StudyMed医師国家試験

「出ては消える」膨疹を見抜け―蕁麻疹を伴う疾患と、運動が引き金になるアナフィラキシー

第103回医師国家試験 I問題 第20問

国試問題にチャレンジ

第103回 I問題 第20問

蕁麻疹がみられるのはどれか。

  1. a.GVHD
  2. b.うっ滞性皮膚炎
  3. c.自家感作性皮膚炎
  4. d.Stevens-Johnson症候群
  5. e.食物依存性運動誘発アナフィラキシー

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、蕁麻疹という皮疹がどんな病態で生じるのかを理解しているかを問う問題だ。選択肢には皮膚に症状が出る疾患が並んでいるけれど、皮疹の「性状」と「機序」に注目すると答えは一つに絞れる。まずは基本から。蕁麻疹とはどういう皮疹か説明できるかな。
医学生医学生
かゆみの強い、盛り上がった赤い発疹ですよね。皮膚科の講義で「膨疹」と習いました。
ドクタードクター
そう、膨疹だね。皮膚の肥満細胞からヒスタミンなどが放出されて、真皮上層の血管透過性が高まり、一時的なむくみが生じたものだ。最大の特徴は「一過性」であること。個々の皮疹は通常24時間以内、多くは数時間で跡を残さず消えてしまう。
医学生医学生
臨床実習で皮膚科外来を回ったとき、受診時には皮疹が消えていて、患者さんがスマホの写真を見せていたのを思い出しました。
ドクタードクター
まさに蕁麻疹らしいエピソードだね。外来では「出たり消えたりしていますか」と聞くのが診断の第一歩になる。では、肥満細胞の脱顆粒を起こす代表的な機序は何だろう。
医学生医学生
IgEを介したI型アレルギーです。それなら、アレルギーという言葉がつくものを選べばいいでしょうか。
ドクタードクター
考え方の方向は合っている。I型アレルギーの全身反応であるアナフィラキシーでは、8〜9割で蕁麻疹や紅潮などの皮膚・粘膜症状を伴う。だから正解は食物依存性運動誘発アナフィラキシーだ。原因食物を食べただけ、あるいは運動しただけでは何も起きないのに、食べてから数時間以内に運動すると発症するIgE依存性の病態で、全身の蕁麻疹から始まり、呼吸困難や血圧低下へ進むことがある。
医学生医学生
食べただけでは平気なのが不思議です。運動で何が変わるんですか。
ドクタードクター
運動によって腸管からのアレルゲン吸収が高まることなどが関わると考えられている。原因食物は小麦が最も多く、ω-5グリアジンが代表的な抗原。次いで甲殻類だ。アスピリンなどのNSAIDsで誘発されやすいこと、中高生など若い人に多いことも押さえておこう。給食の後の体育や部活で倒れる、という状況が典型だね。
医学生医学生
では、ほかの選択肢を確認させてください。Stevens-Johnson症候群も薬が原因のアレルギーなので、蕁麻疹が出そうに思えてしまいます。
ドクタードクター
そこはよく間違えるところだ。Stevens-Johnson症候群は薬剤やマイコプラズマ感染などを契機に、細胞傷害性T細胞が表皮細胞を壊死させる病態で、I型ではなく細胞性免疫が主役なんだ。皮疹は多形紅斑様の紅斑、水疱、表皮剥離で、口唇・眼・外陰部の粘膜病変と発熱を伴う。数時間で消える膨疹とはまったく性質が違う。
医学生医学生
GVHDもT細胞が主役でしたよね。血液内科で移植後の患者さんの手のひらが赤くなっていたのを見ました。
ドクタードクター
よく観察していたね。GVHDはドナー由来のT細胞が宿主の皮膚・肝・消化管を攻撃する病態で、急性期は手掌・足底や耳介から始まる斑状丘疹状の紅斑、重症では紅皮症や表皮剥離に至る。慢性期には扁平苔癬様の皮疹や強皮症様の硬化がみられる。これも蕁麻疹とは別物だ。
医学生医学生
うっ滞性皮膚炎と自家感作性皮膚炎は湿疹の仲間なので外れますか。
ドクタードクター
その理解で正しい。うっ滞性皮膚炎は下肢静脈瘤などで静脈圧が上がり、下腿下部に湿疹、ヘモジデリン沈着による褐色の色素沈着、皮膚硬化が生じ、進行すると潰瘍をつくる。自家感作性皮膚炎は、原発巣の湿疹が掻破や感染で悪化した後に、全身へ小さな丘疹や小水疱が散布するものだ。どちらも持続する湿疹病変で、一過性の膨疹ではない。
医学生医学生
「一過性に出没する膨疹」なのか、「持続する紅斑・丘疹・びらん・色素沈着」なのかで分ければいいんですね。
ドクタードクター
その通り。最後に臨床で大事な点をまとめよう。アナフィラキシーの第一選択はアドレナリン0.01 mg/kg、成人最大0.5 mgの大腿前外側への筋注だ。抗ヒスタミン薬やステロイドは補助にすぎない。食物依存性運動誘発アナフィラキシーと診断されたら、原因食物の摂取後少なくとも2時間、できれば4時間は運動を避けるよう指導し、アドレナリン自己注射薬を携帯してもらう。
医学生医学生
蕁麻疹は急性と慢性で分けるとも習いましたが、区切りは1か月でしたか。
ドクタードクター
以前の国内指針では1か月だったけれど、現在のガイドラインでは6週間で区切るのが一般的だ。それから、皮疹が24時間以上続いて色素沈着を残す場合は、蕁麻疹ではなく蕁麻疹様血管炎を疑うこと。まぶたや口唇が数日かけて腫れる血管性浮腫では、遺伝性血管性浮腫やACE阻害薬によるブラジキニン性のものも鑑別に挙げよう。
医学生医学生
「消える皮疹かどうか」が、診断にも鑑別にも効いてくるんですね。

