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「0-Ⅱc」を分解せよ―記号で読み解く胃癌の肉眼型分類

第106回医師国家試験 D問題 第8問

国試問題にチャレンジ

第106回 D問題 第8問

0-Ⅱc型胃癌はどれか。

  1. a.限局潰瘍型進行癌
  2. b.腫瘤型進行癌
  3. c.びまん浸潤型進行癌
  4. d.表面陥凹型早期癌
  5. e.表面隆起型早期癌

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は胃癌取扱い規約の肉眼型分類、とくに「0-Ⅱc」という記号の意味を問う問題だ。丸暗記に頼らず、記号を「0」「Ⅱ」「c」に分けて読み取るのがコツだよ。まず「0」が何を表すか分かるかな。
医学生医学生
0型は早期癌、1〜4型が進行癌、と覚えています。
ドクタードクター
大筋はそれでいいけれど、少し正確にしておこう。0型は「表在型」という形の分類で、粘膜内か粘膜下層までにとどまる早期癌によくみられる形態、という位置づけなんだ。肉眼型はあくまで見た目の分類で、深達度そのものではない。だから0型に見えても、実際には固有筋層以深まで浸潤していることもありうる。
医学生医学生
形と深さは別物ということですね。Ⅱの後ろにaやcといったアルファベットが付く理由も、ずっとよく分かっていませんでした。
ドクタードクター
0型は凹凸の程度で細かく分けるんだ。はっきり盛り上がるのが0-Ⅰ(隆起型)、Ⅱは表面型で、わずかに隆起するⅡa、ほぼ平坦なⅡb、わずかに陥凹するⅡcに分かれる。深くえぐれて潰瘍になっているものが0-Ⅲ(陥凹型)だ。cは「concave(くぼんだ)」と結びつけると忘れにくいよ。
医学生医学生
つまり0-Ⅱcは、表在型で表面型、しかも浅くくぼんでいるもの。表面陥凹型の早期癌ですね。
ドクタードクター
正解。しかも0-Ⅱcは早期胃癌で最も多い肉眼型なんだ。ほかの選択肢も、進行型の分類と対応させて確認しよう。表面隆起型の早期癌はどの型かな。
医学生医学生
0-Ⅱaですね。わずかに盛り上がるタイプで、もっと高ければ0-Ⅰになる。
ドクタードクター
そう。目安としておおむね2〜3mm程度までのわずかな隆起がⅡa、それより明らかに高ければ0-Ⅰだ。いずれも隆起なので、陥凹のⅡcとは正反対の形だね。次は進行型。1型から4型を言えるかな。
医学生医学生
1型が腫瘤型、2型が潰瘍限局型、3型が潰瘍浸潤型、4型がびまん浸潤型でしたよね。CBTの前に必死で覚えました。
ドクタードクター
よく覚えているね。腫瘤型進行癌は1型で、明らかな隆起をつくり境界は明瞭。限局潰瘍型の進行癌は2型で、潰瘍を囲む周堤がはっきりしていて周囲との境界が明瞭だ。周堤の一部が崩れて周囲にしみ込むように広がるのが3型で、これが進行胃癌で最も多い。
医学生医学生
びまん浸潤型はスキルス胃癌のことですよね。消化器外科の実習で、胃全体が硬く縮んだ切除標本を見ました。
ドクタードクター
そう、4型は潰瘍や周堤が目立たず、癌が胃壁内をびまん性に浸潤して壁が厚く硬くなる。低分化腺癌や印環細胞癌が多く、腹膜播種を来しやすいので予後不良だ。ただ、スキルス胃癌の原発巣は小さなⅡc様の陥凹から始まることがあるとされるから、「浅いくぼみだから大したことはない」とは言い切れないんだ。
医学生医学生
内視鏡でⅡcを見つけるときは、どんなところに注目するんですか。
ドクタードクター
周囲とわずかに色調の異なる浅いくぼみとして見えることが多い。悪性を疑う所見としては、陥凹の縁が虫食いのように不整になる蚕食像や、陥凹に集まるヒダの先端の中断・先細り・癒合が大切だ。良性潰瘍の瘢痕との区別にも役立つ所見だよ。
医学生医学生
複数の型が混ざっている病変は、どう表記するのでしょう。
ドクタードクター
面積の広い型から順に「+」でつなぐ。Ⅱcの中に潰瘍があれば0-Ⅱc+Ⅲ、隆起の中央がくぼんでいれば0-Ⅱa+Ⅱcという具合だ。0-Ⅲ単独はまれで、多くはこうした組み合わせで現れる。
医学生医学生
この分類は治療方針にも関わってきますか。
ドクタードクター
関わってくるよ。分化型で潰瘍を伴わない粘膜内癌のように、リンパ節転移の可能性がきわめて低い病変は、内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)の適応となりうる。0-ⅡcはESDの対象となることが多い形態だ。ただし肉眼型だけで決めるのではなく、組織型・深達度・潰瘍の有無をあわせて判断する、という流れを意識しておこう。

