StudyMed医師国家試験

PTHとカルシウムが「そろって動く」とき―異常は副甲状腺そのものにある

第111回医師国家試験 B問題 第25問

国試問題にチャレンジ

第111回 B問題 第25問

血液中の副甲状腺ホルモン〈PTH〉とカルシウムが同方向に変化(両方とも増加,または,両方とも減少)するのはどれか。

  1. a.腫瘍性液性因子性高カルシウム血症〈HHM〉
  2. b.特発性副甲状腺機能低下症
  3. c.偽性副甲状腺機能低下症
  4. d.ビタミンD欠乏症
  5. e.慢性腎不全

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、血中のPTHとカルシウムがどんな組み合わせで変化するかを疾患ごとに整理する問題だ。カギになるのは「異常の出発点が副甲状腺そのものか、それ以外か」という視点。まずはPTHがカルシウムに対してどう働くか、思い出してみよう。
医学生医学生
PTHはカルシウムを上げるホルモンですよね。骨吸収を進めて、腎でのカルシウム再吸収を増やして、あとはビタミンDの活性化にも関わっていたと思います。
ドクタードクター
その通り。腎近位尿細管の1α水酸化酵素を活性化して活性型ビタミンDを増やし、腸管からのカルシウム吸収も高める。さらに腎でのリン再吸収を抑えて、リンを尿中に捨てさせる働きもある。では逆に、PTHの分泌はどう調節されているかな。
医学生医学生
生理学の講義で、副甲状腺の主細胞にカルシウム感知受容体があると習いました。カルシウムが下がるとPTHが増えるんでしたっけ。
ドクタードクター
そう、負のフィードバックだ。カルシウムが下がればPTHを増やし、上がれば抑える。ということは、副甲状腺が正常に働いている限り、PTHとカルシウムはどちら向きに動くことになる?
医学生医学生
カルシウムを元に戻そうとするので……逆向きですね。カルシウムが低ければPTHは高く、カルシウムが高ければPTHは低くなる。
ドクタードクター
完璧。だから両者が同じ方向に動くのは、このフィードバックそのものが壊れている、つまり副甲状腺に一次的な異常があるときなんだ。PTHもカルシウムも高いのが原発性副甲状腺機能亢進症、両方低いのが副甲状腺機能低下症。今回の選択肢でこれに当たるのは特発性副甲状腺機能低下症だ。
医学生医学生
特発性というのは、手術や放射線のような原因がないという意味ですか。
ドクタードクター
そう。自己免疫や遺伝子異常などが関わり、PTH分泌そのものが落ちる。骨からの動員も腎での再吸収も活性型ビタミンDも減るので低カルシウム血症になり、リン排泄が減って高リン血症も伴う。カルシウムが下がっているのにPTHを出す側が壊れているから、両方とも低いままになるわけだ。
医学生医学生
偽性副甲状腺機能低下症も低カルシウムなので、同じように両方下がる気がしてしまいます。
ドクタードクター
そこが一番の引っかけだね。偽性のほうは副甲状腺は正常で、骨や腎のPTHに対する反応が悪いんだ。主にPTH受容体に共役するGsαをコードするGNAS遺伝子の異常による。標的臓器が効かないから低カルシウム・高リンになり、正常な副甲状腺はそれに反応してPTHをどんどん出す。だからPTHは高く、カルシウムは低い逆向きの変化になる。
医学生医学生
なるほど、血清カルシウムとリンのパターンは同じで、PTHの値で区別するんですね。CBTの勉強でEllsworth-Howard試験が出てきたのを思い出しました。
ドクタードクター
よく覚えているね。PTHを負荷しても尿中cAMPやリン排泄が増えにくいことで作用不全を確かめる試験だ。Ia型では低身長や円形顔貌、第4・5中手骨の短縮といったAlbright遺伝性骨異栄養症を伴う。では、腫瘍性液性因子性高カルシウム血症はどうだろう。
医学生医学生
悪性腫瘍がPTHrPを出してカルシウムが上がる病態ですよね。PTHrPは高いけれど、本物のPTHは……抑えられるはずです。
ドクタードクター
正解。PTHrPはPTHと同じ受容体に結合して骨吸収と腎でのカルシウム再吸収を促す。高カルシウム血症に反応して正常な副甲状腺はPTH分泌を抑えるので、PTHは低く、カルシウムは高い。肺扁平上皮癌や頭頸部癌、成人T細胞白血病などでみられるね。残るビタミンD欠乏症と慢性腎不全は?
医学生医学生
どちらも副甲状腺の外に原因があって低カルシウムに傾き、PTHが代償的に上がる二次性副甲状腺機能亢進症ですね。
ドクタードクター
その通り。ビタミンD欠乏では腸管吸収が落ちてカルシウムが下がり、PTH上昇でリン排泄が増えるのでリンは低くなる。小児ではくる病、成人では骨軟化症だ。慢性腎不全ではリン排泄低下による高リン血症、活性型ビタミンDの産生低下、FGF23の上昇が重なってPTHが上がる。どちらもPTH高値・カルシウム低値の逆向きだ。
医学生医学生
腎臓内科の実習で、透析患者さんのPTHやリンを定期的にチェックしていたのはそのためだったんですね。
ドクタードクター
そう、CKD-MBDとして管理される。長く刺激が続くと副甲状腺が自律性を獲得し、カルシウムも高くなる三次性副甲状腺機能亢進症に移ることがある。これは「同方向」に転じる例として覚えておくといい。ほかにも、高度の低マグネシウム血症ではPTH分泌が障害されて両方低くなることがある。低カルシウム血症の患者でマグネシウムも確認するのは、臨床で大事なポイントだ。
医学生医学生
PTHとカルシウム、それにリンを並べて見れば、原因がどこにあるかを推理できるんですね。
ドクタードクター
まさにそれ。副甲状腺機能低下症ではテタニーやChvostek徴候、Trousseau徴候、大脳基底核の石灰化などがみられる。低カルシウム血症を見たら、まずPTHが適切に上がっているかを確かめる習慣をつけよう。

