StudyMed医師国家試験

「何回撮るか」で被ばくが変わる―画像検査の線量を桁でつかむ

第107回医師国家試験 E問題 第22問

国試問題にチャレンジ

第107回 E問題 第22問

 画像検査で患者の放射線被ばく線量が最も多いのはどれか。

  1. a.胸部単純エックス線撮影
  2. b.腹部ダイナミックCT
  3. c.骨シンチグラフィ
  4. d.マンモグラフィ
  5. e.MRCP

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、代表的な画像検査で患者さんが受ける被ばく線量の大小を比べる問題だ。ポイントは2つある。まず放射線を使う検査かどうかで分けること。次に、使う検査の中で線量の桁がどれくらい違うかを押さえることだ。
医学生医学生
数字を全部覚えていないと解けない問題かと思って、少し身構えました。
ドクタードクター
細かい数値は装置や撮影条件でかなり変わるから、正確な値よりも桁と順番をつかめば十分だよ。まずは放射線を使わない検査を探してみよう。
医学生医学生
MRCPはMRIの一種なので、磁場と電波を使うだけで被ばくはないですよね。
ドクタードクター
その通り。MRCPは強いT2強調像で、胆汁や膵液のような動きの少ない液体を白く描き出して胆管・膵管を見る検査だ。造影剤も内視鏡も要らないから、ERCP後膵炎のような合併症の心配もない。ただしMRI非対応のペースメーカなどの金属がある人や、閉所恐怖症の人では難しいことがある。
医学生医学生
残りは単純X線、マンモグラフィ、CT、それに核医学の骨シンチですね。核医学は体の中から放射線が出続けるので、一番多い気がします。
ドクタードクター
そこはよくある誤解だね。骨シンチは99mTcで標識したリン酸化合物を注射して、骨代謝の盛んな部位への集積をガンマカメラで撮る検査で、実効線量はおよそ数mSv程度。99mTcは半減期が約6時間と短く、尿に排泄されるから、検査後に水分をとって排尿を促すと膀胱の被ばくも減らせるんだ。
医学生医学生
思ったより少ないんですね。では胸部単純X線はどうですか。健診でみんな撮っていますけど。
ドクタードクター
胸部単純X線の正面1枚はおよそ0.02〜0.05mSvで、画像検査の中でも特に少ない。日本で1年間に自然界から受ける放射線が約2mSvだから、それと比べてもごくわずかだ。肺は空気が多くX線を通しやすいので、少ない線量で十分な画像が得られるんだよ。
医学生医学生
マンモグラフィは乳房を挟んで撮るので、局所にはそれなりに当たりそうです。
ドクタードクター
乳腺が受ける平均乳腺線量は1回1〜2mGy程度で、精度管理では3mGy以下が基準とされている。ただ全身への影響に換算した実効線量にすると0.1〜0.5mSv程度にとどまる。ここで単位に注意してほしい。Gyは組織が吸収したエネルギーの量、Svは臓器ごとの感受性などを考慮して全身への影響を一つの数値で表したもので、検査どうしを比べるときは実効線量のSvを使うんだ。
医学生医学生
放射線医学の講義で吸収線量と実効線量の違いを習いましたが、こういう場面で使い分けるんですね。そうするとCTが残ります。
ドクタードクター
CTは体の周りを回りながらX線を照射して断面像を作るから、単純撮影よりずっと多い線量を使う。腹部CTを1相撮るだけでおよそ5〜10mSv前後だ。そしてダイナミックCTは、造影剤を急速に静注しながら造影前、動脈相、門脈相、平衡相と同じ範囲を何度も撮る。相の数だけ被ばくが増えて、合計で数十mSvに達することもある。だから正解は腹部ダイナミックCTだ。
医学生医学生
消化器内科を回ったとき、肝細胞癌の患者さんで動脈相で濃く染まって後の相で抜ける像を見ました。あれは何回も撮っていたから分かるんですね。
ドクタードクター
まさにそう。早期濃染とwashoutは多相撮影だからこそ評価できる所見で、膵腫瘍の評価にも使われる。診断価値が高い一方で、被ばくが多い検査でもあるわけだ。整理すると、MRI・超音波は被ばくなし、胸部単純X線、マンモグラフィ、骨シンチ、CTの順に増え、多相のダイナミックCTはさらに多い、という並びになる。
医学生医学生
患者さん本人の被ばくには線量限度があるんでしたっけ。
ドクタードクター
いい質問だ。医療被ばくには患者本人の線量限度は定められていない。代わりに、検査の利益がリスクを上回るかを判断する正当化と、必要な画質を保ちつつ線量をできるだけ下げる最適化、いわゆるALARAの原則で管理する。だからダイナミックCTでも撮影範囲や相の数を必要最小限にする工夫が求められるんだ。
医学生医学生
小児や妊婦さんでは、まず超音波やMRIで代わりにならないか考える、ということですね。
ドクタードクター
その通り。検査をオーダーする立場になったら、「その検査で何が分かり、どれだけ被ばくするか」をセットで考える習慣をつけておこう。患者さんに被ばくについて聞かれたときも、自然放射線との比較で説明すると伝わりやすいよ。

