StudyMed医師国家試験

羊水に触れるのは誰か―由来から組み立てる卵膜3層の並び

第106回医師国家試験 G問題 第68問

国試問題にチャレンジ

第106回 G問題 第68問

卵膜の3層構造の順序で正しいのはどれか。  ただし,胎児側から母体側に並べた場合とする。

  1. a.絨毛膜 → 脱落膜 → 羊膜
  2. b.絨毛膜 → 羊膜 → 脱落膜
  3. c.脱落膜 → 絨毛膜 → 羊膜
  4. d.脱落膜 → 羊膜 → 絨毛膜
  5. e.羊膜 → 絨毛膜 → 脱落膜
  6. f.羊膜 → 脱落膜 → 絨毛膜

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は卵膜の3層構造を、胎児側から母体側へ正しく並べる問題だ。丸暗記で臨んでもいいけれど、それぞれの膜が「どこから来たのか」「何に接しているのか」を考えれば、自然に順番が決まる。それと、並べる向きの指定にも気をつけたいね。
医学生医学生
羊膜、絨毛膜、脱落膜の3つですよね。発生学の講義で出てきましたが、正直どれが外側だったか自信がありません。
ドクタードクター
じゃあ一つずつ考えよう。まず脱落膜。これは何が変化したものだったかな。
医学生医学生
子宮内膜が妊娠で変化したもの……だったと思います。ということは母体の組織ですね。
ドクタードクター
その通り。妊娠に伴って子宮内膜の機能層が脱落膜化したもので、母体由来だ。分娩後に胎盤や卵膜と一緒に剥がれ落ちる、つまり後産として「脱落」するのが名前の由来。母体の組織なんだから、3層のうちいちばん母体側にあるのは自然だよね。
医学生医学生
なるほど。じゃあ残りの羊膜と絨毛膜は、どちらも胎児側の組織ですか。
ドクタードクター
そう、どちらも受精卵由来だ。羊膜は羊水を直接包んで羊膜腔の壁そのものをつくる膜。羊水の中に胎児が浮かんでいるわけだから、羊膜は最も胎児側、つまり最内層になる。
医学生医学生
絨毛膜は栄養膜からできる膜でしたよね。絨毛が子宮内膜に入り込んで胎盤をつくるイメージなので、脱落膜と接しているはずです。
ドクタードクター
いい推論だ。絨毛膜は栄養膜とそれを裏打ちする胚外中胚葉に由来し、母体側の脱落膜と接している。だから羊膜と脱落膜の間、真ん中の層になる。胎児側から並べると羊膜、絨毛膜、脱落膜。これが正解だね。
医学生医学生
最初、脱落膜・絨毛膜・羊膜の並びを選びそうになりました。並び自体は合っていると思ったので。
ドクタードクター
そこがこの問題の落とし穴だね。その並びは母体側から胎児側へ見た順番で、内容は合っていても向きが逆。設問の「胎児側から母体側」という条件を読み落とすと、知識があっても失点してしまう。
医学生医学生
羊膜が外で絨毛膜が内、という逆の並びや、脱落膜が真ん中に来る並びはどう考えればいいですか。
ドクタードクター
脱落膜は母体の子宮内膜だから、胎児由来の2層の間に挟まったり、胎児側に来たりすることはない。これで脱落膜が端以外にある選択肢はすべて消える。残るのは羊膜と絨毛膜の内外だけど、羊水に接しているのは羊膜だから、絨毛膜が最内層になることもないんだ。
医学生医学生
覚え方のコツはありますか。
ドクタードクター
双胎の膜性診断を思い出すといい。「一絨毛膜二羊膜双胎」という言葉は、一つの絨毛膜の中に羊膜が二つある、という意味だよね。つまり羊膜は絨毛膜の内側にある。用語そのものが順番を教えてくれているんだ。
医学生医学生
産婦人科の臨床実習で、MD双胎の妊婦さんの超音波を見せてもらいました。双胎間輸血症候群に注意するって言われたのを覚えています。
ドクタードクター
よく覚えているね。一絨毛膜性双胎は胎盤を共有するから、双胎間輸血症候群などのリスクが高い。膜性診断は妊娠初期、14週頃までに行うことが大切だ。ここで卵膜の知識が臨床に直結するわけだね。
医学生医学生
胎盤と卵膜の関係も整理しておきたいです。絨毛膜は全部が胎盤になるわけではないんですよね。
ドクタードクター
そう。妊娠初期には絨毛膜の全周に絨毛があるけれど、着床部の基底脱落膜に面した部分だけ絨毛が発達して絨毛膜有毛部となり、これが胎盤の胎児側になる。それ以外の部分は絨毛が退縮して絨毛膜無毛部となり、卵膜の一部になるんだ。胎盤の母体側は基底脱落膜だね。
医学生医学生
胎盤は絨毛膜有毛部と基底脱落膜、卵膜は羊膜と絨毛膜無毛部と脱落膜、と考えればいいんですね。
ドクタードクター
その整理で十分だ。補足すると、羊膜は血管も神経も含まない薄い半透明の膜で、羊水の産生・吸収にも関わる。脱落膜は位置によって基底脱落膜、被包脱落膜、壁側脱落膜に分かれ、妊娠が進むと被包脱落膜と壁側脱落膜は癒合する。分娩時に羊水を含んだ卵膜が子宮口から膨らんだものが胎胞で、それが破れるのが破水だ。卵膜の構造を知っていると、こうした分娩の用語もすっと入ってくるよ。

