StudyMed医師国家試験

その計画、本当に「医療計画」?―法律・策定主体で見分ける行政計画と地域連携クリニカルパス

第108回医師国家試験 E問題 第4問

国試問題にチャレンジ

第108回 E問題 第4問

医療計画の内容として最も適切なのはどれか。

  1. a.日常生活圏域の設定
  2. b.老人福祉施設の整備の推進
  3. c.特定健康診査の実施率の向上
  4. d.地域連携クリニカルパスの普及
  5. e.医療費の効率的な提供に関する達成目標の設定

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は医療計画に何が書かれるかを問う問題だ。選択肢には、医療計画とよく似た別の行政計画の内容がまぎれ込んでいる。カギは、それぞれの項目がどの法律に基づき、誰が作る計画に属するかを整理することだよ。
医学生医学生
医療計画は医療法に基づいて都道府県が作る計画、というところまでは公衆衛生の講義で習いました。
ドクタードクター
いいね。1985年の第1次医療法改正で創設され、最初は基準病床数を決めて病床の量をコントロールするのが中心だった。それが2006年の第5次医療法改正以降、疾病・事業ごとの医療連携体制の構築が大きな柱になったんだ。
医学生医学生
5疾病・5事業というやつですね。CBTの前に必死で覚えました。
ドクタードクター
今は6事業になっているから更新しておこう。5疾病はがん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病、精神疾患。6事業は救急医療、災害時医療、へき地医療、周産期医療、小児医療、そして第8次計画から加わった新興感染症発生・まん延時の医療だ。これに在宅医療が加わる。計画期間は6年だよ。
医学生医学生
連携体制の構築が柱なら、地域連携クリニカルパスの普及がそのまま当てはまりそうです。
ドクタードクター
正解。地域連携クリニカルパスは、急性期病院から回復期リハビリテーション病院、かかりつけ医、在宅へと患者さんが移るときに、複数の医療機関で共有する診療計画だ。治療のゴールや各段階の役割分担、引き継ぐ情報をあらかじめ決めておくことで、切れ目のない医療を実現できる。
医学生医学生
脳神経内科の実習で、脳卒中の患者さんが回復期病院へ転院するときに連携パスの用紙を使っていました。
ドクタードクター
まさにそれだね。脳卒中、大腿骨頸部骨折、がんなどで普及が進められてきた。医療機能の分化と連携を進める具体策として、医療計画に位置づけられているんだ。では、日常生活圏域の設定はどうだろう。
医学生医学生
圏域というと医療圏と似ていて迷いました。医療計画でも圏域を設定しますよね。
ドクタードクター
迷いやすいところだ。医療計画で設定するのは医療圏で、一般的な入院医療を完結させる二次医療圏と、高度・特殊な医療を担う原則都道府県単位の三次医療圏。一方、日常生活圏域は市町村が作る介護保険事業計画で定める区域で、おおむね30分以内に必要なサービスが届く中学校区程度が目安だ。地域包括ケアシステムの基盤になる単位だね。
医学生医学生
老人福祉施設の整備も、介護や福祉の側の話ですか。
ドクタードクター
そう。特別養護老人ホームなどの整備は、老人福祉法に基づく老人福祉計画や、介護保険事業計画・介護保険事業支援計画で扱う。これらは一体的に作られ、医療計画とも整合を取ることが求められるけれど、施設整備そのものは医療計画の記載事項ではない。
医学生医学生
特定健康診査の実施率の向上は、高齢者の医療の確保に関する法律の話だった気がします。
ドクタードクター
よく覚えているね。特定健診は40〜74歳を対象に医療保険者が行うメタボリックシンドロームに着目した健診で、実施率の目標は都道府県の医療費適正化計画や、保険者の特定健康診査等実施計画で定める。そして医療費の効率的な提供に関する達成目標も、同じく医療費適正化計画の内容だ。後発医薬品の使用促進や平均在院日数の短縮などがここに入る。
医学生医学生
医療という言葉が入っていても、医療費の話なら医療費適正化計画、と切り分ければいいんですね。
ドクタードクター
その通り。整理すると、医療計画は医療法・都道府県・6年、医療費適正化計画は高齢者の医療の確保に関する法律・国と都道府県・6年、介護保険事業計画は介護保険法・市町村・3年。根拠法、策定主体、期間をセットで覚えると、こうしたひっかけに強くなる。
医学生医学生
医療計画が6年になったのは、3年ごとの介護保険事業計画と周期を合わせるためでしたっけ。
ドクタードクター
そうだね、第7次計画から5年が6年に変わって、介護側との整合が図られた。さらに2014年からは、将来の病床の必要量を示す地域医療構想も医療計画の一部になっている。臨床の現場では、退院支援や転院調整のたびにこうした計画の成果物に触れることになる。連携パスは単なる書類ではなく、地域全体で患者さんを診るための共通言語だと意識しておこう。

