訪問看護は「どちらの保険」で動く?―介護保険優先の原則と医療保険の出番
第111回医師国家試験 E問題 第12問
国試問題にチャレンジ
訪問看護について誤っているのはどれか。
- a.40歳未満でも利用できる。
- b.家族の状態についても情報を収集する。
- c.人工呼吸器の管理を行うことができる。
- d.リハビリテーションを行うことができる。
- e.介護保険より医療保険を優先して利用する。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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医学生
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医学生
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医学生
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ドクターまとめ
訪問看護は、看護師やPT・OT・STが療養者の自宅を訪れ、病状観察、人工呼吸器などの医療処置、リハビリテーション、家族への支援などを行うサービスで、主治医の訪問看護指示書に基づいて提供されます。費用は介護保険と医療保険の両方から給付されうるものの、要介護・要支援認定者では介護保険が原則として優先されます。医療保険が用いられるのは、40歳未満など介護保険の対象外の人や、末期悪性腫瘍・ALSなど厚生労働大臣が定める疾病等、人工呼吸器使用、特別訪問看護指示書の期間など医療的必要度が高い場合です。医療保険を使えば年齢制限がないため、医療的ケア児や若年のがん・難病患者も利用できます。指示書を書く立場となる医師にとって、訪問看護の役割と保険制度の優先順位を理解することは、患者に適した在宅療養を組み立てる基盤となります。
解答・解説
正解はeです
訪問看護とは、看護師などが療養者の自宅(居宅)を訪れ、病状の観察、医療処置、療養上の世話、リハビリテーション、家族への支援などを行うサービスである。主治医が交付する訪問看護指示書に基づいて、訪問看護ステーションや医療機関から提供される。 本問は「誤っているもの」を選ぶ形式である。判断の鍵は、訪問看護の費用が介護保険と医療保険のどちらから給付されるかという制度上の優先順位である。日本の制度では、要介護・要支援の認定を受けている人には原則として介護保険が優先して適用され、介護保険の対象とならない人や、医療的必要度が特に高いとして定められた病態に該当する人に限って医療保険の訪問看護が使われる。この原則を押さえれば、「医療保険を優先する」という記述が誤りであると判断できる。 そのほかの選択肢は、訪問看護の対象年齢(年齢制限はない)、家族を含めた生活全体を支える視点、在宅での高度な医療管理、リハビリテーションの提供といった訪問看護の基本的な性格に関する記述であり、いずれも正しい。
選択肢考察
- ×a. 40歳未満でも利用できる。
記述は正しい。介護保険の被保険者は40歳以上(第2号被保険者は40〜64歳で特定疾病が原因の場合に限る)であるため、介護保険による訪問看護は40歳未満では使えない。しかし訪問看護には医療保険による給付もあり、こちらには年齢制限がない。そのため、医療的ケアを必要とする小児(重症心身障害児、小児の難病、在宅人工呼吸療法中の児など)や、若年のがん患者・難病患者も、主治医の指示書があれば訪問看護を利用できる。
- ×b. 家族の状態についても情報を収集する。
記述は正しい。在宅療養は家族の介護力に大きく依存するため、主たる介護者(キーパーソン)は誰か、介護者の健康状態や疲労・精神的負担、就労状況、家族関係などを把握することは訪問看護の重要な役割である。介護負担が大きければ、訪問介護やショートステイなど他のサービスとの連携を提案するなど、家族を含めた支援計画を立てる。
- ×c. 人工呼吸器の管理を行うことができる。
記述は正しい。筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経筋疾患では、呼吸筋の筋力低下が進むと在宅で人工呼吸器を装着して療養することがある。訪問看護師は主治医の指示のもと、人工呼吸器の作動確認、気道分泌物の吸引、気管カニューレ周囲のケア、呼吸状態の観察などを担う。人工呼吸器を使用している状態は、医療保険による訪問看護の対象となる状態として位置づけられている。
- ×d. リハビリテーションを行うことができる。
記述は正しい。訪問看護ステーションには看護師のほか理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)が所属していることがあり、訪問看護の一環として自宅での歩行・移乗訓練、日常生活動作(ADL)訓練、嚥下訓練などのリハビリテーションを提供できる。看護師自身も関節可動域訓練や体位変換などの基本的なリハビリテーション的ケアを行う。
- ○e. 介護保険より医療保険を優先して利用する。
誤った記述であり、これが正解である。要介護・要支援の認定を受けている人の訪問看護は、原則として介護保険が優先して適用される。医療保険による訪問看護が用いられるのは、40歳未満の人や要介護認定を受けていない人など介護保険の対象外である場合のほか、介護保険の認定者であっても、末期の悪性腫瘍、ALS・パーキンソン病関連疾患などの厚生労働大臣が定める疾病等や人工呼吸器を使用している状態に該当する場合、あるいは急性増悪などで主治医が特別訪問看護指示書を交付した期間(原則14日以内)など、医療的必要度が高い場合に限られる。したがって記述は優先順位が逆である。
訪問看護の仕組み
・利用には主治医の訪問看護指示書が必要(介護保険・医療保険のいずれでも必要)。 ・提供者:訪問看護ステーション(看護師、保健師、准看護師、PT・OT・STなど)または病院・診療所。 ・内容:病状観察、服薬管理、褥瘡など創傷の処置、カテーテル・ストーマ・在宅酸素・人工呼吸器などの管理、清拭・排泄などの療養上の世話、リハビリテーション、終末期ケア・看取り、家族への支援・指導など。
介護保険と医療保険の使い分け
・原則:要介護・要支援認定者は介護保険を優先。介護保険では要介護度に応じた支給限度額の範囲内でケアプランに組み込んで利用する。 ・医療保険となる主な場合: 1)介護保険の対象外(40歳未満、40〜64歳で特定疾病に該当しない人、要介護認定を受けていない人など) 2)厚生労働大臣が定める疾病等(末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、重症筋無力症、ALS、脊髄小脳変性症、パーキンソン病関連疾患、多系統萎縮症、進行性筋ジストロフィー、プリオン病、頸髄損傷、人工呼吸器を使用している状態など) 3)急性増悪時などに特別訪問看護指示書が交付された期間 ・医療保険の訪問看護は原則週3日までだが、上記2)や3)などでは週4日以上の訪問も認められる。
介護保険の被保険者
・第1号被保険者:65歳以上。原因を問わず要介護・要支援状態であれば給付対象。 ・第2号被保険者:40〜64歳の医療保険加入者。加齢に伴う特定疾病(16疾病)が原因の場合に限り給付対象。
POINT
・訪問看護は医療保険を使えば年齢制限なく利用でき、小児も対象となる。 ・要介護認定者では介護保険が優先し、医療保険は末期がん・指定難病などの厚生労働大臣が定める疾病等、人工呼吸器使用、特別訪問看護指示書の期間などに限られる。 ・訪問看護には主治医の訪問看護指示書が必要。 ・人工呼吸器管理などの医療処置、PT・OT・STによるリハビリテーション、家族への支援も訪問看護の役割である。
