StudyMed医師国家試験

「地域を支える病院」と「高度医療の砦」―地域医療支援病院と特定機能病院を見分けるコツ

第111回医師国家試験 G問題 第24問

国試問題にチャレンジ

第111回 G問題 第24問

地域医療支援病院について正しいのはどれか。

  1. a.療養病床を設置する。
  2. b.救急医療を提供する。
  3. c.厚生労働大臣が承認する。
  4. d.高度の医療技術を開発する。
  5. e.紹介率30%以上が要件である。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は医療法に定められた「地域医療支援病院」について問う問題だ。単独で覚えようとすると混乱しやすいので、よく対になって出題される特定機能病院と比べながら、「誰が承認するのか」「どんな役割なのか」の2点に注目して整理していこう。
医学生医学生
名前は聞いたことがあるんですが、正直、特定機能病院との違いがあいまいです。
ドクタードクター
多くの人がそこでつまずくんだ。まず背景から説明しよう。日本は患者さんがどの医療機関でも自由に受診できるフリーアクセスの国だから、軽症の人まで大病院に集中しやすい。そこで、かかりつけ医で日常診療を行い、必要なときに地域の中核病院へ紹介し、落ち着いたら地域に戻す、という流れを作るために設けられたのが地域医療支援病院だ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で、病院と診療所の機能分担という話を聞いたのを思い出しました。
ドクタードクター
まさにその文脈だね。地域医療支援病院は、かかりつけ医を後ろから支える病院だ。具体的な役割としては、紹介患者への医療提供、病床や医療機器を地域の医師が使える共同利用、救急医療の提供、そして地域の医療従事者への研修がある。
医学生医学生
救急医療も役割に入っているんですね。診療所では対応できない急な患者さんを受け入れる、ということでしょうか。
ドクタードクター
その通り。救急医療を提供する能力を有することは承認要件として明記されていて、救急搬送の受け入れ実績についても基準が示されている。かかりつけ医を支えるうえで中心的な機能だから、これが正解になる。
医学生医学生
承認するのは厚生労働大臣でしょうか。国の制度なので、大臣のイメージがあります。
ドクタードクター
そこがよく狙われる落とし穴だ。地域医療支援病院を承認するのは都道府県知事なんだ。地域の医療提供体制は都道府県が作る医療計画と結びついているから、地域を支える病院は知事が承認する、と考えると覚えやすい。厚生労働大臣が承認するのは特定機能病院のほうだよ。
医学生医学生
なるほど、「地域」だから都道府県知事、ですね。では高度の医療技術の開発も特定機能病院の役割ですか。
ドクタードクター
そう。特定機能病院は高度の医療の提供、高度の医療技術の開発・評価、高度の医療に関する研修を担う病院で、大学病院の本院などが該当する。地域医療支援病院の目的は地域のかかりつけ医の支援だから、役割がまったく違うんだ。
医学生医学生
臨床実習で回っている大学病院が特定機能病院で、実習先の市中病院が地域医療支援病院の看板を掲げていました。言われてみると役割の違いがイメージできます。
ドクタードクター
実際に見ていると覚えやすいね。次は療養病床について。長期療養の患者さんを受け入れる病床だけど、これは地域医療支援病院の承認要件には含まれていない。求められているのは紹介、共同利用、救急、研修の体制であって、長期療養の受け皿を持つことではないんだ。
医学生医学生
紹介率はどうでしょうか。30%は低すぎる気がします。
ドクタードクター
いい感覚だね。紹介率の要件は、80%以上、または65%以上かつ逆紹介率40%以上、または50%以上かつ逆紹介率70%以上のいずれかだ。どのパターンでも最低50%は必要だから、30%では要件を満たさない。
医学生医学生
逆紹介率というのは、病院から診療所へ患者さんを戻した割合のことですよね。
ドクタードクター
その通り。紹介を受けるだけでなく、安定したら地域に戻すことまで評価されている点が、この制度の考え方をよく表している。ほかの要件も押さえておこう。病床数は原則200床以上で、地域の医療従事者向けの研修を年12回以上主催すること、集中治療室や病理解剖室、救急用自動車などの設備を持つことも求められる。
医学生医学生
特定機能病院のほうは400床以上でしたっけ。
ドクタードクター
そうだね。特定機能病院は400床以上で、紹介率50%以上かつ逆紹介率40%以上が求められ、医師や看護師の手厚い配置も必要だ。地域医療支援病院は1997年の第3次医療法改正で創設された制度だから、医療法改正の流れと一緒に整理しておくと得点源になるよ。
医学生医学生
承認者と役割を対比で覚えれば、選択肢のほとんどは判別できそうです。
ドクタードクター
その通り。そして臨床に出てからも、紹介状を書く、逆紹介で地域に戻す、という日々の業務がこの制度の上に成り立っていることを意識しておいてほしい。

まとめ

地域医療支援病院は医療法に基づき都道府県知事が承認する病院で、紹介患者への医療提供、病床・医療機器の共同利用、救急医療の提供、地域の医療従事者への研修を通じて、かかりつけ医を後方から支える役割を担います。救急医療を提供する能力は承認要件の一つであり、原則200床以上、紹介率は80%以上などの基準(逆紹介率との組み合わせでも最低50%)が求められ、療養病床の設置は要件に含まれません。一方、厚生労働大臣が承認し、400床以上で高度医療の提供・開発・評価・研修を担うのが特定機能病院で、両者は承認者と役割の対比で区別できます。フリーアクセスによる大病院への患者集中を是正し、病院と診療所の機能分担を進めるという制度の背景を理解すると、紹介・逆紹介を含む日常診療の意味も見えてきます。