まとめ

卵膜は胎児側から羊膜、絨毛膜、脱落膜の3層からなります。羊膜は羊水を直接包む血管のない最内層、絨毛膜は栄養膜由来の中間層で、いずれも受精卵由来です。一方、脱落膜は妊娠により変化した子宮内膜で母体由来のため最外層に位置します。順序は「一絨毛膜二羊膜双胎」という用語からも連想でき、胎盤が絨毛膜有毛部と基底脱落膜からなることも併せて押さえておくと、双胎の膜性診断や破水・胎胞といった臨床の理解につながります。並べる向きの指定を読み落とさないことも、得点のうえで大切なポイントです。

解答・解説

正解はeです

問われていること

卵膜とは、妊娠子宮の中で羊水と胎児を包み、外界から隔てる袋状の膜である。組織学的には3層からなり、胎児側(内側)から順に羊膜、絨毛膜、脱落膜が重なっている。

正解を導く考え方

暗記していなくても、各層の由来と役割から順序を組み立てられる。 ・脱落膜は、妊娠によって変化した子宮内膜であり母体由来の組織である。したがって3層のうち最も母体側(外側)にあるはずである。 ・羊膜は羊水を直接包む膜であり、羊膜腔の壁そのものである。羊水の中には胎児が浮いているので、羊膜は最も胎児側(内側)にある。 ・絨毛膜は受精卵の栄養膜に由来し、子宮内膜(脱落膜)と接して胎盤を形成する側の膜である。したがって羊膜と脱落膜の間に位置する。 双胎の膜性診断で「1絨毛膜2羊膜」(一つの絨毛膜の中にそれぞれの胎児を包む羊膜が二つある)という用語が用いられることからも、羊膜が絨毛膜の内側にあることがわかる。以上より、胎児側から母体側へは羊膜 → 絨毛膜 → 脱落膜の順となる。

選択肢考察

  1. ×a.  絨毛膜 → 脱落膜 → 羊膜

    最も胎児側にあるのは羊水を直接包む羊膜であり、絨毛膜ではない。また母体由来の脱落膜が胎児由来の2層の間に挟まることはなく、脱落膜は最も母体側に位置する。

  2. ×b.  絨毛膜 → 羊膜 → 脱落膜

    脱落膜が最も母体側にある点は正しいが、羊膜と絨毛膜の順序が逆である。羊膜は羊膜腔を裏打ちする最内層で、その外側を絨毛膜が覆う。絨毛膜は脱落膜と接する層である。

  3. ×c.  脱落膜 → 絨毛膜 → 羊膜

    3層の並び自体は正しいが、母体側から胎児側に向かって並べた順序になっている。本問は胎児側から母体側への順を問うているので誤りである。向きの指定を読み落とさないよう注意が必要である。

