15分後のショック、犯人を探せ―即時型アレルギーにはプリックテスト
第109回医師国家試験 I問題 第4問
国試問題にチャレンジ
食物摂取15分後にショックを起こした患者の原因検索に有用なのはどれか。
- a.パッチテスト
- b.皮膚感作試験
- c.プリックテスト
- d.リンパ球刺激試験
- e.特異的IgGの検出
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
食物摂取から数分〜2時間以内に起こるショックは、IgEを介するⅠ型(即時型)アレルギーによるアナフィラキシーを考え、原因検索にはプリックテストや皮内テスト、血清特異的IgE抗体測定など即時型反応をとらえる検査を用います。プリックテストは表皮をごく浅く刺して抗原を入れ15〜20分後に膨疹を判定する検査で、皮内テストより全身反応を起こしにくい利点があります。パッチテスト、皮膚感作試験、リンパ球刺激試験はT細胞によるⅣ型(遅延型)反応をみる検査であり、特異的IgGは健常者でも検出されるため食物アレルギーの診断には役立ちません。検査陽性は感作を示すにすぎず確定には食物経口負荷試験が必要で、皮膚テストはアナフィラキシー後数週間あけ、抗ヒスタミン薬を休薬して行います。アレルギーの型と検査を対応づけて理解することは、原因の特定と再発予防の指導に直結します。
解答・解説
正解はcです
病態の判断
食物を摂取してから15分という短時間でショックに至っている。抗原の侵入から数分〜2時間以内に、皮膚・呼吸器・消化器・循環器など複数の臓器に急速に症状が出現する全身性の過敏反応がアナフィラキシーであり、血圧低下や意識障害を伴うものをアナフィラキシーショックという。食物によるアナフィラキシーは、ほとんどがIgE(免疫グロブリンE)を介するⅠ型(即時型)アレルギーである。
Ⅰ型アレルギーの機序
あらかじめ抗原に感作されてできた特異的IgE抗体が、マスト細胞(肥満細胞)や好塩基球の表面にあるIgE受容体に結合している。そこへ再び抗原が入り、複数のIgE同士を橋渡し(架橋)すると、細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質が放出され、血管拡張、血管透過性亢進、気管支収縮、平滑筋収縮などが急速に起こる。
設問の考え方
原因検索には、この「特異的IgEによる即時型反応」をとらえる検査を選べばよい。生体で確かめる皮膚テストとしてはプリックテスト(スクラッチテスト)や皮内テストがあり、試験管内の検査としては血清特異的IgE抗体の測定がある。これらは15〜20分程度で判定する即時型反応をみる検査である。これに対し、パッチテスト、皮膚感作試験、リンパ球刺激試験はT細胞が担う細胞性免疫(Ⅳ型、遅延型)をみる検査であり、特異的IgGはⅠ型アレルギーとは別の免疫反応にかかわる抗体である。したがって、本問ではプリックテストが有用である。
選択肢考察
- ×a. パッチテスト
パッチテストは、被検物質を絆創膏状の器具で背部などの皮膚に貼付し、通常48時間後に除去して、48時間後・72時間後(必要に応じて1週間後)に紅斑・浮腫・丘疹・小水疱の有無を判定する検査である。感作T細胞による遅延型(Ⅳ型)反応をみるもので、金属や化粧品、外用薬などによるアレルギー性接触皮膚炎の原因検索に用いられる。食物摂取後15分で起こるIgE依存性の即時型反応の原因検索には適さない。
- ×b. 皮膚感作試験
皮膚感作試験は、DNCB(ジニトロクロロベンゼン)など通常は接触しない化学物質で意図的に皮膚を感作し、一定期間後に再度少量を塗布して遅延型反応が起こるかをみる検査である。新たな抗原に対して細胞性免疫を成立させる能力を評価するもので、反応が出なければ細胞性免疫の低下が示唆される。ツベルクリン反応と同様に細胞性免疫(Ⅳ型)の評価法であり、特定の食物に対するIgE依存性の即時型アレルギーの原因を探す目的には使われない。
- ○c. プリックテスト