まとめ

PTHは骨吸収促進、腎でのカルシウム再吸収促進、活性型ビタミンD産生促進によって血中カルシウムを上げ、その分泌はカルシウム感知受容体を介した負のフィードバックで調節されています。そのため副甲状腺以外に原因がある病態ではPTHとカルシウムは逆向きに動き、同じ向きに動くのは原発性副甲状腺機能亢進症や副甲状腺機能低下症のように副甲状腺自体に一次的な異常がある場合です。特発性副甲状腺機能低下症はPTH低値・低カルシウム・高リン血症を示し、同じ低カルシウム・高リンでもPTHが高値なら標的臓器の不応による偽性副甲状腺機能低下症と考えます。PTHrPによる悪性腫瘍随伴の高カルシウム血症ではPTHは抑制され、ビタミンD欠乏症や慢性腎不全ではPTHが代償的に上昇する二次性副甲状腺機能亢進症となります。PTH・カルシウム・リンの組み合わせから異常の出発点を推理する考え方は、カルシウム代謝異常全般を理解する基礎になります。

解答・解説

正解はbです

PTHとカルシウムの基本的な関係

副甲状腺ホルモン(PTH)は、血中カルシウム(Ca)濃度を上げる方向にはたらくホルモンである。具体的には、①骨吸収を促進して骨からCaを動員する、②腎の遠位尿細管でCa再吸収を促進する、③腎近位尿細管で1α水酸化酵素を活性化して活性型ビタミンD(1,25(OH)₂D)の産生を増やし、腸管からのCa吸収を高める、④腎でのリン再吸収を抑制してリンを尿中へ排泄させる。 一方、副甲状腺の主細胞はカルシウム感知受容体(CaSR)で血中Ca濃度を監視しており、Caが下がればPTH分泌を増やし、Caが上がればPTH分泌を抑える(負のフィードバック)。

考え方

このフィードバックが正常に働く限り、Caの異常が副甲状腺「以外」に原因がある病態では、PTHはCaを正常化しようとしてCaと逆方向に動く(Ca↓ならPTH↑、Ca↑ならPTH↓)。 これに対し、PTHとCaが同じ方向に動くのは、副甲状腺そのもの(PTH分泌)に一次的な異常がある場合である。 ・PTH↑・Ca↑:原発性副甲状腺機能亢進症(PTHの自律的過剰分泌) ・PTH↓・Ca↓:副甲状腺機能低下症(PTHの分泌不全) したがって選択肢の中では、PTH分泌そのものが低下する特発性副甲状腺機能低下症が該当する。それ以外の選択肢は、PTHの作用不全、ビタミンD作用不足、腎機能障害、PTH関連蛋白(PTHrP)などの副甲状腺外の原因によるCa異常であり、PTHは代償的・反応的にCaと逆方向へ変化する。

選択肢考察

  1. ×a.  腫瘍性液性因子性高カルシウム血症〈HHM〉

    HHM(humoral hypercalcemia of malignancy)は、悪性腫瘍が産生する液性因子によって生じる高Ca血症で、その大部分はPTH関連蛋白(PTHrP)による。PTHrPはPTHと同じPTH/PTHrP受容体(PTH1受容体)に結合し、骨吸収促進と腎でのCa再吸収促進を起こすため血清Caは上昇する。高Ca血症に反応して正常な副甲状腺からのPTH分泌は抑制されるため、PTH↓・Ca↑と逆方向の変化となる。肺扁平上皮癌、頭頸部癌、食道癌、成人T細胞白血病、腎細胞癌などでみられる。なお、きわめてまれな異所性PTH産生腫瘍ではPTH↑・Ca↑となりうるが、HHMとして一般に想定されるPTHrP産生例では逆方向である。

  2. ○b.  特発性副甲状腺機能低下症

    特発性副甲状腺機能低下症は、手術や放射線などの明らかな原因なしに副甲状腺からのPTH分泌が低下する疾患である(自己免疫機序、遺伝子異常などが関与する)。PTHが不足するため、骨からのCa動員・腎でのCa再吸収・活性型ビタミンD産生がいずれも低下して低Ca血症となり、一方で腎でのリン排泄が減って高リン血症を伴う。原因が副甲状腺自体にあるため、低Ca血症にもかかわらずPTHは増えず、PTH↓・Ca↓と同方向に変化する。症状はテタニー、Chvostek徴候・Trousseau徴候、痙攣、大脳基底核の石灰化、白内障などである。

