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母方のおじさんに隠れたヒント―家系図で見抜くX連鎖劣性遺伝

第111回医師国家試験 E問題 第25問

国試問題にチャレンジ

第111回 E問題 第25問

家系図を別に示す。  この疾患の遺伝形式として最も考えられるのはどれか。

第111回 E問題 第25問の問題画像
  1. a.Y連鎖
  2. b.X連鎖優性
  3. c.X連鎖劣性
  4. d.常染色体優性
  5. e.常染色体劣性

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は家系図から遺伝形式を読み解く問題だ。見るべきポイントは、世代を飛び越えているかどうか、罹患者に性別の偏りがあるか、そして罹患者がどちらの親の家系に集まっているか。この3つを順に確認していこう。
医学生医学生
まず罹患者を数えると、発端者と、お母さんの兄弟2人で、全員男性ですね。
ドクタードクター
その通り。では最初の手がかり、世代の飛び越しから。発端者の両親はどうなっている?
医学生医学生
両親とも罹患していません。罹患していない親から罹患した子が生まれているので、劣性遺伝を考えます。
ドクタードクター
いいね。優性遺伝なら、新生突然変異や浸透率の低下を考えない限り、罹患者の親の一方は罹患しているのが原則だ。母方の祖父母も罹患していないから、ここで常染色体優性はかなり考えにくくなる。
医学生医学生
劣性だとすると、常染色体劣性とX連鎖劣性で迷います。CBTの勉強のときも、ここの区別があいまいでした。
ドクタードクター
そこで2つ目の手がかり、性差と家系の偏りだ。罹患者は男性ばかりで、しかもすべて母方。お母さんの兄弟と、その甥にあたる発端者に出ている。どう解釈する?
医学生医学生
男性はX染色体が1本しかないので、変異があればそのまま発症する。お母さんとお祖母さんが保因者で、変異のあるX染色体を受け渡している、ということですね。
ドクタードクター
その通り。これがX連鎖劣性の典型的な家系図で、母方のおじや母方のいとこに罹患男性がいるのがよくあるパターンなんだ。保因者の母から生まれた息子は1/2の確率で罹患する。だから答えはX連鎖劣性。
医学生医学生
常染色体劣性ではいけない理由をもう少しはっきりさせたいです。
ドクタードクター
常染色体劣性なら、発端者が発症するには父も保因者でなければならない。でも父方の家系には罹患者がいないし、血族婚の記載もない。それに常染色体性なら男女ほぼ同じ頻度で発症するはずで、男性ばかりの家系とは合わない。説明はできなくもないけれど、最も考えられる形式とはいえないね。
医学生医学生
Y連鎖も男性だけですが、これはどうでしょう。
ドクタードクター
Y染色体は父から息子へ必ず伝わるから、Y連鎖なら罹患男性の息子は全員罹患するし、罹患者の父も罹患しているはずだ。発端者の父は罹患しておらず、発端者の息子2人も罹患していないから否定できる。
医学生医学生
X連鎖優性は、女性に多いタイプでしたよね。
ドクタードクター
そう。X連鎖優性では罹患男性のX染色体が娘全員に伝わるから、罹患男性の娘は全員罹患する。発端者の娘2人は罹患していないし、両親も非罹患で世代を飛び越えているので合わない。
医学生医学生
逆にX連鎖劣性なら、発端者の娘さんは全員保因者で、息子さんには変異が伝わらないということですね。
ドクタードクター
よく理解できているね。娘は父のX染色体を必ず受け継ぐので確実な保因者、obligate carrierだ。息子は父からY染色体を受け取るので、男性から男性への伝達は起こらない。この「男性から男性への伝達がない」ことは、X連鎖を考えるうえで重要な手がかりになる。
医学生医学生
小児科の実習でDuchenne型筋ジストロフィーの男の子を担当したとき、お母さんの弟さんも同じ病気だと聞きました。まさにこの形ですね。
ドクタードクター
いい経験をしているね。X連鎖劣性の代表疾患として、Duchenne型・Becker型筋ジストロフィー、血友病A・B、G6PD欠損症、Fabry病、副腎白質ジストロフィーなどは押さえておきたい。臨床では、保因者の女性が次の妊娠について相談に来ることも多いから、確率を正しく説明できることが遺伝カウンセリングの基本になる。また、X染色体不活化の偏りによって、保因者の女性に軽い症状が出ることもある点も知っておこう。

