StudyMed医師国家試験

そのアルコール綿、どこに捨てる?―血液が付いたら感染性廃棄物という鉄則

第111回医師国家試験 G問題 第2問

国試問題にチャレンジ

第111回 G問題 第2問

医療機関における廃棄物処理について誤っているのはどれか。

  1. a.在宅医療廃棄物は産業廃棄物として廃棄する。
  2. b.採血時に使用したアルコール綿を一般のゴミ箱に廃棄する。
  3. c.使用済み注射針をキャップを付けずに専用容器に廃棄する。
  4. d.外傷患者の対応で使用したガーゼを感染用廃棄物容器に廃棄する。
  5. e.単回使用の医療機器が未使用のまま滅菌期限切れとなったので廃棄する。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、医療機関での廃棄物処理について誤っているものを選ぶ問題だ。判断の軸はシンプルで、「血液や体液が付いている、または付いているおそれがあるか」。これに加えて、針刺し事故の予防、滅菌物の期限管理、在宅医療で出る廃棄物の扱いも問われている。
医学生医学生
臨床実習で採血をしたとき、アルコール綿をどこに捨てるか一瞬迷ったことがあります。小さいものだし、一般ごみでもいいのかなと。
ドクタードクター
その迷いがまさに今回の正解につながる。採血後に穿刺部位を押さえたアルコール綿には血液が付着している、あるいはそのおそれがある。B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HIVなどの血液媒介病原体がいる可能性があるから、感染性廃棄物として専用容器に捨てなければならない。一般のごみ箱に捨てるという記述が誤りで、これが正解だ。
医学生医学生
一般ごみに捨てると、清掃や収集をする人が血液に触れてしまうかもしれないということですね。
ドクタードクター
そう。感染性廃棄物の区分は、医療者だけでなく、廃棄物を扱うすべての人を守るためのものなんだ。では外傷患者の処置で使ったガーゼはどうだろう。
医学生医学生
血液や滲出液が付いている可能性が高いので、感染性廃棄物の容器に捨てるのは正しいと思います。
ドクタードクター
正解。ガーゼのような固形物は、一般に橙色のバイオハザードマークを付けた容器に入れる。色分けは、赤が血液などの液状・泥状のもの、橙が血液の付いたガーゼなどの固形状のもの、黄が注射針やメスなどの鋭利なものだ。
医学生医学生
色の意味まではっきり覚えていませんでした。注射針は黄色ですね。針はキャップをしてから捨てるのが安全だと思っていたんですが……。
ドクタードクター
それはよくある誤解だね。使用済みの針にキャップを付け直すリキャップは、針刺し事故の主な原因の一つなんだ。だから原則としてリキャップせず、使ったその場で耐貫通性の専用容器に直接捨てる。キャップを付けずに専用容器に廃棄するという記述は正しい手順だ。容器は容量の8割程度を目安に、詰め込みすぎないことも大切だよ。
医学生医学生
OSCEの採血の練習でも、針はすぐ専用容器へと指導されました。未使用のまま滅菌期限が切れた単回使用の器具は、使っていないならもったいない気もします。
ドクタードクター
気持ちはわかるけれど、滅菌の有効期限を過ぎると、未開封でも無菌性が保証されない。患者に使ってはいけないから廃棄するのが正しい対応だ。単回使用医療機器を院内で再滅菌して使うことも、原則として認められていない。
医学生医学生
在宅医療廃棄物を産業廃棄物として廃棄する、というのは少し引っかかりました。家庭から出るごみなら一般廃棄物ではないですか。
ドクタードクター
鋭い指摘だね。家庭で処分される在宅医療廃棄物は、廃棄物処理法上は一般廃棄物で市町村が処理を担う。ただ、自己注射の針のように鋭利で感染の危険があるものは、医療機関や薬局が回収して処理することが推奨されている。医療機関が引き取った針などは医療機関の事業活動から出た廃棄物として扱われ、産業廃棄物、感染性のものは特別管理産業廃棄物として処理される。この運用を前提にすると、この記述は誤りとはされないんだ。厳密には議論の余地がある選択肢だけれど、アルコール綿の記述がはっきり誤りだから、そちらを選ぶことになる。
医学生医学生
法律上は産業廃棄物と一般廃棄物に分かれて、そのうち危険なものが特別管理廃棄物になる、という整理でいいですか。
ドクタードクター
その通り。感染性廃棄物は性状に応じて、ガーゼや脱脂綿などに由来するものは特別管理一般廃棄物、血液などの液状物や注射針などの金属くずは特別管理産業廃棄物に分かれる。医療機関は排出事業者として、分別・梱包・保管を適切に行い、許可業者に委託するときにはマニフェストを交付して最終処分まで確認する責任がある。
医学生医学生
万一、針刺し事故を起こしてしまったらどうすればいいでしょうか。
ドクタードクター
まず直ちに流水で十分に洗い、所定の手順で速やかに報告する。そのうえで曝露源の感染状況に応じて、抗HBsヒト免疫グロブリンの投与や抗HIV薬の予防内服などを検討する。日頃からB型肝炎ワクチンを接種しておくことも、医療者自身を守る基本だよ。

