StudyMed医師国家試験

毒を制する「相棒」を見抜け―薬物と拮抗薬、作用機序で覚える組合せ

第111回医師国家試験 I問題 第26問

国試問題にチャレンジ

第111回 I問題 第26問

薬物とその拮抗薬との組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.アセトアミノフェン ―― アセチルシステイン
  2. b.バルビツール酸 ―― フルマゼニル
  3. c.ワルファリン ―― ヒドロキソコバラミン
  4. d.フェンタニル ―― エタノール
  5. e.ヘパリン ―― プロタミン

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、中毒や過量投与のときに作用を打ち消す拮抗薬、いわゆる解毒薬の組合せを問う問題だ。丸暗記に頼るより、拮抗薬が「どうやって」作用を打ち消すのかを考えると、正誤がすっきり判断できるよ。
医学生医学生
薬理学の講義で、拮抗薬の一覧表を必死に覚えた記憶があります。でも、仕組みまではあまり意識していませんでした。
ドクタードクター
じゃあ整理しよう。拮抗のしかたには大きく4つの型がある。同じ受容体を奪い合う受容体拮抗、薬物と直接くっついて不活化する結合型、薬物によって不足したものを補う補充型、そして毒性のある代謝物ができるのを妨げる代謝阻害型だ。
医学生医学生
受容体拮抗はナロキソンやフルマゼニルですね。直接結合するのは……ヘパリンとプロタミンでしょうか。
ドクタードクター
その通り。ヘパリンは強い陰性荷電をもつ多糖で、アンチトロンビンの働きを強めてトロンビンや活性化第X因子を阻害する。プロタミンは魚の精子に由来する陽性荷電のタンパクで、ヘパリンと静電的に結合して抗凝固作用を失わせる。心臓血管外科で人工心肺を外すときに使われる、正しい組合せだ。
医学生医学生
臨床実習の心臓外科で、手術の最後に麻酔科の先生がプロタミンをゆっくり入れていたのを見ました。
ドクタードクター
ゆっくり入れるのには理由がある。プロタミンは血圧低下やアナフィラキシーを起こすことがあるし、入れすぎるとそれ自体が抗凝固作用を示すんだ。また低分子ヘパリンは部分的にしか中和できず、フォンダパリヌクスはほとんど中和できない点も覚えておこう。では次、アセトアミノフェンとアセチルシステインはどうかな。
医学生医学生
アセトアミノフェンの過量服薬で肝障害が起こるのは知っていますが、アセチルシステインがどう効くのかは曖昧です。
ドクタードクター
ここは補充型の代表だ。アセトアミノフェンは大部分がグルクロン酸抱合や硫酸抱合で無毒化されるけれど、一部はシトクロムP450で酸化されてNAPQIという肝毒性の強い代謝物になる。通常量なら肝細胞内のグルタチオンがすぐにNAPQIを無毒化する。ところが大量に飲むとグルタチオンが枯渇して、余ったNAPQIが肝細胞を壊死させるんだ。
医学生医学生
アセチルシステインはシステインを供給して、グルタチオンを補充するわけですね。だからこちらも正しい組合せ。
ドクタードクター
正解。服用後早く、目安としておよそ8時間以内に始めるほど肝障害を防ぐ効果が高い。市販の感冒薬にも広く含まれているから、救急で意外と出会う中毒なんだ。では残りの3つを見ていこう。バルビツール酸とフルマゼニルは?
医学生医学生
どちらもGABA-A受容体に関係する薬なので、効きそうな気がしてしまいます。
ドクタードクター
そこがひっかけだ。フルマゼニルはGABA-A受容体上のベンゾジアゼピン結合部位に競合的に結合して、ベンゾジアゼピン系薬の作用を打ち消す。バルビツール酸系薬は同じ受容体でも別の部位に作用するから、フルマゼニルでは拮抗できない。実はバルビツール酸系には特異的な拮抗薬がなく、気道確保や人工呼吸などの全身管理が中心になる。フェノバルビタールなら尿のアルカリ化や活性炭の反復投与、重症なら血液浄化も考える。
医学生医学生
同じ受容体でも結合部位が違えば拮抗できない、ということですね。ワルファリンの拮抗薬はビタミンKだったと思うので、ヒドロキソコバラミンは違いますよね。
ドクタードクター
その通り。ワルファリンはビタミンKエポキシド還元酵素を阻害して、ビタミンK依存性凝固因子である第II・VII・IX・X因子の活性化を抑える。だから拮抗薬はビタミンKだ。ただし効果が出るには凝固因子が新たに作られるのを待つ必要があるので、重篤な出血ではプロトロンビン複合体製剤を併用する。ヒドロキソコバラミンはシアンと結合してシアノコバラミンとして尿に排泄させる、シアン中毒の解毒薬なんだ。
医学生医学生
最後のフェンタニルとエタノールは、明らかに変な組合せに見えます。フェンタニルはオピオイドなので、ナロキソンのはずです。
ドクタードクター
そう。フェンタニルはμオピオイド受容体の作動薬で、過量では意識障害、呼吸抑制、縮瞳を起こす。ナロキソンで拮抗するけれど、作用時間がオピオイドより短いことがあるから、投与後も呼吸抑制が再び出ないか観察を続けることが大切だ。一方エタノールは代謝阻害型の例で、アルコール脱水素酵素をメタノールやエチレングリコールと奪い合い、ギ酸やシュウ酸といった有毒な代謝物ができるのを抑える。同じ目的でホメピゾールも使われる。
医学生医学生
4つの型に当てはめると、どの組合せがおかしいのかが筋道立てて分かりますね。救急科の実習で中毒患者さんが来たときにも役立ちそうです。
ドクタードクター
ぜひ周辺の組合せも一緒に押さえておこう。直接経口抗凝固薬では、ダビガトランにイダルシズマブ、抗Xa薬にアンデキサネット アルファがある。ロクロニウムにはスガマデクス、有機リンにはアトロピンとプラリドキシム、鉄にはデフェロキサミン、ジギタリスには抗ジゴキシン抗体、メトヘモグロビン血症にはメチレンブルーだ。逆に、バルビツール酸系や三環系抗うつ薬、パラコートのように拮抗薬がない中毒もある。臨床では「拮抗薬があるか」を考えると同時に、呼吸と循環の管理を最優先にすることを忘れないでほしい。
医学生医学生
拮抗薬はあくまで補助で、基本はABCの安定化なんですね。
ドクタードクター
その通り。拮抗薬の作用時間や副作用まで意識できれば、現場で安全に使いこなせるよ。