まとめ

医療計画は医療法に基づき都道府県が6年ごとに策定する計画で、5疾病・6事業と在宅医療の医療連携体制の構築、二次・三次医療圏の設定と基準病床数、地域医療構想などを内容とします。急性期から回復期、かかりつけ医、在宅へと切れ目なく患者を引き継ぐ地域連携クリニカルパスの普及は、この連携体制を実現する具体策として医療計画に位置づけられます。一方、日常生活圏域の設定は介護保険事業計画、老人福祉施設の整備は老人福祉計画・介護保険事業(支援)計画、特定健診の実施率向上や医療費の効率化目標は医療費適正化計画の内容です。根拠法・策定主体・計画期間をセットで整理しておくと、類似した行政計画を確実に見分けられ、地域医療連携の仕組みの理解にもつながります。

解答・解説

正解はdです

テーマ

医療計画は、医療法に基づき都道府県が策定する計画であり、地域の実情に応じて医療提供体制を確保することを目的とする。1985年の医療法改正(第1次医療法改正)で創設され、当初は病床の量的な規制(基準病床数の設定)が中心であったが、2006年の第5次医療法改正以降は「疾病・事業ごとの医療連携体制の構築」が大きな柱となった。

医療計画に記載する主な事項

・5疾病(がん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病、精神疾患)ごとの医療連携体制 ・6事業(救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児医療〔小児救急を含む〕、新興感染症発生・まん延時における医療)の医療連携体制 ・在宅医療の確保 ・医療圏(二次医療圏・三次医療圏)の設定と基準病床数 ・地域医療構想(将来の病床の必要量など) ・医師の確保(医師確保計画)、外来医療に係る医療提供体制の確保、医療従事者の確保、医療の安全の確保 など 計画期間は6年(中間年に見直し)である。

正解を導く考え方

選択肢には、医療計画と同じく都道府県や市町村が作る別の計画(介護保険事業計画、老人福祉計画、医療費適正化計画など)の内容が紛れ込んでいる。医療計画の中心は「医療機能の分化と連携」であり、急性期病院から回復期病院、かかりつけ医、在宅医療へと患者を切れ目なく引き継ぐための仕組みづくりが求められる。その具体的な手段が地域連携クリニカルパスであり、これが医療計画の内容として最も適切である。各選択肢がどの計画に属するかを整理して判断する。

選択肢考察

  1. ×a.  日常生活圏域の設定

    日常生活圏域は、市町村が策定する介護保険事業計画で定める区域である。高齢者が住み慣れた地域で生活を続けられるよう、おおむね30分以内に必要なサービスが提供される範囲(中学校区程度)を目安に設定され、地域包括ケアシステムや地域密着型サービスの基盤となる。医療計画で設定するのは医療圏であり、二次医療圏(一般的な入院医療を完結させる単位で、複数の市町村から成る)と三次医療圏(高度・特殊な医療を担う単位で、原則として都道府県単位)である。なお、身近な外来医療の範囲を一次医療圏(おおむね市町村単位)と呼ぶことがあるが、医療法上の設定事項ではない。

  2. ×b.  老人福祉施設の整備の推進

    特別養護老人ホームなどの老人福祉施設の整備は、老人福祉法に基づく老人福祉計画(市町村・都道府県)や、介護保険法に基づく介護保険事業計画(市町村)・介護保険事業支援計画(都道府県)で扱われる。これらは福祉・介護の計画であり、医療提供体制を対象とする医療計画の内容ではない。なお、老人福祉計画と介護保険事業(支援)計画は一体的に作成され、医療計画とも整合性を保つことが求められているが、施設整備そのものは医療計画の記載事項ではない。