まとめ

画像検査の被ばく線量は、MRI・MRCPや超音波では被ばくがなく、胸部単純X線撮影(数十μSv)<マンモグラフィ(実効線量0.1〜0.5mSv程度)<骨シンチグラフィ(数mSv)<CT(1相で5〜10mSv前後)のおおよその順になります。腹部ダイナミックCTは造影剤を注入しながら複数の相を撮影するため、相の数に応じて被ばくが増え、選択肢の中で最も多くなります。検査間の比較には全身への影響を表す実効線量(Sv)を用い、臓器の吸収線量(Gy)と区別することが大切です。医療被ばくには患者の線量限度がなく、正当化と最適化(ALARA)の原則で管理されます。各検査の線量を桁で把握しておくことは、適切な検査選択と患者への説明に直結する実践的な知識です。

解答・解説

正解はbです

代表的な画像検査で、患者がどれくらい放射線を浴びるか(被ばく線量)の大小関係を問う問題である。 まず、電離放射線を使う検査かどうかで分ける。MRIとその応用であるMRCPは、磁場と電波を使うので被ばくはない。残りの検査は、X線を使う検査(単純X線撮影、マンモグラフィ、CT)と、体内に投与した放射性医薬品からのγ線を使う核医学検査(シンチグラフィ)である。 全身への影響をまとめて表す実効線量(単位はSv、シーベルト)で比べると、おおよその大小関係は次のとおりである。 胸部単純X線撮影(1回あたり数十μSv、つまり0.1mSvに満たない)< マンモグラフィ(0.1〜0.5mSv程度)< 骨シンチグラフィ(数mSv程度)< CT(1回の撮影で数mSv〜10mSv前後) さらにダイナミックCTでは、造影剤を注入しながら同じ部位を時間をずらして何回も撮影する(造影前、動脈相、門脈相、平衡相など)。撮影の回数に比例して被ばくが増えるため、合計で数十mSvに達することもある。よって、選択肢の中で被ばく線量が最も多いのは腹部ダイナミックCTである。 なお、実際の線量は装置、撮影条件、体格、投与する放射性医薬品の量などで大きく変わる。数値は目安として、桁の違いと大小関係を押さえればよい。

選択肢考察

  1. ×a.  胸部単純エックス線撮影

    誤り。胸部単純X線撮影(正面1枚)の実効線量は約0.02〜0.05mSvと、画像検査のなかでも特に少ない。日本で1年間に自然界から受ける放射線(自然放射線、約2mSv)と比べてもごくわずかである。肺は空気を多く含みX線を通しやすいため、少ない線量でも十分な画像が得られる。

  2. ○b.  腹部ダイナミックCT

    正しい。CTは体の周りを回りながらX線を照射して断面の画像を作る検査である。単純X線撮影よりずっと多くの線量を使い、腹部CTを1回撮影するだけで実効線量はおよそ5〜10mSv前後になる。ダイナミックCTは、造影剤を急速に静脈に注射しながら同じ範囲を何回も撮影し、造影剤がどう広がりどう抜けていくかを調べる方法である。肝細胞癌の診断(動脈相で強く染まり、後の相で周囲より黒く抜ける)や膵腫瘍の評価などに用いる。撮影する相の数だけ被ばくが増え、合計で数十mSvになることもあるので、選択肢の中で最も多い。一方、撮影の範囲や相の数を必要最小限にするなど、被ばくを減らす工夫が求められる検査でもある。

