「出ては消える」膨疹を見抜け―蕁麻疹を伴う疾患と、運動が引き金になるアナフィラキシー
第103回医師国家試験 I問題 第20問
国試問題にチャレンジ
蕁麻疹がみられるのはどれか。
- a.GVHD
- b.うっ滞性皮膚炎
- c.自家感作性皮膚炎
- d.Stevens-Johnson症候群
- e.食物依存性運動誘発アナフィラキシー
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生まとめ
蕁麻疹は肥満細胞から放出されるヒスタミンなどによる真皮上層の一過性浮腫で、膨疹は通常24時間以内に跡を残さず消えるのが特徴です。IgEを介したI型アレルギーの全身反応であるアナフィラキシーでは蕁麻疹を高率に伴い、食物依存性運動誘発アナフィラキシーは小麦(ω-5グリアジン)などの原因食物を摂取した後の運動で発症し、NSAIDsで誘発されやすく若年者に多い病態です。一方、GVHDやStevens-Johnson症候群はT細胞による表皮傷害、うっ滞性皮膚炎や自家感作性皮膚炎は湿疹・皮膚炎群であり、持続する紅斑・丘疹・びらん・色素沈着を呈する点で蕁麻疹とは異なります。アナフィラキシーにはアドレナリン筋注が第一選択で、再発予防として摂取後の運動回避と自己注射薬の携帯指導が重要です。皮疹が「出没するか持続するか」という視点は、蕁麻疹と他の皮膚疾患を見分ける最も基本的で実践的な手がかりになります。
解答・解説
正解はeです
蕁麻疹は、皮膚の肥満細胞(マスト細胞)から放出されるヒスタミンなどの化学伝達物質により、真皮上層の血管の透過性が亢進して一過性の浮腫が生じる疾患である。境界明瞭でわずかに盛り上がった紅斑・膨疹が、かゆみを伴って突然出現し、個々の皮疹は通常24時間以内(多くは数時間)に跡を残さず消えるのが特徴である。肥満細胞の脱顆粒はIgEを介したI型(即時型)アレルギーで起こるものが代表的であるが、物理的刺激や薬剤など非アレルギー性の機序でも起こる。 本問では、選択肢の疾患の皮膚病変がどのような機序・性状をとるかを考える。I型アレルギーの全身反応であるアナフィラキシーは、皮膚症状として蕁麻疹を高率に伴う。これに対し、GVHDやStevens-Johnson症候群はT細胞が主役となる細胞性免疫反応による表皮の傷害、うっ滞性皮膚炎と自家感作性皮膚炎は湿疹・皮膚炎群に属し、いずれも蕁麻疹とは皮疹の性状が異なる。「一過性に出没する膨疹」と「持続する紅斑・丘疹・びらん・色素沈着」を区別することが鍵となる。
選択肢考察
- ×a. GVHD
GVHD(graft-versus-host disease、移植片対宿主病)は、造血幹細胞移植(骨髄移植など)や輸血で持ち込まれたドナー由来のT細胞が、宿主(患者)の組織を異物として攻撃する病態である。急性GVHDでは皮膚、肝、消化管が主な標的となり、皮膚には手掌・足底や耳介などから始まる斑状丘疹状の紅斑が出現し、重症では紅皮症や水疱・表皮剥離に至る。慢性GVHDでは扁平苔癬様皮疹や強皮症様の皮膚硬化がみられる。T細胞による細胞傷害が本態であり、肥満細胞の脱顆粒による一過性の膨疹(蕁麻疹)は典型的な所見ではない。
- ×b. うっ滞性皮膚炎
うっ滞性皮膚炎は、下肢静脈瘤などによる慢性静脈不全で下腿の静脈圧が上昇し、血流がうっ滞することで生じる湿疹性の皮膚病変である。下腿下1/3(とくに内果周囲)に、ヘモジデリン沈着による褐色の色素沈着、湿疹、皮膚の硬化(脂肪皮膚硬化症)がみられ、進行すると難治性のうっ滞性潰瘍を形成する。慢性に経過する病変であり、蕁麻疹はみられない。
- ×c. 自家感作性皮膚炎
自家感作性皮膚炎は、貨幣状湿疹、うっ滞性皮膚炎、接触皮膚炎、熱傷後や細菌感染を伴う病変などの原発巣が掻破や感染で急性に悪化したのち、全身(四肢・体幹)に小型の紅色丘疹・漿液性丘疹・小水疱が散布性に多発するものである(散布疹・撒布疹)。病巣の分解産物や細菌成分に対して自己感作が成立するためと考えられている。湿疹・皮膚炎群に属し、皮疹は湿疹の性状をとるため、蕁麻疹とは異なる。治療は原発巣の治療とステロイド外用・抗ヒスタミン薬内服である。
