StudyMed医師国家試験

「使いすぎ」で壊れる骨、「血が届かず」死ぬ骨―オーバーユース障害の仲間外れを見抜く

第113回医師国家試験 D問題 第7問

国試問題にチャレンジ

第113回 D問題 第7問

運動器に対する慢性的な過負荷が発症に関連しないのはどれか。

  1. a.腰椎分離症
  2. b.職業性腰痛
  3. c.離断性骨軟骨炎
  4. d.大腿骨頭壊死症
  5. e.Osgood-Schlatter病

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、運動器への慢性的な過負荷、いわゆるオーバーユースが発症に関わる疾患を整理する問題だ。「関連しないもの」を選ぶ形式なので、それぞれの疾患が「なぜ起こるのか」という成因に立ち返って考えるのがコツだよ。
医学生医学生
選択肢を見ると、スポーツをしている子どもに多い病気がいくつか並んでいますね。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。まず大前提として、1回の大きな外力で起こる骨折や脱臼を「外傷」と呼ぶのに対して、小さな負荷が同じ部位にくり返し加わって起こるものは「障害」と呼んで区別する。スポーツ障害や職業性障害がその代表だ。
医学生医学生
整形外科の講義で「スポーツ外傷とスポーツ障害は違う」と強調されていたのを思い出しました。
ドクタードクター
その区別がこの問題の土台になる。オーバーユース障害は大きく、骨にくり返し負荷がかかる疲労骨折、成長期の未熟な骨端や軟骨下骨の障害、そして作業姿勢による負担の3つに整理できる。では腰椎分離症から考えよう。これはどれに当たるかな。
医学生医学生
腰椎の椎弓が分かれてしまう病気ですよね。先天的な形成異常だと思っていたのですが……。
ドクタードクター
そう誤解する人は多いね。実際には、上下の関節突起の間、つまり関節突起間部に生じた疲労骨折が癒合せずに偽関節になった状態と考えられている。発育期のスポーツ選手に多く、体幹の後屈やひねりをくり返すことで関節突起間部に応力が集中する。好発部位は第5腰椎だ。
医学生医学生
疲労骨折なんですね。それなら早く見つければ治る可能性があるということですか。
ドクタードクター
その通り。初期の段階で運動を中止して体幹装具で固定すれば骨癒合が期待できるから、単純X線でまだはっきりしない時期にMRIで早期発見することが大切なんだ。次はOsgood-Schlatter病。
医学生医学生
小児科か整形外科の外来で、サッカー少年が膝の下の出っ張りを痛がっていたのを見たことがあります。
ドクタードクター
まさに典型例だね。成長期にジャンプやダッシュ、キック動作をくり返すと、大腿四頭筋の収縮力が膝蓋腱を介して未熟な脛骨粗面を何度も引っ張る。その牽引力で起こる骨端症だ。脛骨粗面の膨隆と圧痛が特徴で、運動量の調整やストレッチなどの保存療法が基本、骨の成長が終わると落ち着くことが多い。
医学生医学生
離断性骨軟骨炎は少し原因があいまいな印象があります。血流障害も関わっていると聞いたような。
ドクタードクター
鋭いね。成因は完全には解明されていなくて、骨化障害や血行障害の関与も議論されている。ただ、くり返す外力による軟骨下骨の疲労骨折という外傷説が有力で、代表例は投球動作のくり返しで起こる上腕骨小頭の病変、いわゆる外側型野球肘だ。膝の大腿骨内側顆や距骨滑車にも起こり、進行すると骨軟骨片が剥がれて関節ねずみになる。
医学生医学生
職業性腰痛は名前の通り、仕事による負担ですね。
ドクタードクター
そう。重量物の持ち上げや運搬、前かがみやひねり姿勢、長時間の運転による振動などで、腰部にくり返し負担がかかって起こる。介護・看護職、運輸業、建設業などに多く、業務上疾病の中でも最も多いものの一つだ。作業環境や作業方法の工夫による予防が重視されている。
医学生医学生
ということは、残る大腿骨頭壊死症が仲間外れですね。ステロイドやアルコールが危険因子だったはずです。
ドクタードクター
正解。大腿骨頭壊死症は、大腿骨頭への血流が途絶えて骨組織が死んでしまう阻血性の病態だ。特発性のものではステロイドの全身投与とアルコール多飲が二大危険因子で、続発性には大腿骨頸部骨折などの外傷、減圧症、放射線照射などがある。運動のしすぎや重労働がくり返し加わって起こる病気ではないんだ。
医学生医学生
でも、体重がかかると痛くなるなら、負荷も関係していそうに思えてしまいます。
ドクタードクター
そこが引っかけになりやすいポイントだね。壊死した部分に体重がかかると骨頭が潰れて、そこで股関節痛が出たり悪化したりする。でもそれは壊死が起こった後の経過であって、発症原因ではない。「何が始まりなのか」と「何が症状を悪化させるのか」を分けて考えよう。
医学生医学生
内科の病棟実習で、SLEでステロイドを長く使っている患者さんが股関節痛を訴えて、MRIを撮っていたのはこのためだったんですね。
ドクタードクター
まさにそういう場面で疑うべき疾患だ。MRIのT1強調像で壊死域を囲む帯状の低信号域がみられ、早期診断に優れている。特発性大腿骨頭壊死症は指定難病でもあり、壊死の範囲や圧潰の有無で保存療法、骨切り術、人工関節などが選ばれる。ちなみに小児で大腿骨頭が阻血性壊死をきたすPerthes病も、過負荷が原因ではないから一緒に覚えておくといい。
医学生医学生
オーバーユース障害には、ほかにどんなものを押さえておけばいいでしょうか。
ドクタードクター
テニス肘と呼ばれる上腕骨外側上顆炎、ジャンパー膝、アキレス腱炎などの腱・付着部の障害、脛骨や中足骨の疲労骨折、膝蓋骨下極のSinding-Larsen-Johansson病や踵骨のSever病といった骨端症が代表だね。臨床では、成長期の子どもの運動時痛を「成長痛」と片づけず、練習量や動作を詳しく聞くことが早期発見につながるよ。

