StudyMed医師国家試験

熱より「息」と「圧」―qSOFAで敗血症に早く気づく

第113回医師国家試験 B問題 第11問

国試問題にチャレンジ

第113回 B問題 第11問

救急外来を受診した感染症が疑われる患者で敗血症の存在を考慮する評価項目として,意識レベルとともに有用なのはどれか。

  1. a.体温と脈拍
  2. b.体温と血圧
  3. c.脈拍と血圧
  4. d.脈拍と呼吸数
  5. e.血圧と呼吸数

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、救急外来で感染症が疑われる患者を前に、「敗血症かもしれない」といち早く気づくための指標を問う問題だ。キーワードはquick SOFA、略してqSOFA。意識レベルと組み合わせる残り2項目が何か、そしてなぜその項目なのかを考えていこう。
医学生医学生
敗血症というと、発熱と頻脈のイメージが強いです。体温と脈拍ではだめなんですか。
ドクタードクター
多くの人がそう考えるね。実はそれは、かつての敗血症の基準だったSIRS、全身性炎症反応症候群の項目なんだ。SIRSは体温、心拍数、呼吸数、白血球数の4項目で、2項目以上で陽性とされていた。
医学生医学生
CBTの勉強でSIRSの基準を覚えました。今は使われていないんですか。
ドクタードクター
敗血症の定義からは外されたんだ。SIRSは外傷や熱傷、膵炎など感染以外の侵襲でも簡単に陽性になり、臓器障害や予後との関連も弱かった。そこで2016年のSepsis-3では、敗血症を「感染症に対する生体反応の調節が破綻し、生命を脅かす臓器障害が生じた状態」と定義し直したんだよ。
医学生医学生
炎症があるかどうかより、臓器が傷んでいるかどうかを重視するようになった、ということですね。
ドクタードクター
その通り。臓器障害はSOFAスコアで評価する。呼吸、凝固、肝、循環、中枢神経、腎の6臓器を点数化して、感染症が疑われ、かつベースラインから2点以上急上昇していれば敗血症と判断する。
医学生医学生
でもSOFAは血小板やビリルビン、PaO2/FiO2まで要るので、救急外来ですぐには計算できなさそうです。
ドクタードクター
まさにそこでqSOFAの出番だ。検査を待たずにベッドサイドで評価できるよう、意識の変容(GCS 15未満)、呼吸数22/分以上、収縮期血圧100mmHg以下の3項目に絞ったもので、各1点。だから正解は「血圧と呼吸数」になる。
医学生医学生
血圧が下がっているのは循環不全だとわかりますが、呼吸数が入っているのは少し意外でした。
ドクタードクター
呼吸数は見落とされがちだけど大事なサインなんだ。呼吸不全そのものに加えて、組織低灌流で乳酸がたまる代謝性アシドーシスを呼吸で代償しようとしても呼吸数は増える。意識変容は脳灌流の低下や敗血症性脳症を反映する。3つとも臓器障害の表れなんだよ。
医学生医学生
救急科の実習で、指導医の先生に「呼吸数は自分で数えろ」と何度も言われた理由がわかりました。
ドクタードクター
良い先生だね。呼吸数はモニターで自動測定されにくく、記録が抜けやすい。では、他の組み合わせも整理しよう。体温を含む組み合わせはどうかな。
医学生医学生
体温はqSOFAに入っていないので外れます。高齢者だと敗血症でも熱が出ないことがありますよね。
ドクタードクター
そう、高齢者や免疫不全者ではむしろ低体温になることもある。だから体温は臓器障害の指標には向かない。脈拍も同様で、頻脈は発熱、疼痛、脱水、不安など何でも起こるから特異性が低い。脈拍と血圧、脈拍と呼吸数の組み合わせは、片方は合っていてももう片方がqSOFAの項目ではないから不正解だ。
医学生医学生
呼吸数の基準も、SIRSは20/分超でqSOFAは22/分以上と、微妙に違うんですね。
ドクタードクター
よく気づいたね。閾値の違いも問われやすいから区別しておこう。それから大事な注意点がある。qSOFAで2項目以上を満たしたら敗血症と診断、ではないということだ。
医学生医学生
スクリーニングであって、診断はSOFAスコアで行う、ということですか。
ドクタードクター
その通り。qSOFA陽性なら敗血症の可能性や死亡リスクが高いと考え、SOFAによる臓器障害の評価、集中治療医への相談、早期治療の開始を検討する。さらにqSOFAは感度が低く、陰性でも敗血症を否定できない。そのため国際ガイドラインのSurviving Sepsis Campaign 2021では、qSOFAを単独でスクリーニングに使うことは推奨されず、SIRSやNEWSなどと組み合わせた総合判断が求められている。
医学生医学生
qSOFAが陰性でも安心せず、全体像を見て判断する必要があるんですね。
ドクタードクター
そう。ついでに敗血症性ショックの定義も押さえておこう。十分な輸液をしても平均血圧65mmHg以上を保つのに血管収縮薬が必要で、かつ血清乳酸値が2mmol/Lを超えるものをいう。意識、呼吸数、血圧という基本のバイタルを丁寧にとることが、敗血症を早期に拾い上げる一番の近道なんだ。

