StudyMed医師国家試験

「書く検査」と「話す検査」―心理検査は回答形式で整理しよう

第108回医師国家試験 E問題 第34問

国試問題にチャレンジ

第108回 E問題 第34問

被験者が口頭で答える形式のものはどれか。2つ選べ。

  1. a.Rorschachテスト
  2. b.状態特性不安検査〈STAI〉
  3. c.Hamiltonうつ病評価尺度
  4. d.Minnesota多面人格検査〈MMPI〉
  5. e.ベック〈Beck〉のうつ病自己評価尺度

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は精神科で使う心理検査や評価尺度を、「被験者がどうやって答えるか」という形式で分類できるかを問う問題だ。検査の名前だけ暗記していると迷いやすいけれど、実際の検査場面を思い浮かべれば解ける。まず、心理検査を回答形式で分けると、どんなグループがあるかな。
医学生医学生
心理学の講義で、質問紙法と投影法と作業検査法に分けると習いました。
ドクタードクター
いいね。それに加えて、うつ病などの症状の重さを測る評価尺度には、患者さん自身がつける自己評価式と、医師などの評価者が面接してつける他者評価式がある。この「誰が記入するか」という視点が今回のカギだ。
医学生医学生
質問紙法は用紙に自分で記入するので、口頭ではないですよね。MMPIはその代表だったと思います。
ドクタードクター
その通り。MMPIはミネソタ大学で開発された人格検査で、日本語版では550項目に「あてはまる」「あてはまらない」などで被験者が自分で記入する。回答の歪みを検出する妥当性尺度を持っているのが特徴で、質問紙法の弱点である「良く見せよう」とする操作をある程度見抜ける。
医学生医学生
STAIも質問紙でしたっけ。不安の検査ということしか覚えていません。
ドクタードクター
STAIは状態不安と特性不安を測る検査だ。「今どれくらい不安か」という状態不安20項目と、「普段から不安を感じやすい性格か」という特性不安20項目の計40項目を、被験者が4段階で記入する。これも自己記入式の質問紙法だね。
医学生医学生
Beckのうつ病自己評価尺度は名前に「自己評価」と入っているので、これも自分で書く形式ですね。
ドクタードクター
そう、名前がそのままヒントになっている。認知療法の創始者Beckが作った尺度で、改訂版のBDI-IIは21項目、各項目で当てはまる文章を0〜3点から自分で選ぶ。では残りの2つ、Rorschachテストはどうだろう。
医学生医学生
病院見学で心理士さんに図版を見せてもらったことがあります。インクのしみのような絵ですよね。
ドクタードクター
そう、左右対称のインクのしみの図版10枚を順に見せて、「何に見えるか」を自由に口頭で答えてもらう投影法だ。検査者は答えの内容だけでなく、図版のどの部分を見たか、形・色・陰影・運動のどれに基づいたか、反応までの時間なども記録して、人格の特徴や思考の障害を評価する。正解が分かりにくいので意図的な操作を受けにくい反面、実施と解釈には熟練が必要なんだ。
医学生医学生
Hamiltonうつ病評価尺度は、うつ病の重症度を見るものなので、BDIと同じく自己記入式かと思ってしまいました。
ドクタードクター
そこが引っかけどころだね。同じうつ病の重症度評価でも、Hamiltonは他者評価式。評価者が面接で抑うつ気分、罪責感、自殺念慮、睡眠障害、食欲や体重の変化などを質問し、患者さんの口頭の答えと面接中の観察から採点する。抗うつ薬の臨床試験で主要評価項目によく使われる尺度だ。だから正解はRorschachテストとHamiltonうつ病評価尺度の2つになる。
医学生医学生
投影法なら全部口頭で答える、と覚えておけばいいですか。
ドクタードクター
そこは注意が必要だ。投影法でもTATは絵を見て物語を口頭で作るけれど、文章完成テストのSCTやP-Fスタディは記入式、バウムテストは木の絵を描く描画法だ。「投影法=口頭」と機械的に覚えると間違えるよ。
医学生医学生
精神科の実習で、認知症疑いの患者さんにHDS-Rをやらせてもらいました。あれも口頭で答える検査ですね。
ドクタードクター
そうだね。HDS-RやMMSEも検査者の質問に口頭で答える形式だ(MMSEは一部に書字や図形模写を含む)。WAISなどの知能検査も検査者と1対1で行う個別式だ。臨床では、自己評価式は簡便で患者さんの主観をそのまま反映できる一方、病識の乏しい人や重症の人では正確さに欠けることがある。他者評価式は評価者の訓練が必要だけど、観察所見も含めて重症度を評価できる。両方を組み合わせて使う意味がここにあるんだ。
医学生医学生
うつ病ならHAM-DとMADRSが他者評価、BDIとSDSが自己評価、とセットで覚えておきます。
ドクタードクター
完璧だ。検査名を覚えるときは、実際に患者さんがどう答えているかの場面を一緒にイメージすると忘れにくいよ。

