StudyMed医師国家試験

「5γ」を何mL/時に?―ドパミン持続静注で単位換算をミスしないための4ステップ

第111回医師国家試験 B問題 第62問

国試問題にチャレンジ

第111回 B問題 第62問

体重65kgの心不全患者にドパミンを5μg/kg/分で静脈内投与する。  ドパミン100mg/100mLの注射薬を用いて投与する場合,微量輸液ポンプに設定する注入速度を求めよ。  ただし,小数第2位以下の数値が得られた場合は,小数第2位を四捨五入すること。 解答:①② . ③mL/時間

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は計算問題だ。体重あたり・1分あたりで指示された投与量を、輸液ポンプに入力する「1時間あたりの液量」に変換できるかが問われている。ポイントは、単位を一つずつ順番にそろえていくことだよ。
医学生医学生
数字を全部掛けて割ればいいのは分かるんですが、試験の緊張感の中だと、どこで60を掛けてどこで1000で割るのか混乱しそうです。
ドクタードクター
それが一番多いミスなんだ。だから一気にやらずに、①1分あたりの量、②1時間あたりの量、③μgをmgに換算、④濃度で割って液量に、の4ステップに分けよう。まず1分あたり、体重65kgの人に5μg/kg/分だと?
医学生医学生
5×65で325μg/分です。
ドクタードクター
そう。次に1時間あたりにするには?
医学生医学生
60分を掛けて19,500μg/時ですね。それを1,000で割って19.5mg/時。
ドクタードクター
完璧。最後に薬液の濃度を確認しよう。100mgが100mLに溶けているということは、1mLあたり何mgかな。
医学生医学生
1mg/mLです。だから19.5mg/時はそのまま19.5mL/時。割り切れるので四捨五入もいりませんね。
ドクタードクター
その通り、答えは19.5mL/時間だ。ここで大事なのが検算。19.5mL/時を60で割ると1分あたり0.325mL、つまり0.325mg=325μg。65kgで割れば5μg/kg/分に戻る。逆算して指示量と一致するか確かめる習慣をつけておこう。
医学生医学生
臨床実習でICUを回ったとき、指導医の先生が「ドパミン5ガンマ」と言っていて、何のことか分からなかったんです。
ドクタードクター
臨床では1μg/kg/分を「1γ(ガンマ)」と呼ぶことが多い。今回の指示はまさに「ドパミン5γ」だね。カテコラミンの持続静注ではこの言い方が日常的に使われる。
医学生医学生
1mg/mLの製剤なら、γ×体重×0.06でmL/時が出る、という覚え方もできそうですね。
ドクタードクター
いいところに気づいた。60÷1000=0.06だからね。ほかに、薬剤を「体重×3mg」を全量50mLに調製すると、1mL/時がちょうど1γになるという便利な関係もある。ただ、施設や製剤で濃度は違うから、0.1%(1mg/mL)か0.3%(3mg/mL)か0.6%(6mg/mL)かなど、必ずラベルで確認すること。
医学生医学生
そもそも心不全でドパミンを5γ使うのは、どういう狙いなんでしょう。薬理の講義で用量によって作用が変わると習った記憶があります。
ドクタードクター
よく覚えているね。目安として、1〜3γ程度の低用量ではドパミン受容体刺激で腎・腸間膜血管が拡張する。ただし腎保護効果は臨床的には否定的とされている。3〜10γ程度ではβ1受容体刺激による強心作用、10γを超えるとα1受容体刺激で血管収縮・昇圧が前面に出る。5γは強心作用を期待する中等量にあたる。ただし境界には個人差が大きいので、あくまで目安だよ。
医学生医学生
副作用で気をつけることはありますか。
ドクタードクター
頻脈や不整脈、末梢虚血がある。また血管外に漏れると皮膚壊死を起こしうるから、可能なら中心静脈から投与する。そして何より、μgとmg、分と時間の換算を取り違えると、投与量が60倍や1000倍ずれて重大な医療事故になる。計算は必ずダブルチェックしよう。
医学生医学生
単位を一つずつそろえて、最後に逆算で確かめる。研修医になってからも使う習慣ですね。
ドクタードクター
その通り。国試の計算問題は、そのまま明日の病棟業務なんだ。

