StudyMed医師国家試験

暴走するマクロファージ―血球貪食症候群は「減るもの」と「増えるもの」で解く

第104回医師国家試験 I問題 第22問

国試問題にチャレンジ

第104回 I問題 第22問

血球貪食症候群〈hemophagocytic syndrome〉でみられるのはどれか。3つ選べ。

  1. a.凝固異常
  2. b.白血球増多
  3. c.血清LD低値
  4. d.血清ビリルビン高値
  5. e.血清フェリチン高値

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は血球貪食症候群でみられる検査所見を選ぶ問題だ。暗記で挑むと迷いやすいけれど、病態の本質を一つ押さえれば答えは自然に出てくる。カギは「免疫の暴走で何が壊れ、何が増えるか」だよ。まず、この病気がどんな病態か説明できるかな。
医学生医学生
名前の通り、マクロファージが自分の血球を食べてしまう病気ですよね。でも、なぜそんなことが起こるのかはよくわかっていません。
ドクタードクター
本態はT細胞やNK細胞、マクロファージ(組織球)が過剰に活性化して、制御を失った免疫反応が全身で暴走することなんだ。インターフェロンγ、TNF-α、IL-6などが大量に放出されるサイトカインストームが起こり、骨髄や脾臓、肝臓で活性化したマクロファージが血球を貪食する。今は血球貪食性リンパ組織球症、略してHLHと呼ばれることが多いね。
医学生医学生
サイトカインストームというと、免疫学の講義でCAR-T療法の副作用として習いました。似たような状態なんですね。
ドクタードクター
いい連想だね。炎症が全身に及ぶという点では共通している。では、血球はどうなると思う?白血球増多は起こるかな。
医学生医学生
炎症が強いなら、普通の感染症のように白血球は増えそうな気がします。
ドクタードクター
そこがひっかけだ。この病気では血球は「増える」のではなく「減る」んだ。マクロファージが血球を食べることに加え、インターフェロンγやTNF-αが骨髄の造血を抑えるから、白血球・赤血球・血小板のうち2系統以上が減ることが多い。汎血球減少になることもある。だから白血球増多は誤りだ。
医学生医学生
炎症なのに血球が減る、というのが逆に手がかりになるんですね。では血清LDはどうですか。低値という選択肢がありますが。
ドクタードクター
LDは全身の細胞に含まれる酵素で、細胞が壊れると血中に漏れ出てくる。血球の破壊、肝細胞障害、組織障害が重なるこの病気では、むしろ著明に上がることが多い。低値にはならないよ。基礎疾患にリンパ腫が隠れていれば、それもLDを押し上げる。
医学生医学生
細胞がたくさん壊れる病気でLDが下がるはずはない、ということですね。凝固異常はどうでしょう。
ドクタードクター
これは正しい。活性化マクロファージから出るプラスミノゲンアクチベータによる線溶亢進、肝障害による凝固因子の産生低下、さらにDICの合併などで、低フィブリノゲン血症やPT・APTTの延長、FDP・Dダイマー上昇がみられる。低フィブリノゲン血症は国際的な診断基準にも入っている項目だ。
医学生医学生
血清ビリルビン高値は、赤血球が食べられて壊れるからでしょうか。
ドクタードクター
それも一因だけれど、主な理由は肝障害なんだ。肝臓に活性化した組織球やリンパ球が浸潤し、サイトカインによる肝細胞障害や胆汁うっ滞が起こるので、AST・ALTとともにビリルビンが上がる。だから肝脾腫も本症の典型的な所見だよ。
医学生医学生
そして最後のフェリチン高値。血液内科を回ったとき、フェリチンが数万ある患者さんを見て驚いたことがあります。
ドクタードクター
まさにそれが本症の代名詞だ。活性化マクロファージがフェリチンを産生・放出するため、数千から数万ng/mLに達することも珍しくない。極端な高値は本症を強く疑う手がかりで、病勢や治療効果の指標にも使われる。というわけで、正解は凝固異常、血清ビリルビン高値、血清フェリチン高値の3つだ。
医学生医学生
血球は減って、LDとフェリチンとビリルビンは上がって、凝固は崩れる。病態から考えると全部つながりますね。
ドクタードクター
その通り。ほかにも高トリグリセリド血症(TNF-αがリポ蛋白リパーゼを抑えるため)や、T細胞活性化を反映する可溶性IL-2受容体の上昇も重要だ。診断基準のHLH-2004では、発熱、脾腫、2系統以上の血球減少、高トリグリセリド血症または低フィブリノゲン血症、血球貪食像、NK細胞活性低下、フェリチン高値、可溶性IL-2受容体高値の8項目中5項目以上で診断する。
医学生医学生
原因はどんなものがありますか。CBTの勉強ではEBウイルスと一緒に出てきた記憶があります。
ドクタードクター
よく覚えているね。乳幼児ではパーフォリン遺伝子異常などによる一次性(家族性)もあるけれど、成人ではほとんどが二次性だ。EBウイルスをはじめとする感染症、T細胞・NK細胞リンパ腫などの悪性腫瘍、成人Still病やSLEなどの自己免疫疾患が代表で、膠原病に伴うものはマクロファージ活性化症候群とも呼ばれる。
医学生医学生
治療は原因疾患を治すことが中心ですか。
ドクタードクター
基礎疾患の治療と並行して、過剰な免疫反応を抑える治療を行う。デキサメタゾンなどのステロイド、シクロスポリン、エトポシドを組み合わせるのが代表的で、家族性なら造血幹細胞移植が必要になる。重症例は急速に多臓器不全へ進むから、原因不明の発熱に血球減少と肝脾腫、フェリチン著増がそろったら、迷わずこの病気を思い浮かべてほしい。