プリックテストは、アレルゲンエキス(または食物そのもの)を前腕屈側などの皮膚に1滴置き、専用の針(プリック針や細い注射針)で表皮をごく浅く刺して抗原を皮内に入れ、15〜20分後に膨疹と発赤の大きさを測定する検査である。陽性対照(ヒスタミン)と陰性対照(生理食塩液)を同時に置いて比較する。皮膚のマスト細胞に結合した特異的IgEが抗原と反応して起こる即時型反応をみるので、食物摂取直後のアナフィラキシーのようなⅠ型アレルギーの原因検索に有用である。皮内テストより注入される抗原量が少ないため、全身反応を起こしにくく比較的安全である。果物や野菜など市販のエキスで抗原性が失われやすいものは、食物を刺した針で続けて皮膚を刺すprick-to-prick法も用いられる。なお、抗ヒスタミン薬の内服中は偽陰性となるため一定期間休薬して行う。
- ×d. リンパ球刺激試験
リンパ球刺激試験は、患者の末梢血からリンパ球を分離し、疑わしい抗原(主に薬剤)を加えて培養し、感作されたT細胞が増殖するかを調べる試験管内の検査である。増殖の程度は放射性標識したチミジン(3H-thymidine)がDNAに取り込まれる量などで判定する。薬剤を用いる場合は薬剤リンパ球刺激試験(DLST)と呼ばれ、薬疹や薬剤性肝障害、薬剤性肺炎など、T細胞が関与する遅延型の薬剤アレルギーの原因推定に用いられる。IgEを介する即時型の食物アレルギーの原因検索には用いない。
- ×e. 特異的IgGの検出
特異的IgG抗体は、免疫複合体が組織に沈着して補体を活性化するⅢ型アレルギー(過敏性肺炎、血清病など)などの評価に用いられる。生体内ではArthus反応、試験管内では沈降反応、凝集反応、補体結合反応などで検出される。食物に対する特異的IgG(IgG4を含む)は、その食物を日常的に食べている健常者でも普通に検出されるものであり、食物アレルギーの診断には役立たないとされている。即時型アレルギーの原因検索で測定すべきは特異的IgEである。
アレルギー反応の型と主な検査
・Ⅰ型(即時型、IgE依存性):アナフィラキシー、食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹など。検査はプリックテスト、スクラッチテスト、皮内テスト(いずれも15〜20分後に判定)、血清特異的IgE抗体測定、好塩基球活性化試験、経口負荷試験など。 ・Ⅱ型(細胞傷害型、IgG・IgMが細胞表面抗原に結合):自己免疫性溶血性貧血、不適合輸血、Basedow病、重症筋無力症など。検査はCoombs試験、自己抗体の測定など。 ・Ⅲ型(免疫複合体型):血清病、SLEの腎炎、過敏性肺炎(Ⅳ型も関与)など。検査は沈降抗体、補体値、Arthus反応(抗原皮内注射後4〜8時間程度で最大)など。 ・Ⅳ型(遅延型、T細胞依存性):接触皮膚炎、ツベルクリン反応、多くの薬疹など。検査はパッチテスト、皮膚感作試験、リンパ球刺激試験など(判定は48〜72時間後)。
食物アレルギーの診断の進め方
1. 詳しい問診:摂取した食物、摂取から症状出現までの時間、症状の内容、運動や薬剤(NSAIDsなど)の関与の有無(食物依存性運動誘発アナフィラキシーの可能性)。 2. 血清特異的IgE抗体測定や皮膚プリックテストで感作の有無を確認する。ただし、陽性は「感作されている」ことを示すにすぎず、必ずしも症状が出るとは限らない(偽陽性がありうる)。 3. 確定診断のゴールドスタンダードは食物経口負荷試験である。ただしアナフィラキシーを起こしうるため、救急対応ができる体制のもとで慎重に行う。重篤なアナフィラキシーの既往があり原因が明らかな場合は、負荷試験を行わずに除去を指導することもある。
検査時期の注意
アナフィラキシーの直後はマスト細胞の化学伝達物質が消費されているなどの理由で皮膚テストが偽陰性になりうるため、皮膚テストは発症から数週間(目安として4週間程度)あけて行うのが望ましいとされる。また、抗ヒスタミン薬は皮膚テストの反応を抑えるため、事前に休薬が必要である。
アナフィラキシーの初期対応
第一選択はアドレナリンの筋注(大腿前外側部、0.01 mg/kg、成人最大0.5 mg、小児最大0.3 mg)である。仰臥位で下肢を挙上し、酸素投与、大量輸液を行う。再発予防として原因食物の除去と、アドレナリン自己注射薬(エピペン®)の携帯を指導する。
POINT
・食物摂取後数分〜2時間以内のショックはⅠ型(IgE依存性、即時型)アレルギーによるアナフィラキシーを考える。 ・Ⅰ型アレルギーの原因検索:プリックテスト、スクラッチテスト、皮内テスト、血清特異的IgE抗体。確定は食物経口負荷試験。 ・パッチテスト、皮膚感作試験、リンパ球刺激試験はⅣ型(遅延型、細胞性免疫)の検査。 ・特異的IgGはⅢ型アレルギーなどの評価に用い、食物アレルギーの診断には役立たない。
