StudyMed医師国家試験

「健康食品」に法律の定義はない?―サプリと薬の境界線を整理する

第110回医師国家試験 G問題 第27問

国試問題にチャレンジ

第110回 G問題 第27問

健康食品について正しいのはどれか。

  1. a.薬との併用が推奨されている。
  2. b.法律により定義された用語である。
  3. c.薬効を示すことが推奨されている。
  4. d.栄養補助食品やサプリメントが含まれる。
  5. e.カプセル状のものは販売が禁止されている。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は公衆衛生の分野から、健康食品の位置づけを問う問題だ。ふだん何気なく使っている言葉だけど、ポイントは2つ。「医薬品とどう区別されるか」と「健康食品の中にどんな区分があるか」。この2本の軸で整理すると、選択肢はすっきり判断できるよ。
医学生医学生
健康食品って、トクホみたいに国がお墨付きを与えたものを指す、法律上の用語だと思っていました。
ドクタードクター
そこがよくある誤解だね。実は「健康食品」という言葉そのものには法律上の定義がない。行政の文書でも「いわゆる健康食品」と呼ばれているくらいなんだ。法律で定められているのは、その一部である保健機能食品、つまり特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品の3区分のほうだよ。
医学生医学生
では健康食品というのは、もっと広い呼び名なんですね。
ドクタードクター
その通り。健康の保持・増進に役立つことをうたって販売・利用される食品全般を広く指す。だから栄養補助食品、健康補助食品、サプリメントなどはいずれも健康食品に含まれるし、保健機能食品も広い意味では健康食品の一部になる。これが今回の正解だ。
医学生医学生
サプリメントが含まれるのは直感的にも納得です。では、薬効を表示するのはどうですか。効くなら書いてもよさそうですが。
ドクタードクター
そこは明確にNGだね。口から摂るものは「医薬品」と「食品」に大別され、健康食品はあくまで食品。「高血圧が治る」「がんを予防する」のように病気の治療や予防をうたうと、未承認医薬品とみなされて医薬品医療機器等法、いわゆる薬機法の違反になる。「栄養補給に」「健康維持に」といった表現なら医薬品的効能にあたらないので認められるんだ。
医学生医学生
衛生・公衆衛生の講義で、トクホは「お腹の調子を整える」と表示できると習いました。あれは薬効とは違うんですか。
ドクタードクター
いい質問だ。トクホは国が有効性と安全性を個別に審査して、特定の保健の目的が期待できる旨の表示を許可したもの。あくまで健康の維持・増進の範囲で、疾病を治すという表示ではない。栄養機能食品は国が定めた規格基準を満たせば届出なしに決められた機能を表示できる自己認証制、機能性表示食品は事業者が科学的根拠をもとに自己責任で表示し、販売前に消費者庁へ届け出る制度だよ。
医学生医学生
審査があるのがトクホ、規格基準を満たせばよいのが栄養機能食品、届出制が機能性表示食品、ですね。
ドクタードクター
完璧。それ以外のいわゆる健康食品は機能性を表示できず、誇大な広告は健康増進法や景品表示法の規制対象になる。次に、薬との併用が推奨されているという記述はどうだろう。
医学生医学生
推奨はされないと思います。薬理学でセント・ジョーンズ・ワートの相互作用が出てきました。
ドクタードクター
よく覚えているね。セイヨウオトギリソウとも呼ばれるこのハーブはCYP3A4などの薬物代謝酵素を誘導して、シクロスポリンやワルファリン、経口避妊薬の血中濃度を下げてしまう。ほかにも、ビタミンKを多く含む青汁やクロレラはワルファリンの効果を弱める。推奨どころか、相互作用に注意すべき対象なんだ。
医学生医学生
臨床実習の初診外来で、指導医の先生が必ず「サプリや健康食品は飲んでいますか」と聞いていたのはそのためなんですね。
ドクタードクター
まさにそう。患者さんは「食品だから薬じゃない」と思って申告しないことが多いから、こちらから尋ねるのが大切だ。最後に、カプセル状のものは販売禁止という記述は?
医学生医学生
ドラッグストアでカプセルのサプリは普通に売っているので、誤りですよね。
ドクタードクター
正解。錠剤やカプセルの形状も販売は認められている。ただしこうした形状は成分が濃縮されるので、過剰摂取や、原材料に含まれる微量の有害物質の濃縮による健康被害が起こりうる。そのため製造工程の品質管理、いわゆるGMPが重視されていて、機能性表示食品のうちサプリメント形状の製品ではGMPに基づく製造管理が義務化されたんだ。
医学生医学生
形が禁止されるのではなく、品質管理で安全性を担保するという考え方ですね。
ドクタードクター
その通り。臨床での注意点もまとめておこう。健康食品による肝障害や、医薬品成分の混入による副作用といった健康被害が実際に報告されている。原因不明の肝機能障害などを診たら、健康食品の摂取歴を確認する習慣をつけたい。関連が疑われる場合は保健所への情報提供が求められるし、指定成分等を含む食品については事業者に健康被害情報の届出が義務づけられている。
医学生医学生
問診で聞き出して、疑わしければ行政につなぐところまでが医師の役割なんですね。
ドクタードクター
そういうこと。「食品だから安全」という思い込みを、医療者側が持たないことが一番大切だよ。