まとめ

医療機関の廃棄物処理では、血液や体液が付着した、またはそのおそれがある物品を感染性廃棄物として一般ごみと分けて扱うことが基本で、採血後のアルコール綿もこれに該当するため一般のごみ箱に捨ててはいけません。感染性廃棄物の容器はバイオハザードマークで色分けされ、赤が液状、橙が血液の付いたガーゼなどの固形状、黄が注射針などの鋭利なものを示します。使用済み注射針は針刺し事故を防ぐためリキャップせずに耐貫通性の専用容器へ直ちに捨て、滅菌期限の切れた単回使用医療機器は未使用でも廃棄します。在宅医療廃棄物は家庭から出れば一般廃棄物ですが、注射針などは医療機関や薬局で回収し感染性廃棄物として処理することが推奨されています。廃棄物の正しい分別は、患者だけでなく医療者や清掃・収集に携わる人を感染から守る、医療安全の土台となる知識です。

解答・解説

正解はbです

テーマ

医療機関から出る廃棄物の処理は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」と、環境省の「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」に沿って行われる。とくに重要なのは、人が感染するおそれのある病原体が含まれる、または付着している(そのおそれがある)廃棄物を「感染性廃棄物」として一般の廃棄物と分けて扱うことである。

正解を導く考え方

感染性廃棄物かどうかは、主に次の観点から判断する。 (1) 形状:血液・血清・血漿・体液そのもの、病理廃棄物(臓器・組織など)、病原微生物に関連した試験・検査に用いたもの、血液などが付着した鋭利なもの(注射針・メスなど)。 (2) 排出場所:感染症病床、結核病床、手術室、緊急外来室、集中治療室、検査室などで治療・検査に使用したもの。 (3) 感染症の種類:感染症法に定める一類~三類感染症、指定感染症、新型インフルエンザ等感染症などの治療・検査に使用したもの。 このうち日常診療で最もよく問題になるのは、血液や体液が付着した(付着した可能性がある)物品である。採血後に穿刺部位を押さえたアルコール綿はこれに当たり、一般ごみとして捨ててはならない。 あわせて、針刺し事故の予防(リキャップしない)、滅菌物の有効期限の管理、在宅医療で生じた廃棄物の扱いも、医療安全・感染対策の基本事項として押さえておく。

選択肢考察

  1. ×a.  在宅医療廃棄物は産業廃棄物として廃棄する。

    誤りとはされない記述である。在宅医療廃棄物とは、在宅医療(自己注射、在宅腹膜透析、在宅酸素療法など)に伴って家庭から出る廃棄物を指す。家庭で処分される場合、廃棄物処理法上は一般廃棄物であり、市町村が処理を担う。ただし、使用済み注射針などの鋭利で感染の危険があるものは、医療関係者が持ち帰るか、患者・家族が医療機関や薬局へ持ち込み、医療機関側で感染性廃棄物として処理することが推奨されている。医療機関が引き取った注射針などは、医療機関の事業活動から生じた廃棄物として扱われ、金属製の針などは産業廃棄物(感染性のものは特別管理産業廃棄物)として処理される。この運用を前提とすれば、本選択肢は誤りとはいえない。