  3. ×c.  骨シンチグラフィ

    誤り。骨シンチグラフィは、テクネチウム(99mTc)で標識したリン酸化合物(MDPやHMDP)を静脈に注射し、骨の代謝が活発な部位に集まる様子をガンマカメラで撮影する検査である。がんの骨転移、骨折、骨髄炎などの検出に用いる。実効線量はおよそ3〜6mSv程度で、単純X線撮影やマンモグラフィよりは多い。しかし、複数の相を撮影するダイナミックCTには及ばない。99mTcは半減期が約6時間と短く、放射性医薬品は尿として排泄されるので、検査後に水分をとって排尿を促すと膀胱の被ばくを減らせる。

  4. ×d.  マンモグラフィ

    誤り。マンモグラフィは、乳房を板で挟んで薄く広げ、低いエネルギーのX線で撮影する乳房専用の検査である。乳腺が受ける線量(平均乳腺線量)は1回の撮影で1〜2mGy程度である。精度管理の基準では1回あたり3mGy以下とされている。全身への影響に換算した実効線量は0.1〜0.5mSv程度にとどまる。乳癌検診に用いられ、石灰化の検出にすぐれる。

  5. ×e.  MRCP

    誤り。MRCP(MR胆管膵管撮影:magnetic resonance cholangiopancreatography)は、動きの少ない液体が強く光るMRIの撮影法(強いT2強調像)を使い、胆汁や膵液で満たされた胆管や膵管を描き出す検査である。放射線を使わないので被ばくはない。内視鏡を使う逆行性胆管膵管造影(ERCP)と違って、造影剤を注入する必要がなく、ERCP後膵炎などの合併症の心配もない。一方、体内に心臓ペースメーカ(MRIに対応していない機種)などの金属がある患者や、閉所恐怖症の患者では検査が難しいことがある。

放射線の量を表す単位

吸収線量(Gy、グレイ):組織1kgあたりが吸収した放射線のエネルギー。臓器ごとの線量(マンモグラフィの平均乳腺線量など)を表すのに使う。 実効線量(Sv、シーベルト):放射線の種類や臓器ごとの感受性の違いを考慮して、全身への影響(発がんなどの確率的影響)を一つの数値で表したもの。異なる検査の被ばくを比べるときに使う。

検査ごとの実効線量の目安

MRI・超音波:被ばくなし 胸部単純X線撮影:約0.02〜0.05mSv マンモグラフィ:約0.1〜0.5mSv 自然放射線(日本、1年間):約2mSv 骨シンチグラフィ:約3〜6mSv 胸部CT:約5〜10mSv 腹部・骨盤CT(1相):約5〜10mSv FDG-PET/CT:放射性医薬品による被ばくに併用するCTの被ばくが加わり、合計で数mSv〜十数mSv程度 腹部ダイナミックCT(多相):撮影する相の数に応じて増え、数十mSvになることもある ※数値は装置や撮影条件によって大きく変わるので、目安である。

医療被ばくの防護の考え方

医療被ばくには、患者本人への線量の上限は定められていない。そのかわり、次の2つの原則で被ばくを管理する。 ・正当化:検査で得られる利益が被ばくによるリスクを上回ること ・最適化:必要な画質を保ちながら線量をできるだけ少なくすること(ALARAの原則:as low as reasonably achievable) 特に小児や妊婦では、超音波やMRIで代わりにならないかをまず検討する。CTを使う場合も、撮影範囲や相の数を必要最小限にする。

POINT

・被ばく線量のおおよその大小は、MRI・超音波(なし)< 胸部単純X線撮影 < マンモグラフィ < 骨シンチグラフィ < CT。多相で撮影するダイナミックCTはさらに多い。 ・ダイナミックCTでは、撮影する相の数だけ被ばくが増える。 ・MRCPはMRIの一種で、被ばくはない。 ・医療被ばくは、正当化と最適化(ALARA)の原則で管理する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。