認めたら腰椎穿刺の前に画像検査で占拠性病変を確認することが重要です。眼底所見を頭蓋内の病態と結びつけて考える姿勢は、眼科と神経領域をまたぐ臨床判断の基本となります。

解答・解説

正解はbです

うっ血乳頭とは、頭蓋内圧亢進が原因で生じる視神経乳頭の腫脹(乳頭浮腫)を指す。視神経は脳と同じく髄膜(くも膜下腔)に包まれて眼球後方まで続いているため、頭蓋内圧が上がるとその圧が視神経周囲のくも膜下腔に伝わる。すると、視神経線維内の物質輸送(軸索流)が篩状板(視神経が眼球壁を貫く部分)のあたりで滞り、軸索が腫れて乳頭が膨隆する。原因が頭蓋内にあるため、通常は両眼性にみられる。 この機序から考えると、うっ血乳頭に「随伴する」初期症状は、乳頭そのものの症状よりも、原因である頭蓋内圧亢進の症状と考えるのが自然である。頭蓋内圧亢進の三主徴は頭痛・嘔吐・うっ血乳頭であり、初期にみられるのは頭痛(特に起床時に強い頭痛)や悪心・嘔吐である。 一方、乳頭が腫れていても初期には視神経の機能は比較的保たれるため、視力はほぼ正常で、視野検査でもMariotte盲点(生理的盲点)の拡大がみられる程度である。視力低下や視野狭窄が目立ってくるのは、うっ血乳頭が長く続いて視神経が萎縮した後期である。「乳頭が腫れているのに視力は良い」という点が、視力低下を早期から来す視神経炎などとの鑑別上の重要な特徴となる。

選択肢考察

  1. ×a.  眼痛

    うっ血乳頭は眼痛を伴わないのが一般的である。眼痛を伴う乳頭腫脹としては、眼球運動時痛を特徴とする視神経炎(視神経乳頭炎)が代表的であり、眼痛の有無はうっ血乳頭との鑑別点の一つになる。また、急性緑内障発作のように眼痛と頭痛を同時に来す疾患もあるが、乳頭腫脹は生じない。

  2. ○b.  頭痛

    うっ血乳頭の原因は、脳腫瘍、脳出血・くも膜下出血、脳膿瘍・髄膜炎、脳静脈洞血栓症、特発性頭蓋内圧亢進症などによる頭蓋内圧亢進である。頭蓋内圧亢進では、早期から頭痛が出現し、悪心・嘔吐を伴うことが多い。頭痛は臥位で頭蓋内圧が上がりやすいことなどから起床時に強いことが特徴である。したがって、うっ血乳頭に随伴する初期症状として頭痛が最も適切である。

  3. ×c.  眼精疲労

    眼精疲労は、近業など眼を使う作業を続けたときに眼の疲れ、かすみ、頭重感などが生じ、休息しても十分回復しない状態を指す。屈折異常の矯正不良、調節・輻湊の異常、ドライアイなどが主な原因であり、頭蓋内圧亢進やうっ血乳頭とは直接の関係はない。

  4. ×d.  視力低下

    うっ血乳頭の初期には、乳頭腫脹が目立っても視力は保たれていることが多い。これは視神経線維の伝導機能がしばらく維持されるためである。ただし、数秒程度、視界が暗くなったりかすんだりする一過性の見えにくさ(一過性視覚障害)を訴えることはある。持続的な視力低下が生じるのは、うっ血乳頭が長期間続いて視神経が萎縮した後期である。

  5. ×e.  求心性視野狭窄

    うっ血乳頭の初期の視野異常は、腫れた乳頭の周りに見えない範囲が広がることによるMariotte盲点の拡大である。求心性視野狭窄(周辺から中心に向かって視野が狭くなる状態)は、うっ血乳頭が遷延して視神経萎縮に至った段階でみられるもので、初期症状ではない。なお求心性視野狭窄は網膜色素変性や進行した緑内障などでも生じる。

うっ血乳頭の病期と所見

・初期:乳頭の発赤と境界の不鮮明化、乳頭周囲の網膜神経線維層の混濁、静脈の拡張と静脈拍動の消失。視力は正常、視野ではMariotte盲点の拡大。 ・完成期:乳頭の著明な膨隆、乳頭周囲の線状・火炎状出血、綿花様白斑。一過性視覚障害を訴えることがある。 ・慢性期〜萎縮期:腫脹がやや引き、乳頭は蒼白化(二次性視神経萎縮)。この段階で視力低下や求心性視野狭窄が進行し、不可逆的な視機能障害を残すことがある。

頭蓋内圧亢進症状の整理

・三主徴:頭痛、嘔吐、うっ血乳頭。 ・その他:外転神経麻痺による複視(外転神経は頭蓋内での走行が長く、圧の影響を受けやすいため、局在徴候とはならない)、意識障害。 ・急激な頭蓋内圧上昇では、血圧上昇・徐脈・呼吸の異常(Cushing現象)がみられ、脳ヘルニアの切迫を示唆する。

乳頭腫脹の鑑別

・視神経炎(乳頭炎):多くは片眼性で、急激な視力低下、眼球運動時痛、中心暗点、相対的瞳孔求心路障害を伴う。 ・虚血性視神経症:高齢者に多く、突然の無痛性視力低下と、視野の上半分または下半分が欠ける水平性の視野欠損を来す。 ・偽乳頭浮腫:視神経乳頭ドルーゼンや先天的な乳頭の形態異常による見かけ上の腫脹であり、病的意義は乏しい。

関連事項

前頭蓋底の腫瘍(嗅窩部髄膜腫など)では、腫瘍側に視神経萎縮、反対側にうっ血乳頭を来すことがあり、Foster Kennedy症候群と呼ばれる。また、頭蓋内圧亢進が疑われ、うっ血乳頭を認める患者では、腰椎穿刺は脳ヘルニアの危険があるため、先に頭部CTやMRIで占拠性病変の有無を確認する。

POINT

・うっ血乳頭は頭蓋内圧亢進による両眼性の乳頭腫脹である。 ・初期症状は頭蓋内圧亢進症状(頭痛、悪心・嘔吐)であり、眼痛は伴わない。 ・初期は視力が保たれ、視野ではMariotte盲点の拡大がみられる。 ・視力低下や求心性視野狭窄は、遷延して視神経萎縮に至った後期の所見である。 ・乳頭腫脹+急激な視力低下+眼球運動時痛なら視神経炎を考える。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。