- ×d. Stevens-Johnson症候群
Stevens-Johnson(スティーヴンス・ジョンソン)症候群(SJS)は、主に薬剤(抗てんかん薬、アロプリノール、サルファ剤、NSAIDsなど)やマイコプラズマなどの感染症を契機に、発熱とともに皮膚・粘膜が重篤に傷害される疾患である。口唇・口腔のびらん、眼の結膜充血・偽膜形成、外陰部のびらんといった粘膜病変と、多形紅斑様の紅斑・水疱・表皮剥離(体表面積の10%未満)を呈する。細胞傷害性T細胞による表皮細胞の壊死が本態であり、蕁麻疹は本症の病変ではない。表皮剥離が30%以上に及ぶものは中毒性表皮壊死症(TEN)とよばれる。
- ○e. 食物依存性運動誘発アナフィラキシー
食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)は、原因食物を食べただけ、あるいは運動しただけでは症状が出ないが、原因食物を摂取してから数時間以内(多くは2時間以内)に運動すると発症するIgE依存性のI型アレルギーである。運動により腸管からのアレルゲン吸収が亢進することなどが関与すると考えられている。症状は全身の蕁麻疹・紅斑から始まることが多く、呼吸困難、血圧低下などのアナフィラキシーに進展しうる。原因食物は小麦(ω-5グリアジン)が最も多く、次いで甲殻類である。アスピリンなどのNSAIDs服用が発症を促進する。中学生・高校生など若年者に多い。
蕁麻疹の病型分類
蕁麻疹は大きく次のように分類される。 ・特発性の蕁麻疹: 明らかな誘因がなく自発的に膨疹が出現するもの。発症から6週間以内を急性蕁麻疹、6週間以上続くものを慢性蕁麻疹とする(かつての国内指針では1か月を区切りとしていた)。 ・刺激誘発型の蕁麻疹: 外来抗原によるアレルギー性蕁麻疹、食物依存性運動誘発アナフィラキシー、非アレルギー性蕁麻疹、アスピリン蕁麻疹(不耐症)、物理性蕁麻疹(機械性、寒冷、日光、温熱、遅延性圧、水)、コリン性蕁麻疹(発汗刺激で小型の膨疹)、接触蕁麻疹。 ・血管性浮腫: 真皮深層から皮下組織の浮腫で、口唇やまぶたが数日かけて腫れる。遺伝性血管性浮腫(C1インヒビター欠損)やACE阻害薬によるもの(ブラジキニンが関与)がある。 ・蕁麻疹関連疾患: 蕁麻疹様血管炎(皮疹が24時間以上持続し色素沈着を残す)、色素性蕁麻疹(肥満細胞症。皮疹をこするとDarier徴候として膨疹が生じる)など。
アナフィラキシーと蕁麻疹
アナフィラキシーは、アレルゲンなどへの曝露後、急速に複数臓器にわたる全身性のアレルギー症状が出現し、生命に危機を与えうる過敏反応である。約8〜9割に皮膚・粘膜症状(蕁麻疹、紅潮、血管性浮腫など)を伴う。第一選択の治療はアドレナリン0.01 mg/kg(成人最大0.5 mg)の大腿前外側への筋注である。
FDEIAの対応
原因食物を摂取した後の運動を避ける(摂取後少なくとも2時間、可能なら4時間は運動しない)ことが基本であり、発症歴のある患者にはアドレナリン自己注射薬(エピペン®)の携帯を指導する。診断には、原因食物摂取と運動の組み合わせによる誘発試験や、ω-5グリアジン特異的IgE抗体の測定が用いられる。
POINT
・蕁麻疹は肥満細胞からのヒスタミン放出による真皮上層の一過性浮腫で、膨疹は24時間以内に跡を残さず消える。 ・I型アレルギーであるアナフィラキシー(食物依存性運動誘発アナフィラキシーを含む)では蕁麻疹を高率に伴う。 ・FDEIA: 原因食物(小麦のω-5グリアジンが最多)摂取後の運動で発症、NSAIDsで誘発されやすい、若年者に多い。 ・GVHD、Stevens-Johnson症候群はT細胞性の表皮傷害、うっ滞性皮膚炎・自家感作性皮膚炎は湿疹・皮膚炎群であり、蕁麻疹とは異なる。 ・急性と慢性の蕁麻疹の区切りは現在6週間。
