StudyMed医師国家試験

「ヘミ」が付くかで大違い―デスモソームで読み解く表皮の接着と水疱症

第108回医師国家試験 G問題 第8問

国試問題にチャレンジ

第108回 G問題 第8問

表皮細胞間接着に関与するのはどれか。

  1. a.アミロイド
  2. b.ケラチン
  3. c.セラミド
  4. d.デスモゾーム
  5. e.ヘミデスモゾーム

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、表皮の細胞同士をつなぎ留めている構造を問う問題だ。ポイントは「細胞と細胞の接着」なのか「細胞と基底膜の接着」なのかを区別すること。この区別は、皮膚科の水疱症を理解するうえでも土台になるよ。
医学生医学生
組織学の講義で、表皮は重層扁平上皮だと習いました。細胞同士がしっかりくっついているから、こすっても剥がれないんですよね。
ドクタードクター
その通り。表皮の主体である角化細胞(ケラチノサイト)は、細胞間接着装置で強固に結ばれている。その主役がデスモソーム、日本語では接着斑だ。隣り合う細胞をボタンのように点状に留めている。
医学生医学生
デスモソームとヘミデスモソーム、名前が似ていて正直どちらも接着に関わるので迷いました。
ドクタードクター
迷いやすいところだね。ヘミは「半分」という意味で、ヘミデスモソームはデスモソームを半分にしたような形をしている。表皮の一番下にある基底細胞の底面を、基底膜に固定する構造なんだ。つまり相手は細胞ではなく基質。だから「細胞間」の接着を問う今回の答えにはならない。
医学生医学生
細胞と細胞ならデスモソーム、細胞と基底膜ならヘミデスモソーム、ですね。デスモソームはどんな分子でできているんですか。
ドクタードクター
細胞の外では、カドヘリンファミリーの膜貫通蛋白であるデスモグレインとデスモコリンが、カルシウム依存性に隣の細胞と結合する。細胞の内側では、プラコグロビンやデスモプラキンなどでできた裏打ち板を介して、ケラチン線維につながっている。
医学生医学生
病理実習で、有棘層の細胞の間にトゲのような構造が見えました。あれがデスモソームでしょうか。
ドクタードクター
よく観察していたね。光学顕微鏡で見える「細胞間橋」がデスモソームに相当し、有棘層の名前の由来にもなっている。ではケラチンはどうだろう。今の話にも出てきたけれど。
医学生医学生
デスモソームにつながっているなら、ケラチンも接着に関わっていると言えそうな気がします。
ドクタードクター
そう考えたくなるよね。でもケラチンは上皮細胞の中にある中間径フィラメント、つまり細胞骨格なんだ。接着装置を介して隣の細胞と張力を分担してはいるけれど、細胞同士を直接つなぐ接着分子ではない。角質層や毛、爪の主成分でもある。ちなみにケラチン5や14の遺伝子変異では基底細胞が壊れやすくなり、単純型表皮水疱症になる。
医学生医学生
セラミドは、保湿剤の成分として聞いたことがあります。
ドクタードクター
セラミドは角質層で角質細胞のすき間を埋める細胞間脂質の主成分で、層状構造をとって水分の蒸散を防ぎ、外からの異物の侵入を妨げるバリアの役割を担っている。アトピー性皮膚炎では減少していることが知られているね。ただし役割は保湿とバリアで、細胞同士を機械的に結合させる装置ではない。
医学生医学生
アミロイドは病理の講義で習った、コンゴーレッドで染まる沈着物ですよね。
ドクタードクター
その通り。蛋白が誤って折りたたまれてβシート構造の線維になり、組織に沈着したもので、偏光顕微鏡でアップルグリーンの複屈折を示す。皮膚アミロイドーシスのような病的沈着物であって、正常な表皮の接着とは無関係だ。
医学生医学生
消去法でも、デスモソームが一番すっきり当てはまりますね。
ドクタードクター
では臨床とのつながりも押さえておこう。これらの接着分子に自己抗体ができるとどうなるかな。
医学生医学生
皮膚科の臨床実習で天疱瘡の患者さんを見ました。デスモグレインに対する抗体が原因だと教わりました。
ドクタードクター
そう。抗デスモグレイン3抗体で尋常性天疱瘡、抗デスモグレイン1抗体で落葉状天疱瘡が起こる。細胞同士が離れる棘融解によって表皮内に水疱ができ、ニコルスキー現象が陽性になる。尋常性天疱瘡では口腔粘膜病変が目立つのも特徴だ。一方、ヘミデスモソームを構成するBP180やBP230に対する抗体では水疱性類天疱瘡となり、高齢者に多い緊満性の表皮下水疱ができる。
医学生医学生
蛍光抗体直接法で、天疱瘡は表皮細胞間に網目状、類天疱瘡は基底膜部に線状にIgGが沈着する、というのもその違いを反映しているんですね。
ドクタードクター
まさにそうだ。どこの接着が壊れるかで、水疱のできる深さも、水疱の見た目も、蛍光抗体法のパターンも変わる。高齢者の緊満性水疱か、口腔のびらんを伴う弛緩性の水疱か、といった臨床像の違いも、この構造の違いから理解できるよ。

