顔の片側に広がる赤あざ―4か月健診で見逃せないSturge-Weber症候群のサイン
第108回医師国家試験 B問題 第26問
国試問題にチャレンジ
4か月児健康診査で精査が必要なのはどれか。
- a.殿部にある青い皮疹
- b.眉間の正中にある赤い皮疹
- c.後頭結節の尾側にある赤い皮疹
- d.顔の片側で頬から額に続く赤い皮疹
- e.胸部にある隆起を伴う直径1 cmの赤い皮疹
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
乳児のあざは、色(青か赤か)、隆起の有無、部位(正中か片側か)、自然経過を手がかりに鑑別します。殿部の蒙古斑、眉間などのサーモンパッチ、項部のUnna母斑は合併症がなく精査不要で、体幹の小さな乳児血管腫も多くは経過観察で退縮を待てます。一方、顔の片側で三叉神経第1枝領域を含むポートワイン母斑は自然消退せず、脳軟膜の血管奇形(てんかん、片麻痺、発達遅滞)や緑内障を伴うSturge-Weber症候群の可能性があるため、頭部画像検査と眼科診察による精査が必要です。乳児血管腫でも眼周囲・気道周囲や大型のものはプロプラノロールによる治療を検討し、四肢のポートワイン母斑ではKlippel-Trenaunay症候群に注意します。あざの所見から全身疾患を想起する力は、乳幼児健診で異常を見逃さず、保護者に適切な説明を行うための基本となります。
解答・解説
正解はdです
テーマの要点
乳児の皮膚には、青色や赤色のあざ(母斑や血管性病変)がしばしばみられる。4か月児健康診査では、これらのうち「放置してよい生理的・自然消退するもの」と「他臓器の異常を合併しうるため精査が必要なもの」を見分けることが求められる。
正解を導く考え方
皮疹の色と部位・分布から病名を推定する。 ・青い皮疹で殿部:蒙古斑 ・赤い平坦な皮疹で顔面正中(眉間、額、上眼瞼、人中):サーモンパッチ ・赤い平坦な皮疹で項部(うなじ):Unna母斑 ・赤い平坦な皮疹が顔の片側に、三叉神経の支配領域に沿って広がる:ポートワイン母斑(毛細血管奇形) ・隆起する鮮紅色の腫瘤:乳児血管腫(イチゴ状血管腫) このうち、正中部の赤あざ(サーモンパッチ、Unna母斑)は左右対称の正中にでき、他の異常を伴わない。一方、顔の片側で三叉神経第1枝(眼神経)領域、すなわち額・上眼瞼を含んで広がるポートワイン母斑は、Sturge-Weber症候群の皮膚症状である可能性があり、脳(軟膜の血管奇形によるけいれん、片麻痺、精神運動発達遅滞)や眼(緑内障)の合併症を調べる必要がある。したがって、精査が必要なのは顔の片側で頬から額に続く赤い皮疹である。
選択肢考察
- ×a. 殿部にある青い皮疹
蒙古斑である。真皮にメラノサイト(真皮メラノサイト)が残存するために青く見えるもので、日本人の乳児のほぼ全員にみられる生理的な所見である。多くは学童期までに自然に消退するため精査は不要である。なお、殿部・腰仙部以外にできる異所性蒙古斑は消えにくいことがあり、整容面からレーザー治療の対象となることがある。
- ×b. 眉間の正中にある赤い皮疹
サーモンパッチ(正中部母斑)である。眉間、額の中央、上眼瞼、人中など顔面の正中付近にできる淡い紅色の平坦な斑で、皮膚の毛細血管の拡張による。新生児に高頻度にみられ、多くは1歳半ごろまでに自然消退し、合併症もないため精査は不要である。泣いたときに色が濃くなるのも特徴である。
- ×c. 後頭結節の尾側にある赤い皮疹
Unna母斑である。後頭部から項部(うなじ)の正中にできる平坦な紅斑で、サーモンパッチと同じ正中部母斑の仲間である。サーモンパッチより消えにくく、成人まで残ることも多いが、毛髪に隠れる部位で合併症も伴わないため、治療や精査は通常必要ない。