まとめ

μg/kg/分(γ)で指示された薬剤の注入速度は、体重を掛けて1分量、60を掛けて1時間量、1,000で割ってmgに換算し、最後に薬液濃度(mg/mL)で割ってmL/時を求めます。本問では5×65×60÷1,000÷1=19.5mL/時となり、逆算すると5μg/kg/分に戻ることで検算できます。1mg/mL製剤では「γ×体重×0.06」、体重×3mg/50mLの調製では「1mL/時=1γ」という関係も覚えておくと便利です。ドパミンは用量により腎血管拡張・強心・昇圧と作用が変わるとされ、5γは強心作用を狙う中等量の目安にあたります。単位換算の誤りは数十〜千倍の投与ミスにつながるため、段階的な計算と逆算による確認は臨床で欠かせない技能です。

解答・解説

正解は19.5mL/時間です

考え方

体重あたり・1分あたりで指定された投与量(γ表記:μg/kg/分)を、輸液ポンプに設定する「1時間あたりの液量(mL/時)」に変換する問題である。(1)1分あたりの必要量、(2)1時間あたりの必要量、(3)単位をmgにそろえる、(4)薬液の濃度で割って液量に直す、の順に進めると間違えにくい。

計算過程

(1)1分あたりのドパミン必要量  5 μg/kg/分 × 65 kg = 325 μg/分 (2)1時間あたりのドパミン必要量  325 μg/分 × 60 分 = 19,500 μg/時 (3)単位をmgに換算(1 mg = 1,000 μg)  19,500 μg/時 ÷ 1,000 = 19.5 mg/時 (4)薬液の濃度  ドパミン 100 mg/100 mL → 1 mL 中に 1 mg 含まれる(1 mg/mL) (5)注入速度  19.5 mg/時 ÷ 1 mg/mL = 19.5 mL/時 まとめて1つの式で書くと、  注入速度(mL/時)= 投与量(μg/kg/分)× 体重(kg)× 60 ÷ 1,000 ÷ 薬液濃度(mg/mL)  = 5 × 65 × 60 ÷ 1,000 ÷ 1 = 19.5 となる。割り切れるため四捨五入は不要で、答えは 19.5 mL/時間(①1、②9、③5)である。

検算

19.5 mL/時で流すと、1分あたり 19.5 ÷ 60 = 0.325 mL、すなわち 0.325 mg = 325 μg のドパミンが入る。これを体重 65 kg で割ると 325 ÷ 65 = 5 μg/kg/分となり、指示量と一致する。

γ(ガンマ)計算

臨床では「1 γ = 1 μg/kg/分」と表現することが多く、本問の指示は「ドパミン 5 γ」にあたる。カテコラミン製剤などの持続静注で頻用される。

覚えておくと便利な関係

濃度が「体重(kg)× 3 mg を全量 50 mL」に調製した場合、1 mL/時 = 1 γ となる。  例:65 kg なら 195 mg/50 mL(3.9 mg/mL)。1 mL/時 → 3.9 mg/時 = 3,900 μg/時 = 65 μg/分 → 65 kg で割ると 1 μg/kg/分。 本問のように濃度が 1 mg/mL(0.1%製剤)の場合は、  mL/時 = γ × 体重(kg) × 0.06 で求められる(5 × 65 × 0.06 = 19.5)。

ドパミンの用量と作用(目安)

・低用量(およそ 1〜3 μg/kg/分):主にドパミン受容体刺激による腎・腸間膜血管拡張。利尿作用が期待されたが、腎保護効果は臨床的には否定的とされている。 ・中等量(およそ 3〜10 μg/kg/分):β1 受容体刺激による心収縮力増強・心拍数増加(強心作用)。本問の 5 μg/kg/分はこの範囲にあたる。 ・高用量(およそ 10 μg/kg/分以上):α1 受容体刺激による末梢血管収縮・昇圧。 用量と作用の境界は個人差が大きく、あくまで目安である。副作用として頻脈、不整脈、末梢虚血などがあり、漏出時には皮膚壊死を起こしうるため、可能なら中心静脈から投与する。

注意点

・μg と mg の換算(1,000倍)、分と時間の換算(60倍)を取り違えると、10倍・1,000倍単位の投与量の誤りとなり重大な医療事故につながる。 ・製剤の濃度(0.1%:1 mg/mL、0.3%:3 mg/mL、0.6%:6 mg/mL など)を必ず確認する。

POINT

・注入速度(mL/時)= 投与量(μg/kg/分)× 体重(kg)× 60 ÷ 1,000 ÷ 濃度(mg/mL) ・本問:5 × 65 × 60 ÷ 1,000 ÷ 1 = 19.5 mL/時 ・μg→mg(÷1,000)、分→時(×60)の換算と、製剤濃度の確認を忘れない。 ・計算後は逆算して指示量(μg/kg/分)に戻るか検算する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。