  3. ×c.  偽性副甲状腺機能低下症

    偽性副甲状腺機能低下症は、PTHの分泌には問題がないが、標的臓器(腎・骨)のPTHに対する反応性が低下している疾患である。主にPTH受容体と共役するGsαタンパク(GNAS遺伝子)の異常により、PTH作用不全となって低Ca血症・高リン血症をきたす。正常な副甲状腺は低Ca血症に反応してPTH分泌を増やすため、PTH↑・Ca↓と逆方向の変化となる。PTH負荷試験(Ellsworth-Howard試験)で尿中cAMP・リン排泄の増加が乏しいことが診断に用いられる。Ia型では低身長、円形顔貌、第4・5中手骨の短縮などのAlbright遺伝性骨異栄養症(AHO)を伴う。

  4. ×d.  ビタミンD欠乏症

    ビタミンDが欠乏すると腸管からのCa・リン吸収が低下し、血清Caは低下傾向となる。これに反応して副甲状腺がPTH分泌を増やす二次性副甲状腺機能亢進症となり、PTH↑・Ca↓(代償によりCaは低値〜正常低値)と逆方向に変化する。PTH増加により腎からのリン排泄が亢進するため血清リンは低下し、骨基質の石灰化障害から小児ではくる病、成人では骨軟化症をきたす。アルカリホスファターゼ(ALP)は上昇する。

  5. ×e.  慢性腎不全

    慢性腎不全(慢性腎臓病の進行例)では、腎でのリン排泄低下による高リン血症、腎での1α水酸化障害による活性型ビタミンDの低下、さらに骨細胞由来のFGF23の上昇などにより低Ca血症となる。これらが副甲状腺を刺激してPTH分泌が亢進する二次性副甲状腺機能亢進症を生じ、PTH↑・Ca↓と逆方向の変化となる。慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD)と総称され、特に維持透析患者で顕著となり、線維性骨炎や血管石灰化の原因となる。長期経過で副甲状腺が自律性を獲得すると高Ca血症を伴う三次性副甲状腺機能亢進症に移行することがある。

PTHとCaの組み合わせによる整理

・PTH↑・Ca↑:原発性副甲状腺機能亢進症(腺腫が最多、ほかに過形成・癌)、異所性PTH産生腫瘍(きわめてまれ)、三次性副甲状腺機能亢進症。家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症(FHH、CaSRの不活性型変異)やリチウム服用でもPTHが正常〜軽度高値のまま高Ca血症を呈しうる。 ・PTH↓・Ca↑:PTHrP産生腫瘍(HHM)、骨転移・多発性骨髄腫による局所性骨融解性高Ca血症、ビタミンD中毒、サルコイドーシス(肉芽腫での活性型ビタミンD産生)、甲状腺機能亢進症、不動、ミルク・アルカリ症候群など。 ・PTH↓・Ca↓:副甲状腺機能低下症(特発性、術後、放射線、自己免疫性多内分泌腺症候群、22q11.2欠失症候群〈DiGeorge症候群〉など)、高度の低マグネシウム血症(PTH分泌障害)。 ・PTH↑・Ca↓:偽性副甲状腺機能低下症、ビタミンD欠乏・作用不全、慢性腎不全、急性膵炎などによる二次性副甲状腺機能亢進症。

リンの動きも合わせて考える

PTHは腎からのリン排泄を促すため、 ・副甲状腺機能低下症・偽性副甲状腺機能低下症:低Ca・高P ・ビタミンD欠乏症:低Ca(〜正常)・低P ・慢性腎不全:低Ca・高P(腎からの排泄低下が主因) ・原発性副甲状腺機能亢進症:高Ca・低P となる。副甲状腺機能低下症と偽性副甲状腺機能低下症は血清Ca・Pのパターンが同じで、PTH値(低値か高値か)で区別する。

HHMとLOH

悪性腫瘍に伴う高Ca血症は、液性因子(主にPTHrP)による腫瘍随伴症候群としてのHHMと、骨転移や骨髄腫による局所的な骨破壊によるLOH(local osteolytic hypercalcemia)に大別される。どちらもPTHは抑制される。

POINT

・PTHとCaが同方向に変化するのは、副甲状腺そのものに一次的異常がある場合(原発性副甲状腺機能亢進症:PTH↑Ca↑、副甲状腺機能低下症:PTH↓Ca↓)。 ・副甲状腺外に原因がある場合は、フィードバックによりPTHはCaと逆方向に変化する。 ・HHM(PTHrP):Ca↑・PTH↓。 ・偽性副甲状腺機能低下症、ビタミンD欠乏症、慢性腎不全:Ca↓・PTH↑(二次性副甲状腺機能亢進症)。 ・副甲状腺機能低下症と偽性副甲状腺機能低下症はどちらも低Ca・高Pで、PTH値で鑑別する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。