StudyMed医師国家試験

病院・診療所・助産所、そして特養―「医療法の施設」と「介護の施設」を分ける一本の線

第108回医師国家試験 F問題 第1問

国試問題にチャレンジ

第108回 F問題 第1問

医療法に定められていない施設はどれか。

  1. a.病院
  2. b.助産所
  3. c.診療所
  4. d.歯科診療所
  5. e.介護老人福祉施設

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、医療に関わる施設がそれぞれどの法律に根拠をもつかを問う問題だ。着眼点はシンプルで、「医療を提供する場所」なのか「介護を受けて生活する場所」なのか、という区別。まずは医療法がどんな法律かから確認しよう。
医学生医学生
公衆衛生の講義で、医師法は「人」の法律、医療法は「施設」の法律だと習いました。
ドクタードクター
その整理はとても大事だよ。医師法や歯科医師法は資格や業務という「人」に関するルールで、医療法は医療を提供する「場所」の定義や開設手続き、人員・構造設備の基準、医療計画などを定めている。では、医療法に出てくる代表的な施設を挙げられるかな。
医学生医学生
病院と診療所ですよね。病院は20床以上、診療所は19床以下、でしたっけ。
ドクタードクター
正解。病院は20人以上の患者を入院させる施設をもつもの、診療所は入院施設がない無床診療所か、19床以下の有床診療所だ。CBTでも頻出の数字だね。
医学生医学生
歯科診療所は、医療法とは別に歯科の法律で決まっているのかと思っていました。
ドクタードクター
そこは誤解しやすいところだね。医療法の診療所の定義には「医師又は歯科医師」が医業または歯科医業を行う場所と書かれていて、歯科診療所も医療法上の診療所に含まれる。開設の届出や管理者を置くことも医療法に従うんだ。
医学生医学生
助産所はどうでしょう。医師がいない施設なので、医療法の外のような気もします。
ドクタードクター
いい疑問だ。助産所は助産師が助産業務を行う場所で、医師が常駐するわけではないけれど、医療法に定められた施設だよ。妊婦・産婦・褥婦の入所施設は9人以下と決まっている。病院20床以上、診療所19床以下、助産所9人以下、とセットで覚えるといい。
医学生医学生
そうすると、残る介護老人福祉施設だけが医療法の施設ではない、ということですね。
ドクタードクター
その通り、それが正解だ。介護老人福祉施設は介護保険法に規定される介護保険施設で、老人福祉法上の特別養護老人ホームのうち、都道府県知事の指定を受けたものを指す。常時介護が必要で在宅生活が難しい要介護者の「生活の場」で、新規入所は原則として要介護3以上だね。
医学生医学生
地域医療の実習で特養を見学したとき、配置医の先生はいましたが、病院というより暮らしの場という雰囲気でした。
ドクタードクター
まさにそこが本質だよ。医療の場は医療法、介護の場は介護保険法や老人福祉法、と根拠法が分かれている。ただし紛らわしい点がひとつある。医療法には「医療提供施設」という概念があって、病院・診療所のほか、介護老人保健施設や介護医療院、調剤を行う薬局も含まれているんだ。
医学生医学生
えっ、それなら老健や介護医療院は医療法の施設ということになりませんか。
ドクタードクター
そう思いやすいけれど、医療法はそれらを「医療を提供する場」として位置づけているだけで、開設の許可や基準そのものは介護保険法で定められている。医療法で定義される施設ではない、と押さえておこう。
医学生医学生
介護保険施設の3つの違いも整理しておきたいです。
ドクタードクター
介護老人福祉施設は終の住処に近い生活の場、介護老人保健施設は病状の安定した要介護者にリハビリなどを行って在宅復帰を目指す中間施設、介護医療院は長期療養が必要な人に医療と介護を一体的に提供する施設だ。介護医療院は2018年に創設され、介護療養型医療施設は2024年3月末で廃止された。臨床では退院支援の場面で、患者さんの状態に合わせてどの施設が適切かを考えることになるから、目的の違いまで理解しておくと役立つよ。
医学生医学生
根拠法を意識すると、施設の役割も自然と整理できますね。

