StudyMed医師国家試験

言葉は年齢どおり、でも走れない―2歳児の「発達の物差し」で異常を見抜く

第110回医師国家試験 G問題 第45問

国試問題にチャレンジ

第110回 G問題 第45問

2歳1か月の男児。発達の遅れを心配した父親に連れられて来院した。身長85 cm,体重12.5 kg。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦,軟で,肝を季肋下に0.5 cm触知する。脾は触知しない。一人立ちはできるが,走れず,階段を上がることができない。スプーンをうまく使えない。積み木を2個積むことができる。言葉は2語文が話せる。  この児について異常と考えられるのはどれか。

  1. a.身長
  2. b.体重
  3. c.肝臓触知
  4. d.言語発達
  5. e.運動発達

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、2歳過ぎの子どもの体格・身体所見・発達を一つずつ「年齢相応かどうか」で照らし合わせる問題だ。小児科では、目の前の所見を標準と比べる物差しを頭に入れておくことが何より大事。まずは体格から見ていこう。身長と体重、どう評価する?
医学生医学生
2歳男児の平均が身長86 cm前後、体重12 kg前後だったと思うので、ほぼ平均どおりに見えます。
ドクタードクター
その通り。身長はほぼ標準で、低身長の目安である−2 SDにはまったく届かない。体重も標準範囲だ。バランスをみるならカウプ指数を使う。体重を身長の2乗で割って計算すると約17.3で、幼児の普通とされるおおむね15〜18に収まる。やせでも肥満でもないね。
医学生医学生
カウプ指数は小児の講義で出てきました。乳幼児はBMIではなくカウプ、学童はローレル指数、と覚えた記憶があります。
ドクタードクター
よく覚えているね。次は肝臓。季肋下に少し触れる、というのをどう考えるかな。
医学生医学生
大人なら肝臓が触れたら肝腫大を疑うので、異常かなと一瞬思いました。
ドクタードクター
そこが小児の落とし穴なんだ。乳幼児は腹腔に対して肝臓が相対的に大きく、新生児では季肋下に2 cm程度触れることもある。幼児期でも1〜2 cmくらいまでは生理的とされるから、0.5 cmはまったく問題ない。脾臓も触れないので、糖原病のような代謝性疾患を疑う根拠にはならないよ。
医学生医学生
小児科の実習で、指導医の先生が赤ちゃんのお腹を触って「このくらいは正常」と言っていたのを思い出しました。
ドクタードクター
実際に触って感覚を覚えるのが一番だね。では言語発達。2語文が話せるのはどうだろう。
医学生医学生
初語が1歳、2語文が2歳、3語文が3歳、という目安だったので、年齢相応ですね。
ドクタードクター
正解。「ママ、きた」のような2語文が2歳前後で出ていれば問題ない。さて、残るのが運動発達だ。独歩、走る、階段の通過年齢を言えるかな。
医学生医学生
独歩が1歳〜1歳3か月、走るのが1歳6か月ごろ、手すりを使った階段昇りが1歳6か月から2歳ごろ……あ、2歳を過ぎて一人立ちまでで走れないのは明らかに遅いです。
ドクタードクター
そう、粗大運動はおよそ1歳前後の段階にとどまっている。さらに微細運動にも目を向けよう。積み木2個は1歳3か月〜1歳6か月ごろの水準で、2歳なら4〜6個程度は積めるのが一般的。スプーンも2歳ごろにはある程度使えるようになる。だから粗大運動・微細運動の両方を含めて運動発達に遅れがある、というのが答えになる。
医学生医学生
体格も肝臓も言葉も正常で、運動だけが遅れている、という整理ですね。
ドクタードクター
その「乖離」こそが臨床的に重要なんだ。発達は粗大運動、微細運動、言語、社会性といった領域ごとに評価する。全領域が遅れていれば全般的な発達遅滞や染色体異常などを考えるけれど、言語は年齢相応なのに運動だけ遅れているなら、筋疾患や末梢神経疾患、脳性麻痺のような運動系の障害を鑑別に挙げるきっかけになる。
医学生医学生
男児で運動発達が遅いとなると、Duchenne型筋ジストロフィーも思い浮かびます。CBTでGowers徴候やCK高値をセットで覚えました。
ドクタードクター
いい連想だね。実際の診療では、筋緊張や腱反射、腓腹筋の仮性肥大などを診察し、必要に応じてCKなどを測って原因を探っていく。発達の評価には遠城寺式乳幼児分析的発達検査法やDENVER IIといったツールも使われるよ。
医学生医学生
乳幼児健診で使われている検査ですね。通過年齢を覚えておかないと、どれが遅れているのか気づけないと実感しました。
ドクタードクター
その通り。最後に押さえておきたいのは、親が「発達が遅い」と心配して来たときに、漠然と様子見にしないこと。どの領域がどれくらい遅れているかを具体的に評価して、必要なら専門的な精査やリハビリにつなげるのが小児科医の役割なんだ。