- ○d. 顔の片側で頬から額に続く赤い皮疹
顔面の片側に、三叉神経の支配領域に沿って広がる平坦な赤あざはポートワイン母斑(毛細血管奇形、かつての単純性血管腫)である。ポートワイン母斑は自然には消えず、成長とともに色が濃くなったり肥厚したりする。特に額や上眼瞼を含む三叉神経第1枝領域に及ぶ場合は、同側の脳軟膜の血管奇形(けいれん、片麻痺、発達遅滞の原因)や眼の病変(緑内障、脈絡膜血管腫)を伴うSturge-Weber症候群の可能性がある。このため、頭部MRI(造影)、眼科での眼圧・眼底検査などの精査が必要である。
- ×e. 胸部にある隆起を伴う直径1 cmの赤い皮疹
乳児血管腫(イチゴ状血管腫)である。生後数週以内に出現し、生後数か月にかけて急速に増大して鮮紅色の隆起した病変となり、その後数年をかけて徐々に退縮する良性の血管内皮細胞の腫瘍である。体幹にある直径1 cm程度の小さな病変であれば、機能的な問題を生じにくく、経過観察でよいことが多い。ただし、眼周囲(視力障害)、気道周囲(気道狭窄)、口唇・鼻などの顔面(整容上の問題)の病変や、急速に増大する大きな病変では、プロプラノロール内服などによる早期治療が検討される。
Sturge-Weber症候群
・皮膚、脳、眼に血管奇形をきたす神経皮膚症候群(母斑症)の一つ。遺伝はせず、GNAQ遺伝子の体細胞変異(胎生期に一部の細胞に生じる変異)が原因とされる。 ・皮膚:三叉神経第1枝領域を含む顔面のポートワイン母斑(片側性が多い) ・脳:同側の脳軟膜血管腫(軟膜の血管奇形)により、てんかん発作、対側の片麻痺、知的障害を生じる。頭部CTでは脳回に沿った石灰化(tram-track sign、脳回状石灰化)、造影MRIでは軟膜の増強効果や患側大脳の萎縮がみられる。 ・眼:緑内障(先天緑内障を含む)、脈絡膜血管腫 ・治療:皮膚病変には色素レーザー(パルス色素レーザー)、てんかんには抗てんかん薬や外科治療、緑内障には点眼・手術。
乳児の赤あざの整理
・サーモンパッチ:顔面正中の淡い紅斑。多くは1歳半ごろまでに消退。 ・Unna母斑:項部正中の紅斑。残存しやすいが合併症なし。 ・ポートワイン母斑(毛細血管奇形):境界明瞭な平坦な紅斑で、自然消退しない。顔面ではSturge-Weber症候群、四肢ではKlippel-Trenaunay症候群(患肢の肥大、静脈瘤を伴う)に注意。 ・乳児血管腫(イチゴ状血管腫):出生後に出現・増大し、その後自然退縮する隆起性病変。治療の第一選択はプロプラノロール内服。
青あざの整理
・蒙古斑:殿部・腰仙部。多くは自然消退。 ・太田母斑:三叉神経第1・2枝領域の青褐色斑。自然消退せず、Qスイッチレーザーやピコ秒レーザーで治療する。眼球メラノーシスを伴うことがある。
血小板減少を伴う血管性腫瘍
Kasabach-Merritt現象は、巨大な血管性腫瘍の内部で血小板が消費されて著しい血小板減少と凝固障害をきたす病態である。原因となるのは主にカポジ型血管内皮腫や房状血管腫であり、通常の乳児血管腫では起こらないとされている。
POINT
・顔の片側、三叉神経第1枝領域のポートワイン母斑 → Sturge-Weber症候群を疑い、脳(てんかん、片麻痺)と眼(緑内障)を精査する。 ・正中部の赤あざ(眉間のサーモンパッチ、項部のUnna母斑)は合併症がなく精査不要。 ・殿部の蒙古斑は生理的で、多くは自然消退する。 ・乳児血管腫(イチゴ状血管腫)は増大後に自然退縮する。眼周囲・気道周囲・大型病変ではプロプラノロールで治療。 ・ポートワイン母斑(毛細血管奇形)は自然消退しない。
