卵・ミルク・小麦から花粉と運動まで―年齢で読み解く食物アレルギーの病型
第111回医師国家試験 D問題 第1問
国試問題にチャレンジ
食物アレルギーで正しいのはどれか。
- a.アトピー性皮膚炎と関係ない。
- b.消化管アレルギーはIgEを介して発症する。
- c.口腔アレルギー症候群は乳児期から発症する。
- d.即時型食物アレルギーの原因として最も多いのは鶏卵である。
- e.食物依存性運動誘発アナフィラキシーは乳児期から発症する。
対話形式の解説
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ドクターまとめ
食物アレルギーには、IgEを介して摂取後おおむね2時間以内に症状が出る即時型と、細胞性免疫が主体で症状が遅れて出る非IgE依存性があり、新生児・乳児の消化管アレルギーは後者の代表で特異的IgEが陰性のことが多いです。わが国の即時型食物アレルギーの原因食物は鶏卵が第1位で、乳児期は鶏卵・牛乳・小麦が中心ですが、学童期以降は甲殻類や果物、小麦などの比率が高まり、近年は木の実類も増えています。乳児アトピー性皮膚炎には食物アレルギーが関与する病型があり、湿疹は経皮感作の危険因子です。口腔アレルギー症候群は花粉症との交差反応で、食物依存性運動誘発アナフィラキシーは小麦や甲殻類の摂取後の運動で誘発され、いずれも学童期以降に多くみられます。病型ごとに発症年齢・機序・原因食物を対応させて理解しておくことが、正確な診断、必要最小限の除去、アナフィラキシーへの備えにつながります。
解答・解説
正解はdです
食物アレルギーは、特定の食物を摂取(あるいは接触・吸入)したときに、免疫学的機序を介して皮膚・粘膜・消化器・呼吸器・循環器などに症状が生じる病態である。免疫学的機序には、IgE抗体を介して摂取後おおむね2時間以内に症状が出る「IgE依存性(即時型)」と、T細胞などの細胞性免疫が主体で数時間~数日後に症状が出る「非IgE依存性」がある。 本問は、食物アレルギーの代表的な臨床病型について、①発症しやすい年齢、②関与する免疫機序、③原因食物の頻度を正しく区別できているかを問う。臨床病型は大きく、新生児・乳児消化管アレルギー(非IgE依存性)、食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎、即時型症状(蕁麻疹からアナフィラキシーまで)、特殊型としての食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)と口腔アレルギー症候群(OAS)に整理される。病型ごとに「いつ発症するか」「何が原因か」「IgEが関与するか」を対応させて覚えておけば、各選択肢の正誤は容易に判断できる。 日本における即時型食物アレルギーの全国調査では、原因食物の第1位は一貫して鶏卵である。小児の割合が大きいため、全年齢で集計しても鶏卵が最多となる。
選択肢考察
- ×a. アトピー性皮膚炎と関係ない。
誤り。乳児期のアトピー性皮膚炎には、食物アレルギーが関与する病型(食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎)が存在し、原因食物の除去で湿疹が改善することがある。この病型は年齢とともに寛解していくことが多い。さらに、湿疹でバリア機能が低下した皮膚から食物抗原が侵入すると感作が成立しやすい(経皮感作)ことが知られており、乳児期の湿疹は食物アレルギー発症の危険因子とされる。したがって両者は密接に関係している。
- ×b. 消化管アレルギーはIgEを介して発症する。
誤り。新生児・乳児期に発症する消化管アレルギー(新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症)は、主に非IgE依存性(細胞性免疫が主体)の機序で起こる。多くの患者で原因食物(代表は牛乳由来の調製粉乳)に対する特異的IgE抗体は陰性で、アレルゲン特異的リンパ球刺激試験が陽性となることが多い。症状は嘔吐、血便、下痢、体重増加不良などで、摂取から数時間後に現れることが多い。
- ×c. 口腔アレルギー症候群は乳児期から発症する。
