StudyMed医師国家試験

折れやすい骨、青い白目、聞こえにくい耳―3つの手がかりでつながるI型コラーゲンの病気

第109回医師国家試験 I問題 第22問

国試問題にチャレンジ

第109回 I問題 第22問

軽微な外傷による複数回の四肢の骨折歴があり,難聴を伴う18歳男子の眼の写真を別に示す。  診断として最も考えられるのはどれか。

第109回 I問題 第22問の問題画像
  1. a.先端巨大症
  2. b.大理石骨病
  3. c.軟骨無形成症
  4. d.骨形成不全症
  5. e.原発性骨粗鬆症

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、若い人が軽いけがで骨折を繰り返すとき、何を考えるかという問題だ。骨折だけを見るのではなく、骨以外の所見、つまり眼の写真と難聴をどう結びつけるかが着眼点になる。まず眼の写真からどんな印象を受けたかな。
医学生医学生
白目の部分が青っぽく見えます。眼科の講義で青色強膜という言葉を聞いた覚えがあります。
ドクタードクター
その通り、青色強膜だ。では、なぜ白目が青く見えるのか説明できるかな。
医学生医学生
何かの色素が沈着しているのでしょうか。
ドクタードクター
そう考えがちだけど、実は逆なんだ。強膜はI型コラーゲンを主成分とする丈夫な膜で、これが薄くなると、その下にある脈絡膜の暗い色素が透けて青く見える。何かが付け加わったのではなく、壁が薄くなった結果なんだよ。
医学生医学生
なるほど、透けて見えているんですね。I型コラーゲンが弱いなら、骨も弱くなりそうです。
ドクタードクター
まさにそこがつながるポイント。骨の基質の主成分もI型コラーゲンだから、その量や質に異常があると骨が脆くなり、軽い外力で骨折する。さらに耳小骨も影響を受けて、伝音難聴を中心とした難聴が出てくる。易骨折性、青色強膜、難聴の3つがそろえば、骨形成不全症を考えるのが定石だ。
医学生医学生
生化学の講義で、コラーゲンはGly-X-Yの繰り返しでできた三重らせんだと習いました。そこに異常があるということですか。
ドクタードクター
よく覚えているね。多くはCOL1A1またはCOL1A2遺伝子の変異による常染色体優性遺伝で、三重らせんがうまく形成されなかったり、コラーゲンの量が足りなかったりする。I型コラーゲンは歯の象牙質や靱帯にもあるので、象牙質形成不全や関節の過可動性を伴うこともあるんだ。難聴は思春期から成人期にかけて出てくることが多いから、18歳という年齢ともよく合っている。
医学生医学生
骨折と難聴だけだと、大理石骨病も当てはまりませんか。過去問演習で見た気がします。
ドクタードクター
鋭い指摘だね。大理石骨病は破骨細胞の機能障害で骨吸収ができず、骨が硬くなりすぎる病気だ。硬いのに脆くて折れやすく、頭蓋底の骨が厚くなって神経の通り道が狭まるため、難聴や視神経障害を起こしうる。だから確かに一部の症状は重なる。でも青色強膜は伴わないし、X線では骨が真っ白に写る骨硬化が特徴で、骨髄腔が狭くなるので貧血や肝脾腫を伴うこともある。骨量が減っている骨形成不全症とは正反対の画像になるんだ。
医学生医学生
どちらも骨が脆いのに、片方は弱すぎて、片方は硬すぎるということですね。
ドクタードクター
いい整理の仕方だ。ほかの選択肢も確認しよう。原発性骨粗鬆症はどうかな。
医学生医学生
閉経後の女性や高齢者に多いので、18歳の男子では考えにくいです。
ドクタードクター
その通り。若い人の骨量低下を見たら、まず遺伝性疾患や内分泌疾患、ステロイドなどの薬剤による続発性のものを探すのが原則だ。軟骨無形成症はFGFR3遺伝子の変異で軟骨内骨化が障害され、四肢の近位部が短い低身長が主体になる病気で、骨折しやすさや青色強膜は特徴ではない。先端巨大症は成長ホルモン過剰による手足や顔貌の変化が中心で、今回の3徴は説明できない。
医学生医学生
骨折を繰り返す若い人では、白目の色を見ることが診断の近道になるんですね。
ドクタードクター
そう。軽症例は見逃されやすいから、骨折で受診した若い人の強膜を観察する習慣は大切だ。発展知識として、病型はSillence分類が古典的で、I型は最も軽症で青色強膜がはっきりしており身長はほぼ正常、II型は周産期致死型、III型は進行性の変形を伴う重症型だ。X線では骨量減少や長管骨の弯曲、頭蓋骨のWorm骨がみられることがある。
医学生医学生
治療はどうするんですか。骨粗鬆症と同じ薬が使えるのでしょうか。
ドクタードクター
ビスホスホネート製剤、たとえばパミドロン酸の点滴で骨折の頻度を減らすことが期待できる。骨折や変形に対しては髄内釘を使った矯正骨切り・固定などの整形外科治療を行い、難聴には補聴器やアブミ骨の手術が検討される。それから臨床でとても大事なのが、乳幼児の多発骨折では児童虐待との鑑別が必要になることだ。
医学生医学生
小児科の臨床実習で、多発骨折の赤ちゃんでは虐待を必ず考えるように言われました。逆に骨形成不全症を見落とさないことも大事なんですね。
ドクタードクター
その両面が大事だ。青色強膜や家族歴、Worm骨は骨形成不全症を示唆する手がかりになる。どちらの診断も家族の人生を大きく左右するから、所見を丁寧に拾うことが求められるんだ。