まとめ

Sepsis-3では、敗血症は感染症に対する生体反応の破綻による生命を脅かす臓器障害と定義され、SOFAスコアの2点以上の急上昇で判断します。ICU外でも検査を待たずに敗血症の可能性に気づくための指標がqSOFAで、意識の変容(GCS 15未満)、呼吸数22/分以上、収縮期血圧100mmHg以下の3項目からなり、2項目以上で敗血症を疑います。体温・心拍数・白血球数はかつての基準であるSIRSの項目で、特異度が低いためqSOFAには含まれません。ただしqSOFAは診断基準ではなく感度も低いため、陰性でも敗血症は否定できず、他の指標と組み合わせた総合判断が必要です。呼吸数を含む基本的なバイタルサインを確実に評価する習慣が、敗血症の早期発見と救命につながります。

解答・解説

正解はeです

問われていること

救急外来など集中治療室(ICU)以外の場で、感染症が疑われる患者に対して「敗血症かもしれない」と気づくための簡便な指標、すなわち quick SOFA(qSOFA)の構成項目を問う問題である。

敗血症の定義(Sepsis-3)

2016年に発表された国際的な新定義(Sepsis-3)では、敗血症は「感染症に対する生体反応の調節が破綻し、生命を脅かす臓器障害が生じた状態」と定義された。臓器障害は SOFA(sequential organ failure assessment)スコアで評価し、感染症が疑われ、かつ SOFA スコアがベースラインから2点以上急上昇した場合に敗血症と判断する。SOFA は呼吸(PaO2/FiO2)、凝固(血小板数)、肝(ビリルビン)、循環(平均血圧・血管作動薬)、中枢神経(GCS)、腎(クレアチニン・尿量)の6臓器を評価するため、血液ガスや血液検査が必要である。

qSOFAの位置づけ

そこで、検査結果を待たずにベッドサイドで評価できるスクリーニング指標として qSOFA が提唱された。項目は次の3つで、各1点とする。 ・意識の変容(GCS 15未満) ・呼吸数 22/分以上 ・収縮期血圧 100mmHg以下 2項目以上を満たせば、敗血症(臓器障害)の可能性が高く院内死亡リスクも高いと考え、SOFA スコアによる臓器障害の評価や、集中治療医への相談、早期治療の開始を検討する。qSOFA 陽性そのものは敗血症の診断基準ではない点に注意する。 したがって、意識レベルとともに有用な項目は「血圧と呼吸数」である。体温・脈拍(心拍数)は、かつての敗血症の基準であった SIRS(全身性炎症反応症候群)の項目であり、qSOFA には含まれない。