  2. ○b.  採血時に使用したアルコール綿を一般のゴミ箱に廃棄する。

    誤っており、これが正解である。採血後に穿刺部位を圧迫したアルコール綿には血液が付着している(あるいはそのおそれがある)。血液を介して感染する病原体(B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルスなど)が存在する可能性があるため、感染性廃棄物として専用容器に廃棄しなければならない。一般のごみ箱に捨てると、清掃や収集を行う人が血液に触れて感染する危険が生じる。

  3. ×c.  使用済み注射針をキャップを付けずに専用容器に廃棄する。

    正しい手順である。使用済みの針にキャップを付け直す操作(リキャップ)は、針先が指に刺さる針刺し事故の主な原因の一つであるため、原則として行わない。使用直後に、その場で耐貫通性のある専用容器(鋭利物用の廃棄容器)に直接捨てる。専用容器は容量の上限(8割程度)を超えて詰め込まない。

  4. ×d.  外傷患者の対応で使用したガーゼを感染用廃棄物容器に廃棄する。

    正しい対応である。外傷患者の処置で使ったガーゼには血液や滲出液などの体液が付着している可能性が高い。血液などが付着した物品は感染性廃棄物として扱い、感染性廃棄物用の容器(ガーゼのような固形物は、一般に橙色のバイオハザードマークを付けた容器)に廃棄する。

  5. ×e.  単回使用の医療機器が未使用のまま滅菌期限切れとなったので廃棄する。

    正しい対応である。単回使用(ディスポーザブル)の医療機器は、一度だけ使用することを前提に製造・滅菌されている。滅菌の有効期限を過ぎたものは、未開封・未使用であっても無菌性が保証されないため、患者に使用してはならず廃棄する。単回使用医療機器を医療機関で再滅菌して使用することも、原則として認められない。

廃棄物の法的な区分

廃棄物処理法では、廃棄物を事業活動から生じた「産業廃棄物」と、それ以外の「一般廃棄物」に大別する。さらに、爆発性・毒性・感染性など人の健康や生活環境に被害を生じるおそれのあるものを「特別管理廃棄物」として厳格に管理する。医療機関から出る感染性廃棄物は、性状に応じて特別管理一般廃棄物(紙くず、ガーゼ、脱脂綿などに由来するもの)または特別管理産業廃棄物(血液などの液状物、注射針などの金属くず、プラスチック類などに由来するもの)に分類される。

感染性廃棄物の容器とバイオハザードマーク

感染性廃棄物の容器には、内容物の性状がわかるよう色分けしたバイオハザードマークを付けることが推奨されている。 ・赤色:液状または泥状のもの(血液など) ・橙色:固形状のもの(血液などが付着したガーゼ・綿など) ・黄色:鋭利なもの(注射針、メスなど)

排出事業者責任

医療機関は感染性廃棄物の排出事業者として、適切に分別・梱包・保管し、許可を受けた業者に処理を委託する。委託時には産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付し、最終処分まで適正に行われたことを確認する責任がある。

針刺し事故の予防

リキャップの禁止、使用直後の専用容器への廃棄、安全機構付き器材の使用、B型肝炎ワクチン接種などが基本である。万一受傷した場合は、直ちに流水で洗浄し、所定の手順で報告して、曝露源の感染状況に応じた対応(抗HBsヒト免疫グロブリン投与、抗HIV薬の予防内服など)を行う。

POINT

・血液・体液が付着した(おそれのある)物品は感染性廃棄物として扱う。採血後のアルコール綿もこれに当たる。 ・使用済み注射針はリキャップせず、耐貫通性の専用容器にただちに捨てる。 ・バイオハザードマークの色分け:赤=液状、橙=固形状、黄=鋭利なもの。 ・単回使用医療機器は滅菌期限切れなら未使用でも廃棄する。 ・在宅医療廃棄物は家庭から出れば一般廃棄物だが、注射針などは医療機関・薬局で回収し、感染性廃棄物として処理することが推奨される。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。