  4. ×d.  脱落膜 → 羊膜 → 絨毛膜

    脱落膜は子宮内膜が変化した母体由来の組織であり、胎児側にくることはない。また羊膜が中間層に位置することもない。

  5. ○e.  羊膜 → 絨毛膜 → 脱落膜

    羊膜は羊水を直接包む最内層、絨毛膜はその外側で栄養膜に由来する中間層、脱落膜は子宮内膜が妊娠により変化した母体由来の最外層である。胎児側から母体側へ羊膜 → 絨毛膜 → 脱落膜と並ぶので、これが正しい。

  6. ×f.  羊膜 → 脱落膜 → 絨毛膜

    最内層が羊膜である点は正しいが、脱落膜と絨毛膜の順序が逆である。母体由来の脱落膜が最も母体側にあり、胎児由来の絨毛膜はその内側で羊膜と脱落膜の間に位置する。

卵膜を構成する3層

・羊膜:最内層。血管も神経も含まない薄く半透明の膜で、単層の立方~円柱上皮と、その下の結合組織からなる。臍帯の付着部で臍帯表面に移行して胎児を包み、羊膜腔をつくる。羊水の産生・吸収にも関与する。胎児(受精卵)由来。 ・絨毛膜:中間層。栄養膜(トロホブラスト)とそれを裏打ちする胚外中胚葉に由来する。妊娠初期には全周に絨毛があるが、妊娠が進むと、基底脱落膜に面した部分の絨毛が発達して絨毛膜有毛部(胎盤の胎児側部分)となり、それ以外の部分の絨毛は退縮して絨毛膜無毛部となり卵膜の一部を構成する。胎児(受精卵)由来。 ・脱落膜:最外層。妊娠によって子宮内膜の機能層が変化(脱落膜化)したもので、母体由来。分娩後に胎盤・卵膜とともに剥がれ落ちる(後産)ことからこの名がある。

脱落膜の部位による区分

・基底脱落膜:受精卵の着床部位で子宮筋層側にある部分。絨毛膜有毛部とともに胎盤を形成する(胎盤の母体側部分)。 ・被包脱落膜:受精卵の子宮腔側を覆う部分。 ・壁側脱落膜(真脱落膜):着床部位以外の子宮腔を覆う部分。 妊娠の進行とともに胎嚢が大きくなって子宮腔を満たすと、被包脱落膜と壁側脱落膜は癒合する。

関連用語

・胎膜:卵膜のうち胎児由来の羊膜と絨毛膜の部分を指す。広義には脱落膜も含めて卵膜と同じ意味で用いられることもある。 ・胎胞:分娩時に子宮内圧が高まり、羊水を含んだ卵膜が子宮口から膨隆したもの。これが破れて羊水が流出するのが破水である。 ・胎嚢:妊娠初期の超音波検査で子宮内にみられる、受精卵を含む袋状の像。

双胎の膜性診断との関係

一絨毛膜二羊膜双胎(MD双胎)では、一つの絨毛膜の内側に二つの羊膜腔がある。二絨毛膜二羊膜双胎(DD双胎)では、それぞれの胎児が別々の絨毛膜と羊膜に包まれる。一絨毛膜一羊膜双胎(MM双胎)では、両児が一つの羊膜腔を共有する。一絨毛膜性双胎は胎盤を共有するため双胎間輸血症候群などのリスクが高く、膜性診断は妊娠初期(妊娠14週頃まで)に行うことが重要である。

POINT

・卵膜は胎児側から羊膜 → 絨毛膜 → 脱落膜の3層 ・羊膜と絨毛膜は受精卵(胎児)由来、脱落膜は子宮内膜由来(母体由来) ・羊膜は血管を含まない最内層で羊水を包む ・胎盤は絨毛膜有毛部(胎児側)と基底脱落膜(母体側)からなる ・順序は「1絨毛膜2羊膜」(絨毛膜の中に羊膜)から連想できる

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。