まとめ

医療法は病院(20床以上)、診療所(無床または19床以下で、歯科診療所を含む)、助産所(入所9人以下)といった医療を提供する施設の定義や開設・管理、基準を定める法律です。一方、介護老人福祉施設は老人福祉法上の特別養護老人ホームのうち介護保険の指定を受けたもので、介護保険法に根拠をもち、医療法に定められた施設ではありません。介護老人保健施設や介護医療院は医療法上の「医療提供施設」に含まれますが、開設許可や基準は介護保険法で定められている点が紛らわしいところです。「医療の場は医療法、介護の場は介護保険法・老人福祉法」という区分で整理しておくと、施設の役割の違いが理解でき、退院支援や地域包括ケアを考える際の土台にもなります。

解答・解説

正解はeです

医療法は、医療を提供する場所である病院・診療所・助産所の定義、開設・管理の手続、人員や構造設備の基準、医療計画などを定めた法律である。一方、要介護高齢者が入所して介護を受ける施設は、原則として介護保険法や老人福祉法といった介護・福祉系の法律で規定される。 本問は「医療の施設は医療法、介護の施設は介護保険法」という法体系の区分を理解していれば解ける。選択肢のうち病院・助産所・診療所・歯科診療所はいずれも医療法に規定される医療施設であり、介護老人福祉施設だけが介護保険法(および老人福祉法)に根拠をもつ介護施設である。

選択肢考察

  1. ×a.  病院

    医療法第1条の5第1項に定められている。医師または歯科医師が公衆または特定多数人のために医業・歯科医業を行う場所で、20人以上の患者を入院させる施設を有するものを病院という。一般病院のほか、地域医療支援病院、特定機能病院、臨床研究中核病院も医療法で規定されている。

  2. ×b.  助産所

    医療法第2条に定められている。助産師が公衆または特定多数人のために助産業務(病院・診療所で行うものを除く)を行う場所であり、妊婦・産婦・褥婦の入所施設は10人以上であってはならない(9人以下)。医師ではなく助産師が業務を行う場所だが、医療法の対象施設である。

  3. ×c.  診療所

    医療法第1条の5第2項に定められている。医師または歯科医師が医業・歯科医業を行う場所で、患者を入院させる施設を有しないもの(無床診療所)、または19人以下の入院施設を有するもの(有床診療所)をいう。

  4. ×d.  歯科診療所

    医療法第1条の5第2項の診療所の定義には「医師又は歯科医師」が医業または歯科医業を行う場所と明記されており、歯科医師が歯科医業を行う歯科診療所も医療法に定められた施設である。開設の届出や管理者の設置なども医療法に従う。

  5. ○e.  介護老人福祉施設

    介護老人福祉施設は介護保険法に規定される介護保険施設であり、老人福祉法上の特別養護老人ホーム(入所定員30人以上)のうち都道府県知事の指定を受けたものをいう。常時介護を必要とし在宅生活が困難な要介護者(新規入所は原則要介護3以上)が入所し、日常生活上の介護を受ける生活の場である。医療法に規定された施設ではないため、これが正解となる。

医療法が規定する主な施設

・病院:20床以上の入院施設をもつ ・診療所:無床または19床以下(歯科診療所を含む) ・助産所:助産師が業務を行う。入所施設は9人以下 ・特殊な病院:地域医療支援病院(都道府県知事が承認)、特定機能病院(厚生労働大臣が承認)、臨床研究中核病院(厚生労働大臣が承認)

医療提供施設という概念

医療法第1条の2第2項は、医療を提供する場として病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院・調剤を実施する薬局などを「医療提供施設」と位置づけている。ただし、介護老人保健施設や介護医療院の開設許可・基準そのものは介護保険法で定められており、医療法で定義される施設ではない点に注意する。

介護保険施設(介護保険法)

・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム):常時介護が必要な要介護者の生活の場。新規入所は原則要介護3以上 ・介護老人保健施設:病状が安定した要介護者に対し、看護・医学的管理下での介護やリハビリテーションを行い、在宅復帰を目指す ・介護医療院:長期療養が必要な要介護者に、医療と日常生活上の介護を一体的に提供する(2018年創設。介護療養型医療施設は2024年3月末で廃止)

関連する法律

・老人福祉法:特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホームなどの老人福祉施設を規定 ・医師法・歯科医師法:医師・歯科医師の資格と業務を規定(施設ではなく人に関する法律)

POINT

・医療法が定める施設は病院(20床以上)、診療所(19床以下、歯科診療所を含む)、助産所(9人以下)。 ・介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院は介護保険法に規定される。 ・介護老人福祉施設=特別養護老人ホーム(老人福祉法)で、介護保険の指定を受けたもの。 ・医療と介護は根拠法が異なるという原則で整理する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。