まとめ

血球貪食症候群(HLH)は、過剰に活性化したT細胞・NK細胞・マクロファージによるサイトカインストームと血球貪食が本態の病気です。血球貪食と造血抑制により白血球増多ではなく血球減少をきたし、組織障害を反映してLDは高値となるほか、肝障害によるビリルビン高値、線溶亢進やDICによる凝固異常(低フィブリノゲン血症)、活性化マクロファージ由来の血清フェリチン著増が特徴です。高トリグリセリド血症や可溶性IL-2受容体上昇も診断基準に含まれ、成人ではEBウイルス感染や悪性リンパ腫、膠原病に続発する二次性が大部分を占めます。急速に多臓器不全へ進みうるため、発熱・血球減少・肝脾腫・フェリチン著増の組み合わせから早期に疑い、基礎疾患の治療と免疫抑制療法を開始することが重要です。

解答・解説

正解はa, d, eです

血球貪食症候群(hemophagocytic syndrome:HPS。現在は血球貪食性リンパ組織球症 hemophagocytic lymphohistiocytosis:HLH と呼ばれることが多い)は、T細胞やNK細胞、マクロファージ(組織球)が過剰に活性化し、制御を失った免疫反応が全身で暴走する病態である。活性化した細胞からインターフェロンγ、TNF-α、IL-6などのサイトカインが大量に放出され(サイトカインストーム)、骨髄・脾臓・肝臓・リンパ節などで活性化したマクロファージが自己の血球を貪食する。 この病態から臨床像・検査所見は次のように導ける。 ・持続する高熱:炎症性サイトカインの作用 ・肝脾腫:活性化した組織球・リンパ球の浸潤 ・血球減少(2系統以上のことが多い):血球貪食と、サイトカインによる造血抑制 ・凝固異常:低フィブリノゲン血症、DIC(播種性血管内凝固)の合併 ・肝機能障害:AST・ALTの上昇、ビリルビン上昇 ・血清フェリチンの著明な上昇:活性化マクロファージからの産生・放出 ・LD(乳酸脱水素酵素)高値:組織障害や細胞破壊の反映 ・高トリグリセリド血症:TNF-αによるリポ蛋白リパーゼの抑制 ・可溶性IL-2受容体(sIL-2R、sCD25)の上昇:T細胞活性化の反映 本問では、血球は「増える」のではなく「減る」こと、LDは「低値」ではなく「高値」になることを押さえれば、凝固異常、血清ビリルビン高値、血清フェリチン高値の3つが選べる。

選択肢考察

  1. ○a.  凝固異常

    血球貪食症候群では凝固異常がよくみられる。活性化マクロファージから放出されるプラスミノゲンアクチベータによる線溶亢進や、肝障害による凝固因子の産生低下、さらにサイトカインストームに伴うDICの合併などにより、低フィブリノゲン血症、プロトロンビン時間・活性化部分トロンボプラスチン時間の延長、FDP・Dダイマーの上昇などを呈する。低フィブリノゲン血症(150mg/dL以下)は国際的な診断基準(HLH-2004)の項目にも含まれている。

