理想の5gと現実の10gのあいだ―食事摂取基準が示す食塩目標量の決め方
第112回医師国家試験 F問題 第9問
国試問題にチャレンジ
2015年の日本人の食事摂取基準に定められている成人の1日ナトリウムの目標量(食塩相当量)はどれか。
- a.男性6g未満女性6g未満
- b.男性7g未満女性7g未満
- c.男性7g未満女性8g未満
- d.男性8g未満女性7g未満
- e.男性10g未満女性10g未満
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生まとめ
2015年版の日本人の食事摂取基準では、成人の食塩相当量の目標量は男性8g/日未満、女性7g/日未満と定められていました。目標量は生活習慣病の発症予防のための指標で、WHOが推奨する5g/日未満という理想値と、日本人の実際の摂取量(平均約10g/日前後)の中間をとり、実行可能性も考慮して設定されています。6g/日未満は高血圧患者や慢性腎臓病の減塩目標であり、健康な成人一般の目標量とは区別が必要です。基準は改定ごとに引き下げられ、2020年版以降は男性7.5g/日未満、女性6.5g/日未満となっているため、版ごとの値とその背景を理解しておくことが、試験対策にも日常の減塩指導にも役立ちます。
解答・解説
正解はdです
日本人の食事摂取基準(2015年版)で、成人のナトリウム(食塩相当量)の目標量がいくつに定められていたかを問う知識問題である。
食事摂取基準と目標量
日本人の食事摂取基準は、健康な個人や集団がエネルギーと各栄養素をどれだけ摂取すればよいかを示す基準である。厚生労働省が策定し、5年ごとに改定される。指標には、推定平均必要量・推奨量・目安量・耐容上限量・目標量がある。このうち目標量は、生活習慣病の発症予防を目的に「当面の目標」として定める量である。
ナトリウムの目標量の考え方
ナトリウムは、欠乏を防ぐのに必要な量がごくわずかである(成人の推定平均必要量は食塩相当量で約1.5g/日)。そのため、実際の摂取では過剰摂取による高血圧、ひいては脳卒中や心血管疾患のリスクのほうが問題になる。望ましいのはWHOが推奨する5g/日未満程度だが、日本人の実際の摂取量(平均で約10g/日前後)とかけ離れている。そこで、実現可能性も考えて、摂取量の分布の中間値と理想値の間に目標量が設定された。 2015年版の成人の目標量は、男性8.0g/日未満、女性7.0g/日未満である。2010年版(男性9.0g/日未満、女性7.5g/日未満)より引き下げられた。
選択肢考察
- ×a. 男性6g未満女性6g未満
誤り。6g/日未満は、日本高血圧学会の高血圧治療ガイドラインが高血圧患者に推奨する減塩目標である。慢性腎臓病(CKD)診療でも、3g/日以上6g/日未満が目安とされる。2020年版以降の食事摂取基準でも、高血圧・CKDの重症化予防には6g/日未満とされている。健康な成人一般の目標量ではない。
- ×b. 男性7g未満女性7g未満
誤り。2015年版では、男女で異なる目標量が定められていた。女性の7g/日未満は合っているが、男性の目標量は8g/日未満である。
- ×c. 男性7g未満女性8g未満
誤り。男女の値が逆である。体格が大きくエネルギー摂取量も多い男性のほうが、目標量は高く設定されている(男性8g/日未満、女性7g/日未満)。
- ○d. 男性8g未満女性7g未満
正しい。2015年版で、18歳以上の成人の食塩相当量の目標量は、男性8.0g/日未満、女性7.0g/日未満とされた。理想的な摂取量(WHO推奨の5g/日未満)と、当時の日本人の摂取量の中間値との間をとり、実行可能性も考えて設定された値である。
- ×e. 男性10g未満女性10g未満
誤り。10g/日は、日本人の平均的な食塩摂取量に近い値で、目標量としては高すぎる。かつての「第六次改定日本人の栄養所要量」(2000年)では成人の食塩摂取を10g/日未満としていたが、現在の基準はこれよりかなり低い。
食塩相当量の目標量(成人)の変遷
・2010年版: 男性9.0g/日未満、女性7.5g/日未満 ・2015年版: 男性8.0g/日未満、女性7.0g/日未満(本問) ・2020年版: 男性7.5g/日未満、女性6.5g/日未満。高血圧・CKDの重症化予防には6.0g/日未満とされた。 ・2025年版: 成人の目標量は2020年版と同じ値に据え置かれている。 改定のたびに基準は厳しくなっている。現在の試験では2020年版以降の値(男性7.5g未満、女性6.5g未満)が問われるため注意が必要である。
ナトリウムと食塩相当量の換算
食塩相当量(g)=ナトリウム(mg)×2.54÷1000 ナトリウム1gは食塩約2.54gに相当する。
関連する基準
・WHO: 成人の食塩摂取は5g/日未満(ナトリウム2g/日未満)を推奨している。 ・高血圧治療ガイドライン(日本高血圧学会): 高血圧患者の減塩目標は6g/日未満である。 ・カリウム: ナトリウムの排泄を促して血圧を下げる方向に働くため、食事摂取基準では摂取量を増やす方向の目標量が設定されている。
日本人の摂取状況
国民健康・栄養調査では、成人の食塩摂取量は長期的に減少しているものの、平均で約10g/日前後(男性は女性より多い)であり、目標量を上回っている。
POINT
・2015年版食事摂取基準の成人の食塩目標量は、男性8g/日未満、女性7g/日未満である。 ・2020年版以降は男性7.5g/日未満、女性6.5g/日未満に引き下げられた。 ・高血圧患者・CKD患者の減塩目標は6g/日未満、WHOの推奨は5g/日未満である。 ・目標量は生活習慣病の発症予防のための指標で、男性のほうが高く設定されている。