まとめ

胃癌取扱い規約の肉眼型分類では、0型が表在型(早期癌に多い形態)、1〜4型が進行型、5型が分類不能とされ、0-Ⅱcは「0=表在型、Ⅱ=表面型、c=陥凹」を意味する表面陥凹型で、早期胃癌で最も多い肉眼型です。表在型にはほかに0-Ⅰ(隆起型)、0-Ⅱa(表面隆起型)、0-Ⅱb(表面平坦型)、0-Ⅲ(陥凹型)があり、進行型は1型(腫瘤型)、2型(潰瘍限局型)、3型(潰瘍浸潤型、進行癌で最多)、4型(びまん浸潤型、スキルス胃癌)に分かれます。肉眼型は形態の分類であって深達度そのものではなく、早期胃癌は浸潤が粘膜下層までにとどまるものと定義されます。内視鏡では陥凹縁の蚕食像やヒダ先端の中断・先細り・癒合がⅡcを疑う手がかりとなり、ESDの適応判断にもつながるため、記号の意味を分解して理解しておくことが診断と治療の両面で役立ちます。

解答・解説

正解はdです

胃癌の肉眼型分類(胃癌取扱い規約)を問う問題である。肉眼型は、内視鏡や切除標本で見た腫瘍の形によって、0型から5型に分けられる。 大きな枠組みとして、0型は「表在型」と呼ばれ、癌の深達度が粘膜内または粘膜下層までにとどまる早期癌(T1)でよくみられる形態である。1~4型は「進行型」で、固有筋層以深に浸潤した進行癌でよくみられる形態である。5型はそのいずれにも分類できないものを指す。 0型はさらに、隆起しているか(Ⅰ・Ⅱa)、ほぼ平坦か(Ⅱb)、浅く陥凹しているか(Ⅱc)、深い陥凹(潰瘍)か(Ⅲ)で細分される。本問の「0-Ⅱc」は、0=表在型、Ⅱ=表面型、c=陥凹(concave の意味で覚えるとよい)を表すので、「表面陥凹型の早期癌」に対応する。記号の意味を分解して理解しておけば、ほかの型との対応もすぐに導ける。

選択肢考察

  1. ×a.  限局潰瘍型進行癌

    潰瘍を形成し、その周囲を取り囲む周堤が明瞭で、周囲粘膜との境界がはっきりしている進行癌は2型(潰瘍限局型)である。0-Ⅱc 型のように粘膜面の浅いくぼみにとどまる形態ではない。なお、周堤の一部が崩れて境界が不明瞭になり、周囲へ浸潤性に広がるものは3型(潰瘍浸潤型)であり、進行胃癌で最も頻度が高い。

  2. ×b.  腫瘤型進行癌

    明らかに隆起した腫瘤を形成し、周囲粘膜との境界が明瞭な進行癌は1型(腫瘤型)である。形態は隆起であり、陥凹を表す Ⅱc とは対照的である。表在型で隆起を示すのは0-Ⅰ型(隆起型)や0-Ⅱa 型(表面隆起型)であり、1型とは深達度が異なる。