まとめ

2歳1か月の男児で、身長・体重はほぼ標準でカウプ指数も正常範囲、肝臓の季肋下0.5 cm触知は乳幼児では生理的で、2語文も年齢相応です。一方、2歳を過ぎても一人立ちにとどまり走れず階段も上がれないこと、積み木2個・スプーン操作の拙さは粗大運動・微細運動の遅れを示し、運動発達が異常と判断できます。走るのは1歳6か月ごろ、階段昇りは1歳6か月〜2歳ごろ、積み木は2歳で4〜6個程度という通過年齢の目安が判断の基準になります。言語は正常で運動のみが遅れる乖離がある場合は、Duchenne型筋ジストロフィーなどの筋疾患や脳性麻痺などの運動系の障害を鑑別に挙げることが大切です。発達を領域ごとに標準と照らし合わせる習慣は、乳幼児健診や外来で異常を見逃さないための基本となります。

解答・解説

正解はeです

所見の整理

2歳1か月の男児で、父親が発達の遅れを心配して受診している。提示されている情報は、①体格(身長85 cm、体重12.5 kg)、②身体所見(心音・呼吸音正常、肝を季肋下に0.5 cm触知、脾は触知せず)、③運動発達(一人立ちは可能だが、走れない・階段を上がれない、スプーンをうまく使えない、積み木は2個まで)、④言語発達(2語文を話す)である。

考え方

本問は、それぞれの所見を「2歳ちょうど前後の子どもとして年齢相応かどうか」という物差しで一つずつ照らし合わせる問題である。 ・体格:2歳男児の標準身長はおよそ86 cm、標準体重はおよそ12 kg前後であり、本児はいずれも標準の範囲内にある。体格指数であるカウプ指数(体重g÷身長cm²×10)を計算すると 12,500÷(85×85)×10 ≒ 17.3 で、幼児の正常範囲(おおむね15〜18)に収まる。 ・身体所見:乳幼児では肝下縁を右季肋下に1〜2 cm程度触れることは珍しくなく、0.5 cmの触知は生理的範囲である。脾腫もない。 ・言語:2語文は2歳ごろに出現するのが標準であり、年齢相応である。 ・運動:粗大運動では、独歩が1歳〜1歳3か月ごろ、走るのが1歳6か月ごろ、手すりを使って階段を上がるのが1歳6か月〜2歳ごろに可能となる。本児は2歳を過ぎても一人立ちの段階にとどまり、走ること・階段昇りができない。微細運動でも、積み木2個を積むのは1歳3か月〜1歳6か月ごろの水準であり、2歳では4〜6個程度積めるのが一般的である。スプーンも2歳ごろにはある程度使えるようになる。 したがって、体格・身体所見・言語発達は正常で、運動発達(粗大運動と微細運動の両方)に遅れがあると判断できる。言語は正常なのに運動のみが遅れているという乖離は、知的発達全般の遅れよりも、筋疾患(Duchenne型筋ジストロフィーなど)や中枢神経系の運動障害(脳性麻痺など)を鑑別に挙げるきっかけになる。

