折れやすい骨、青い白目、聞こえにくい耳―3つの手がかりでつながるI型コラーゲンの病気
第109回医師国家試験 I問題 第22問
国試問題にチャレンジ
軽微な外傷による複数回の四肢の骨折歴があり,難聴を伴う18歳男子の眼の写真を別に示す。 診断として最も考えられるのはどれか。

- a.先端巨大症
- b.大理石骨病
- c.軟骨無形成症
- d.骨形成不全症
- e.原発性骨粗鬆症
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
軽微な外傷での骨折の反復、青色強膜、難聴の3徴がそろえば、骨形成不全症を考えます。原因はCOL1A1/COL1A2遺伝子変異などによるI型コラーゲンの異常で、骨だけでなく強膜(薄くなり脈絡膜が透見される)、耳小骨、象牙質、靱帯にも影響が及びます。同じく骨折と難聴をきたしうる大理石骨病とは、青色強膜がなくX線で骨硬化を示す点で区別でき、若年男性という点から原発性骨粗鬆症も考えにくくなります。治療はビスホスホネート製剤と骨折・変形に対する整形外科治療が中心で、乳幼児の多発骨折では児童虐待との鑑別も重要です。骨以外の所見から全身の結合組織の異常を読み解く姿勢は、遺伝性骨疾患全般の診断に役立ちます。
解答・解説
正解はdです
所見の整理
・18歳男子 ・軽微な外傷で四肢の骨折を繰り返している(易骨折性) ・難聴を伴う ・眼の写真:白目にあたる強膜が青みを帯びて見える(青色強膜)
診断へのプロセス
若年者が軽い外力で骨折を繰り返す場合、骨そのものが脆い先天性・遺伝性の骨疾患をまず考える。そのうえで、骨以外の所見に注目すると、「易骨折性」「青色強膜」「難聴」の組み合わせは骨形成不全症の古典的な3徴である。 青色強膜は、I型コラーゲンの異常により強膜が薄く透けやすくなり、その下の脈絡膜(ぶどう膜)の暗い色素が透見されて青く見える所見である。難聴は耳小骨の脆弱化・変形などによる伝音難聴を主体とし、思春期から成人期にかけて出現・進行することが多い。本例の年齢で難聴を伴っていることもよく合致する。 鑑別として、易骨折性と難聴の両方をきたしうる大理石骨病が重要であるが、こちらは骨が硬化する疾患で青色強膜は伴わず、単純X線で骨の濃度が著しく高い点で区別できる。高齢者に多い原発性骨粗鬆症や、低身長が主体の軟骨無形成症、成長ホルモン過剰による先端巨大症は、本例の3徴を説明できない。
選択肢考察
- ×a. 先端巨大症
成長ホルモン(GH)産生下垂体腺腫により、骨端線閉鎖後にGHが過剰となって生じる疾患である。手足の肥大、眉弓・下顎の突出、口唇・舌の肥大などの顔貌変化、発汗過多、耐糖能異常、高血圧、睡眠時無呼吸などをきたす。続発性骨粗鬆症や椎体骨折のリスクはあるが、若年期からの四肢骨折の反復、青色強膜、難聴を特徴とする疾患ではない。
- ×b. 大理石骨病
破骨細胞の機能障害により骨吸収が行われず、全身の骨が硬化する遺伝性疾患である。骨は硬いが脆く病的骨折を起こしやすく、また頭蓋底の骨肥厚による神経孔の狭小化で視神経萎縮や難聴などの脳神経障害を生じうるため、本例と一部の症状が重なる。しかし青色強膜は伴わない。また骨髄腔が狭くなるため貧血・汎血球減少や肝脾腫(髄外造血)をきたすことがあり、単純X線では骨の著明な高吸収(骨硬化)、椎体のrugger-jersey sign(サンドイッチ状の硬化像)などが特徴である。
- ×c. 軟骨無形成症
