FFPは「凝固因子の製剤」―目的で選ぶ血液製剤の基本
第105回医師国家試験 F問題 第5問
国試問題にチャレンジ
新鮮凍結血漿輸血の適応があるのはどれか。
- a.血漿フィブリノゲン低下
- b.血清γ-グロブリン低下
- c.血清アルブミン低下
- d.循環血漿量減少
- e.低栄養状態
対話形式の解説
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ドクターまとめ
新鮮凍結血漿(FFP)は、失活しやすい第Ⅴ・第Ⅷ因子を含む全ての凝固因子の活性を保つために採血後すぐに凍結した製剤であり、その目的は凝固因子の補充です。低フィブリノゲン血症(おおむね150mg/dL未満)、肝障害による複合的凝固因子欠乏、大量出血に伴う希釈性凝固障害、DIC、TTPの血漿交換などが代表的な適応となります。一方、γ-グロブリンの低下には免疫グロブリン製剤、アルブミンの低下にはアルブミン製剤、循環血漿量の減少には細胞外液補充液、低栄養には経腸・静脈栄養を用いるのが原則で、これらの目的でのFFP投与は不適切です。FFPはアレルギー、TRALI、TACO、感染症伝播などのリスクを伴う同種血製剤であるため、「何を補いたいのか」から製剤を選ぶ姿勢が、安全な輸血療法の基本となります。
解答・解説
正解はaです
本問は、新鮮凍結血漿(fresh frozen plasma:FFP)を何の目的で輸血するのかを理解しているかを問う問題である。
FFPの役割
FFPは、採血した全血から分離した血漿、または成分採血で得た血漿を採血後短時間のうちに凍結したものである。凍結により、不安定で失活しやすい凝固因子(特に第Ⅴ因子、第Ⅷ因子)を含む全ての凝固因子の活性が保たれている。したがって、FFPの主な目的は「凝固因子の補充」であり、複数の凝固因子が不足して出血している、あるいは出血のおそれがある状況が適応となる。厚生労働省の「血液製剤の使用指針」でも、FFPの使用は凝固因子の補充による治療的投与を原則とし、予防的投与は観血的処置時などに限られるとされている。
考え方
FFPは同種血由来の製剤であり、感染症の伝播、アレルギー反応・アナフィラキシー、輸血関連急性肺障害(TRALI)、輸血関連循環過負荷(TACO)などのリスクを伴う。このため、ほかの安全な製剤や輸液で代替できる目的(アルブミンや免疫グロブリンの補充、循環血漿量の維持、栄養補給)には使用しない。選択肢のうち、凝固因子(フィブリノゲン=第Ⅰ因子)の不足を示すものが適応に当たる。
選択肢考察
- ○a. 血漿フィブリノゲン低下
正しい。フィブリノゲンは凝固第Ⅰ因子であり、凝固カスケードの最終段階でトロンビンによりフィブリンへ変換されて血栓を形成する。血液製剤の使用指針では、低フィブリノゲン血症(おおむね150mg/dL未満、またはこれ以下に進展する危険がある場合)で出血がある、あるいは観血的処置を行う場合にFFPの投与が適応とされる。大量出血に伴う希釈性・消費性の凝固障害、播種性血管内凝固(DIC)、L-アスパラギナーゼ投与による産生低下などが代表的な状況である。
- ×b. 血清γ-グロブリン低下
誤り。FFPにも免疫グロブリンは含まれるが、量が少なく補充効果は乏しい。低γ-グロブリン血症(無γ-グロブリン血症などの原発性免疫不全症や、抗がん薬・リンパ系腫瘍に伴う二次性の低下)には、濃縮された免疫グロブリン製剤を静注または皮下注で補充する方が効果的であり、FFPの適応ではない。
- ×c. 血清アルブミン低下
誤り。低アルブミン血症により血漿膠質浸透圧が保てず、難治性の腹水・胸水や循環不全をきたす場合には、アルブミン製剤(等張5%製剤、高張20〜25%製剤)を用いる。FFPで同量のアルブミンを補うには大量の投与が必要となり、容量負荷や副作用のリスクが増すため、アルブミン補充を目的としたFFP投与は不適切である。なお、アルブミン製剤であっても、単にアルブミン濃度を維持する目的や栄養補給目的での使用は推奨されない。
