StudyMed医師国家試験

虫が大きすぎて食べられない―肝吸虫症で好酸球が増える理由

第106回医師国家試験 E問題 第29問

国試問題にチャレンジ

第106回 E問題 第29問

肝吸虫症において白血球分画の中で最も増加するのはどれか。

  1. a.好中球
  2. b.好酸球
  3. c.好塩基球
  4. d.単球
  5. e.リンパ球

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、白血球分画のどれがどんな病態で増えるかを問う問題だ。肝吸虫症は寄生虫、それも多細胞の蠕虫による感染症。ここから増える分画を考えてみよう。
医学生医学生
感染症なので、まず好中球が増えるのかなと思いました。
ドクタードクター
感染症=好中球、と結びつけるのは自然だけれど、それは主に細菌や真菌の場合なんだ。考えてほしいのは虫の大きさ。好中球やマクロファージは異物を貪食して処理するけれど、蠕虫は細胞が丸ごと飲み込むには大きすぎるよね。
医学生医学生
確かに、何センチもある虫は食べられませんね。では別の仕組みで攻撃するんですか。
ドクタードクター
そう。蠕虫に対しては、ヘルパーT細胞の2型、つまりTh2反応が強まる。Th2細胞が出すIL-5が骨髄で好酸球の産生と分化を促し、IL-4やIL-13はIgE産生を高める。IgEで標識された虫体に好酸球が結合して、主要塩基性蛋白などの細胞傷害性の顆粒蛋白を放出して攻撃するんだ。
医学生医学生
免疫学の講義で習ったTh1とTh2の話がここにつながるんですね。だから正解は好酸球ですか。
ドクタードクター
その通り。肝吸虫は肝内胆管に寄生して組織と接しているから、好酸球増多がみられる。好酸球の基準値は白血球の1〜5%程度で、末梢血で500/μLを超えると好酸球増多症とよぶ。IgE高値と合わせて、診断の手がかりになるよ。
医学生医学生
好塩基球もアレルギーに関係するので、少し迷いました。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。好塩基球はIgE受容体をもっていて即時型アレルギーにも関わるけれど、末梢血で目立って増えることは比較的まれだ。はっきり増えていたら、慢性骨髄性白血病などの骨髄増殖性腫瘍をまず考える。
医学生医学生
血液内科の実習で、CMLの塗抹標本に好塩基球が多かったのを覚えています。単球とリンパ球はどうでしょう。
ドクタードクター
単球は結核や感染性心内膜炎のような慢性・亜急性の感染症、サルコイドーシスなどの慢性炎症、骨髄抑制からの回復期で増える。リンパ球はウイルス感染が代表で、伝染性単核球症では異型リンパ球が出てくる。百日咳や慢性リンパ性白血病でも増えるね。いずれも寄生虫感染の特徴ではない。
医学生医学生
まとめると、細菌なら好中球、ウイルスならリンパ球、結核など慢性感染なら単球、CMLなら好塩基球、アレルギーと寄生虫なら好酸球、ですね。
ドクタードクター
完璧だ。CBTでも国試でも繰り返し問われる基本の対応表だよ。ここからは肝吸虫そのものについて補足しよう。感染経路は分かるかな。
医学生医学生
寄生虫学の講義では、川魚の生食と習った気がします。
ドクタードクター
そう。虫卵は糞便とともに出て、第1中間宿主のマメタニシという淡水の巻貝に取り込まれ、貝の中で発育してセルカリアになる。それがコイ科の淡水魚、たとえばモツゴやフナ、コイの筋肉に入ってメタセルカリアになる。ヒトはこの魚を刺身や洗いなどで生のまま食べて感染し、幼虫が十二指腸から総胆管をさかのぼって肝内胆管にたどり着き、成虫になるんだ。
医学生医学生
胆管に住みつくなら、長く感染していると胆管に悪さをしそうですね。
ドクタードクター
鋭いね。少数寄生なら無症状のことが多いけれど、多数寄生や長期感染では胆管の拡張や炎症、線維化を起こし、黄疸や胆管炎、胆石の原因になる。さらに、慢性感染は胆管癌の危険因子として知られている。診断は糞便や十二指腸液から一端に蓋をもつ小さな虫卵を見つけるのが基本で、抗体検査や画像での肝内胆管拡張も参考にする。治療はプラジカンテルだ。
医学生医学生
原因のはっきりしない好酸球増多をみたら、食歴、特に淡水魚の生食を聞くことが大事なんですね。
ドクタードクター
その通り。好酸球増多の原因はアレルギー疾患、薬剤性、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症などの血管炎、副腎皮質機能低下症、Hodgkinリンパ腫など幅広い。だからこそ問診で寄生虫感染の可能性を拾い上げる意識が、臨床では大切になるよ。

まとめ

肝吸虫症のような蠕虫感染では、虫体が大きく貪食できないため、Th2反応によるIL-5産生を介して好酸球が増加し、IgEと協調して顆粒蛋白で虫体を攻撃します。白血球分画は、細菌感染で好中球、ウイルス感染でリンパ球、結核などの慢性感染で単球、慢性骨髄性白血病で好塩基球、アレルギーや寄生虫感染で好酸球が増えると整理できます。肝吸虫はコイ科淡水魚の生食で感染して肝内胆管に寄生し、慢性感染では胆管炎や胆管癌の危険因子となり、治療にはプラジカンテルを用います。好酸球増多の原因は多岐にわたるため、食歴を含めた問診で寄生虫感染を想起することが重要です。増える分画を病態と免疫の仕組みから理解しておくと、血算の読み方が臨床で大きな武器になります。