まとめ

心理検査や評価尺度は、被験者自身が用紙に記入する質問紙法・自己評価式と、検査者とのやりとりの中で口頭で答える形式とに分けて整理できます。MMPI、STAI、Beckのうつ病自己評価尺度は自己記入式であり、口頭で答えるのは図版を見て何に見えるかを語るRorschachテストと、評価者が面接して採点するHamiltonうつ病評価尺度です。うつ病の重症度評価ではHAM-D・MADRSが他者評価、BDI・SDSが自己評価と対で覚えると混同を防げます。また、投影法でもSCTやP-Fスタディは記入式、バウムテストは描画であり、「投影法=口頭」とは限らない点に注意が必要です。各検査の実施場面をイメージして理解することは、試験対策だけでなく、臨床で検査結果を正しく解釈するための土台になります。

解答・解説

正解はa, cです

精神科で用いられる心理検査・評価尺度を、実施の形式(被験者がどのように回答するか)によって分類できるかを問う問題である。 心理検査や症状評価尺度は、回答の仕方によって大きく次のように分けられる。 1. 質問紙法(自己記入式):印刷された質問項目に、被験者自身が「はい/いいえ」や段階評価で記入する。短時間に多くの人に実施でき、採点も客観的であるが、被験者が意図的に良く見せようとしたり、逆に悪く見せようとしたりすると結果がゆがむ欠点がある。例:MMPI、STAI、BDI、YG性格検査など。 2. 投影法:あいまいな刺激(図形、絵、未完成の文章など)を示し、それに対する自由な反応から無意識的な心理や人格の特徴を推し量る。Rorschachテストや絵画統覚テスト(TAT)では被験者が口頭で答え、検査者が記録・解釈する。回答の「正解」が分かりにくいため意図的な操作を受けにくいが、実施と解釈に時間と熟練を要する。 3. 面接による評価尺度(他者評価式):検査者(医師など)が被験者に質問し、口頭の回答や面接中の観察に基づいて検査者が点数を付ける。例:Hamiltonうつ病評価尺度、MADRS(Montgomery-Åsbergうつ病評価尺度)、BPRS(簡易精神症状評価尺度)など。 したがって本問では、「自己記入式の質問紙」ではなく、「検査者とのやりとりの中で被験者が口頭で答える」形式の検査を選べばよい。

選択肢考察

  1. ○a.  Rorschachテスト

    Rorschachテストは、スイスの精神科医Rorschachが考案した代表的な投影法の人格検査である。インクのしみを紙に落として折りたたんだような左右対称の図版10枚(黒一色のもの、黒と赤のもの、多色のものを含む)を順に示し、「何に見えるか」を被験者に自由に口頭で答えさせる。検査者はその反応内容に加え、図版のどの部分に反応したか(反応領域)、形・色・陰影・運動のどれに基づいて見たか(決定因)、反応までの時間などを記録し、人格の特徴や思考の障害を評価する。被験者が口頭で答える形式の検査である。

  2. ×b.  状態特性不安検査〈STAI〉

    STAI(State-Trait Anxiety Inventory)はSpielbergerらが開発した不安の評価尺度である。「今この瞬間にどれくらい不安を感じているか」を示す状態不安20項目と、「普段どのくらい不安を感じやすい性格か」を示す特性不安20項目の計40項目からなり、各項目を4段階で被験者自身が用紙に記入する。自己記入式の質問紙法であり、口頭で答える形式ではない。