まとめ

腰椎分離症(関節突起間部の疲労骨折)、Osgood-Schlatter病(膝蓋腱の牽引による脛骨粗面の骨端症)、離断性骨軟骨炎(投球などによる軟骨下骨の障害)、職業性腰痛(重量物の取り扱いや不良姿勢のくり返し)は、いずれも運動器への慢性的な過負荷が発症に関わる障害です。一方、大腿骨頭壊死症は血流途絶による阻血性壊死であり、ステロイド全身投与とアルコール多飲が二大危険因子で、過負荷は発症原因ではありません。荷重で骨頭が圧潰して痛みが増すのは発症後の経過であり、原因と増悪因子を区別することが重要です。成長期のスポーツ障害は早期に発見して運動量を調整すれば良好な経過が期待できるため、疾患ごとの成因を理解しておくことは、診断だけでなく予防や患者指導にも役立ちます。

解答・解説

正解はdです

本問は、運動器(骨・軟骨・腱・靱帯・筋など)に同じ方向の力がくり返し加わること、すなわち慢性的な過負荷(オーバーユース)が発症に深く関わる疾患を見分ける問題である。「関連しないもの」を選ぶ点に注意する。 慢性的な過負荷による障害は、1回の大きな外力で起こる「外傷」と区別して「スポーツ障害」「職業性障害」などと呼ばれる。代表的な病態は次の3つに整理できる。 ・骨に小さな負荷がくり返しかかって生じる疲労骨折(腰椎分離症など) ・成長期の未熟な骨端や骨端核に牽引力・圧迫力がくり返しかかって生じる骨端症(Osgood-Schlatter病など)や軟骨下骨の障害(離断性骨軟骨炎) ・作業姿勢や重量物の取り扱いのくり返しによる腰部への負担(職業性腰痛) 一方、大腿骨頭壊死症は大腿骨頭への血流が途絶えて骨組織が死ぬ「阻血性(虚血性)」の病態であり、その危険因子は副腎皮質ステロイドの全身投与やアルコール多飲などである。運動のしすぎや重労働がくり返し加わることによって起こる疾患ではない。したがって正解はdである。

選択肢考察

  1. ×a.  腰椎分離症

    過負荷が関連する疾患である。腰椎分離症は、椎弓の上下の関節突起の間(関節突起間部)に生じた疲労骨折が癒合せず、骨が分かれたまま偽関節となった状態である。好発部位は第5腰椎で、発育期のスポーツ選手に多い。体幹の伸展(後屈)や回旋をくり返す動作で関節突起間部に応力が集中することが原因と考えられている。初期の疲労骨折の段階で運動を中止し、体幹装具などで固定すれば骨癒合が期待できるため、MRIによる早期発見が重要である。