まとめ

軽微な外傷での骨折の反復、青色強膜、難聴の3徴がそろえば、骨形成不全症を考えます。原因はCOL1A1/COL1A2遺伝子変異などによるI型コラーゲンの異常で、骨だけでなく強膜(薄くなり脈絡膜が透見される)、耳小骨、象牙質、靱帯にも影響が及びます。同じく骨折と難聴をきたしうる大理石骨病とは、青色強膜がなくX線で骨硬化を示す点で区別でき、若年男性という点から原発性骨粗鬆症も考えにくくなります。治療はビスホスホネート製剤と骨折・変形に対する整形外科治療が中心で、乳幼児の多発骨折では児童虐待との鑑別も重要です。骨以外の所見から全身の結合組織の異常を読み解く姿勢は、遺伝性骨疾患全般の診断に役立ちます。

解答・解説

正解はdです

所見の整理

・18歳男子 ・軽微な外傷で四肢の骨折を繰り返している(易骨折性) ・難聴を伴う ・眼の写真:白目にあたる強膜が青みを帯びて見える(青色強膜)

診断へのプロセス

若年者が軽い外力で骨折を繰り返す場合、骨そのものが脆い先天性・遺伝性の骨疾患をまず考える。そのうえで、骨以外の所見に注目すると、「易骨折性」「青色強膜」「難聴」の組み合わせは骨形成不全症の古典的な3徴である。 青色強膜は、I型コラーゲンの異常により強膜が薄く透けやすくなり、その下の脈絡膜(ぶどう膜)の暗い色素が透見されて青く見える所見である。難聴は耳小骨の脆弱化・変形などによる伝音難聴を主体とし、思春期から成人期にかけて出現・進行することが多い。本例の年齢で難聴を伴っていることもよく合致する。 鑑別として、易骨折性と難聴の両方をきたしうる大理石骨病が重要であるが、こちらは骨が硬化する疾患で青色強膜は伴わず、単純X線で骨の濃度が著しく高い点で区別できる。高齢者に多い原発性骨粗鬆症や、低身長が主体の軟骨無形成症、成長ホルモン過剰による先端巨大症は、本例の3徴を説明できない。

選択肢考察

  1. ×a.  先端巨大症

    成長ホルモン(GH)産生下垂体腺腫により、骨端線閉鎖後にGHが過剰となって生じる疾患である。手足の肥大、眉弓・下顎の突出、口唇・舌の肥大などの顔貌変化、発汗過多、耐糖能異常、高血圧、睡眠時無呼吸などをきたす。続発性骨粗鬆症や椎体骨折のリスクはあるが、若年期からの四肢骨折の反復、青色強膜、難聴を特徴とする疾患ではない。

  2. ×b.  大理石骨病

    破骨細胞の機能障害により骨吸収が行われず、全身の骨が硬化する遺伝性疾患である。骨は硬いが脆く病的骨折を起こしやすく、また頭蓋底の骨肥厚による神経孔の狭小化で視神経萎縮や難聴などの脳神経障害を生じうるため、本例と一部の症状が重なる。しかし青色強膜は伴わない。また骨髄腔が狭くなるため貧血・汎血球減少や肝脾腫(髄外造血)をきたすことがあり、単純X線では骨の著明な高吸収(骨硬化)、椎体のrugger-jersey sign(サンドイッチ状の硬化像)などが特徴である。

