StudyMed医師国家試験

「福祉の相談」か「医療サービス」か―児童相談所の守備範囲を見極める

第104回医師国家試験 G問題 第35問

国試問題にチャレンジ

第104回 G問題 第35問

児童相談所の扱う相談でないのはどれか。

  1. a.虐待
  2. b.非行
  3. c.虚弱児
  4. d.不登校
  5. e.予防接種

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、児童相談所がどんな相談を受け付ける機関なのかを問う公衆衛生の問題だ。ポイントは、児童相談所が「児童福祉」の専門機関だということ。福祉の相談なのか、それとも保健・医療のサービスそのものなのか、という視点で選択肢を眺めてみよう。
医学生医学生
公衆衛生の講義で児童福祉法の話は出てきましたが、児童相談所と保健所の役割がごちゃごちゃになりがちです。
ドクタードクター
多くの人がつまずくところだね。まず基本から。児童相談所は児童福祉法に基づく機関で、都道府県と政令指定都市には設置が義務づけられている。中核市や東京23区の特別区も設置できる。18歳未満の子どもに関するさまざまな相談を受けて、調査・診断・判定をしたうえで、指導や一時保護、施設入所、里親委託といった措置をとるんだ。
医学生医学生
診断というと、医師が病気を診断するイメージですが。
ドクタードクター
ここでいう診断はもっと広い意味だよ。家庭環境を評価する社会診断、児童心理司による心理診断、精神科医や小児科医による医学診断、一時保護中の様子を見る行動診断を組み合わせて援助方針を決める。職員も児童福祉司というソーシャルワーカーが中心で、医師や保健師、保育士などが加わる多職種チームなんだ。
医学生医学生
なるほど。では相談の種類はどう分かれているんですか。
ドクタードクター
大きく養護相談、保健相談、障害相談、非行相談、育成相談に分類される。この枠組みを覚えておくと、この手の問題はほぼ解けるよ。まず虐待はどこに入ると思う?
医学生医学生
虐待は養護相談ですよね。小児科の臨床実習で、不自然なあざのある子を診たときに、指導医の先生がすぐ児童相談所に連絡していました。
ドクタードクター
いい経験をしたね。児童虐待防止法では、虐待を受けたと思われる子どもを見つけた人に、市町村・福祉事務所・児童相談所への通告義務がある。確証がなくても「思われる」段階で通告するのが原則だ。児童相談所は安全確認、一時保護、立入調査、施設入所措置など虐待対応の中核を担っていて、近年は相談全体の中で養護相談が最も多く、その大半を虐待相談が占めている。
医学生医学生
非行も児童相談所が扱うんですね。非行は警察や家庭裁判所の仕事だと思っていました。
ドクタードクター
そこは誤解しやすいね。家出や浪費癖、性的な逸脱など将来罪を犯すおそれのある「ぐ犯行為」や、14歳未満の子どもが刑罰法令に触れる「触法行為」は非行相談として児童相談所が受ける。14歳未満は刑事責任を問われないので、まず福祉の枠組みで対応するという考え方なんだ。警察から通告されてくることも多い。
医学生医学生
虚弱児はどうでしょう。体が弱いというのは医療の問題に思えますが。
ドクタードクター
鋭い疑問だね。虚弱児は保健相談に分類される。未熟児や虚弱児、小児喘息などの疾患をもつ子どもの健康管理に関する相談だ。児童相談所が治療をするわけではないけれど、健康上の問題を抱える子どもの養育や福祉的な支援について相談に乗る、という位置づけなんだ。
医学生医学生
不登校は育成相談ですね。学校の問題だから教育委員会の管轄かと迷いました。
ドクタードクター
その通り、育成相談だ。性格や行動上の問題、不登校、進学や適性、しつけ・育児に関する相談がここに入る。学校や教育相談機関と連携しながら、心理的な評価や指導を行う。そうすると残るのは予防接種だね。
医学生医学生
予防接種は福祉の相談ではなく、保健・医療のサービスそのものだから、児童相談所の扱う相談ではない、ということですね。
ドクタードクター
正解。予防接種は予防接種法に基づく保健事業で、定期接種の実施主体は市町村だ。案内や相談は市町村保健センターなどが担い、実際の接種や医学的な相談は医療機関の医師が行う。児童相談所の相談分類のどこにも当てはまらないんだ。
医学生医学生
似た機関として、保健所や福祉事務所との区別も整理しておきたいです。CBTでも混同して間違えた記憶があります。
ドクタードクター
いい心がけだ。保健所や市町村保健センターは乳幼児健診や保健指導、予防接種などの母子保健サービスを担う。福祉事務所は生活保護など福祉行政全般を担い、家庭児童相談室を置くことがある。児童相談所は子どもの福祉に関する専門的な相談と、一時保護や施設入所などの強い権限をもつ機関、と覚えておくと区別しやすい。
医学生医学生
臨床の現場で医師が児童相談所と関わるのは、やはり虐待の場面が多いんでしょうか。
ドクタードクター
そうだね。乳幼児の頭部外傷や説明のつかない骨折、受診の遅れなどから虐待を疑うことは、小児科や救急では珍しくない。医師は守秘義務があっても通告が優先されるし、通告は義務であると同時に子どもを守る第一歩だ。迷ったら一人で抱え込まず、院内の虐待対応チームや児童相談所に相談することが大切だよ。