選択肢考察

  1. ×a.  身長

    2歳男児の標準身長は約86 cmであり、85 cmはその近傍で、±1 SD(標準偏差)以内に入る。低身長(一般に−2 SD以下)には該当せず、異常ではない。

  2. ×b.  体重

    2歳男児の標準体重は約12 kg前後であり、12.5 kgは標準範囲内である。身長とのバランスをみるカウプ指数も約17.3と幼児の正常範囲にあり、やせ・肥満のいずれでもない。

  3. ×c.  肝臓触知

    乳幼児は腹腔に対して肝臓が相対的に大きく、新生児では季肋下に2 cm程度触れることもある。幼児期でも1〜2 cm程度までの触知は生理的とされ、0.5 cmの触知は正常範囲である。脾腫も伴っておらず、肝腫大や代謝性疾患(糖原病など)を疑う所見ではない。

  4. ×d.  言語発達

    言語発達の目安は、1歳ごろに意味のある単語(初語)、1歳6か月ごろに意味のある単語を数語、2歳ごろに2語文(「ママ、きた」など)である。2歳1か月で2語文が話せるのは年齢相応であり、異常ではない。

  5. ○e.  運動発達

    粗大運動では、走る動作は1歳6か月ごろ、手すりにつかまって階段を上がる動作は1歳6か月〜2歳ごろに獲得される。2歳1か月で一人立ちにとどまり、走れず階段も上がれないのは明らかな遅れである。さらに微細運動でも、積み木2個は1歳3か月〜1歳6か月ごろの水準で、2歳では4〜6個程度積めるのが通常であり、スプーン操作の拙さも合わせて、運動発達全体に遅れがあると判断される。

粗大運動発達の目安(通過年齢のおおよそ)

・首のすわり(定頸):3〜4か月 ・寝返り:5〜6か月 ・お座り(支えなし座位):7か月ごろ ・つかまり立ち:9か月ごろ、伝い歩き:10か月ごろ ・一人立ち:12か月ごろ ・独歩:1歳〜1歳3か月 ・走る:1歳6か月ごろ ・階段を上がる(手すり使用):1歳6か月〜2歳、両足でのその場跳び:2歳ごろ ・片足立ち、三輪車こぎ:3歳ごろ ・片足跳び(ケンケン):4歳ごろ ・スキップ:5歳ごろ

微細運動・言語の目安

・積み木:1歳3か月〜1歳6か月で2個、2歳で4〜6個程度、3歳で8個以上 ・スプーン使用:1歳6か月〜2歳ごろ ・丸の模写:3歳、十字:4歳、四角:4〜5歳、三角:5〜6歳 ・言語:1歳で初語、2歳で2語文、3歳で3語文・自分の名前を言える

カウプ指数

体重(g)÷身長(cm)²×10(=体重kg÷身長m²と同値)で算出する乳幼児の体格指数。幼児ではおおむね15〜18を普通とし、乳児・幼児で判定基準がやや異なる。

発達の遅れの評価

発達は粗大運動・微細運動・言語・社会性などの領域ごとに評価する。運動のみが遅れている場合は筋疾患(Duchenne型筋ジストロフィーなど)、末梢神経疾患、脳性麻痺などを、全領域が遅れている場合は全般的な発達遅滞(知的障害)や染色体異常などを考える。評価には遠城寺式乳幼児分析的発達検査法やDENVER II(デンバー発達判定法)などが用いられる。

POINT

・2歳の標準:走る(1歳6か月〜)、階段昇り、両足跳び、積み木4〜6個、2語文。 ・2歳1か月で走れない・階段を上がれない・積み木2個は運動発達の遅れである。 ・幼児期の肝臓の季肋下1〜2 cm程度の触知は生理的である。 ・2歳男児の標準はおよそ身長86 cm、体重12 kg。カウプ指数15〜18は普通。 ・運動のみの遅れと言語・社会性の正常が乖離していれば、神経筋疾患などを考える。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。