まとめ

「健康食品」は法律上の定義がない呼び名で、健康の保持・増進をうたう食品全般を指し、栄養補助食品やサプリメントもこれに含まれます。このうち国の制度で機能の表示が認められているのは保健機能食品(個別審査の特定保健用食品、規格基準による栄養機能食品、届出制の機能性表示食品)のみで、病気の治療・予防効果をうたえば医薬品医療機器等法違反となります。錠剤・カプセル状の製品も販売可能ですが、成分濃縮による過剰摂取リスクがあり、品質管理が重視されています。セント・ジョーンズ・ワートによるCYP3A4誘導やビタミンKによるワルファリン作用の減弱など医薬品との相互作用もあるため、問診で健康食品の摂取歴を確認することは日常診療の基本です。食品と医薬品の境界を正しく理解しておくことは、患者への適切な助言や健康被害の早期発見につながります。

解答・解説

正解はdです

「健康食品」という言葉は日常的に広く使われているが、法律上の定義を持たない呼び名である。一般には、健康の保持・増進に役立つことをうたって販売・利用される食品全般を指し、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメントなどがここに含まれる。 健康食品を理解するうえでは、次の2つの区別が重要である。 1. 医薬品との区別: 健康食品はあくまで「食品」であり、病気の治療や予防といった医薬品的な効能効果を表示・広告することは医薬品医療機器等法(薬機法)で禁止されている。 2. 健康食品の中の区分: 国が制度として表示を認めているもの(保健機能食品: 特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)と、それ以外のいわゆる健康食品とに分けられる。機能を表示できるのは保健機能食品のみである。 この整理に沿って各選択肢を検討すると、健康食品に栄養補助食品やサプリメントが含まれるという記述が正しい。医薬品との併用や薬効の表示を勧める記述、法律上の用語であるとする記述、カプセル状の販売が禁止されているとする記述はいずれも誤りである。

選択肢考察

  1. ×a.  薬との併用が推奨されている。

    誤り。健康食品と医薬品の併用が推奨されることはない。むしろ相互作用に注意が必要である。例えば、セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)は肝臓の薬物代謝酵素CYP3A4などを誘導して、併用薬(シクロスポリン、ワルファリン、経口避妊薬など)の血中濃度を下げる。また、ビタミンKを多く含む青汁やクロレラはワルファリンの抗凝固作用を弱める。医師は診療の際に、患者が健康食品を摂取していないか確認することが望ましい。