まとめ

家系図を読むときは、世代の飛び越しの有無、罹患者の性差、男性から男性への伝達の有無、罹患男性の子の表現型を順に確認します。非罹患の両親から罹患男性が生まれ、母方のおじにも罹患者がいて罹患者が男性に偏る場合は、保因者の女性を介して伝わるX連鎖劣性遺伝が最も考えられます。Y連鎖なら罹患男性の息子全員が、X連鎖優性なら罹患男性の娘全員が罹患し、常染色体劣性なら男女同頻度で両親ともに保因者である必要があるため、それぞれ鑑別できます。X連鎖劣性ではDuchenne型筋ジストロフィーや血友病などが代表的で、罹患男性の娘は全員保因者となります。遺伝形式を正確に判断する力は、疾患の診断だけでなく家族への遺伝カウンセリングでも欠かせません。

解答・解説

正解はcです

家系図の整理

・発端者(第3世代)は男性の罹患者である。 ・発端者の両親(父・母)はいずれも罹患していない。 ・母の兄弟のうち2人(いずれも男性)が罹患しており、母の姉妹(女性)は罹患していない。母方の祖父母も罹患者としては記載されていない。 ・父方の家系(父の両親、父のきょうだい)には罹患者がいない。 ・発端者のきょうだい(弟1人、姉妹2人)は罹患していない。 ・発端者の子(娘2人、息子2人)はいずれも罹患していない。 つまり、罹患者は3人とも男性で、すべて母方の家系に集中している。

遺伝形式の絞り込み

1. 罹患していない両親から罹患者が生まれ、さらに母の両親も罹患していないので、世代を飛び越えて発症している。新生突然変異や浸透率の低下を考えなければ、優性(顕性)遺伝ではなく劣性(潜性)遺伝が考えられる。 2. 罹患者が男性のみで、しかも母方の男性(母の兄弟)と発端者に出現している。これは、保因者である女性(母方祖母→母)を介して変異をもつX染色体が受け継がれ、X染色体を1本しかもたない男性で発症するというX連鎖劣性遺伝の典型的なパターンである。 3. 常染色体劣性遺伝であれば、発端者の両親がともに保因者である必要があるが、父方の家系には罹患者がおらず、血族婚の記載もない。また、常染色体性であれば男女ほぼ同じ頻度で発症するはずで、男性ばかりが罹患するこの家系には合わない。 したがって、最も考えられる遺伝形式はX連鎖劣性遺伝である。

選択肢考察

  1. ×a.  Y連鎖

    Y連鎖遺伝では、原因遺伝子をもつY染色体は父から息子へ必ず伝わるため、罹患男性の息子は全員罹患し、女性は罹患しない。本家系では発端者の息子2人がいずれも罹患しておらず、また発端者の父も罹患していないため、Y連鎖遺伝では説明できない。

  2. ×b.  X連鎖優性

    X連鎖優性遺伝では、罹患者には少なくとも一方の親に罹患者がいるのが原則で、世代を飛び越えにくい。また、罹患男性のX染色体は娘全員に伝わるため、罹患男性の娘は全員罹患し、息子は罹患しない。本家系では発端者の両親が罹患しておらず、発端者の娘2人も罹患していないため、X連鎖優性遺伝には合わない。

