StudyMed医師国家試験

尿が出ない3つの理由―乏尿を「腎前・腎性・腎後」で読み解く

第105回医師国家試験 F問題 第3問

国試問題にチャレンジ

第105回 F問題 第3問

乏尿をきたすのはどれか。

  1. a.糖尿病
  2. b.SIADH
  3. c.急性腎不全
  4. d.低カリウム血症
  5. e.高カルシウム血症

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、尿量の異常とその原因疾患を対応づける問題だ。ポイントは「乏尿」と「多尿」をきちんと区別して、それぞれがどんな仕組みで起こるかを考えること。まず、乏尿の定義は覚えているかな。
医学生医学生
1日尿量が400 mL以下でしたっけ。無尿は100 mL以下だったと思います。
ドクタードクター
正解。では、なぜ400 mLという数字なのか考えたことはある?
医学生医学生
腎生理の講義で聞いた気がしますが……老廃物を出すのに必要な最低量、でしょうか。
ドクタードクター
その通り。人の体では1日におよそ600 mOsmの溶質が老廃物として生じる。腎臓が最大限に濃縮しても尿は約1,200 mOsm/kgまでだから、600÷1,200で最低でも約500 mLは尿を出さないと老廃物が体にたまってしまう。だから400 mLを下回る乏尿は、それだけで異常のサインなんだ。
医学生医学生
なるほど、数字に意味があるんですね。そうすると乏尿は腎臓が働けなくなる状態、つまり急性腎不全が一番に浮かびます。
ドクタードクター
いい推論だ。急性腎不全、今でいう急性腎障害(AKI)は、腎臓への血流が落ちる腎前性、腎臓そのものが傷む腎性、尿の通り道が詰まる腎後性の3つに分けられる。これは乏尿の原因の分類とそっくり重なるんだ。糸球体濾過量が急に落ちるから、多くの症例で乏尿になる。KDIGOの診断基準でも、クレアチニン上昇と並んで、尿量0.5 mL/kg/時未満が6時間以上続くことが基準の一つになっている。
医学生医学生
じゃあ答えは急性腎不全ですね。糖尿病は、高血糖で脱水になるから尿が減りそうな気もしたんですが。
ドクタードクター
そこは引っかかりやすいところだね。血糖が腎臓のブドウ糖再吸収の限界、いわゆる腎閾値(血糖でおよそ160〜180 mg/dL)を超えると、尿中に糖が出る。尿細管内のブドウ糖が水を引き連れるので浸透圧利尿となり、むしろ多尿になるんだ。口渇・多飲・多尿は高血糖の典型症状だったよね。ただし、ケトアシドーシスなどで脱水が極端に進めば、二次的に腎前性腎不全となって乏尿に陥ることはある。
医学生医学生
順番としては多尿が先、ということですね。SIADHはADHが出続けるので、水をため込んで尿が減ると思っていました。
ドクタードクター
直感的にはそう思えるよね。確かにADHの作用で尿は不適切に濃くなり、希釈性の低ナトリウム血症になる。でも体液が増えると、心房性ナトリウム利尿ペプチドなどの働きでナトリウムと水が排泄される「エスケープ現象」が起こるから、体液量はほぼ正常に保たれ、尿量も減らない。尿中Naは高く、浮腫もないのが特徴だ。
医学生医学生
「濃い尿」と「尿が少ない」は別物なんですね。低カリウム血症と高カルシウム血症はどうでしょう。電解質異常でなぜ尿量が変わるのかピンときません。
ドクタードクター
どちらも腎臓の尿濃縮力を落とすのがポイントだ。低カリウム血症が続くと、集合管でアクアポリン2の発現が落ちてADHへの反応性が低下し、髄質の浸透圧勾配も作りにくくなる。高カルシウム血症では、ヘンレループの太い上行脚にあるカルシウム感知受容体が刺激されてNaClの再吸収が抑えられ、さらに集合管でのADHの作用も邪魔される。いずれも腎性尿崩症のような多尿になるんだ。
医学生医学生
つまり、選択肢の中で乏尿になるのは急性腎不全だけで、糖尿病と2つの電解質異常は多尿、SIADHは尿量が保たれる、という整理ですね。
ドクタードクター
完璧だ。多尿の側も、浸透圧利尿と水利尿に分けて覚えておくといい。前者は高血糖やマンニトール、後者は中枢性尿崩症、腎性尿崩症、心因性多飲だね。
医学生医学生
臨床実習の腎臓内科では、AKIの患者さんでまずエコーを当てていました。あれは腎後性を除外するためですか。
ドクタードクター
その通り。前立腺肥大症や両側尿管結石、骨盤内腫瘍による閉塞なら、水腎症がエコーで見え、閉塞を解除すれば回復が期待できる。突然の無尿ならまず腎後性を考えよう。腎前性と腎性の区別には尿所見が役立つ。腎前性では尿細管がまだ元気なのでNaを必死に再吸収し、尿中Naは20 mEq/L未満、FENaは1%未満。急性尿細管壊死のような腎性ではNaを再吸収できず、FENaは2%以上になる。
医学生医学生
FENaはCBTの勉強で計算した覚えがあります。最後に、注意点はありますか。
ドクタードクター
大事なのは「尿が出ているから腎不全ではない」と思い込まないこと。アミノグリコシド系抗菌薬や造影剤による腎障害では、尿量が保たれたままクレアチニンが上がる非乏尿性の急性腎不全もある。また、閉塞解除後や急性腎不全の回復期には逆に多尿になって脱水や電解質異常を起こすことがあるから、尿量と採血の両方を追いかける習慣をつけよう。