まとめ

拮抗薬は、受容体を奪い合う型(オピオイドにナロキソン、ベンゾジアゼピン系にフルマゼニル)、薬物と直接結合する型(ヘパリンにプロタミン)、不足したものを補う型(ワルファリンにビタミンK、アセトアミノフェンにアセチルシステイン)、毒性代謝物の生成を妨げる型(メタノールにエタノールやホメピゾール)に整理できます。アセチルシステインはグルタチオンを補ってNAPQIを無毒化し、プロタミンは陽性荷電で陰性荷電のヘパリンと結合して中和するため、この2つが正しい組合せです。フルマゼニルはバルビツール酸系には無効でバルビツール酸系には特異的拮抗薬がなく、ヒドロキソコバラミンはシアン中毒の解毒薬です。作用機序から拮抗薬を理解しておくと、ひっかけの組合せも見抜け、救急の中毒診療で全身管理と並行して適切な解毒薬を選ぶ力につながります。

解答・解説

正解はa, eです

中毒や過量投与、出血などの副作用に対して、作用を打ち消すために使う薬物(拮抗薬・解毒薬)の組合せを問う問題である。 拮抗薬の作用の仕方には、大きく次の型がある。 ・同じ受容体を奪い合って作用を打ち消すもの(受容体拮抗):オピオイドに対するナロキソン、ベンゾジアゼピン系に対するフルマゼニル ・薬物と直接結合して不活化するもの:ヘパリンに対するプロタミン、ロクロニウムに対するスガマデクス、シアンに対するヒドロキソコバラミン ・薬物の作用で不足したものを補うもの:ワルファリンに対するビタミンK、アセトアミノフェンに対するアセチルシステイン(グルタチオンを補う) ・毒性のある代謝物ができるのを妨げるもの:メタノールに対するエタノール 各選択肢について、左の薬物の作用機序と、右の薬物が本来どの中毒に使われるかを照らし合わせれば正誤を判断できる。アセトアミノフェンとアセチルシステイン、ヘパリンとプロタミンが正しい組合せである。

選択肢考察

  1. ○a.  アセトアミノフェン ―― アセチルシステイン

    アセトアミノフェンは市販の解熱鎮痛薬・総合感冒薬に広く含まれ、急性薬物中毒の原因として多い。大部分はグルクロン酸抱合・硫酸抱合で無毒化されるが、一部は肝の薬物代謝酵素(シトクロムP450、主にCYP2E1)で酸化され、強い肝毒性をもつ N-アセチル-p-ベンゾキノンイミン(NAPQI)になる。通常量ではNAPQIは肝細胞内のグルタチオンと結合してすぐに無毒化される。過量に服用するとグルタチオンが使い尽くされ、余ったNAPQIが肝細胞を傷害し、肝細胞壊死(急性肝不全)を起こす。アセチルシステインはグルタチオンの材料(システイン)を供給してグルタチオンを補い、NAPQIの無毒化を回復させる。服用後早期(目安としておよそ8時間以内)に投与を始めるほど肝障害を防ぐ効果が高い。したがって正しい組合せである。