誤り。口腔アレルギー症候群(OAS)は、果物や野菜などを食べた直後に口唇・口腔・咽頭のかゆみ、ヒリヒリ感、腫脹などが生じるIgE依存性の病型である。多くはシラカバ・ハンノキなどの花粉症に合併し、花粉抗原と構造の似た蛋白質を含むバラ科の果物(リンゴ、モモ、サクランボなど)で症状が出る(花粉-食物アレルギー症候群)。先行する花粉への感作が必要なため、乳児期の発症はまれで、幼児期以降、主に学童期から成人に多い。
- ○d. 即時型食物アレルギーの原因として最も多いのは鶏卵である。
正しい。わが国の即時型食物アレルギーの全国調査では、原因食物の第1位は鶏卵である。本問出題当時の調査では鶏卵に牛乳、小麦が続き、この3品目で大半を占めていた。近年の調査では木の実類(特にクルミ)が増加して上位に入っているが、鶏卵が最多である点は変わらない。なお年齢によって原因は変化し、乳児期は鶏卵・牛乳・小麦が中心であるのに対し、学童期以降では甲殻類、果物、小麦、魚類などの比率が高くなる。
- ×e. 食物依存性運動誘発アナフィラキシーは乳児期から発症する。
誤り。食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)は、特定の食物を摂取した後(多くは2時間以内)に運動することで初めてアナフィラキシーが誘発される病型で、食物摂取だけ、運動だけでは症状は出ない。原因は小麦が最も多く、次いで甲殻類(エビなど)である。昼食後の体育や部活動、ランニング・球技などがきっかけとなるため、好発年齢は学童期から成人であり、乳児期に発症することはほとんどない。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服や疲労、入浴なども誘発を助長する。
食物アレルギーの臨床病型と好発年齢
・新生児・乳児消化管アレルギー:新生児期~乳児期。主に牛乳(調製粉乳)。非IgE依存性。嘔吐・血便・下痢・体重増加不良。多くは自然寛解。 ・食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎:乳児期。鶏卵・牛乳・小麦など。主にIgE依存性。多くは年齢とともに寛解。 ・即時型症状(蕁麻疹、アナフィラキシーなど):乳児期~成人。乳児~幼児では鶏卵・牛乳・小麦(鶏卵・牛乳・小麦は寛解しやすい)、学童~成人では甲殻類・魚類・小麦・果物・ピーナッツ・木の実類(寛解しにくい)。IgE依存性。 ・食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA):学童期~成人。小麦・甲殻類。IgE依存性。食物摂取後の運動で誘発される。小麦ではω-5グリアジンが主要抗原として知られる。 ・口腔アレルギー症候群(OAS):幼児期~成人。果物・野菜(花粉症との交差反応)。IgE依存性。症状は多くが口腔内にとどまるが、まれに全身症状に進展する。
IgE依存性と非IgE依存性
IgE依存性はⅠ型アレルギーで、マスト細胞上のIgEに抗原が結合してヒスタミンなどの化学伝達物質が放出され、摂取後おおむね2時間以内に症状が出る。診断には特異的IgE抗体検査や皮膚プリックテストが用いられるが、陽性であっても必ずしも症状が出るとは限らず、確定診断には食物経口負荷試験が重要である。非IgE依存性では特異的IgE抗体が陰性のことが多く、症状は遅れて出現する。
治療の基本
正しい診断に基づく「必要最小限の原因食物の除去」が原則であり、食べられる範囲まで食べることが推奨される。アナフィラキシーに対しては、アドレナリン筋注が第一選択で、既往のある患者などにはアドレナリン自己注射薬(エピペン®)を処方する。
POINT
・即時型食物アレルギーの原因食物は鶏卵が第1位。 ・乳児の消化管アレルギーは非IgE依存性(細胞性免疫)が主体で、特異的IgEは陰性のことが多い。 ・乳児アトピー性皮膚炎には食物アレルギーが関与する病型があり、湿疹は経皮感作の危険因子である。 ・口腔アレルギー症候群は花粉症との交差反応による病型で、幼児期以降(学童~成人)に多い。 ・食物依存性運動誘発アナフィラキシーは学童期~成人に多く、原因は小麦・甲殻類。