まとめ

乏尿は1日尿量400 mL以下を指し、腎臓が最大濃縮しても老廃物を排泄しきれなくなる水準です。乏尿の代表は急性腎不全(急性腎障害)で、腎前性・腎性・腎後性の3分類で原因を考え、エコーで水腎症を確認して腎後性を除外し、FENaなどで腎前性と腎性を見分けます。一方、糖尿病は浸透圧利尿で、低カリウム血症と高カルシウム血症は尿濃縮力障害による腎性尿崩症様の機序で多尿をきたし、SIADHはエスケープ現象により尿量が保たれます。非乏尿性の急性腎不全や回復期の多尿もあるため、尿量だけで判断せず検査値と合わせて評価することが大切です。尿量の異常を機序から理解しておくと、病棟での水分・電解質管理の判断にそのまま生かせます。

解答・解説

正解はcです

尿量異常の定義と、それぞれの原因疾患を対応づけられるかを問う問題である。

尿量異常の定義

・乏尿:1日尿量400 mL以下(成人)。体内で1日に産生される老廃物(溶質約600 mOsm)を、腎臓が最大限に濃縮した尿(約1,200 mOsm/kg)で排泄するのに最低限必要な量が約500 mLであり、これを下回ると老廃物が体内に蓄積する。 ・無尿:1日尿量100 mL以下。 ・多尿:1日尿量がおおむね2,500〜3,000 mL以上。

乏尿の原因の考え方

乏尿は、腎臓への血流低下(腎前性)、腎実質そのものの障害(腎性)、尿路の閉塞(腎後性)のいずれかで生じる。これはまさに急性腎不全(急性腎障害)の3分類と一致する。なお、無尿の場合は両側尿路閉塞などの腎後性の原因や、両側腎動脈の閉塞、重症の急性糸球体腎炎・急性尿細管壊死などをまず考える。

多尿の原因の考え方

多尿は、尿中に大量の溶質が出て水を引き連れる浸透圧利尿(糖尿病の高血糖、マンニトール投与など)と、水だけが過剰に出る水利尿(中枢性尿崩症、腎性尿崩症、心因性多飲)に大別される。低カリウム血症や高カルシウム血症は腎臓の尿濃縮力を障害し、後者の腎性尿崩症型の多尿をきたす。 選択肢のうち乏尿をきたすのは急性腎不全のみで、糖尿病・低カリウム血症・高カルシウム血症はむしろ多尿をきたし、SIADHでは尿量は保たれる。

選択肢考察

  1. ×a.  糖尿病

    誤り。血糖値が腎臓のブドウ糖再吸収能力の限界(腎閾値:血糖値でおよそ160〜180 mg/dL)を超えると、尿中にブドウ糖が排泄される。尿細管内のブドウ糖が浸透圧物質として水の再吸収を妨げるため、浸透圧利尿による多尿となる。これに伴う脱水と血漿浸透圧上昇が口渇・多飲を引き起こす(口渇・多飲・多尿は高血糖の典型症状)。ただし、糖尿病性ケトアシドーシスなどで高度の脱水が進めば、腎前性腎不全として二次的に乏尿に陥ることはある。

