消える反射と現れる反射―月齢で読み解く乳児の神経発達
第108回医師国家試験 G問題 第11問
国試問題にチャレンジ
新生児・乳児の反射について正しいのはどれか。
- a.Moro反射は1歳ころに消失する。
- b.吸啜反射は生後2~3か月からみられる。
- c.生後1か月のBabinski反射は病的である。
- d.把握反射の消失は手よりも足の方が早い。
- e.パラシュート反射は生後9か月前後からみられる。
対話形式の解説
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医学生
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ドクターまとめ
乳児の神経発達は、出生時から存在し大脳の成熟とともに消えていく原始反射と、乳児期に新たに出現して多くが生涯持続する姿勢反射という2つの流れで評価します。Moro反射・吸啜反射・手掌把握反射はおおむね4〜6か月ころまでに消失し、足底把握反射は9〜10か月ころまで残るため、消失は手の方が早くなります。Babinski反射は錐体路の髄鞘化が未完成な乳児では1〜2歳ころまで生理的に陽性となりえ、パラシュート反射は生後9か月前後に出現して生涯持続します。原始反射の残存、姿勢反射の出現遅延、左右差は脳性麻痺や腕神経叢麻痺などを疑う手がかりとなります。反射の変化を運動発達の里程標と結びつけて理解しておくことは、乳幼児健診や発達評価の基盤になります。
解答・解説
正解はeです
新生児・乳児の神経学的発達は、「原始反射の消失」と「姿勢反射(立ち直り反応・平衡反応・保護伸展反応)の出現」という二つの流れで評価する。 ・原始反射:脳幹・脊髄レベルで起こる反射で、出生時から認められる。大脳皮質が成熟して上位中枢からの抑制が働くようになると、決まった時期までに消失する(統合される)。Moro反射、吸啜反射、手掌把握反射、足底把握反射、非対称性緊張性頸反射(ATNR)、自動歩行などがある。 ・姿勢反射:中脳・大脳皮質レベルの成熟に伴って乳児期に新たに出現し、多くは生涯持続する。頸の立ち直り、Landau反射、パラシュート反射、ホッピング反応などがある。 この二つの流れを月齢の目安とともに覚えておけば、各選択肢の正誤は判断できる。臨床的には、原始反射が消失すべき時期を過ぎても残る場合、出現すべき姿勢反射が出現しない場合、あるいは左右差がある場合に、脳性麻痺などの中枢神経障害や末梢神経障害(腕神経叢麻痺など)を疑う手がかりとなる。 本問では、パラシュート反射が生後9か月前後から出現するという記述が正しい。
選択肢考察
- ×a. Moro反射は1歳ころに消失する。
Moro反射は、仰臥位の児の頭部を支えて急に少し落とす、あるいは大きな音を立てるなどの刺激を与えると、両上肢を伸展・外転して手を開き(第1相)、続いて上肢を抱きつくように内転・屈曲させる(第2相)原始反射である。出生時から認められ、生後3~4か月ころから減弱して、おおむね4~6か月までに消失する。1歳まで残存するのは異常であり、脳性麻痺などを疑う。また新生児期に左右差がある場合は、分娩外傷による腕神経叢麻痺や鎖骨骨折を、反射が出ない場合は重い中枢神経障害を考える。
- ×b. 吸啜反射は生後2~3か月からみられる。
吸啜反射は、口の中に指や乳首を入れるとリズミカルに吸いつく原始反射で、胎生期から発達し、出生時にはすでに存在する。生まれてすぐに哺乳ができるのはこの反射(および口唇に触れた方へ顔を向ける探索反射)があるためであり、生後2~3か月から出現するという記述は誤りである。生後4~6か月ころにかけて反射としては目立たなくなり、意思による哺乳・摂食へ移行していく。新生児で吸啜が弱い場合は、早産や中枢神経の異常、全身状態の悪化(敗血症など)を考える。
