StudyMed医師国家試験

溶接の光と雪山の照り返し―紫外線が狙う「眼の表面」を見抜く

第111回医師国家試験 G問題 第3問

国試問題にチャレンジ

第111回 G問題 第3問

紫外線が原因となるのはどれか。

  1. a.白血病
  2. b.熱中症
  3. c.電気性眼炎
  4. d.消化管出血
  5. e.アレルギー性結膜炎

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、紫外線がどんな健康障害を起こすかを問う問題だ。着眼点は2つ。紫外線がからだのどこまで届くのか、そして紫外線が電離放射線ではないということ。この2点を押さえれば、選択肢はかなりすっきり整理できるよ。
医学生医学生
紫外線も「放射線」の仲間だと思っていたので、白血病が少し気になりました。
ドクタードクター
そこが最初の落とし穴だね。紫外線は可視光より波長が短い電磁波だけど、物質を電離させる力はもたない非電離放射線に分類される。X線やγ線のような電離放射線は組織の奥まで透過してDNAを直接傷つけ、骨髄にも影響して白血病の原因になる。一方、紫外線は皮膚や眼の表層でほとんど吸収されてしまうから、骨髄には届かないんだ。
医学生医学生
衛生学の講義で、原爆被爆者で白血病が増えたと習いました。あれは電離放射線の話なんですね。
ドクタードクター
その通り。白血病の危険因子としては、電離放射線のほか、ベンゼン、アルキル化薬などの抗癌薬、HTLV-1、Down症候群などが知られている。紫外線は含まれないと覚えておこう。では、紫外線が届く場所を踏まえると、影響が出るのはどこかな。
医学生医学生
皮膚と眼ですね。眼なら、選択肢の中では電気性眼炎とアレルギー性結膜炎が候補になりそうです。
ドクタードクター
いい絞り込みだ。正解は電気性眼炎。強い紫外線、主にUVBやUVCが角膜上皮に吸収されて上皮細胞が傷害される、急性の表層角膜炎なんだ。紫外線角膜炎ともよばれるよ。
医学生医学生
名前に「電気」とあるのはなぜですか。電流で起こる病気かと思っていました。
ドクタードクター
電気溶接のアーク光が代表的な原因だからだよ。ほかに殺菌灯、それから雪面や水面に反射した日光でも起こる。雪山で起こるものは雪眼、いわゆる雪目だね。特徴的なのは、曝露の直後には症状がなく、半日近くたってから強い眼痛、異物感、まぶしさ、流涙、充血、眼瞼のけいれんが両眼に出てくることだ。
医学生医学生
溶接作業をした日の夜中に急に眼が痛くなって救急外来に来る、というイメージでしょうか。
ドクタードクター
まさにそう。救急当直でよく出会うパターンだ。フルオレセイン染色をすると角膜に点状の表層角膜炎がみられる。角膜上皮は再生が速いから、眼軟膏や眼帯などで1〜2日ほどで治ることが多い。予防は遮光眼鏡やゴーグルの着用だね。
医学生医学生
アレルギー性結膜炎も眼の表面の病気ですが、紫外線とは関係ないんですね。
ドクタードクター
そう。アレルギー性結膜炎は花粉やダニ・ハウスダストに対するⅠ型アレルギーで、強いかゆみが前面に出るのが特徴だ。痛みとまぶしさが主体の電気性眼炎とは、症状の質も原因もまったく違う。
医学生医学生
熱中症は、夏の日差しの下で起こるので紫外線も関係しそうに感じます。
ドクタードクター
そう感じる人は多いね。でも熱中症は、高温多湿や激しい運動で熱の産生と放散のバランスが崩れ、体温調節が破綻して起こるもの。日射は誘因になるけれど、体を温めるのは主に赤外線や気温・湿度で、紫外線が原因ではないんだ。消化管出血も、紫外線が消化管に届かない以上、関係しない。潰瘍や静脈瘤、腫瘍などが原因だね。
医学生医学生
紫外線は表面にしか届かないから、表面の病気だけを考えればいいということですね。
ドクタードクター
その理解でいい。最後に整理しておこう。紫外線の障害は急性と慢性に分けると覚えやすい。急性は皮膚の日焼けと眼の電気性眼炎、慢性は皮膚の光老化・日光角化症・皮膚癌、眼の白内障や翼状片だ。さらに、色素性乾皮症やポルフィリン症、薬剤性光線過敏症、全身性エリテマトーデスの皮疹のように、紫外線で誘発・増悪する病気もある。
医学生医学生
皮膚科の実習で、SLEの患者さんに日光を避けるよう指導していたのを思い出しました。
ドクタードクター
良い経験だね。ちなみに赤外線もガラス工白内障の原因として知られている。波長ごとに届く深さと障害の種類を結びつけて覚えると、物理的要因による疾患の問題は一気に解きやすくなるよ。

まとめ

紫外線は非電離放射線であり、皮膚や眼の表層でほぼ吸収されるため、障害は皮膚・角膜・結膜・水晶体に限られます。電気性眼炎は溶接のアーク光や殺菌灯、雪面の反射(雪眼)などで生じる急性の紫外線角膜炎で、曝露から数時間後に両眼の強い眼痛・羞明・流涙が出現し、多くは1〜2日で治癒します。白血病は電離放射線やベンゼン、抗癌薬などが原因であり、熱中症は熱バランスの破綻、アレルギー性結膜炎はⅠ型アレルギーによるもので、いずれも紫外線は原因になりません。紫外線の障害は、急性(日焼け・電気性眼炎)と慢性(光老化・皮膚癌・白内障・翼状片)に分けて整理しましょう。「どこまで届くか」という視点は、職業性疾患や環境要因による疾患を理解するうえでの基本になります。