  2. ×b.  白血球増多

    血球貪食症候群では白血球増多ではなく、白血球を含む血球の減少が特徴である。マクロファージによる血球の貪食に加え、インターフェロンγやTNF-αなどのサイトカインが骨髄の造血を抑制するため、白血球(特に好中球)、赤血球(ヘモグロビン)、血小板のうち2系統以上が減少し、汎血球減少となることも多い。HLH-2004の診断基準でも2系統以上の血球減少が項目の一つとなっている。

  3. ×c.  血清LD低値

    血清LDは低値ではなく高値となる。LDは全身の細胞に含まれる酵素で、細胞が壊れると血中に逸脱する。血球貪食症候群では、血球の破壊、肝細胞障害、活性化した細胞の増殖・組織障害などにより著明に上昇することが多い。LDの高値は病勢を反映する所見であり、基礎疾患としてリンパ腫が隠れている場合にも高値となる。

  4. ○d.  血清ビリルビン高値

    血球貪食症候群では肝臓に活性化した組織球やリンパ球が浸潤し、サイトカインによる肝細胞障害や胆汁うっ滞が起こるため、AST・ALTの上昇とともに血清ビリルビンが上昇する(黄疸)。加えて、赤血球の貪食・破壊が進むことも間接ビリルビン上昇の一因となる。肝機能障害は本症で高頻度にみられる所見の一つである。

  5. ○e.  血清フェリチン高値

    血清フェリチンの著明な上昇は血球貪食症候群の最も特徴的な検査所見の一つである。活性化したマクロファージがフェリチンを産生・放出することや、貪食した血球由来の鉄の処理が亢進することなどによる。HLH-2004の診断基準では500ng/mL以上が項目とされているが、実際には数千〜数万ng/mLに達することも多く、極端な高値は本症を強く疑う手がかりとなる。フェリチンは治療効果や病勢の指標としても用いられる。

分類と原因

・一次性(遺伝性):家族性血球貪食性リンパ組織球症(パーフォリン遺伝子 PRF1 などの異常によりNK細胞・細胞傷害性T細胞の殺細胞能が障害される)、X連鎖リンパ増殖症候群、Chédiak-Higashi症候群など。乳幼児期に発症することが多い。 ・二次性(続発性):感染症(EBウイルスが代表的。そのほかサイトメガロウイルスなどのウイルス、細菌、真菌など)、悪性腫瘍(特にT細胞・NK細胞リンパ腫などの悪性リンパ腫)、自己免疫疾患・膠原病(成人Still病、若年性特発性関節炎、SLEなど。この場合はマクロファージ活性化症候群 MAS と呼ばれる)、薬剤などに伴って発症する。成人では二次性が大部分を占める。

HLH-2004 診断基準

分子遺伝学的にHLHと診断されるか、次の8項目のうち5項目以上を満たす。 1. 発熱(38.5℃以上) 2. 脾腫 3. 2系統以上の血球減少(Hb<9g/dL、血小板<10万/μL、好中球<1,000/μL) 4. 高トリグリセリド血症(空腹時265mg/dL以上)かつ/または低フィブリノゲン血症(150mg/dL以下) 5. 骨髄・脾臓・リンパ節における血球貪食像 6. NK細胞活性の低下または欠如 7. 血清フェリチン500ng/mL以上 8. 可溶性IL-2受容体(sCD25)2,400U/mL以上

治療

基礎疾患の治療(感染症の治療、リンパ腫に対する化学療法など)とともに、過剰な免疫反応を抑える治療を行う。副腎皮質ステロイド(デキサメタゾンなど)、シクロスポリン、エトポシドを組み合わせた治療が代表的で、家族性の場合は造血幹細胞移植が必要となる。重症例では急速に多臓器不全に進行するため、早期の診断と治療開始が重要である。

POINT

・血球貪食症候群は、過剰に活性化したT細胞・NK細胞・マクロファージによるサイトカインストームと血球貪食が本態。 ・臨床像:持続する高熱、肝脾腫、血球減少(白血球増多ではない)。 ・検査所見:血清フェリチン著増、LD高値(低値ではない)、肝機能障害(ビリルビン高値)、凝固異常(低フィブリノゲン血症、DIC)、高トリグリセリド血症、可溶性IL-2受容体上昇。 ・二次性の原因としてEBウイルス感染と悪性リンパ腫が重要。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。