  3. ×c.  びまん浸潤型進行癌

    明らかな潰瘍や周堤を作らず、癌が胃壁内をびまん性に浸潤して壁を硬く厚くする進行癌は4型(びまん浸潤型)である。胃全体に広がると胃が硬く縮んだ状態になり、スキルス胃癌(硬性癌)と呼ばれる。低分化腺癌や印環細胞癌が多く、腹膜播種を来しやすいため予後不良である。0-Ⅱc 型とは無関係である。ただし、スキルス胃癌の原発巣が小さな Ⅱc 様の陥凹として始まることがある点は知っておくとよい。

  4. ○d.  表面陥凹型早期癌

    0-Ⅱc 型は表在型(0型)のうち、表面型(Ⅱ)で、粘膜面からわずかに陥凹しているもの(c)であり、表面陥凹型に相当する。0型の形態は主に粘膜内から粘膜下層までの早期癌でみられるので、「表面陥凹型早期癌」が該当する。0-Ⅱc 型は早期胃癌の中で最も頻度が高い肉眼型であり、内視鏡では周囲とわずかに色調の異なる浅いくぼみとして認められ、陥凹縁の蚕食像や集中するヒダの先端の中断・先細り・癒合などが悪性を示す所見となる。

  5. ×e.  表面隆起型早期癌

    表在型のうち、周囲粘膜からわずかに(おおむね 2~3 mm 程度まで)隆起するものは0-Ⅱa 型(表面隆起型)である。隆起がそれより明らかに高いものは0-Ⅰ型(隆起型)とされる。いずれも「隆起」であり、陥凹を示す0-Ⅱc 型とは異なる。

胃癌の肉眼型分類(胃癌取扱い規約)

0型(表在型): 病変の肉眼形態が軽度な凹凸にとどまるもの。早期癌(T1: 粘膜内または粘膜下層まで)に多い ・0-Ⅰ型(隆起型): 明らかな腫瘤状の隆起 ・0-Ⅱa 型(表面隆起型): わずかな隆起 ・0-Ⅱb 型(表面平坦型): 周囲粘膜とほぼ同じ高さで、凹凸をほとんど認めない ・0-Ⅱc 型(表面陥凹型): わずかな陥凹(びらん程度)。早期胃癌で最も多い ・0-Ⅲ型(陥凹型): 明らかに深い陥凹(潰瘍)。単独はまれで、Ⅱc+Ⅲのように組み合わされることが多い ※複数の型が混在するときは、面積の広い方から順に「+」でつなぐ(例: 0-Ⅱc+Ⅲ、0-Ⅱa+Ⅱc)。 進行型: 固有筋層以深に浸潤した進行癌に多い ・1型(腫瘤型): 明らかに隆起した腫瘤、境界明瞭 ・2型(潰瘍限局型): 潰瘍と明瞭な周堤、境界明瞭 ・3型(潰瘍浸潤型): 潰瘍と、周囲へ浸潤して境界不明瞭な周堤。進行癌で最も多い ・4型(びまん浸潤型): 潰瘍や周堤が目立たず、壁がびまん性に肥厚・硬化。スキルス胃癌 ・5型(分類不能): 上記のいずれにも分類できないもの

早期胃癌の定義

早期胃癌は、リンパ節転移の有無にかかわらず、癌の浸潤が粘膜内(M)または粘膜下層(SM)までにとどまるもの(T1)をいう。肉眼型は形態による分類であり深達度そのものではないため、0型でも実際には固有筋層以深に浸潤していることがあり、その場合は深達度を併記して評価する。

治療との関連

分化型で潰瘍を伴わない粘膜内癌など、リンパ節転移の可能性がきわめて低い病変は、内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)の適応となりうる。0-Ⅱc 型は ESD の対象となることが多い形態である。

POINT

・0型=表在型(早期癌に多い)、1~4型=進行型、5型=分類不能 ・0-Ⅱa=表面隆起、0-Ⅱb=表面平坦、0-Ⅱc=表面陥凹(早期胃癌で最多) ・1型=腫瘤型、2型=潰瘍限局型、3型=潰瘍浸潤型(進行癌で最多)、4型=びまん浸潤型(スキルス) ・早期胃癌=深達度が粘膜下層まで(リンパ節転移の有無を問わない)

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。