  2. ×b.  法律により定義された用語である。

    誤り。「健康食品」は法律で定義された用語ではなく、行政上も「いわゆる健康食品」と呼ばれる。法律(食品表示法に基づく食品表示基準など)で定められているのは、その一部である保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)の区分であり、健康食品という総称自体に法的定義はない。

  3. ×c.  薬効を示すことが推奨されている。

    誤り。食品に「高血圧が治る」「がんを予防する」など、疾病の診断・治療・予防を目的とする効能効果を表示・広告すると、未承認医薬品とみなされ医薬品医療機器等法違反となる。一方、「栄養補給に」「健康維持に」といった表現は医薬品的効能にあたらないため認められる。また保健機能食品は、それぞれの制度の範囲内で特定の保健の目的や栄養成分の機能を表示できるが、これも疾病の治療効果を示すものではない。

  4. ○d.  栄養補助食品やサプリメントが含まれる。

    正しい。健康食品に厳密な定義はないが、健康の保持増進を目的として販売・利用される食品全般を広く指すため、栄養補助食品、健康補助食品、栄養強化食品、栄養調整食品、機能性食品、サプリメントなどはいずれも健康食品に含まれる。さらに、国の制度に基づいて機能の表示が認められた保健機能食品も、広い意味では健康食品の一部である。

  5. ×e.  カプセル状のものは販売が禁止されている。

    誤り。錠剤やカプセル状の健康食品は禁止されておらず、広く販売されている。ただし、この形状の製品は特定の成分が濃縮されるため、過剰摂取や、原材料に含まれる微量の天然毒性物質の濃縮による健康被害が起こりうる。そのため国は製造工程の品質管理(GMP: 適正製造規範)や原材料の安全性確保を求めており、特に機能性表示食品のうち錠剤・カプセル状などのサプリメント形状の製品では、GMPに基づく製造管理が義務化されている。

食品と医薬品の区分

口から摂取するものは「医薬品(医薬部外品を含む)」と「食品」に大別される。健康食品はすべて食品に属する。また、専ら医薬品として使用される成分(例: 一部の生薬やホルモン類)は、食品に配合することが原則として認められていない。

保健機能食品の3区分

1. 特定保健用食品(トクホ): 有効性・安全性について国(消費者庁)が個別に審査し、表示を許可する。「お腹の調子を整える」「血圧が高めの方に適する」など、特定の保健の目的が期待できる旨を表示できる。 2. 栄養機能食品: ビタミンやミネラルなど、国が定めた栄養成分について、規格基準(1日当たり摂取目安量に含まれる量の上限・下限)を満たせば、国への届出や審査なしに定められた機能を表示できる(自己認証制)。 3. 機能性表示食品(2015年〜): 事業者が科学的根拠を基に自らの責任で機能性を表示する制度で、販売前に消費者庁へ届け出る。国による個別の審査・許可はない。

いわゆる健康食品

保健機能食品以外の健康食品は、機能性の表示が認められていない。有効性や安全性が科学的に確認されていないものも多く、過大な広告は健康増進法(誇大表示の禁止)や景品表示法による規制の対象となる。

健康被害への対応

健康食品による健康被害(肝障害、医薬品成分の混入による副作用など)が報告されている。指定成分等を含む食品については、事業者に健康被害情報の行政への届出が義務づけられている。医師が健康食品との関連が疑われる健康被害を診た場合には、保健所への情報提供が求められる。

POINT

・「健康食品」は法律上の定義がない呼び名で、栄養補助食品やサプリメントを含む。 ・機能を表示できるのは保健機能食品(特定保健用食品・栄養機能食品・機能性表示食品)のみ。 ・食品で病気の治療・予防効果をうたうと医薬品医療機器等法違反。 ・医薬品との相互作用(セント・ジョーンズ・ワート、ビタミンKとワルファリンなど)に注意する。 ・錠剤・カプセル状も販売可能だが、過剰摂取や成分濃縮のリスクがあり品質管理が重要。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。