- ×d. 循環血漿量減少
誤り。循環血漿量の減少(出血や脱水による循環血液量減少)に対しては、まず生理食塩液や乳酸リンゲル液などの細胞外液補充液を用い、必要に応じて人工膠質液(ヒドロキシエチルデンプンなど)やアルブミン製剤を用いる。循環血漿量の補充はFFPの不適切な使用の代表例として使用指針に明記されている。ただし、大量出血で凝固因子が低下した場合には、凝固因子補充の目的でFFPを用いる。
- ×e. 低栄養状態
誤り。蛋白質源としての栄養補給を目的としたFFP投与は、使用指針で不適切な使用として明示されている。輸注された血漿蛋白はゆっくり分解されるため栄養源としての効率が悪く、しかも感染症やアレルギーのリスクを伴う。低栄養状態には経口・経腸栄養を優先し、それが困難な場合に中心静脈栄養(高カロリー輸液)などの静脈栄養を行う。
血液製剤の使用指針(厚生労働省)におけるFFPの適応の概要
凝固因子の補充を目的とし、次のような場合に適応となる。 ・複合的な凝固因子の欠乏:肝障害(肝硬変など)による凝固因子産生低下で出血がある、または観血的処置を行う場合。目安はPT(プロトロンビン時間)がINR 2.0以上または活性30%以下、APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)が基準上限の2倍以上または活性25%以下。 ・大量輸血に伴う希釈性凝固障害、DIC。 ・低フィブリノゲン血症(150mg/dL未満が目安)。 ・濃縮製剤のない凝固因子の欠乏症(第Ⅴ因子欠乏症、第Ⅺ因子欠乏症など)。 ・血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)における血漿交換の置換液(ADAMTS13の補充と、その自己抗体の除去)。 ・ワルファリンなどビタミンK拮抗薬の効果の緊急是正(現在は濃縮プロトロンビン複合体製剤が優先される)。
FFPの不適切な使用
・循環血漿量の減少の改善・補充 ・蛋白質源としての栄養補給 ・創傷治癒の促進 ・終末期患者への投与 ・DICを伴わない熱傷や重症感染症の治療 ・人工心肺使用時の出血予防 ・非代償性肝硬変での出血予防(出血や観血的処置がない場合)
目的別に用いる製剤の整理
・凝固因子の複合的補充:FFP ・特定の凝固因子欠乏:各因子の濃縮製剤(血友病Aに第Ⅷ因子製剤、血友病Bに第Ⅸ因子製剤など) ・フィブリノゲン製剤:先天性低(無)フィブリノゲン血症の出血傾向に用いられ、日本では2021年に産科危機的出血に伴う後天性低フィブリノゲン血症にも適応が拡大された。 ・膠質浸透圧の維持:アルブミン製剤 ・免疫グロブリンの補充:免疫グロブリン製剤 ・循環血液量の補充:細胞外液補充液、人工膠質液
FFPの取り扱いと副作用
・−20℃以下で凍結保存し、使用直前に30〜37℃で融解して速やかに使用する。 ・ABO血液型は同型、または患者に対して抗A・抗B抗体の問題が生じない型を選ぶ(赤血球製剤とは逆で、AB型血漿は全ての型の患者に適合する)。 ・副作用:アレルギー反応、アナフィラキシー、TRALI、TACO、ウイルスなどの感染症伝播、クエン酸中毒による低カルシウム血症など。
POINT
・FFPの目的は凝固因子の補充であり、フィブリノゲン(第Ⅰ因子)を含む凝固因子の低下で出血またはそのおそれがある場合が適応。 ・低フィブリノゲン血症(150mg/dL未満が目安)、肝障害による複合的凝固因子欠乏、大量輸血時の希釈性凝固障害、DIC、TTPの血漿交換が代表的な適応。 ・循環血漿量の補充、アルブミン・免疫グロブリンの補充、栄養補給目的のFFP投与は不適切で、それぞれ輸液、アルブミン製剤、免疫グロブリン製剤、栄養療法を用いる。