線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)遺伝子の機能獲得型変異により、成長軟骨での軟骨内骨化が障害される常染色体優性遺伝疾患である。四肢近位部優位の短縮を伴う低身長、相対的に大きな頭部、前額部突出、鼻根部陥凹、三尖手などが特徴で、大後頭孔狭窄や脊柱管狭窄を合併する。骨の脆弱性による易骨折性や青色強膜は特徴ではない。
- ○d. 骨形成不全症
易骨折性・青色強膜・難聴の3徴がそろっており、最も考えられる。骨形成不全症は、骨の基質の主成分であるI型コラーゲンの量的・質的異常(多くはCOL1A1またはCOL1A2遺伝子の変異による常染色体優性遺伝)によって骨が脆弱となる遺伝性疾患である。軽微な外力で骨折を繰り返し、長管骨の変形や脊柱側弯を伴うことがある。I型コラーゲンは強膜、象牙質、靱帯にも含まれるため、青色強膜、象牙質形成不全(歯の変色・脆弱化)、関節の過可動性もみられる。軽症例では見逃されやすく、骨折を繰り返す若年者では強膜の色を観察することが診断の糸口になる。
- ×e. 原発性骨粗鬆症
閉経後骨粗鬆症や老人性骨粗鬆症が代表で、閉経後女性や高齢者に好発し、椎体、大腿骨近位部、橈骨遠位端などの脆弱性骨折をきたす。18歳男子は好発年齢から大きく外れ、青色強膜や難聴を伴うことも説明できない。若年者の低骨量では、まず骨形成不全症などの遺伝性疾患や、内分泌疾患・薬剤による続発性骨粗鬆症を考える。
骨形成不全症の概要
・病態:I型コラーゲンの合成異常による全身の結合組織疾患。I型コラーゲンを多く含む骨、強膜、歯の象牙質、皮膚、靱帯、耳小骨が障害される。 ・遺伝形式:多くはCOL1A1/COL1A2遺伝子変異による常染色体優性遺伝。コラーゲンの修飾・プロセシングに関わる遺伝子の異常による常染色体劣性遺伝の病型もある。 ・病型:Sillence分類が古典的に用いられる。I型は最も軽症で青色強膜が明瞭、身長はほぼ正常。II型は周産期致死型、III型は進行性の骨変形を伴う重症型、IV型は中等症で強膜は正常に近いことが多い。 ・症状:易骨折性、長管骨の弯曲・変形、低身長、脊柱側弯、青色強膜、難聴(伝音性から混合性、思春期〜成人期に出現しやすい)、象牙質形成不全、関節弛緩、皮膚の菲薄化など。骨折の頻度は思春期以降に減少する傾向がある。 ・画像所見:骨量減少、長管骨の細さ・弯曲、多発骨折の痕跡、頭蓋骨の縫合部にみられるWorm骨(ウォルム骨)など。 ・治療:ビスホスホネート製剤(パミドロン酸の点滴静注など)で骨折頻度の減少が期待できる。骨折や変形に対しては、髄内釘(伸縮性髄内釘を含む)による矯正骨切り・固定などの整形外科治療を行う。難聴には補聴器やアブミ骨手術が検討される。
易骨折性をきたす主な疾患の見分け方
・骨形成不全症:若年発症、青色強膜、難聴、X線で骨量減少 ・大理石骨病:X線で全身骨硬化、貧血・汎血球減少、脳神経障害 ・原発性骨粗鬆症:閉経後女性・高齢者、椎体・大腿骨近位部骨折 ・くる病・骨軟化症:ビタミンD不足やリン利尿の亢進による骨石灰化障害、X線で骨端線の拡大・杯状変形(くる病)や偽骨折(骨軟化症)
鑑別上の注意
乳幼児の多発骨折では、児童虐待との鑑別が重要となる。青色強膜、家族歴、Worm骨などの所見は骨形成不全症を示唆する手がかりである。
POINT
・骨形成不全症の3徴:易骨折性、青色強膜、難聴。 ・原因はI型コラーゲンの異常(COL1A1/COL1A2変異、多くは常染色体優性遺伝)。象牙質形成不全、関節弛緩も伴う。 ・青色強膜は薄くなった強膜から脈絡膜が透見されるため。 ・大理石骨病も骨折と難聴をきたすが、骨硬化(X線で高吸収)で青色強膜はない。 ・治療の中心はビスホスホネートと骨折・変形に対する整形外科治療。