解答・解説

正解はcです

テーマ

紫外線は可視光線より波長の短い(およそ100~400nm)電磁波で、物質を電離させる力はもたない非電離放射線に分類される。波長によって長い順にUVA(315~400nm)、UVB(280~315nm)、UVC(100~280nm)に分けられる。波長の短い紫外線ほど組織の浅いところで吸収されるため、影響は主に皮膚と眼の表面(角膜・結膜)、さらに水晶体に現れる。

正解を導く考え方

紫外線による健康障害は、急性のものと慢性のものに分けて整理するとよい。 ・急性:皮膚の日焼け(サンバーン)、眼の電気性眼炎(紫外線角膜炎) ・慢性:皮膚の光老化・日光角化症・皮膚癌、眼の白内障・翼状片 このほか、紫外線によって誘発・増悪する疾患(光線過敏症、色素性乾皮症、全身性エリテマトーデスなど)もある。 選択肢の中で紫外線を直接の原因とするのは、角膜上皮が紫外線で障害される電気性眼炎である。白血病は電離放射線との関連が知られるが、紫外線は電離放射線ではない点で区別する。

選択肢考察

  1. ×a.  白血病

    紫外線は原因とならない。白血病の危険因子として知られるのは、電離放射線への被曝(原爆被爆者で増加したことが知られる)、ベンゼンなどの化学物質、アルキル化薬やトポイソメラーゼII阻害薬などの抗癌薬(治療関連白血病)、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1:成人T細胞白血病・リンパ腫の原因)、Down症候群などの先天異常である。紫外線は透過力が弱く皮膚の表層で吸収されるため、骨髄に影響を及ぼすことはない。

  2. ×b.  熱中症

    紫外線は原因とならない。熱中症は、高温・多湿の環境や激しい運動によって体内で熱の産生と放散のバランスが崩れ、体温調節や循環・水分電解質の調節が破綻して起こる障害である。晴天下の屋外では日射も熱中症の誘因になるが、体を温めるのは主に赤外線や気温・湿度であり、紫外線が原因なのではない。

  3. ○c.  電気性眼炎

    正しい。電気性眼炎は、強い紫外線(主にUVB・UVC)が角膜上皮に吸収されて上皮細胞が障害される急性の表層角膜炎(紫外線角膜炎)である。電気溶接のアーク光、殺菌灯のほか、雪面や水面に反射した日光(雪山で起こるものは雪眼〈雪目〉とよばれる)が原因となる。曝露直後には症状がなく、数時間(おおむね6~12時間)たってから、強い眼痛、異物感、羞明(まぶしさ)、流涙、結膜充血、眼瞼のけいれんが両眼に起こる。フルオレセイン染色で角膜に点状の表層角膜炎がみられる。上皮は再生が速いため、眼軟膏の点入や眼帯などで1~2日程度で治癒することが多い。遮光眼鏡やゴーグルの着用で予防できる。

  4. ×d.  消化管出血

    紫外線は原因とならない。紫外線は皮膚と眼の表層で吸収され、消化管には届かない。消化管出血の原因としては、胃・十二指腸潰瘍(ピロリ菌感染や非ステロイド性抗炎症薬などによる)、食道・胃静脈瘤、悪性腫瘍、Mallory-Weiss症候群、大腸憩室出血、虚血性腸炎などが重要である。

  5. ×e.  アレルギー性結膜炎

    紫外線は原因とならない。アレルギー性結膜炎は、花粉(季節性)やダニ・ハウスダスト(通年性)などの抗原に対するⅠ型(即時型)アレルギー反応によって結膜に炎症が起こる疾患で、強いかゆみ、充血、流涙、眼脂を特徴とする。

紫外線の分類と到達部位

・UVA(315~400nm):オゾン層でほとんど吸収されずに地表に届く。真皮まで到達し、皮膚の光老化や即時型の黒化(色素沈着)に関与する。眼では水晶体まで届く。 ・UVB(280~315nm):大部分はオゾン層で吸収されるが、一部が地表に届く。表皮で吸収され、日焼けによる紅斑(サンバーン)、DNA損傷を介した皮膚癌の主な原因となる。眼では角膜炎や白内障に関与する。皮膚でのビタミンD合成にも必要である。 ・UVC(100~280nm):オゾン層で吸収され地表にはほとんど届かないが、殺菌灯や溶接のアーク光で発生し、人工光源による角膜障害の原因となる。

紫外線と関係する主な疾患

・眼:電気性眼炎(雪眼)、白内障、翼状片、瞼裂斑など。 ・皮膚:日焼け、光老化、日光角化症、基底細胞癌・有棘細胞癌・悪性黒色腫などの皮膚癌。 ・紫外線で誘発・増悪する疾患:色素性乾皮症(DNA修復の遺伝的異常があり、若年で皮膚癌が多発する)、ポルフィリン症、薬剤性光線過敏症、全身性エリテマトーデスの皮疹など。

電離放射線と非電離放射線の区別

X線やγ線などの電離放射線は、組織の奥深くまで透過してDNAを直接傷つけ、白血病や固形癌、急性放射線症候群の原因となる。紫外線・可視光線・赤外線・マイクロ波などは非電離放射線であり、健康影響は主に照射を受けた表層組織や熱作用に限られる。赤外線は白内障(ガラス工白内障)の原因として知られる。

POINT

・電気性眼炎は紫外線による急性の表層角膜炎で、溶接のアーク光や雪面の反射(雪眼)で起こる。 ・曝露後数時間たってから強い眼痛・羞明・流涙が両眼に出現し、1~2日程度で治癒することが多い。 ・紫外線による眼障害:電気性眼炎、白内障、翼状片。皮膚障害:日焼け、光老化、皮膚癌。 ・紫外線は非電離放射線であり、白血病の原因となる電離放射線とは区別する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。