解答・解説

正解はbです

テーマ

白血球分画(白血球を好中球・好酸球・好塩基球・単球・リンパ球の5種類に分けた割合)のうち、どの分画がどのような病態で増えるかを問う問題である。肝吸虫症は寄生虫(蠕虫)感染症であり、寄生虫が組織内に侵入・寄生する病態では好酸球増多が特徴的にみられる。

考え方

蠕虫(多細胞の寄生虫)は好中球やマクロファージが貪食するには大きすぎる。そのため宿主はヘルパーT細胞の2型(Th2)反応を強め、Th2細胞が産生するインターロイキン5(IL-5)が骨髄での好酸球の産生・分化を促す。また IL-4、IL-13 によりIgE産生が亢進し、IgEで標識された虫体に好酸球が結合して、主要塩基性蛋白(MBP)などの細胞傷害性顆粒蛋白を放出する。この結果、末梢血の好酸球が増加する。肝吸虫は肝内胆管に寄生し組織と接しているため、好酸球増多を生じる。 したがって、肝吸虫症で最も増加する分画は好酸球である。好酸球の基準は白血球の1〜5%程度であり、末梢血好酸球数が500/μLを超える場合を好酸球増多症という。

選択肢考察

  1. ×a.  好中球

    好中球は主に細菌感染症や真菌感染症で増加する。そのほか、急性炎症、心筋梗塞などの組織壊死、外傷・手術、副腎皮質ステロイドの投与(辺縁プールからの動員)、喫煙、慢性骨髄性白血病などでも増加する。寄生虫感染症に特徴的な変化ではない。

  2. ○b.  好酸球

    肝吸虫などの組織に寄生する蠕虫の感染では、Th2反応によるIL-5の産生亢進を介して好酸球が増加する。好酸球はIgEなどを介して虫体に結合し、細胞傷害性の顆粒蛋白を放出して虫体を攻撃する。肝吸虫症では好酸球増多とIgE高値が診断の手がかりとなる。好酸球はそのほか、気管支喘息・アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患、薬剤アレルギー、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、副腎皮質機能低下症などでも増加する。

  3. ×c.  好塩基球

    好塩基球の増加は比較的まれで、慢性骨髄性白血病をはじめとする骨髄増殖性腫瘍で特徴的にみられる。そのほか、即時型アレルギー、甲状腺機能低下症、潰瘍性大腸炎などでも軽度増加することがある。寄生虫感染で最も増加する分画ではない。

  4. ×d.  単球

    単球は結核、感染性心内膜炎、リケッチア症などの慢性・亜急性の感染症、サルコイドーシスや潰瘍性大腸炎などの慢性炎症性疾患、骨髄抑制からの回復期、慢性骨髄単球性白血病などで増加する。寄生虫感染症の特徴的な所見ではない。

  5. ×e.  リンパ球

    リンパ球はウイルス感染症(伝染性単核球症では異型リンパ球が出現)、百日咳、結核などの慢性感染症、慢性リンパ性白血病などで増加する。寄生虫感染で最も増加する分画ではない。

肝吸虫(Clonorchis sinensis)の生活環と感染経路

・成虫は最終宿主(ヒト、イヌ、ネコなど)の肝内胆管に寄生し、産卵する。虫卵は胆汁とともに腸管へ出て、糞便中に排出される。 ・淡水中で虫卵が第1中間宿主の淡水産巻貝(マメタニシ)に摂取されると、貝の体内でミラシジウムが孵化し、スポロシスト、レジアを経て多数のセルカリアとなる。 ・セルカリアは貝から水中へ出て、第2中間宿主であるコイ科の淡水魚(モツゴ、フナ、コイなど)の筋肉内に侵入し、メタセルカリアとなる。 ・ヒトはメタセルカリアを含む淡水魚を生食(刺身、洗い、不十分な酢じめなど)することで感染する。十二指腸で被嚢が溶けて幼虫が脱出し、総胆管を逆行して肝内胆管に到達し、成虫となる。

臨床像

少数寄生では無症状のことが多い。多数寄生や長期感染では胆管の拡張・炎症・線維化を生じ、上腹部不快感、肝腫大、黄疸、胆管炎、胆石形成などをきたす。慢性感染は胆管癌の危険因子である(国際がん研究機関でヒトに対する発がん性ありと分類されている)。

診断・治療

糞便や十二指腸液中の虫卵(小型で、一端に蓋をもつ)の検出、血清抗体検査、画像検査での肝内胆管の拡張などにより診断する。末梢血好酸球増多、IgE高値を伴う。治療はプラジカンテルを用いる。

好酸球増多をきたす主な疾患

アレルギー疾患(気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎)、寄生虫感染症(特に組織侵入性の蠕虫)、薬剤性、膠原病・血管炎(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症など)、皮膚疾患(天疱瘡、類天疱瘡)、副腎皮質機能低下症、Hodgkinリンパ腫、好酸球性白血病・特発性好酸球増多症候群など。

POINT

・寄生虫(特に組織に侵入・寄生する蠕虫)感染症では好酸球が増加する。機序はTh2反応によるIL-5産生亢進。 ・肝吸虫はコイ科淡水魚の生食で感染し、肝内胆管に寄生して胆管炎・胆管癌の原因となる。治療はプラジカンテル。 ・白血球分画の増加:好中球=細菌感染、リンパ球=ウイルス感染、単球=結核など慢性感染、好塩基球=慢性骨髄性白血病、好酸球=アレルギー・寄生虫。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。