解答・解説

正解はbです

地域医療支援病院は、医療法第4条に規定される病院であり、地域のかかりつけ医・かかりつけ歯科医を後方から支える「地域医療の中核病院」として位置づけられている。1997年(平成9年)の第3次医療法改正で創設された。 本問を解くには、医療法で定められた特別な病院である「地域医療支援病院」と「特定機能病院」の違いを整理しておくことが重要である。 ・地域医療支援病院:都道府県知事が承認する。役割は紹介患者への医療提供、医療機器・病床の共同利用、救急医療の提供、地域の医療従事者への研修など、地域完結型医療を支えることである。 ・特定機能病院:厚生労働大臣が承認する。役割は高度の医療の提供、高度の医療技術の開発・評価、高度の医療に関する研修であり、大学病院本院などが該当する。 この対比を押さえておけば、承認者(知事か大臣か)や役割(地域支援か高度医療の開発か)を問う選択肢は容易に判別できる。地域医療支援病院の承認要件には「救急医療を提供する能力を有すること」が明記されており、これが正解となる。紹介率については「30%」という数値は要件より大幅に低く、誤りである。

選択肢考察

  1. ×a.  療養病床を設置する。

    誤り。療養病床(主として長期にわたり療養を必要とする患者を入院させるための病床)の設置は、地域医療支援病院の承認要件には含まれていない。地域医療支援病院に求められるのは、紹介患者に対する医療、共同利用、救急医療、研修などを行う体制であり、長期療養の受け皿を持つことではない。

  2. ○b.  救急医療を提供する。

    正しい。救急医療を提供する能力を有することは、地域医療支援病院の承認要件の一つである。具体的には、救急車等で搬送された患者数が年間1,000件以上である、あるいは救急搬送患者数が救急医療圏(おおむね二次医療圏)人口の0.2%以上である、といった実績基準が示されている。地域の診療所では対応困難な急性期・救急患者を受け入れることは、かかりつけ医を後方支援するうえで中心的な機能である。

  3. ×c.  厚生労働大臣が承認する。

    誤り。地域医療支援病院は、所在地の都道府県知事が承認する。地域の医療提供体制は都道府県が策定する医療計画と結びついているため、承認権限も都道府県知事にある。厚生労働大臣が承認するのは特定機能病院(および臨床研究中核病院)である。

  4. ×d.  高度の医療技術を開発する。

    誤り。高度の医療技術の開発・評価は、特定機能病院に求められる役割である。特定機能病院は高度の医療の提供・開発・研修を担う病院であり、地域医療支援病院の役割(地域のかかりつけ医の支援)とは目的が異なる。

  5. ×e.  紹介率30%以上が要件である。

    誤り。地域医療支援病院の紹介率の要件は次のいずれかを満たすことである。 ①紹介率80%以上(紹介率65%以上で、承認後2年間で80%の達成が見込まれる場合を含む) ②紹介率65%以上かつ逆紹介率40%以上 ③紹介率50%以上かつ逆紹介率70%以上 したがって、逆紹介率が高い場合でも紹介率は最低50%必要であり、30%では要件を満たさない。なお、逆紹介率とは、当該病院から地域の診療所などへ患者を紹介し返した割合である。

地域医療支援病院の主な承認要件

・原則として病床数200床以上(都道府県知事が特に必要と認める場合は例外あり) ・他の医療機関からの紹介患者に対して医療を提供する体制(紹介率・逆紹介率の基準を満たすこと) ・救急医療を提供する能力を有すること ・建物・設備・医療機器を地域の医療従事者が共同利用できる体制(開放型病床など) ・地域の医療従事者に対する研修を行う能力(年間12回以上の研修を主催) ・集中治療室、化学・細菌・病理の検査施設、病理解剖室、研究室、講義室、図書室、救急用・患者輸送用自動車、医薬品情報管理室などの施設を備えること

地域医療支援病院と特定機能病院の比較

・根拠法:いずれも医療法(地域医療支援病院は第4条、特定機能病院は第4条の2) ・承認者:地域医療支援病院は都道府県知事、特定機能病院は厚生労働大臣 ・病床数:地域医療支援病院は原則200床以上、特定機能病院は400床以上 ・主な役割:地域医療支援病院はかかりつけ医の支援(紹介・逆紹介、共同利用、救急、研修)、特定機能病院は高度医療の提供・開発・評価・研修 ・紹介率:地域医療支援病院は上記の3パターン、特定機能病院は紹介率50%以上かつ逆紹介率40%以上 ・特定機能病院では、内科・外科など定められた診療科の標榜や、医師・看護師などの手厚い人員配置も求められる

制度の背景

日本では患者が自由に医療機関を選べる(フリーアクセス)ため、大病院に軽症患者が集中しやすい。病院と診療所の機能分担を進め、「かかりつけ医で日常診療→必要に応じて地域の中核病院へ紹介→安定したら逆紹介で地域に戻す」という流れを作るために設けられたのが地域医療支援病院である。

POINT

・地域医療支援病院:都道府県知事が承認、原則200床以上、紹介患者中心の医療・共同利用・救急医療・研修(年12回以上) ・特定機能病院:厚生労働大臣が承認、400床以上、高度医療の提供・開発・評価・研修 ・地域医療支援病院の紹介率は80%以上、65%以上+逆紹介率40%以上、50%以上+逆紹介率70%以上のいずれか(最低でも50%) ・療養病床の設置は要件ではない

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。