  2. ×b.  SIADH

    誤り。SIADH(抗利尿ホルモン不適合分泌症候群)は、血漿浸透圧が低いにもかかわらず抗利尿ホルモン(ADH、バソプレシン)の分泌が抑制されない病態である。水の再吸収が過剰となり、希釈性の低ナトリウム血症と、血漿に比べて不適切に濃い尿がみられる。しかし体液量の増加に対して心房性ナトリウム利尿ペプチドなどの作用でナトリウムと水の排泄が起こり(エスケープ現象)、体液量はほぼ正常に保たれ、尿量は減少しない。尿中ナトリウム排泄も保たれ(通常20 mEq/L以上)、浮腫もきたさないのが特徴である。

  3. ○c.  急性腎不全

    正しい。急性腎不全(現在は急性腎障害:acute kidney injury〈AKI〉の概念で扱われる)は、数時間〜数日の経過で腎機能が急激に低下し、尿素窒素やクレアチニンが上昇する(高窒素血症)病態である。原因により、脱水・ショック・心不全などによる腎前性、急性尿細管壊死や急性糸球体腎炎などによる腎性、尿路閉塞による腎後性に分類され、多くの症例で糸球体濾過量の低下により乏尿をきたす。KDIGO(国際的な腎臓病ガイドライン組織)の診断基準でも、血清クレアチニンの上昇(48時間以内に0.3 mg/dL以上、または7日以内に基礎値の1.5倍以上)と並んで、尿量0.5 mL/kg/時未満が6時間以上続くことが基準の一つとされている。なお、尿量が保たれたまま高窒素血症が進行する非乏尿性急性腎不全もあり(アミノグリコシド系抗菌薬や造影剤による腎障害など)、尿量が保たれていることは腎不全を否定する根拠にならない。

  4. ×d.  低カリウム血症

    誤り。低カリウム血症が持続すると、集合管でのADHに対する反応性が低下し(アクアポリン2の発現低下など)、腎髄質の浸透圧勾配の形成も障害されて尿濃縮力が落ちる。その結果、腎性尿崩症と同様の多尿(低カリウム性腎症)をきたす。長期間の低カリウム血症では尿細管の空胞変性などの形態変化も生じる。乏尿の原因にはならない。

  5. ×e.  高カルシウム血症

    誤り。高カルシウム血症では、ヘンレループの太い上行脚にあるカルシウム感知受容体(CaSR)が刺激されてNaCl再吸収が抑制され、髄質の浸透圧勾配が弱まる。さらに集合管でのADHの作用も阻害されるため、尿濃縮力障害による腎性尿崩症様の多尿となる。多尿に伴う脱水は口渇・多飲を招き、高カルシウム血症自体をさらに悪化させる。ただし高度の脱水や腎石灰化が進むと二次的に腎機能障害をきたしうる。

急性腎不全(急性腎障害:AKI)の分類

・腎前性:脱水、出血、ショック、心不全など、腎血流量の低下による。尿は濃縮され、尿中Na濃度は低く(20 mEq/L未満)、Na排泄分画(FENa)は1%未満となる。BUN/Cr比は20以上に上昇しやすい。 ・腎性:急性尿細管壊死(虚血、薬剤、横紋筋融解など)、急性糸球体腎炎、急性間質性腎炎など。尿細管の再吸収能が落ちるため尿中Na濃度は高く(40 mEq/L以上)、FENaは2%以上となり、尿浸透圧は血漿に近づく。 ・腎後性:前立腺肥大症、両側尿管結石、骨盤内腫瘍などによる尿路閉塞。画像検査(超音波)で水腎症を確認し、閉塞を解除すれば回復が期待できる。突然の無尿では最初に考える。

多尿をきたす主な病態

・浸透圧利尿:高血糖(糖尿病)、マンニトールなどの浸透圧利尿薬、急性腎不全の利尿期、閉塞解除後利尿 ・水利尿:中枢性尿崩症(ADH分泌低下)、腎性尿崩症(先天性、リチウム、低カリウム血症、高カルシウム血症など)、心因性多飲症

低ナトリウム血症での尿量・体液量の見方

SIADHは体液量がほぼ正常の低ナトリウム血症の代表であり、尿量は保たれ、尿中Naは高値となる。一方、脱水による低ナトリウム血症では尿量は減少し、尿中Naは低値となることが多い(腎性喪失を除く)。

POINT

・乏尿は1日尿量400 mL以下、無尿は100 mL以下、多尿はおおむね2,500〜3,000 mL以上。 ・乏尿の代表は急性腎不全(腎前性・腎性・腎後性)。ただし非乏尿性急性腎不全もある。 ・糖尿病は浸透圧利尿で多尿、低カリウム血症・高カルシウム血症は腎性尿崩症型の多尿。 ・SIADHは尿量が保たれ、尿中Na高値、浮腫なし。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。