魚から肉へ―国民健康・栄養調査が映す日本の食卓の10年
第108回医師国家試験 G問題 第1問
国試問題にチャレンジ
国民健康・栄養調査で平成13年と比べて平成23年で摂取量が増加している食品群はどれか。
- a.野菜類
- b.果物類
- c.魚介類
- d.肉類
- e.乳類
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
国民健康・栄養調査は、健康増進法に基づき厚生労働省が毎年実施する調査で、身体状況・栄養摂取状況・生活習慣を把握して健康日本21などの施策の基礎資料となります。平成13年から平成23年にかけて、肉類の摂取量は増加し、野菜類・果物類・魚介類は減少しました。肉類は平成18年ごろに魚介類を上回り、この「魚から肉へ」という変化は食の欧米化を象徴しています。野菜・果物・魚の不足は20〜40歳代で目立ち、価格や世帯収入といった経済的要因も関わっています。個々の数値よりも大きな傾向をつかんでおくことが、統計問題への対応だけでなく、生活背景をふまえた栄養指導や生活習慣病対策の理解にもつながります。
解答・解説
正解はdです
テーマ
国民健康・栄養調査は、健康増進法に基づいて厚生労働省が毎年行う調査である。国民の身体の状況、栄養素・食品の摂取量、生活習慣を把握し、健康日本21などの施策の基礎資料とする。本問は、平成23年(2011年)の調査結果の概要で示された、10年前の平成13年(2001年)との食品群別摂取量の比較を問うている。
結果の要点
平成23年の調査では、平成13年と比べて野菜類、果物類、魚介類の摂取量は減った。一方、肉類の摂取量は増えた。とくに20~40歳代で野菜類、果物類、魚介類の摂取が少ないことも指摘された。
考え方
日本人の食生活の「欧米化」、すなわち魚から肉へ、和食中心から多様な食事へという長期的な流れを押さえておけば、肉類だけが増加していると判断できる。成人1人1日当たりの平均摂取量の年次推移では、平成18年(2006年)ごろに肉類が魚介類を上回り、その後も差が広がっている。 なお本問は、特定の年度の統計結果をそのまま問う設問であり、最新のデータとは状況が異なる可能性がある。現在の試験対策としては、個々の数値よりも「肉類は増加、魚介類・野菜・果物は減少または横ばい」という大きな傾向をつかんでおけば十分である。
選択肢考察
- ×a. 野菜類
減少している。平成23年の成人の野菜類摂取量の平均は約277 g/日で、平成13年より少ない。健康日本21が掲げる目標値(1日350 g以上)には大きく届いておらず、とくに若い世代で摂取が少ない。
- ×b. 果物類
減少している。平成23年の成人の果物類摂取量の平均は約110 g/日で、平成13年より少ない。年齢が低いほど摂取量が少なく、20~40歳代の不足が目立つ。
- ×c. 魚介類
減少している。平成23年の成人の魚介類摂取量の平均は約79 g/日で、平成13年から一貫して減り続けている。同じ期間に肉類の摂取は増えており、両者の摂取量はこの間に逆転した。
- ○d. 肉類
平成13年と比べて増加しており、これが正解である。平成23年の成人の肉類摂取量の平均は約81 g/日で、10年前より多い。食の欧米化や、調理が手軽な肉料理・加工品が好まれることなどが背景と考えられる。この結果、平成23年時点で肉類の摂取量は魚介類を上回っていた。
- ×e. 乳類
平成23年の調査結果の概要では、平成13年との比較が示された食品群は野菜類、果物類、魚介類、肉類であり、乳類は比較の対象として公表されていない。したがって「増加している」と判断できる根拠がなく、正解にはならない。
国民健康・栄養調査の概要
・根拠法:健康増進法(平成15年施行。それ以前は栄養改善法に基づく「国民栄養調査」であった) ・実施主体:厚生労働省(毎年実施) ・対象:国民生活基礎調査の調査地区から無作為に抽出した地区の世帯と世帯員 ・内容:身体状況調査(身長、体重、腹囲、血圧、血液検査など)、栄養摂取状況調査(1日分の食事記録)、生活習慣調査(喫煙、飲酒、運動、休養など)。年ごとに重点テーマが設定される。
平成23年調査で示されたその他の結果
・生鮮食品の入手を控えたり入手できなかったりした理由では「価格が高い」が約3割で最も多く、20~40歳代では4割を超えた。 ・世帯の年収別にみると、600万円以上の世帯員に比べて200万円未満の世帯員は、果物類と肉類の摂取量が男女とも少なく、野菜類の摂取量は男性で少なかった。 ・災害に備えて非常用の食料を用意している世帯は約半数(47.4%)で、地域差が大きかった(東海で最も高く、九州で最も低い)。
日本人の食生活の長期的な傾向
・エネルギー摂取量はゆるやかに減っている。 ・脂質エネルギー比率は上昇した。 ・肉類が増え、魚介類が減っている。 ・野菜摂取量は目標の350 gに届かない状態が続いている。 ・食塩摂取量は減少傾向にあるが、目標量(男性7.5 g未満、女性6.5 g未満:日本人の食事摂取基準2020年版)より多い。
POINT
・平成13年から平成23年にかけて、肉類の摂取量は増加し、野菜類、果物類、魚介類の摂取量は減少した。 ・肉類の摂取量は平成18年ごろに魚介類を上回った。 ・野菜・果物・魚の摂取不足は若い世代(20~40歳代)で目立つ。 ・国民健康・栄養調査は健康増進法に基づき、厚生労働省が毎年実施する。