まとめ

表皮の角化細胞同士をつなぐ細胞間接着の中心はデスモソーム(接着斑)で、デスモグレインやデスモコリンがカルシウム依存性に結合し、細胞内では裏打ち板を介してケラチン線維とつながっています。名前の似たヘミデスモソームは、基底細胞を基底膜に固定する細胞-基質間の接着装置であり、細胞間接着ではありません。ケラチンは細胞内の中間径フィラメント、セラミドは角質層の細胞間脂質としてバリアと保湿を担い、アミロイドは病的な沈着物です。デスモグレインに対する自己抗体では天疱瘡(表皮内水疱)、BP180やBP230に対する自己抗体では水疱性類天疱瘡(表皮下水疱)が生じます。接着装置の構造と部位を正しく区別することは、自己免疫性水疱症の病態、組織像、蛍光抗体法所見を理解する基盤になります。

解答・解説

正解はdです

表皮は重層扁平上皮であり、主体となる角化細胞(ケラチノサイト)同士は細胞間接着装置によって強固につなぎ留められている。この結合があるからこそ、表皮は摩擦や牽引などの機械的ストレスに耐えられる。 表皮の接着は大きく二つに分けて考えると整理しやすい。 ・角化細胞と角化細胞の間(細胞間接着):主役はデスモソーム(接着斑)である。ほかに接着結合(アドヘレンスジャンクション)、タイトジャンクション、ギャップ結合なども存在する。 ・基底細胞と基底膜の間(細胞-基質間接着):主役はヘミデスモソームである。 本問は「細胞間」の接着を問うているので、細胞同士を結ぶデスモソームを選ぶ。ヘミデスモソームは名前が似ているが、表皮と真皮の境界(基底膜)で細胞を基質に固定する構造であり、両者を取り違えないことが本問の要点である。さらに、それぞれの構成蛋白に対する自己抗体が生じると、デスモソームなら天疱瘡、ヘミデスモソームなら水疱性類天疱瘡という異なる自己免疫性水疱症になる、という臨床との結びつきも押さえておきたい。

選択肢考察

  1. ×a.  アミロイド

    アミロイドは、本来可溶性の蛋白が誤って折りたたまれ、βシート構造に富む不溶性の線維となって組織に沈着したものである。沈着によって臓器障害を起こす病態がアミロイドーシスで、皮膚では真皮乳頭層などに沈着する(皮膚アミロイドーシス)。コンゴーレッド染色で橙赤色に染まり、偏光顕微鏡下でアップルグリーンの複屈折を示すのが特徴である。病的な沈着物であり、正常な表皮の細胞間接着には関与しない。

  2. ×b.  ケラチン

    ケラチンは上皮細胞に特有の中間径フィラメント(細胞骨格)を構成する蛋白で、角化細胞の形を保ち機械的強度を与える。角質層、毛、爪の主要成分でもある。細胞内のケラチン線維はデスモソームやヘミデスモソームの細胞質側の裏打ち板に付着し、接着装置を介して隣の細胞や基底膜と張力を分担するが、ケラチン自体は細胞内の骨格であって、細胞と細胞をつなぐ接着分子ではない。なおケラチン5/14の遺伝子変異では基底細胞が壊れやすくなり単純型表皮水疱症となる。