選択肢考察

  1. ×a.  体温と脈拍

    体温(38℃超または36℃未満)と脈拍(心拍数90/分超)は、いずれも SIRS の診断項目であり、qSOFA の項目ではない。SIRS は感染以外の侵襲(外傷・熱傷・膵炎など)でも容易に陽性となり、臓器障害や予後との関連が弱く特異度が低いことが問題とされ、敗血症の定義から外された。

  2. ×b.  体温と血圧

    血圧(収縮期血圧100mmHg以下)は qSOFA の項目であるが、体温は含まれない。高齢者や免疫不全者の敗血症では発熱を欠いたり、むしろ低体温となったりすることもあり、体温は臓器障害の指標としては不適切とされた。

  3. ×c.  脈拍と血圧

    血圧は qSOFA の項目であるが、脈拍は含まれない。頻脈は SIRS の項目であり、発熱・疼痛・脱水・不安などさまざまな要因で生じるため、臓器障害を反映する指標としての特異性が低い。なお、心拍数を収縮期血圧で割ったショック指数は循環不全の評価に用いられるが、qSOFA とは別の指標である。

  4. ×d.  脈拍と呼吸数

    呼吸数(22/分以上)は qSOFA の項目であるが、脈拍は含まれない。SIRS では呼吸数の基準は20/分超(またはPaCO2 32Torr未満)であり、qSOFA の22/分以上とは閾値が異なる点も区別して覚えておく。

  5. ○e.  血圧と呼吸数

    qSOFA は、意識の変容(GCS 15未満)、呼吸数22/分以上、収縮期血圧100mmHg以下の3項目からなる。血圧低下は循環不全を、呼吸数増加は呼吸不全や代謝性アシドーシスに対する呼吸性代償を、意識変容は中枢神経の機能障害(脳灌流低下や敗血症性脳症)を反映し、いずれもベッドサイドで即座に評価できる。2項目以上を満たす場合は敗血症を強く疑い、SOFA スコアによる臓器障害の評価へ進む。

SIRS と qSOFA の比較

SIRS(2項目以上で陽性) ・体温 38℃超 または 36℃未満 ・心拍数 90/分超 ・呼吸数 20/分超 または PaCO2 32Torr未満 ・白血球数 12,000/μL超 または 4,000/μL未満、あるいは未熟顆粒球10%超 qSOFA(2項目以上で敗血症を疑う) ・意識の変容(GCS 15未満) ・呼吸数 22/分以上 ・収縮期血圧 100mmHg以下

定義の変遷

かつて(1991年の基準、Sepsis-1)は「感染症によって SIRS を呈した状態」を敗血症とし、重症敗血症・敗血症性ショックと段階的に分類していた。しかし SIRS は特異度が低く、予後との相関も不十分であったため、2016年の Sepsis-3 で臓器障害を中心とした定義に改められ、「重症敗血症」という用語は廃止された。日本版敗血症診療ガイドラインも同年にこの定義を取り入れた。

敗血症性ショック(Sepsis-3)

敗血症のうち、十分な輸液負荷にもかかわらず平均血圧65mmHg以上を維持するために血管収縮薬を必要とし、かつ血清乳酸値が2mmol/L(18mg/dL)を超えるものをいう。

qSOFA の限界と現在の扱い

qSOFA は特異度は比較的高い一方、感度が低く、陰性でも敗血症を否定できない。このため、Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2021 では、敗血症のスクリーニングに qSOFA を単独で用いることは推奨しないとされ、SIRS や NEWS(National Early Warning Score)などとの併用・総合判断が求められている。それでも qSOFA の3項目は、臓器障害の徴候を示すベッドサイド所見として重要である。

POINT

・qSOFA=意識の変容(GCS 15未満)、呼吸数22/分以上、収縮期血圧100mmHg以下。2項目以上で敗血症を疑う。 ・体温・心拍数・白血球数は SIRS の項目であり、qSOFA には含まれない。 ・Sepsis-3:敗血症=感染症+SOFA スコア2点以上の急上昇(臓器障害)。 ・qSOFA は診断基準ではなくスクリーニング指標であり、感度が低いため単独での除外には使えない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。