StudyMed医師国家試験

診察室にない器具はどれ?―器具の形から婦人科外来の流れを読み解く

第111回医師国家試験 H問題 第18問

国試問題にチャレンジ

第111回 H問題 第18問

器具の写真(①~⑤)を別に示す。  婦人科外来の診察で用いない器具はどれか。

第111回 H問題 第18問の問題画像
  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は写真で器具を見分ける問題だ。ポイントは、器具の名前を暗記することよりも、それぞれが婦人科外来の診察のどの場面で使われるかをイメージすること。外来では腟鏡で腟と子宮腟部を見て、内診をして、必要なら細胞診やコルポスコピー、組織診、子宮内の操作へと進む。その流れに当てはまらない器具を探そう。
医学生医学生
写真を見ると、くちばしみたいな形の器具はすぐわかりました。クスコ式腟鏡ですよね。
ドクタードクター
正解。2枚の羽根を閉じたまま腟に入れて、開いたらネジで固定する。手を離しても腟壁を広げたままにできるのが強みで、外来ではまず最初に手に取る器具だ。腟壁や子宮腟部の視診、帯下の性状の確認、子宮頸部細胞診の採取など、ほぼすべての診察の入り口になる。
医学生医学生
臨床実習で産婦人科を回ったとき、内診台の横に何本も並んでいました。サイズが違うものもあった気がします。
ドクタードクター
そうだね、患者さんの体格などに合わせて選ぶ。では、細長くて先がわずかに曲がった金属の棒は何だと思う?
医学生医学生
耳鼻科の器具みたいにも見えますが……子宮の中に入れるものでしょうか。
ドクタードクター
いい推測だ。あれは子宮ゾンデ、子宮消息子とも呼ぶ。外子宮口からそっと入れて、子宮腔の長さや子宮の傾き・屈曲の方向を確かめる。内膜の細胞診や組織診、子宮内避妊具の挿入など、子宮内に器具を入れる前に穿孔を防ぐ目的で使うんだ。最近は経腟超音波で子宮の大きさや向きがわかるので、出番は減ってきているけどね。
医学生医学生
先端に小さなあごがついた長い鉗子は、組織をつまみ取るものですか。
ドクタードクター
その通り、生検鉗子、試験切除鉗子だ。子宮頸部細胞診で異常が出たら、コルポスコピーで子宮腟部を拡大して観察し、病変が最も強く疑われる場所から小さく組織を切り取る。いわゆる狙い組織診、パンチ生検だね。これも外来で行う検査だ。
医学生医学生
病理の講義で、細胞診はスクリーニング、確定診断は組織診と習ったのとつながりました。
ドクタードクター
まさにそう。もう一つ、先端が細く鋭い鉤になった長い把持鉗子はわかるかな。
医学生医学生
鉤があるので、何かを引っ掛けて引っ張る器具ですよね。手術用でしょうか。
ドクタードクター
そこが迷いやすいところ。あれはマルチン単鉤鉗子で、子宮腟部、たとえば頸部の前唇をつかんで子宮を牽引・固定する。子宮の屈曲をまっすぐにしてゾンデや内膜検査の器具を安全に入れたり、生検のときに子宮腟部を動かないようにしたりと、外来でもしっかり使う器具なんだ。
医学生医学生
ということは、残る鞍のように湾曲した幅広い板のついた鉤が、外来では使わないものですね。
ドクタードクター
正解。あれは鞍状鉤で、開腹手術のときに創縁に掛けて腹壁を引き、術野を広げるための筋鉤の仲間だ。お腹を切らない外来診察では出番がない。手術室の器械台に並ぶ器具だね。
医学生医学生
外科の手術見学で、助手の先生がずっと引いていた鉤が似た形でした。外来と手術室で器具を分けて考えればいいんですね。
ドクタードクター
そういう整理がいちばん実践的だ。発展として、外来器具の仲間も押さえておこう。子宮腟部をつかむ鉗子には先端が2本のミュゾー双鉤鉗子もあるし、頸管を広げるヘガール頸管拡張器、内膜組織を掻き取るキュレットもある。腟鏡には前後2枚を別々に使うジモン腟鏡があって、こちらは手術や処置で使うことが多い。
医学生医学生
子宮内の操作で、特に気をつけることはありますか。
ドクタードクター
一番怖いのは子宮穿孔だ。事前に内診や経腟超音波で子宮の大きさと前後屈の向きを確認し、単鉤鉗子で子宮腟部を把持・牽引して子宮の軸をまっすぐにしてから器具を入れる。それから、妊娠の可能性がある人には子宮内操作をしないことも大原則だよ。器具の名前を、こうした手順とセットで覚えておくと実習でも役に立つ。

まとめ

婦人科外来では、クスコ式腟鏡による腟鏡診を入り口に、内診、細胞診、コルポスコピー下の生検鉗子による狙い組織診、子宮ゾンデやマルチン単鉤鉗子を使った子宮内操作などが行われます。一方、鞍状鉤は開腹手術で腹壁を牽引して術野を確保する手術用の鉤であり、外来診察では用いません。子宮内操作では、内診や経腟超音波で子宮の大きさと向きを確認し、単鉤鉗子で子宮腟部を固定して穿孔を防ぐこと、妊娠の可能性がある場合は行わないことが重要です。器具を形だけでなく診察の流れの中で位置づけて理解すると、写真問題だけでなく臨床実習での介助や検査の理解にも直結します。