  3. ×c.  軟骨無形成症

    線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)遺伝子の機能獲得型変異により、成長軟骨での軟骨内骨化が障害される常染色体優性遺伝疾患である。四肢近位部優位の短縮を伴う低身長、相対的に大きな頭部、前額部突出、鼻根部陥凹、三尖手などが特徴で、大後頭孔狭窄や脊柱管狭窄を合併する。骨の脆弱性による易骨折性や青色強膜は特徴ではない。

  4. ○d.  骨形成不全症

    易骨折性・青色強膜・難聴の3徴がそろっており、最も考えられる。骨形成不全症は、骨の基質の主成分であるI型コラーゲンの量的・質的異常(多くはCOL1A1またはCOL1A2遺伝子の変異による常染色体優性遺伝)によって骨が脆弱となる遺伝性疾患である。軽微な外力で骨折を繰り返し、長管骨の変形や脊柱側弯を伴うことがある。I型コラーゲンは強膜、象牙質、靱帯にも含まれるため、青色強膜、象牙質形成不全(歯の変色・脆弱化)、関節の過可動性もみられる。軽症例では見逃されやすく、骨折を繰り返す若年者では強膜の色を観察することが診断の糸口になる。

  5. ×e.  原発性骨粗鬆症

    閉経後骨粗鬆症や老人性骨粗鬆症が代表で、閉経後女性や高齢者に好発し、椎体、大腿骨近位部、橈骨遠位端などの脆弱性骨折をきたす。18歳男子は好発年齢から大きく外れ、青色強膜や難聴を伴うことも説明できない。若年者の低骨量では、まず骨形成不全症などの遺伝性疾患や、内分泌疾患・薬剤による続発性骨粗鬆症を考える。

骨形成不全症の概要

・病態:I型コラーゲンの合成異常による全身の結合組織疾患。I型コラーゲンを多く含む骨、強膜、歯の象牙質、皮膚、靱帯、耳小骨が障害される。 ・遺伝形式:多くはCOL1A1/COL1A2遺伝子変異による常染色体優性遺伝。コラーゲンの修飾・プロセシングに関わる遺伝子の異常による常染色体劣性遺伝の病型もある。 ・病型:Sillence分類が古典的に用いられる。I型は最も軽症で青色強膜が明瞭、身長はほぼ正常。II型は周産期致死型、III型は進行性の骨変形を伴う重症型、IV型は中等症で強膜は正常に近いことが多い。 ・症状:易骨折性、長管骨の弯曲・変形、低身長、脊柱側弯、青色強膜、難聴(伝音性から混合性、思春期〜成人期に出現しやすい)、象牙質形成不全、関節弛緩、皮膚の菲薄化など。骨折の頻度は思春期以降に減少する傾向がある。 ・画像所見:骨量減少、長管骨の細さ・弯曲、多発骨折の痕跡、頭蓋骨の縫合部にみられるWorm骨(ウォルム骨)など。 ・治療:ビスホスホネート製剤(パミドロン酸の点滴静注など)で骨折頻度の減少が期待できる。骨折や変形に対しては、髄内釘(伸縮性髄内釘を含む)による矯正骨切り・固定などの整形外科治療を行う。難聴には補聴器やアブミ骨手術が検討される。

易骨折性をきたす主な疾患の見分け方

・骨形成不全症:若年発症、青色強膜、難聴、X線で骨量減少 ・大理石骨病:X線で全身骨硬化、貧血・汎血球減少、脳神経障害 ・原発性骨粗鬆症:閉経後女性・高齢者、椎体・大腿骨近位部骨折 ・くる病・骨軟化症:ビタミンD不足やリン利尿の亢進による骨石灰化障害、X線で骨端線の拡大・杯状変形(くる病)や偽骨折(骨軟化症)

鑑別上の注意

乳幼児の多発骨折では、児童虐待との鑑別が重要となる。青色強膜、家族歴、Worm骨などの所見は骨形成不全症を示唆する手がかりである。

POINT

・骨形成不全症の3徴:易骨折性、青色強膜、難聴。 ・原因はI型コラーゲンの異常(COL1A1/COL1A2変異、多くは常染色体優性遺伝)。象牙質形成不全、関節弛緩も伴う。 ・青色強膜は薄くなった強膜から脈絡膜が透見されるため。 ・大理石骨病も骨折と難聴をきたすが、骨硬化(X線で高吸収)で青色強膜はない。 ・治療の中心はビスホスホネートと骨折・変形に対する整形外科治療。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。