  3. ○c.  Hamiltonうつ病評価尺度

    Hamiltonうつ病評価尺度(HAM-DまたはHDRS)は、うつ病の重症度を評価する代表的な他者評価式の尺度で、抗うつ薬の臨床試験などでも広く用いられる。広く使われる17項目版では、抑うつ気分、罪責感、自殺念慮、入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒、仕事と活動、精神運動抑制、焦燥、精神的不安、身体的不安、消化器系の身体症状(食欲)、全身の身体症状、性欲、心気症、体重減少、病識について評価する(追加項目を含む21項目版などもある)。評価者が面接で被験者に質問し、その口頭での回答と面接中の観察から各項目を採点するため、被験者が口頭で答える形式である。

  4. ×d.  Minnesota多面人格検査〈MMPI〉

    MMPI(Minnesota Multiphasic Personality Inventory)は、米国ミネソタ大学で開発された質問紙法の代表的な人格検査である。日本語版では550項目の質問に対し「あてはまる」「あてはまらない」「どちらともいえない」のいずれかを被験者が記入する。心気症、抑うつ、ヒステリー、精神病質的偏奇などの臨床尺度に加え、回答の信頼性をみる妥当性尺度(虚偽尺度など)をもつのが特徴で、質問紙法の弱点である回答の歪みをある程度検出できる。自己記入式であり、口頭で答える形式ではない。

  5. ×e.  ベック〈Beck〉のうつ病自己評価尺度

    Beckのうつ病自己評価尺度(BDI:Beck Depression Inventory)は、認知療法の創始者Beckが考案した抑うつ症状の重症度評価尺度である。現在広く用いられる改訂版のBDI-IIは、DSM-IVのうつ病診断基準に対応するよう作られた21項目からなり、各項目で最近2週間の状態に当てはまる文章を0〜3点の4段階から被験者自身が選んで記入する。名称のとおり自己記入式の質問紙であり、口頭で答える形式ではない。同じうつ病の重症度評価でも、Hamiltonうつ病評価尺度が他者評価であるのと対照的である。

心理検査の分類

1. 知能検査 ・WAIS(成人用)、WISC(児童用)、田中ビネー知能検査など。検査者が1対1で課題を出し、被験者は口頭で答えたり、積木などの作業をしたりする個別式検査である。 2. 人格検査 ・質問紙法:MMPI、YG(矢田部ギルフォード)性格検査、TEG(東大式エゴグラム)など ・投影法:Rorschachテスト(図版を見て口頭で答える)、TAT(絵画統覚テスト:絵を見て物語を口頭で作る)、SCT(文章完成テスト:書き出しに続けて文章を記入する)、P-Fスタディ(欲求不満場面の絵に吹き出しの台詞を記入する)、バウムテスト(木の絵を描く)など ・作業検査法:内田クレペリン精神検査(一桁の足し算を続け、作業曲線から性格・作業特性を評価する) 3. 症状評価尺度 ・自己評価式:BDI、SDS(Zung自己評価式抑うつ尺度)、STAI、CES-Dなど ・他者評価式(面接による):HAM-D、MADRS、BPRS、PANSS(陽性・陰性症状評価尺度)など 4. 認知機能検査 ・HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)、MMSE:検査者の質問に被験者が口頭で答える(一部で書字や図形模写を含む)

投影法でも口頭とは限らない

投影法のうち、Rorschachテスト・TATは口頭で反応を答えるが、SCTやP-Fスタディは記入式、バウムテストは描画である。投影法=口頭と機械的に覚えないよう注意する。

自己評価と他者評価の使い分け

自己評価式は簡便で患者の主観をそのまま反映できるが、病識の乏しい患者や重症例では正確さに欠けることがある。他者評価式は評価者の訓練を要するが、観察所見を含めた重症度の評価が可能で、臨床試験の主要評価項目として用いられることが多い。

POINT

・口頭で答える検査:Rorschachテスト、TAT(投影法)、Hamiltonうつ病評価尺度(他者評価)、HDS-R、MMSE など ・自己記入式の質問紙:MMPI、STAI、BDI、SDS、YG性格検査 など ・うつ病の重症度評価:HAM-DとMADRSは他者評価、BDIとSDSは自己評価 ・投影法でもSCT・P-Fスタディは記入式、バウムテストは描画

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。