解答・解説

正解はaです

問われていること

婦人科外来では、腟鏡診(腟鏡で腟と子宮腟部を観察する)、内診(双合診)、子宮頸部・内膜の細胞診、コルポスコピー(腟拡大鏡診)とその下での狙い組織診、子宮内操作などが行われる。本問は、写真の器具がそれぞれ何で、どの場面で使うかを判別させる問題である。

写真の器具の判別

①:柄の先端に鞍のように湾曲した幅広い板が付いた鉤で、鞍状鉤である。開腹手術で腹壁を引いて術野を広げるための器具である。 ②:くちばし状の2枚の羽根をネジで開いて固定する腟鏡で、クスコ式腟鏡である。 ③:細長く、先端がわずかに曲がった金属棒で、子宮ゾンデ(子宮消息子)である。 ④:先端に小さな切除用のあごが付いた長い鉗子で、子宮腟部の組織を採取する生検鉗子(試験切除鉗子)である。 ⑤:先端が細い鉤になった長い把持鉗子で、マルチン単鉤鉗子である。 ②〜⑤はいずれも外来での腟鏡診や子宮腟部・子宮腔内の検査・処置に用いるが、①の鞍状鉤は手術室で開腹術に用いる器具であり、外来診察では使わない。よって正解は a である。

選択肢考察

  1. ○a.  ①

    ①は鞍状鉤である。鞍のように湾曲した幅広のブレードを創縁に掛けて腹壁を牽引し、開腹手術中の視野を確保するための手術用器具(筋鉤の一種)である。腹壁を切開しない外来の婦人科診察では用いることがないため、本問の「用いない器具」に当たる。

  2. ×b.  ②

    ②はクスコ式腟鏡である。2枚の羽根を閉じた状態で腟内に挿入し、開いてネジで固定することで、検者が手を離しても腟壁を広げたまま保持できる。腟壁・子宮腟部の視診、帯下の性状確認、子宮頸部細胞診や帯下の培養検体採取、コルポスコピーなど、婦人科外来で最も頻繁に使う器具の一つである。

  3. ×c.  ③

    ③は子宮ゾンデ(子宮消息子)である。外子宮口から子宮腔内へ静かに挿入し、子宮腔の長さ(子宮腔長)や子宮の傾き・屈曲の方向を確認するのに用いる。子宮内膜細胞診・組織診、子宮内避妊具の挿入などの子宮内操作の前に、子宮穿孔を避ける目的で使われる外来器具である。近年は経腟超音波検査で子宮の大きさや方向を把握できるため、使用頻度は減っている。

  4. ×d.  ④

    ④は生検鉗子(試験切除鉗子)である。子宮頸部細胞診で異常があった場合などに、コルポスコピーで子宮腟部を拡大観察し、病変が最も強く疑われる部位から組織を小さく切り取る狙い組織診(パンチ生検)に用いる。外来で施行される検査の器具である。

  5. ×e.  ⑤

    ⑤はマルチン単鉤鉗子である。先端の鋭い単鉤で子宮腟部(子宮頸部前唇など)を把持し、子宮を牽引・固定するのに用いる。子宮の屈曲を直線化して子宮ゾンデや内膜細胞診・組織診の器具を安全に挿入するためや、生検時に子宮腟部を固定するために、外来でも使われる。

婦人科外来で用いる主な器具

・腟鏡:クスコ式腟鏡(自己保持型で外来診察の基本)、ジモン腟鏡(前後の2枚を別々に用いる。手術や処置で使用) ・把持鉗子:マルチン単鉤鉗子、ミュゾー双鉤鉗子(子宮腟部の把持・牽引) ・子宮ゾンデ:子宮腔長・方向の確認 ・ヘガール頸管拡張器:子宮頸管の拡張 ・細胞診器具:綿棒、ヘラ、ブラシ(子宮頸部)、内膜細胞診用器具(子宮内膜) ・生検鉗子:コルポスコピー下の狙い組織診 ・キュレット(鋭匙):子宮内膜組織診

手術で用いる主な鉤

・鞍状鉤、腹壁鉤、筋鉤などは開腹術の術野展開用であり、外来診察では用いない。

子宮内操作の安全な手順

子宮内膜細胞診・組織診などの子宮内操作では子宮穿孔の危険があるため、事前に内診や経腟超音波で子宮の大きさ・前後屈の方向を確認し、マルチン単鉤鉗子などで子宮腟部を把持・牽引して子宮の軸を直線化・固定してから器具を挿入する。妊娠の可能性がある場合は子宮内操作を行わない。

POINT

・婦人科外来で使う器具:クスコ式腟鏡、子宮ゾンデ、生検鉗子(狙い組織診)、マルチン単鉤鉗子など。 ・鞍状鉤は開腹手術で腹壁を牽引する器具であり、外来診察では用いない。 ・子宮内操作では子宮の大きさ・方向を確認し、単鉤鉗子で子宮腟部を把持・固定して穿孔を防ぐ。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。