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自分でデータを集めない研究とは?―一次研究と二次研究で整理する研究デザイン

第109回医師国家試験 C問題 第9問

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第109回 C問題 第9問

研究を行う本人が患者や対象者の集団に働きかけて直接データを収集しないのはどれか。

  1. a.コホート研究
  2. b.症例対照研究
  3. c.ランダム化比較試験
  4. d.ケースシリーズ研究
  5. e.メタ分析〈メタアナリシス〉

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は研究デザインの分類がテーマだよ。注目してほしいのは「研究者がデータをどこから得ているか」という一点。対象者に自分で働きかけて集めるのか、それとも別のところから材料を持ってくるのか。この視点で選択肢を見直してみよう。
医学生医学生
直接データを集めないと聞くと、昔の記録を使う後ろ向き研究が思い浮かびます。症例対照研究がそうでしょうか。
ドクタードクター
そこが一番の引っかけどころだね。症例対照研究は過去の曝露を調べるから「後ろ向き」になることが多い。でも、症例と対照を誰にするかを決め、面接や診療録から一人ひとりの曝露情報を集めるのは研究者自身だ。時間の向きが過去でも、自分で対象者を定めてデータを集めている以上、これは一次研究なんだ。
医学生医学生
なるほど。前向きか後ろ向きかは時間の方向の話で、データを自分で集めるかどうかとは別の軸なんですね。
ドクタードクター
その通り。研究は大きく一次研究と二次研究に分けられる。一次研究は研究者が対象集団を設定して観察・調査・介入を行い、直接データを得るもの。二次研究はすでに発表された複数の一次研究の結果を集めて評価・統合するものだ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で習ったエビデンスピラミッドの頂点にあった、メタ分析が二次研究ですね。
ドクタードクター
正解。メタ分析は同じテーマで独立に行われた研究の結果を系統的に集め、統計学的に統合してより精度の高い効果の推定値を得る方法だ。材料は公表済みの論文の結果だから、研究者が新たに患者からデータを集めることはない。だからこれが答えになる。
医学生医学生
ほかの選択肢も確認させてください。コホート研究は、曝露の有無で分けた集団を追いかける研究でしたよね。
ドクタードクター
そう。研究者が集団を設定し、曝露と転帰のデータを自ら集める観察研究だ。過去の記録を使う後ろ向きコホートもあるけれど、一次研究であることに変わりはない。相対危険や罹患率を直接計算できるのが強みだね。
医学生医学生
ランダム化比較試験は、むしろ一番積極的に対象者に働きかける研究ですね。
ドクタードクター
まさにそう。無作為に介入群と対照群へ割り付けて、研究者自身が介入を行う介入研究だ。無作為化によって既知・未知の交絡因子が群間で均等になるから、一次研究の中では最もエビデンスレベルが高い。
医学生医学生
ケースシリーズ研究は対照群もないし、症例を並べるだけなので少し迷いました。
ドクタードクター
対照がないぶん因果関係の検証には弱いけれど、同じ疾患や治療の患者を研究者自身が集めて経過を記述する記述研究だから、やはり一次研究だよ。新しい疾患や稀な副作用の最初の報告に使われることが多いんだ。
医学生医学生
臨床実習で症例報告の抄録を書いたとき、カルテを一から読み込んだのを思い出しました。あれも自分でデータを集めていたんですね。
ドクタードクター
いい実感だね。発展知識として、メタ分析の前段階には系統的レビューがある。あらかじめ決めた検索方法と選択基準で研究を網羅的に探し、質を評価してまとめる手法で、その結果を数量的に統合するのがメタ分析だ。結果はフォレストプロットで示されることが多い。
医学生医学生
メタ分析なら、どんな研究でも結論が強くなるんでしょうか。
ドクタードクター
そこは注意が必要だね。有意な結果ほど公表されやすい出版バイアスがあると統合結果が偏るし、ファンネルプロットはその検討に使われる。研究同士の対象や方法がばらばらだと異質性も問題になる。統合される個々の研究の質が低ければ、メタ分析の結論も信頼できない。論文を読むときは「頂点だから正しい」と鵜呑みにせず、何を統合しているかまで確認しよう。

まとめ

研究は、研究者が自ら対象者を設定してデータを集める一次研究と、既に公表された複数の研究結果を集めて統合する二次研究に分けられます。コホート研究、症例対照研究、ランダム化比較試験、ケースシリーズ研究はいずれも一次研究であり、後ろ向きに既存の記録を使う場合でも研究者自身が対象者を定めてデータを集める点は変わりません。メタ分析は系統的レビューで集めた研究結果を統計学的に統合する二次研究で、新たに対象者からデータを収集しないため本問の答えとなります。RCTのメタ分析は治療効果に関する最も高いエビデンスレベルに位置づけられますが、出版バイアスや研究間の異質性、元の研究の質に左右される点にも注意が必要です。研究デザインの特徴を理解することは、論文を批判的に読み、診療に適切にエビデンスを活かすための基本となります。

