StudyMed医師国家試験

「あと何年生きられるか」を式にする―生命表で読み解く平均余命Tx/lx

第110回医師国家試験 G問題 第11問

国試問題にチャレンジ

第110回 G問題 第11問

x歳での生存人数をlxとし,x歳以上の定常人口をTxとした場合,x歳の平均余命はどれか。

第110回 G問題 第11問の問題画像
  1. a.
  2. b.
  3. c.
  4. d.
  5. e.

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は公衆衛生の生命表から、平均余命の求め方を問う問題だ。選択肢は全部数式なので、丸暗記より「生存数lx」と「定常人口Tx」がそれぞれ何を意味しているかをイメージできるかがカギになる。まず、lxは何を表しているか説明できるかな。
医学生医学生
出生した10万人が、年齢別の死亡率に従って減っていったとき、x歳ちょうどまで生き残っている人数です。
ドクタードクター
その通り。生命表は、ある期間の年齢別死亡率がずっと続くと仮定した仮想の集団なんだ。では定常人口のほうはどうだろう。
医学生医学生
衛生学の講義で聞いた覚えはあるんですが、「定常」という言葉がピンときません。人口ピラミッドみたいなものですか。
ドクタードクター
イメージとしては近いね。毎年10万人が生まれて、死亡率も変わらないと仮定すると、人口の総数も年齢構成もずっと一定に保たれる。これが定常人口だ。x歳以上x+1歳未満の定常人口Lxは、x歳に達したlx人がその1年間に生きた延べ年数、つまり人年と同じ値になる。そしてTxはそれをx歳以降すべて足し合わせたものだ。
医学生医学生
ということは、Txはx歳まで生き残った人たちが、これから亡くなるまでに生きる年数の合計ということですか。
ドクタードクター
まさにそこがポイント。延べ生存年数の合計を人数で割れば、1人当たり何年生きるかになる。だからx歳の平均余命はTxをlxで割ったもの、Tx/lxが正解だ。具体例で言うと、x歳で1,000人が生きていて、その人たちがこの先生きる年数の合計が30,000人年なら、平均余命は30年になる。
医学生医学生
生存曲線で考えると、x歳より右側の曲線の下の面積を、x歳での曲線の高さで割るイメージですね。
ドクタードクター
いい図示だね。そのイメージがあれば式を忘れても再現できる。では、ほかの式も見ていこう。T0をl0で割った式は何を表すかな。
医学生医学生
0歳の平均余命なので、平均寿命です。xが0のときだけ正解と一致しますね。
ドクタードクター
その通り。次に、Tx+1をlx+1で割った式はどうだろう。
医学生医学生
添え字が全部x+1なので、1歳上の人の平均余命です。引っかけですね。
ドクタードクター
そう。では少し考えどころのある式、平均寿命からxを引いたものはどうだろう。
医学生医学生
正直、直感的にはこれで合っている気がしました。平均80年生きるなら、30歳の人はあと50年かなと。
ドクタードクター
そこが典型的な誤解なんだ。x歳まで生き残った人は、それまでに亡くなった人を含まない集団だよね。若くして亡くなる人が除かれているぶん、平均余命は「平均寿命−x」より長くなるのが普通だ。年齢ごとに死亡率が違うことを無視した式なので誤りになる。
医学生医学生
なるほど、生き残った人の集団で計算し直すから長くなるんですね。最後の、Tx/lxにxを足した式は何を表しているんでしょう。
ドクタードクター
平均余命に今の年齢を足しているから、「x歳まで生きた人が平均して何歳まで生きるか」という死亡時の期待年齢になる。あと何年かではなく、何歳までか、を表す値だから平均余命とは別物だ。
医学生医学生
式の意味を言葉に直すと、全部区別できますね。CBTのときは丸暗記で乗り切ってしまいましたが、今なら納得です。
ドクタードクター
それが一番の近道だよ。発展として押さえておきたいのは、平均余命は年齢が上がると必ず短くなるとは限らないこと。乳児死亡率が高い集団では、危険な時期を乗り越えた1歳の平均余命が、0歳の平均余命である平均寿命より長くなることがある。
医学生医学生
乳児死亡率が高い国の統計で出てきそうな話ですね。日本の生命表はどうやって作られているんですか。
ドクタードクター
厚生労働省が、国勢調査と人口動態統計をもとに5年ごとに完全生命表を、毎年推計人口をもとに簡易生命表を公表している。生命表は年齢構成の影響を受けないから、地域や時代の健康水準を比べる指標として使いやすく、平均寿命は総合的な保健福祉水準の指標とされているんだ。
医学生医学生
臨床実習で高齢の患者さんの治療方針を相談したときも、その年齢の平均余命を意識すると考えやすそうです。
ドクタードクター
そうだね。がん検診や治療の利益が得られるまでの期間と、その人の平均余命を比べて考える場面は実際にある。数式の意味を理解しておくと、臨床判断にも応用できるよ。

まとめ

生命表における生存数lxは出生10万人のうちx歳に達する人数、Txはx歳以上の定常人口の総和であり、x歳に達した人々がその後に生きる延べ年数に相当します。したがってx歳の平均余命はTx/lxで求められ、0歳の平均余命T0/l0が平均寿命です。x歳まで生き残った集団ではそれ以前の死亡者が除かれるため、平均余命は「平均寿命−x」より通常長く、Tx/lx+xは平均余命ではなく死亡時の期待年齢を表します。生命表は年齢構成の影響を受けない指標として、日本では完全生命表と簡易生命表が作成され、集団の健康水準の比較に用いられます。式を「延べ生存年数÷人数」という意味で理解しておくことが、統計問題を確実に解き、臨床で患者の余命を考える土台になります。

