「時間・日・年」で仕分ける放射性同位元素―検査に使う核種と事故で残る核種
第107回医師国家試験 B問題 第32問
国試問題にチャレンジ
放射性同位元素で物理的半減期が1年以上なのはどれか。2つ選べ。
- a.ヨウ素131
- b.ガリウム67
- c.セシウム134
- d.テクネチウム99 m
- e.ストロンチウム90
対話形式の解説
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ドクターまとめ
物理的半減期は核種固有の値で、生物学的半減期と組み合わせた実効半減期が内部被ばくの評価に用いられます。核医学で使うテクネチウム99m(約6時間)、ガリウム67(約3.3日)、ヨウ素131(約8日)は被ばく低減のため短半減期の核種が選ばれているのに対し、原子炉事故や核実験で放出されるセシウム134(約2年)、ストロンチウム90(約29年)、セシウム137(約30年)は半減期が長く、環境汚染が長期化します。体内ではヨウ素は甲状腺、セシウムはカリウムに似て筋肉、ストロンチウムはカルシウムに似て骨に集まる点もセットで覚えておきましょう。核種を「用途」と「時間・日・年の単位」で整理しておくことは、国家試験だけでなく、患者さんへの被ばくの説明や災害時の対応を理解する土台になります。
解答・解説
正解はc, eです
物理的半減期とは、放射性同位元素(放射性核種)の原子数が放射性壊変によって半分に減るまでの時間であり、核種ごとに固有で、温度や化学形などの外部条件では変化しない。これに対し、体内に取り込まれた物質が代謝・排泄によって半分に減るまでの時間を生物学的半減期といい、両者を合わせた実効半減期(1/実効半減期 = 1/物理的半減期 + 1/生物学的半減期)が内部被ばくの評価に用いられる。 本問の選択肢は、大きく二つのグループに分けて考えると整理しやすい。 ・核医学の検査・治療に用いる核種(ヨウ素131、ガリウム67、テクネチウム99m):患者の被ばくを抑えつつ必要な情報を得るため、半減期が数時間〜数日と短いものが選ばれる。 ・原子炉事故や核実験で環境中に放出され問題となる核種(セシウム134、ストロンチウム90):半減期が年単位と長く、環境汚染や内部被ばくが長期間持続する。 この区別を押さえ、各核種のおおよその半減期(時間・日・年のどの単位か)を覚えておけば、1年以上のものを選ぶことができる。
選択肢考察
- ×a. ヨウ素131
物理的半減期は約8日であり、1年未満である。ヨウ素131はβ線とγ線を放出する。β線は組織内での飛程が短く周囲の細胞を破壊するため、甲状腺に集まる性質を利用してバセドウ病(甲状腺機能亢進症)や分化型甲状腺癌(術後の残存甲状腺の破壊や転移巣)の内用療法に用いられる。γ線を利用したシンチグラフィにも使われる。原子炉事故でも放出されるが、半減期が短いため問題となるのは主に事故直後の時期であり、小児の甲状腺への内部被ばくを防ぐため安定ヨウ素剤の服用が行われる。
- ×b. ガリウム67
物理的半減期は約3.3日(約78時間)であり、1年未満である。ガリウム67はクエン酸ガリウムとして静注し、γ線を検出するシンチグラフィに用いる。悪性リンパ腫などの腫瘍や、サルコイドーシス・不明熱の原因検索など炎症性病変の描出に利用されてきた。なお現在では、悪性腫瘍の診断ではFDG-PETに置き換わりつつある。
- ○c. セシウム134
物理的半減期は約2年(約2.1年)であり、1年以上である。セシウム134はβ線とγ線を放出する核種で、原子炉内で安定なセシウム133が中性子を吸収してできる。セシウム137(半減期約30年)とともに、チェルノブイリ原子力発電所事故や東京電力福島第一原子力発電所事故で環境中に放出され、土壌や食品の汚染が長期にわたる原因となった。セシウムはカリウムと化学的性質が似ているため、体内に取り込まれると筋肉を中心に全身に分布する。成人での生物学的半減期は数十日〜100日程度とされる。
- ×d. テクネチウム99 m
物理的半減期は約6時間であり、1年未満である。mはmetastable(準安定)を意味し、核異性体転移によって約140 keVのγ線のみを放出する。β線を出さないため患者の被ばくが少なく、γカメラでの撮像に適したエネルギーをもつことから、核医学検査で最も広く用いられている核種である。半減期の長いモリブデン99(約66時間)を親核種とするジェネレータから病院内で溶出して得られる。標識する薬剤を変えることで、骨シンチグラフィ、心筋血流シンチグラフィ、甲状腺・副甲状腺シンチグラフィ、肺血流シンチグラフィ、腎シンチグラフィ、センチネルリンパ節の検索など多くの検査に用いられる。
- ○e. ストロンチウム90
物理的半減期は約29年(28.8年)であり、1年以上である。ストロンチウム90はウランの核分裂によって生じる代表的な核分裂生成物で、核実験や原子炉事故によって環境中に放出される。γ線をほとんど出さない純β線放出核種であり、壊変してできるイットリウム90も高エネルギーのβ線を出す。ストロンチウムはカルシウムと同じアルカリ土類金属で化学的性質が似ているため、体内に取り込まれると骨に沈着し(向骨性)、長期間とどまって骨髄を被ばくさせ、白血病や骨腫瘍のリスクとなる。なお、骨転移の疼痛緩和を目的とした内用療法に用いられていたのは同じ元素の別の核種であるストロンチウム89(半減期約50日)であり、ストロンチウム90ではない。
主な放射性核種の物理的半減期
・テクネチウム99m:約6時間(核医学検査で最多使用) ・フッ素18:約110分(FDG-PET) ・タリウム201:約73時間(約3日)(心筋血流シンチグラフィ) ・ガリウム67:約3.3日(腫瘍・炎症シンチグラフィ) ・ヨウ素123:約13時間(甲状腺シンチグラフィ) ・ヨウ素131:約8日(甲状腺の内用療法) ・ストロンチウム89:約50日(かつて骨転移の疼痛緩和に使用) ・コバルト60:約5.3年(かつて外部照射に使用) ・セシウム134:約2年 ・ストロンチウム90:約29年 ・セシウム137:約30年 ・ラジウム226:約1,600年
原子炉事故で問題となる核種と体内での挙動
・ヨウ素131:甲状腺に集積。短半減期のため事故初期に問題となる。対策は安定ヨウ素剤の服用。 ・セシウム134/137:カリウムに類似し全身(主に筋肉)に分布。排泄促進にプルシアンブルーが用いられる。 ・ストロンチウム90:カルシウムに類似し骨に沈着。
半減期の種類
・物理的半減期:核種固有で変化しない。 ・生物学的半減期:代謝・排泄によって体内量が半減する時間。 ・実効半減期:1/実効半減期 = 1/物理的半減期 + 1/生物学的半減期。実効半減期は物理的半減期・生物学的半減期のいずれよりも短くなる。
POINT
・診断・治療に用いる核種は被ばく低減のため半減期が短い:テクネチウム99m(約6時間)、ガリウム67(約3.3日)、ヨウ素131(約8日)。 ・原子炉事故・核実験由来で長期汚染の原因となる核種は半減期が長い:セシウム134(約2年)、ストロンチウム90(約29年)、セシウム137(約30年)。 ・ヨウ素は甲状腺、セシウムは筋肉(カリウム類似)、ストロンチウムは骨(カルシウム類似)に集まる。