- ×c. 生後1か月のBabinski反射は病的である。
Babinski反射は、足底の外側縁を踵から足趾に向かってこすると母趾が背屈し、他の趾が扇状に開く反応である。成人では錐体路(皮質脊髄路)障害の徴候だが、乳児期は錐体路の髄鞘化が未完成なため正常でも陽性となりうる(生理的Babinski反射)。独歩の開始とともに消失し、おおむね1~2歳ころまでは陽性でも異常とはいえない。したがって生後1か月で陽性であっても病的とは判断しない。ただし左右差がある場合は、一側性の中枢神経障害を疑う。
- ×d. 把握反射の消失は手よりも足の方が早い。
手掌把握反射(手のひらを圧迫すると指を握りしめる)は生後3~4か月ころから弱まり、おおむね4~6か月までに消失する。手の把握反射が消えることで、自分の意思で物をつかみ、離すことができるようになる。一方、足底把握反射(足底の母趾球付近を圧迫すると足趾が屈曲する)はより長く残り、生後9~10か月ころ、つかまり立ちや独歩の準備が整うころに消失する。したがって消失は手の方が早く、記述は逆である。
- ○e. パラシュート反射は生後9か月前後からみられる。
パラシュート反射(保護伸展反応)は、児の体幹を両手で支えて腹臥位で水平に持ち上げ、急に頭から前下方へ落とすように動かすと、両上肢を伸ばし手を開いて体を支えようとする反応である。転倒時に身を守る防御反応であり、中脳・大脳皮質レベルの成熟によって生後8~10か月ころ(9か月前後)に出現し、その後は生涯持続する。出現が遅れる場合は運動発達の遅れを、左右差がある場合は片麻痺などを疑う。つかまり立ちや歩行の開始に先立って備わる反応であり、発達評価の重要な指標となる。
主な原始反射と消失時期の目安
・Moro反射:出生時~4~6か月 ・探索反射・吸啜反射:出生時~4~6か月ころ ・手掌把握反射:出生時~4~6か月 ・足底把握反射:出生時~9~10か月(独歩の前) ・非対称性緊張性頸反射(ATNR):出生時~4~6か月(顔を向けた側の上下肢が伸展、反対側が屈曲する「フェンシングの姿勢」) ・自動歩行(原始歩行):出生時~2か月ころ ・Babinski反射:出生時~1~2歳(独歩の開始とともに消失) ※消失時期は教科書により1~2か月の幅がある。
主な姿勢反射と出現時期の目安
・Landau反射(腹臥位で水平に支えると頭部と体幹・下肢を伸展する):6か月ころ出現、2歳ころまで ・パラシュート反射:8~10か月ころ出現、生涯持続 ・座位での側方保護伸展反応:6~7か月ころ出現 ・ホッピング反応・立位の平衡反応:1歳以降に出現
運動発達との関係
首すわり(3~4か月)、寝返り(5~6か月)、お座り(7か月前後)、つかまり立ち(9~10か月)、独歩(1歳~1歳3か月)といった粗大運動の獲得は、原始反射が消えて姿勢反射が整うことと並行して進む。例えばATNRやMoro反射が残っていると寝返りや座位の獲得が妨げられ、足底把握反射が残っていると立位・歩行が不安定になる。
異常を疑うサイン
・原始反射が消失すべき時期を過ぎても残存する(脳性麻痺など) ・出現すべき姿勢反射が出現しない ・反射に明らかな左右差がある(腕神経叢麻痺、鎖骨骨折、片麻痺など) ・新生児期に原始反射が全く出ない(重症の中枢神経障害、筋疾患など)
POINT
・原始反射は出生時から存在し、大脳の成熟とともに消失する:Moro・吸啜・手掌把握・ATNRは4~6か月ころまで、足底把握は9~10か月ころまで(手より足の方が遅い) ・Babinski反射は独歩開始の1~2歳ころまでは生理的に陽性となりうる ・姿勢反射は乳児期に出現:Landau反射6か月ころ、パラシュート反射9か月前後(生涯持続) ・原始反射の残存、姿勢反射の出現遅延、左右差は中枢神経障害の手がかり