解答・解説

正解はeです

臨床研究・疫学研究は、研究者がデータをどこから得るかによって大きく二つに分けて考えることができる。 ・一次研究(原著研究):研究者自身が患者や対象集団を設定し、観察・調査・介入を行って直接データを集め、解析する研究。記述研究(症例報告、ケースシリーズなど)、観察研究(横断研究、症例対照研究、コホート研究など)、介入研究(ランダム化比較試験など)がこれに当たる。 ・二次研究:すでに発表された複数の一次研究の結果を収集・評価・統合する研究。系統的レビュー(システマティックレビュー)やメタ分析がこれに当たる。 本問は「研究者本人が対象者に働きかけて直接データを収集しない」研究デザインを問うている。選択肢のうちコホート研究、症例対照研究、ランダム化比較試験、ケースシリーズ研究はいずれも研究者が対象者を設定してデータを得る一次研究である(既存の診療録などを用いる後ろ向き研究であっても、研究者自身が対象者を定めて個々のデータを集める点は変わらない)。これに対し、メタ分析は既に公表された研究の結果を材料として統計的に統合する二次研究であり、研究者が新たに対象者からデータを集めることはない。

選択肢考察

  1. ×a.  コホート研究

    該当しない。コホート研究は、ある要因(曝露)の有無で分けた集団を追跡し、その後の疾病発生などを比較する観察研究である。研究者が対象集団を設定し、曝露情報や転帰(アウトカム)のデータを自ら収集する一次研究である。前向きに追跡するものが典型だが、過去の記録を利用して追跡する後ろ向きコホート研究もある。相対危険(リスク比)や罹患率を直接算出できる。

  2. ×b.  症例対照研究

    該当しない。症例対照研究は、疾病をもつ人(症例)と疾病をもたない人(対照)を選び、過去の要因への曝露状況を面接や記録から調べて比較する観察研究である。研究者が症例と対照を選定し、曝露に関するデータを収集する一次研究である。まれな疾患の研究に向き、関連の強さはオッズ比で評価する。想起バイアスなどの影響を受けやすい。

  3. ×c.  ランダム化比較試験

    該当しない。ランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)は、対象者を無作為に介入群と対照群に割り付け、介入(治療など)の効果を比較する介入研究である。研究者が対象者に積極的に働きかけて介入を行い、転帰のデータを収集する典型的な一次研究である。無作為化により既知・未知の交絡因子が群間で均等化されるため、一次研究の中で最もエビデンスレベルが高い。

  4. ×d.  ケースシリーズ研究

    該当しない。ケースシリーズ研究(症例集積研究)は、同じ疾患や同じ治療を受けた複数の患者の臨床経過・所見をまとめて記述する記述研究である。対照群をもたないため因果関係の検証には弱いが、研究者自身が患者を集めてデータを収集・整理する一次研究である。新しい疾患や稀な副作用の最初の報告などに用いられる。

  5. ○e.  メタ分析〈メタアナリシス〉

    該当する。メタ分析は、同じテーマについて独立に行われた複数の研究の結果を系統的に集め、統計学的手法で統合して、より精度の高い効果の推定値を得る方法である。研究者は既に公表された論文などの結果を解析の材料とするため、自ら患者や対象集団に働きかけて新たにデータを収集することはない。個々の研究では症例数が少なく結論が出せない場合でも、統合により検出力を高められる。一方で、出版バイアス(有意な結果の研究ほど公表されやすい)や、統合する研究間の異質性に注意が必要である。

研究デザインの分類

・記述研究:症例報告、ケースシリーズ研究、記述疫学(生態学的研究を含む) ・分析的観察研究:横断研究、症例対照研究、コホート研究 ・介入研究:ランダム化比較試験、非ランダム化比較試験、クロスオーバー試験など ・二次研究:系統的レビュー、メタ分析

系統的レビューとメタ分析

系統的レビューは、あらかじめ定めた検索方法と選択基準に従って関連する研究を網羅的に探し出し、質を評価して結果をまとめる手法である。そのうえで結果を数量的に統合する統計手法がメタ分析であり、結果はフォレストプロット(各研究と統合結果の効果量・信頼区間を並べた図)で示されることが多い。出版バイアスの検討にはファンネルプロットが用いられる。

エビデンスレベル(治療・介入の有効性に関する一般的な序列)

高い順に、ランダム化比較試験の系統的レビュー・メタ分析 > ランダム化比較試験 > 非ランダム化比較試験 > コホート研究 > 症例対照研究 > 横断研究 > ケースシリーズ・症例報告 > 専門家の意見、とされる。ただし、統合される個々の研究の質が低ければ、メタ分析の結論の信頼性も低くなる点に注意する。

前向き研究と後ろ向き研究

前向き・後ろ向きは、データ収集の時間的方向を示す区分である。後ろ向き研究は既存の記録を用いることが多いが、研究者自身が対象者を設定して個別データを集める点で一次研究であり、他の研究の結果を統合する二次研究(メタ分析)とは異なる。

POINT

・メタ分析は既存の複数の研究結果を統計学的に統合する二次研究で、研究者が対象者から直接データを集めない ・コホート研究、症例対照研究、ランダム化比較試験、ケースシリーズ研究は研究者が自らデータを収集する一次研究 ・RCTのメタ分析は治療効果に関する最も高いエビデンスレベルに位置づけられる ・メタ分析では出版バイアスと研究間の異質性に注意する

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。