  3. ○c.  X連鎖劣性

    X連鎖劣性遺伝では、主に男性が発症し、女性はヘテロ接合の保因者として通常は発症しない。保因者の母から生まれた息子は1/2の確率で罹患する。本家系では、罹患者が男性3人のみであり、罹患していない母を介して母の兄弟と発端者に発症がみられる(母方祖母と母が保因者と考えられる)。父方には罹患者がいない。これらはすべてX連鎖劣性遺伝の特徴に合致する。なお、罹患男性のX染色体は娘に必ず伝わるため、発端者の娘2人は確実な保因者(obligate carrier)であり、息子2人は変異をもたない(父から受け継ぐのはY染色体であるため、男性から男性への伝達は起こらない)。

  4. ×d.  常染色体優性

    常染色体優性遺伝では、罹患者の親の一方は通常罹患しており、各世代に罹患者がみられる(垂直伝達)。性差はなく、男性から男性への伝達も起こる。本家系では、発端者の両親、母方祖父母がいずれも罹患しておらず世代を飛び越えて発症しているため、新生突然変異や不完全浸透を想定しない限り考えにくい。

  5. ×e.  常染色体劣性

    常染色体劣性遺伝でも、罹患していない保因者の両親から罹患児が生まれる点は本家系と一致する。しかし、そのためには父も保因者である必要があり、父方家系に罹患者がおらず血族婚の記載もないことから、その可能性は低い。また、常染色体性であれば男女ほぼ同頻度で発症するはずであるが、本家系では罹患者が男性のみで、母方の男性に集中している。X連鎖劣性遺伝の方がはるかに自然に説明でき、常染色体劣性遺伝は最も考えられる形式とはいえない。

主な遺伝形式の特徴

・常染色体優性(顕性):男女同頻度。罹患者の子は1/2の確率で罹患。各世代に罹患者がいる(垂直伝達)。男性から男性への伝達あり。例:Marfan症候群、Huntington病、神経線維腫症1型、家族性大腸腺腫症。 ・常染色体劣性(潜性):男女同頻度。両親は通常非罹患の保因者で、保因者同士の子は1/4の確率で罹患。同胞に発症が集中し(水平伝達)、血族婚で頻度が上がる。例:フェニルケトン尿症、Wilson病、嚢胞性線維症、脊髄性筋萎縮症。 ・X連鎖劣性(潜性):ほぼ男性のみ発症。保因者の母の息子は1/2で罹患、娘は1/2で保因者。罹患男性の娘は全員保因者、息子は罹患しない(男性から男性への伝達なし)。母方のおじや母方の男性いとこに罹患者がみられることが多い。例:Duchenne型・Becker型筋ジストロフィー、血友病A・B、G6PD欠損症、Fabry病、副腎白質ジストロフィー、赤緑色覚異常。 ・X連鎖優性(顕性):女性に多い(女性は男性の約2倍)。罹患男性の娘は全員罹患し、息子は罹患しない。例:低リン血症性くる病、Rett症候群(男性では致死的となることが多い)、Alport症候群(多くはX連鎖型)。 ・Y連鎖:男性のみ発症し、父から息子へ必ず伝わる。

家系図を読むときの手順

1. 世代の飛び越しの有無(ある→劣性を疑う)。 2. 罹患者の性差(男性に偏る→X連鎖劣性を疑う)。 3. 男性から男性への伝達の有無(あればX連鎖は否定的)。 4. 罹患男性の子の表現型(娘全員が罹患→X連鎖優性、息子全員が罹患→Y連鎖)。 5. 血族婚の有無(あれば常染色体劣性の可能性が高まる)。

POINT

・非罹患の両親から罹患児が生まれる(世代の飛び越し)→劣性遺伝を考える。 ・罹患者が男性のみで、母方のおじにも罹患者がいる→X連鎖劣性遺伝。 ・X連鎖劣性では男性から男性への伝達はなく、罹患男性の娘は全員保因者となる。 ・Y連鎖は父から息子全員へ、X連鎖優性は罹患男性から娘全員へ伝わる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。