解答・解説

正解はbです

【テーマ】生命表における平均余命の定義と、生存数(lx)・定常人口(Tx)との関係を問う問題である。選択肢は数式で示されており、a: T0/l0、b: Tx/lx、c: Tx+1/lx+1、d: T0/l0 − x、e: Tx/lx + x である。

用語の確認

・生存数 lx: 生命表では出生時の10万人(l0 = 100,000)が、その年の年齢別死亡率に従って死亡していくと仮定する。そのうちx歳ちょうどに達するまで生き残っている人数がlxである。 ・定常人口 Lx: 毎年10万人が生まれ、年齢別死亡率が一定のまま変わらないと仮定すると、人口の総数も年齢構成も一定に保たれる。この仮想的な人口のうち、x歳以上x+1歳未満の人数をLxという。これは、x歳に達したlx人がその1年間に生存した延べ年数(人年)に等しい。 ・Tx: x歳以上の定常人口の合計、すなわち Tx = Lx + Lx+1 + Lx+2 + … である。言い換えると、x歳に達したlx人が、x歳以降に死亡するまでに生きる年数の総和(延べ生存年数)である。

平均余命の導き方

x歳の平均余命(ex)とは、x歳に達した人が、その後平均してあと何年生きられるかという期待値である。x歳以降の延べ生存年数Txを、x歳時点の生存者数lxで割れば、1人当たりの残りの生存年数が求められる。  ex = Tx / lx 生存数を縦軸、年齢を横軸にとった生存曲線を描くと、Txはx歳より右側の曲線の下の面積に相当し、それを曲線の高さlxで割ったものが平均余命であるとイメージするとわかりやすい。

簡単な計算例

例えば、ある年齢xで1,000人が生存しており、その人々がx歳以降に生きる年数をすべて合計すると30,000人年になるとすれば、Tx = 30,000、lx = 1,000 であり、平均余命は 30,000 ÷ 1,000 = 30年となる。

選択肢考察

  1. ×a.  

    選択肢aは T0/l0 である。0歳の生存数(出生数)l0で、0歳以上の定常人口の総和T0を割ったもので、0歳の平均余命、すなわち平均寿命を表す。x歳の平均余命ではない(x = 0 のときにのみ一致する)。

  2. ○b.  

    選択肢bは Tx/lx である。Txはx歳に達したlx人がその後死亡するまでに生きる延べ年数に等しいので、これをlxで割れば1人当たりの残りの生存年数、すなわちx歳の平均余命になる。平均余命の定義式そのものである。

  3. ×c.  

    選択肢cは Tx+1/lx+1 である。分子・分母ともにx+1歳の値であり、これはx+1歳の平均余命を表す。x歳の平均余命ではない。

  4. ×d.  

    選択肢dは T0/l0 − x である。平均寿命からx年を差し引いたものだが、x歳まで生き残った人は、それまでに死亡した人を含まない集団であるため、その平均余命は「平均寿命−x」より長くなるのが普通である。年齢ごとに死亡率が異なることを考慮していないため誤りである。

  5. ×e.  

    選択肢eは Tx/lx + x である。x歳の平均余命に現在の年齢xを足したもので、x歳まで生きた人が平均して何歳まで生きるかという「死亡時の平均年齢(期待寿命)」を表す。あと何年生きられるかという平均余命とは異なる。

生命表の主な関数

・死亡率 qx: x歳ちょうどの人がx+1歳に達する前に死亡する確率 ・生存数 lx: 出生10万人のうちx歳に達するまで生き残る人数(lx+1 = lx × (1 − qx)) ・死亡数 dx: x歳以上x+1歳未満で死亡する人数(dx = lx − lx+1) ・定常人口 Lx: x歳以上x+1歳未満の定常人口(x歳に達した人がその1年間に生きる延べ年数) ・Tx: x歳以上の定常人口の総和(Tx = Σ Lx) ・平均余命 ex = Tx / lx ・平均寿命 = 0歳の平均余命 e0 = T0 / l0

平均寿命・平均余命の性質

・生命表はある期間の年齢別死亡率をもとに作られる仮想集団の指標であり、年齢構成の影響を受けないため、異なる集団や時代の健康水準の比較に用いられる。平均寿命は総合的な保健福祉水準の指標とされる。 ・日本では厚生労働省が、国勢調査と人口動態統計をもとに5年ごとに完全生命表、毎年推計人口をもとに簡易生命表を作成・公表している。 ・平均余命は年齢が上がるにつれて必ず短くなるとは限らない。乳児死亡率が高い集団では、危険な時期を乗り越えた1歳の平均余命が0歳の平均余命(平均寿命)より長くなることがある。 ・x歳の平均余命にxを足した値は年齢が高いほど大きくなる。高齢まで生き残った人ほど、平均的にはより高い年齢まで生きると期待される。

POINT

・x歳の平均余命 ex = Tx / lx(Tx: x歳以上の定常人口の総和、lx: x歳の生存数)。 ・平均寿命 = 0歳の平均余命 = T0 / l0。 ・Txは、x歳に達したlx人がその後に生きる延べ年数(生存曲線のx歳以降の面積)である。 ・「平均寿命 − x」はx歳の平均余命にはならない(x歳までの死亡者が除かれているため、通常それより長い)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。