まとめ

児童相談所は児童福祉法に基づき都道府県・政令指定都市に設置が義務づけられた児童福祉の専門機関で、18歳未満の子どもに関する相談に応じ、調査・診断・判定を経て指導、一時保護、施設入所などの措置を行います。相談は養護相談(虐待を含む)、保健相談(虚弱児など)、障害相談、非行相談(ぐ犯・触法行為)、育成相談(不登校など)に分類され、近年は虐待を中心とする養護相談が最多です。一方、予防接種は予防接種法に基づき市町村が実施する保健事業であり、児童相談所の業務ではありません。「福祉の相談か、保健・医療サービスそのものか」という視点で関係機関の役割を整理しておくことは、国試対策だけでなく、虐待を疑った際に適切な機関へつなぐ臨床判断の土台にもなります。

解答・解説

正解はeです

児童相談所は、児童福祉法に基づいて設置される児童福祉の専門的な第一線機関である。18歳未満の子どもに関するあらゆる問題について、家庭・学校・地域などからの相談に応じ、調査・診断(社会診断・心理診断・医学診断・行動診断)・判定を行ったうえで、指導、一時保護、児童福祉施設への入所や里親委託などの措置を行う。 児童相談所が受ける相談は、大きく養護相談(虐待を含む)、保健相談、障害相談、非行相談、育成相談(不登校などを含む)、その他に分類されている。本問では、選択肢のうち虐待・非行・虚弱児・不登校はいずれもこの分類のどこかに位置づけられる一方、予防接種は福祉ではなく保健・医療の領域の事項であり、市町村や医療機関が担う。この「福祉の相談か、医療・保健サービスそのものか」という視点で見分けるとよい。

選択肢考察

  1. ×a.  虐待

    虐待は養護相談に分類される。養護相談は、保護者の家出・死亡・離婚・入院・服役などで養育が困難になった子どもや、虐待を受けている子どもに関する相談である。児童虐待防止法では、虐待を受けたと思われる子どもを発見した者に対して市町村・福祉事務所・児童相談所への通告義務を課しており、児童相談所は安全確認、一時保護、立入調査、施設入所措置など、虐待対応の中核を担う。近年、児童相談所が受ける相談の中で最も多いのが養護相談であり、その大半を虐待相談が占める。児童相談所の扱う相談に含まれる。

  2. ×b.  非行

    非行は非行相談に分類される。虚言癖、家出、浪費癖、性的な逸脱など将来罪を犯すおそれのある行為(ぐ犯行為)や、14歳未満の子どもが刑罰法令に触れる行為(触法行為)を行った場合の相談がこれにあたる。警察からの通告を受けることも多い。児童相談所の扱う相談に含まれる。

  3. ×c.  虚弱児

    虚弱児は保健相談に分類される。保健相談は、未熟児、虚弱児、内部機能障害、小児喘息その他の疾患を有する子どもなど、一般的な健康管理に関する相談である。医療そのものを提供するわけではないが、健康上の問題を抱える子どもの養育や福祉的支援についての相談として児童相談所が受け付ける。児童相談所の扱う相談に含まれる。

  4. ×d.  不登校

    不登校は育成相談に分類される。育成相談には、性格や行動上の問題(反抗、落ち着きがない、友達と遊べないなど)、不登校、進学・適性に関する相談、家庭でのしつけ・育児に関する相談などが含まれる。学校や教育相談機関とも連携しながら、心理的な評価や指導を行う。児童相談所の扱う相談に含まれる。

  5. ○e.  予防接種

    予防接種は予防接種法に基づいて行われる保健・医療の事業であり、定期接種の実施主体は市町村である。接種の案内や相談は市町村(市町村保健センターなど)が担い、実際の接種や医学的な相談は医療機関の医師が行う。児童相談所の相談分類(養護・保健・障害・非行・育成)には含まれず、児童相談所の扱う相談ではない。

児童相談所の概要

・根拠法:児童福祉法 ・設置:都道府県と政令指定都市に設置が義務づけられている。中核市や特別区(東京23区)も設置することができる。 ・主な職員:児童福祉司(ソーシャルワーカー)、児童心理司(心理判定・心理療法)、医師(精神科医・小児科医)、保健師、児童指導員・保育士(一時保護所)など。 ・主な機能: 1)相談機能:子どもに関する家庭などからの相談のうち専門的な知識・技術を要するものに応じる。 2)調査・診断・判定:社会診断、心理診断、医学診断、行動診断などをもとに援助方針を定める。 3)一時保護機能:必要に応じて子どもを家庭から離し、一時保護所などで保護する。 4)措置機能:児童福祉施設(児童養護施設、乳児院、障害児入所施設など)への入所、里親への委託、児童福祉司による指導などを行う。 5)市町村援助機能:市町村が行う児童家庭相談への助言・支援など。

相談の種類

・養護相談:虐待相談を含む、養育環境上の問題に関する相談 ・保健相談:未熟児、虚弱児、小児喘息などの疾患をもつ子どもの健康管理に関する相談 ・障害相談:肢体不自由、視聴覚障害、言語発達障害、重症心身障害、知的障害、発達障害などに関する相談 ・非行相談:ぐ犯行為、触法行為などに関する相談 ・育成相談:性格・行動、不登校、適性、育児・しつけに関する相談

関連機関との区別

・保健所・市町村保健センター:母子保健(乳幼児健診、保健指導)、予防接種(実施主体は市町村)など保健サービスを担う。 ・福祉事務所:生活保護などの福祉行政全般を担い、家庭児童相談室を置くことがある。 ・児童家庭支援センター:地域の子ども・家庭の相談に応じる児童福祉施設。

POINT

・児童相談所は児童福祉法に基づき、都道府県・政令指定都市に必置の児童福祉の専門機関 ・相談の種類:養護(虐待を含む)・保健(虚弱児など)・障害・非行・育成(不登校など) ・近年は養護相談(特に虐待相談)が最多 ・予防接種は予防接種法に基づき市町村が実施する保健事業で、児童相談所の業務ではない

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。