  3. ×c.  セラミド

    セラミドはスフィンゴ脂質の一種で、顆粒層の層板顆粒から放出され、角質層の角質細胞のすき間を埋める細胞間脂質の主成分となる(ほかにコレステロール、遊離脂肪酸)。層状(ラメラ)構造をとって水分の蒸散を防ぎ、外来物質の侵入を妨げる皮膚バリア機能を担う。アトピー性皮膚炎では角質層のセラミドが減少していることが知られる。役割は保湿とバリアであり、角化細胞同士を機械的に結合させる接着装置ではない。

  4. ○d.  デスモゾーム

    デスモソーム(接着斑)は隣り合う角化細胞をボタンのように点状につなぎ留める細胞間接着装置であり、表皮細胞間接着の中心となる構造である。光学顕微鏡では有棘層の細胞間に見える棘状の「細胞間橋」に相当する。細胞外ではカドヘリンファミリーの膜貫通蛋白であるデスモグレイン(Dsg)とデスモコリンがカルシウム依存性に結合し、細胞内ではプラコグロビン、デスモプラキンなどから成る付着板(裏打ち板)を介してケラチン線維とつながる。デスモグレイン3に対する自己抗体で尋常性天疱瘡、デスモグレイン1に対する自己抗体で落葉状天疱瘡が起こり、細胞同士が離れる棘融解(アカントリシス)によって表皮内水疱が生じる。

  5. ×e.  ヘミデスモゾーム

    ヘミデスモソームはデスモソームを半分にしたような形の接着装置で、表皮基底細胞の底面を基底膜(基底板)に固定する細胞-基質間の接着構造である。BP180(XVII型コラーゲン)、BP230、インテグリンα6β4などから構成され、係留線維などを介して真皮側とも連結する。BP180やBP230に対する自己抗体で水疱性類天疱瘡が起こり、表皮下水疱が生じる。細胞同士の接着ではないため本問の答えにはならない。

表皮の構造

表皮は深部から基底層、有棘層、顆粒層、角質層(手掌・足底では顆粒層と角質層の間に淡明層)の順に重なる。基底層で分裂した角化細胞は約4週間かけて上方へ移動し、最終的に角質細胞となって剥がれ落ちる。有棘層の細胞間に見える棘状の突起がデスモソームであり、「有棘」の名はこれに由来する。

主な細胞接着装置

・タイトジャンクション(密着結合):細胞間の隙間をふさぐ。表皮では顆粒層に存在しバリアに関わる。 ・接着結合(アドヘレンスジャンクション):E-カドヘリンを介し、アクチン線維と連結する。 ・デスモソーム:デスモグレイン・デスモコリンを介し、ケラチン線維と連結する。細胞間の機械的結合の主役。 ・ギャップ結合:コネキシンから成るチャネルで、細胞間のイオンや小分子の移動を担う。 ・ヘミデスモソーム:細胞と基底膜をつなぐ。インテグリンα6β4、BP180などを介してケラチン線維と連結する。

接着分子と自己免疫性水疱症

・尋常性天疱瘡:抗デスモグレイン3抗体(粘膜皮膚型では抗デスモグレイン1抗体も)。口腔粘膜病変が目立つ。表皮内水疱、ニコルスキー現象陽性。 ・落葉状天疱瘡:抗デスモグレイン1抗体。表皮上層での浅い水疱・びらん。粘膜病変はまれ。 ・水疱性類天疱瘡:抗BP180抗体・抗BP230抗体。高齢者に多く、緊満性の表皮下水疱。 ・後天性表皮水疱症:抗VII型コラーゲン抗体(係留線維の成分)。 蛍光抗体直接法では、天疱瘡は表皮細胞間にIgGが網目状に、類天疱瘡は基底膜部に線状に沈着する。

POINT

・表皮細胞同士の接着=デスモソーム(デスモグレイン、デスモコリン) ・基底細胞と基底膜の接着=ヘミデスモソーム(BP180、BP230、インテグリンα6β4) ・デスモグレインに対する自己抗体→天疱瘡(表皮内水疱)、BP180/BP230に対する自己抗体→水疱性類天疱瘡(表皮下水疱) ・ケラチンは細胞内の中間径フィラメント、セラミドは角質層の細胞間脂質(バリア・保湿)、アミロイドは病的沈着物

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。