  2. ×b.  バルビツール酸 ―― フルマゼニル

    フルマゼニルはベンゾジアゼピン受容体(GABA-A受容体上の結合部位)に結合してベンゾジアゼピン系薬(ジアゼパム、ミダゾラムなど)の作用を競合的に打ち消す薬である。バルビツール酸系薬はGABA-A受容体の別の部位に作用するため、フルマゼニルでは拮抗できない。バルビツール酸系薬には特異的な拮抗薬は存在せず、中毒時は気道確保・人工呼吸などの呼吸循環管理が中心となる。フェノバルビタールでは尿のアルカリ化(排泄促進)、活性炭の反復投与、重症例での血液浄化が考慮される。誤りである。

  3. ×c.  ワルファリン ―― ヒドロキソコバラミン

    ワルファリンはビタミンKエポキシド還元酵素を阻害して還元型(活性型)ビタミンKの再生を妨げ、肝でのビタミンK依存性凝固因子(第II・VII・IX・X因子)の活性化を抑えることで抗凝固作用を示す。したがって拮抗薬はビタミンK(ビタミンK2製剤であるメナテトレノンの静注など)である。ビタミンKは凝固因子の新たな合成を待つため効果発現に時間がかかるので、重篤な出血や緊急手術では凝固因子そのものを補うプロトロンビン複合体製剤を併用する。ヒドロキソコバラミン(ビタミンB12の一種)はシアンと結合して無毒のシアノコバラミンとして尿中に排泄させる、シアン中毒の解毒薬である。誤りである。

  4. ×d.  フェンタニル ―― エタノール

    フェンタニルはμオピオイド受容体の作動薬(合成麻薬性鎮痛薬)であり、過量では意識障害、呼吸抑制、縮瞳を起こす。拮抗薬はμ受容体に強く結合して作動薬を追い出すナロキソンである。ナロキソンはフェンタニルなどより作用時間が短いことがあり、投与後に呼吸抑制が再び現れないか観察を続ける必要がある。エタノールはアルコール脱水素酵素への親和性がメタノールやエチレングリコールより高く、これらが有毒な代謝物(ギ酸、シュウ酸など)に変わるのを競合的に抑えるため、メタノール中毒・エチレングリコール中毒の治療に用いられる(同じ目的でホメピゾールも用いる)。誤りである。

  5. ○e.  ヘパリン ―― プロタミン

    ヘパリンは強い陰性荷電をもつ多糖で、アンチトロンビンに結合してその働きを大きく強め、トロンビンや活性化第X因子を阻害する。プロタミンは魚類の精子由来の塩基性(陽性荷電)タンパクで、陰性荷電のヘパリンと静電的に結合して複合体をつくり、ヘパリンの抗凝固作用を失わせる。体外循環を伴う心臓手術の終了時などに用いられる。なお低分子ヘパリンに対しては中和が部分的にとどまり、フォンダパリヌクスはほとんど中和できない。過量投与ではプロタミン自体が抗凝固作用を示すこと、アナフィラキシーや血圧低下に注意が必要である。正しい組合せである。

主な薬物・中毒と拮抗薬(解毒薬)の整理

・ベンゾジアゼピン系 ― フルマゼニル ・オピオイド(モルヒネ、フェンタニルなど) ― ナロキソン ・アセトアミノフェン ― アセチルシステイン ・ワルファリン ― ビタミンK、プロトロンビン複合体製剤 ・ヘパリン ― プロタミン ・ダビガトラン(直接トロンビン阻害薬) ― イダルシズマブ ・抗Xa薬(リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン) ― アンデキサネット アルファ ・非脱分極性筋弛緩薬 ― ネオスチグミン(アトロピン併用)、ロクロニウム・ベクロニウムにはスガマデクス ・有機リン ― アトロピン、プラリドキシム(PAM) ・シアン ― ヒドロキソコバラミン、亜硝酸化合物+チオ硫酸ナトリウム ・メタノール、エチレングリコール ― ホメピゾール、エタノール ・一酸化炭素 ― 酸素(高濃度酸素、高気圧酸素療法) ・鉄 ― デフェロキサミン ・鉛、ヒ素、水銀などの重金属 ― ジメルカプロール(BAL)、エデト酸カルシウム二ナトリウム(鉛)など ・ジギタリス ― 抗ジゴキシン抗体(Fab) ・メトヘモグロビン血症(亜硝酸塩など) ― メチレンブルー ・ヘビ毒(マムシなど) ― 抗毒素血清

拮抗薬が存在しない代表例

バルビツール酸系薬、三環系抗うつ薬(ただし不整脈・QRS延長には炭酸水素ナトリウムを用いる)、パラコートなど。これらは全身管理と排泄促進が治療の中心となる。

POINT

・アセトアミノフェン中毒にはアセチルシステイン(グルタチオンを補いNAPQIを無毒化) ・ヘパリンにはプロタミン(陽性荷電で陰性荷電のヘパリンと結合) ・フルマゼニルはベンゾジアゼピン系の拮抗薬で、バルビツール酸系には拮抗薬がない ・ワルファリンにはビタミンK、ヒドロキソコバラミンはシアン中毒の解毒薬 ・オピオイドにはナロキソン、エタノールはメタノール・エチレングリコール中毒に用いる

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。