  3. ×c.  特定健康診査の実施率の向上

    特定健康診査(40〜74歳を対象に、メタボリックシンドロームに着目して医療保険者が行う健診)は、高齢者の医療の確保に関する法律に基づく。その実施率の向上は、都道府県が策定する医療費適正化計画の目標の一つであり、各医療保険者が作る特定健康診査等実施計画でも実施率の目標が定められる。医療計画の内容ではない。

  4. ○d.  地域連携クリニカルパスの普及

    地域連携クリニカルパスは、急性期病院から回復期リハビリテーション病院、かかりつけ医、在宅医療・介護へと患者が移る際に、複数の医療機関が共有する診療計画である。治療のゴール、各段階の役割分担、引き継ぐ情報をあらかじめ決めておくことで、切れ目のない医療を提供できる。脳卒中、大腿骨頸部骨折、がんなどで普及が進められてきた。医療計画では5疾病・6事業と在宅医療について医療連携体制を構築することが求められており、地域連携クリニカルパスの普及はその連携を実現する具体的な方策として位置づけられている。

  5. ×e.  医療費の効率的な提供に関する達成目標の設定

    医療費の適正化・効率化に関する目標は、高齢者の医療の確保に関する法律に基づいて国と都道府県が策定する医療費適正化計画の内容である。同計画では、住民の健康の保持の推進(特定健康診査・特定保健指導の実施率、メタボリックシンドローム該当者の減少など)と、医療の効率的な提供の推進(後発医薬品の使用促進、平均在院日数の短縮など)に関する目標を定め、医療費の見通しを示す。医療計画とは調和を保つことが求められるが、別の計画である。

行政計画の整理

・医療計画: 医療法、都道府県、計画期間6年。5疾病・6事業・在宅医療、医療圏、基準病床数、地域医療構想、医師確保計画など。 ・医療費適正化計画: 高齢者の医療の確保に関する法律、国・都道府県、6年。特定健診・特定保健指導の実施率、後発医薬品の使用割合など。 ・特定健康診査等実施計画: 同法、医療保険者、6年。 ・介護保険事業計画: 介護保険法、市町村、3年。日常生活圏域の設定、介護サービス量の見込みなど。 ・介護保険事業支援計画: 同法、都道府県、3年。 ・老人福祉計画: 老人福祉法、市町村・都道府県。介護保険事業(支援)計画と一体的に作成する。 ・健康増進計画: 健康増進法、都道府県(策定義務)・市町村(努力義務)。健康日本21に対応する。

医療計画の変遷

・1985年: 第1次医療法改正で医療計画を創設。医療圏と必要病床数(現在の基準病床数)を設定。 ・2006年: 第5次医療法改正で4疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病)・5事業の医療連携体制を記載事項とした。 ・2013年度の計画から精神疾患が加わり5疾病、在宅医療も明記された。 ・2014年: 地域医療構想が医療計画の一部として導入された。 ・2018年度の第7次計画から計画期間が5年から6年となり、介護保険事業計画(3年)との整合が図られた。 ・2024年度の第8次計画から新興感染症発生・まん延時における医療が加わり6事業となった。

医療圏

・二次医療圏: 一般の入院医療を完結させる単位。複数の市町村で構成される。 ・三次医療圏: 高度・先進的・特殊な医療を提供する単位。原則として都道府県単位(北海道は複数)。

POINT

・医療計画は医療法に基づき都道府県が策定する(6年計画)。 ・柱は5疾病・6事業と在宅医療の医療連携体制の構築で、地域連携クリニカルパスはその具体策。 ・日常生活圏域は介護保険事業計画、老人福祉施設の整備は老人福祉計画・介護保険事業(支援)計画。 ・特定健診の実施率や医療費の効率化目標は医療費適正化計画。 ・医療計画で設定する医療圏は二次医療圏と三次医療圏。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。