  2. ×b.  職業性腰痛

    過負荷が関連する疾患である。職業性腰痛は、仕事の動作や姿勢が原因となって起こる腰痛で、介護・看護職、運輸・配送業、建設業など、重量物の持ち上げや運搬、前かがみ・ひねり姿勢、長時間の同一姿勢や車両運転による振動などで腰部に反復して負担がかかる職種に多い。業務上疾病の中で最も多いものの一つであり、作業環境の改善や作業方法の工夫、腰痛予防体操などによる予防が重視される。

  3. ×c.  離断性骨軟骨炎

    過負荷が関連する疾患である。離断性骨軟骨炎は、関節軟骨とその直下の軟骨下骨の一部が母床から分離し、進行すると関節内に遊離して関節ねずみ(遊離体)となる疾患である。成因は完全には解明されていないが、くり返す外力による軟骨下骨の疲労骨折(外傷説)が有力とされ、骨化障害や血行障害の関与も考えられている。代表例が野球の投球動作のくり返しで起こる肘の上腕骨小頭の病変(外側型野球肘)であり、そのほか膝の大腿骨内側顆、距骨滑車にも好発する。成長期のスポーツ選手に多い。

  4. ○d.  大腿骨頭壊死症

    過負荷とは関連しない疾患であり、これが正解である。大腿骨頭壊死症は、大腿骨頭の一部が血流障害によって無菌性・阻血性に壊死する疾患である。明らかな原因がない特発性のものでは、副腎皮質ステロイドの全身投与とアルコール多飲が二大危険因子として知られ、ほかに大腿骨頸部骨折などの外傷、減圧症(潜函病)、放射線照射などが原因となる続発性のものもある。壊死そのものは運動器への慢性的な過負荷によって生じるものではない。壊死部に体重がかかることで骨頭が圧潰し、そこで股関節痛が出現・増悪するが、これは発症後の経過であって発症原因ではない。

  5. ×e.  Osgood-Schlatter病

    過負荷が関連する疾患である。Osgood-Schlatter病は脛骨粗面に生じる骨端症で、成長期(おおむね10〜15歳ごろ)にジャンプやダッシュ、ボールを蹴る動作などをくり返すことで、大腿四頭筋の収縮力が膝蓋腱を介して未熟な脛骨粗面に牽引力としてくり返し加わり発症する。脛骨粗面の膨隆と圧痛、運動時痛がみられる。運動量の調整や大腿四頭筋のストレッチなどの保存療法が基本で、骨成長の終了とともに症状は軽快することが多い。

オーバーユースによる主な運動器障害

・疲労骨折: 腰椎分離症(関節突起間部)、脛骨疲労骨折(跳躍型・疾走型)、中足骨疲労骨折(行軍骨折)など ・骨端症(成長期の骨端・骨端核の障害): Osgood-Schlatter病(脛骨粗面)、Sinding-Larsen-Johansson病(膝蓋骨下極)、Sever病(踵骨骨端)など ・軟骨下骨の障害: 離断性骨軟骨炎(上腕骨小頭、大腿骨内側顆、距骨滑車) ・腱・付着部の障害: 上腕骨外側上顆炎(テニス肘)、ジャンパー膝(膝蓋腱炎)、アキレス腱炎など ・職業性障害: 職業性腰痛、頸肩腕障害など

大腿骨頭壊死症の整理

・特発性大腿骨頭壊死症は指定難病であり、ステロイド関連、アルコール関連、明らかな誘因のないものに分けられる。ステロイド関連では全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病や臓器移植後の患者に多い。 ・続発性の原因には大腿骨頸部骨折・股関節脱臼などの外傷、減圧症、放射線照射などがある。 ・診断には単純X線(帯状硬化像、骨頭圧潰)とMRI(T1強調像で壊死域を囲む帯状低信号域)が有用で、MRIは早期診断に優れる。 ・壊死域の範囲や部位、圧潰の有無によって保存療法、骨切り術、人工骨頭置換術・人工股関節全置換術が選択される。 ・小児で大腿骨頭に阻血性壊死をきたすものはPerthes病と呼ばれ、これも過負荷が原因ではない。

POINT

・腰椎分離症=関節突起間部の疲労骨折。発育期のスポーツ(伸展・回旋のくり返し) ・離断性骨軟骨炎=軟骨下骨の障害。投球による上腕骨小頭の病変(野球肘)が代表 ・Osgood-Schlatter病=膝蓋腱の牽引による脛骨粗面の骨端症。成長期のジャンプ・キック動作 ・職業性腰痛=重量物取り扱いや不良姿勢のくり返し ・大腿骨頭壊死症=阻血性壊死。危険因子はステロイド全身投与とアルコール多飲で、過負荷は原因ではない

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。