まとめ

蕁麻疹は肥満細胞から放出されるヒスタミンなどによる真皮上層の一過性浮腫で、膨疹は通常24時間以内に跡を残さず消えるのが特徴です。IgEを介したI型アレルギーの全身反応であるアナフィラキシーでは蕁麻疹を高率に伴い、食物依存性運動誘発アナフィラキシーは小麦(ω-5グリアジン)などの原因食物を摂取した後の運動で発症し、NSAIDsで誘発されやすく若年者に多い病態です。一方、GVHDやStevens-Johnson症候群はT細胞による表皮傷害、うっ滞性皮膚炎や自家感作性皮膚炎は湿疹・皮膚炎群であり、持続する紅斑・丘疹・びらん・色素沈着を呈する点で蕁麻疹とは異なります。アナフィラキシーにはアドレナリン筋注が第一選択で、再発予防として摂取後の運動回避と自己注射薬の携帯指導が重要です。皮疹が「出没するか持続するか」という視点は、蕁麻疹と他の皮膚疾患を見分ける最も基本的で実践的な手がかりになります。

解答・解説

正解はeです

蕁麻疹は、皮膚の肥満細胞(マスト細胞)から放出されるヒスタミンなどの化学伝達物質により、真皮上層の血管の透過性が亢進して一過性の浮腫が生じる疾患である。境界明瞭でわずかに盛り上がった紅斑・膨疹が、かゆみを伴って突然出現し、個々の皮疹は通常24時間以内(多くは数時間)に跡を残さず消えるのが特徴である。肥満細胞の脱顆粒はIgEを介したI型(即時型)アレルギーで起こるものが代表的であるが、物理的刺激や薬剤など非アレルギー性の機序でも起こる。 本問では、選択肢の疾患の皮膚病変がどのような機序・性状をとるかを考える。I型アレルギーの全身反応であるアナフィラキシーは、皮膚症状として蕁麻疹を高率に伴う。これに対し、GVHDやStevens-Johnson症候群はT細胞が主役となる細胞性免疫反応による表皮の傷害、うっ滞性皮膚炎と自家感作性皮膚炎は湿疹・皮膚炎群に属し、いずれも蕁麻疹とは皮疹の性状が異なる。「一過性に出没する膨疹」と「持続する紅斑・丘疹・びらん・色素沈着」を区別することが鍵となる。

選択肢考察

  1. ×a.  GVHD

    GVHD(graft-versus-host disease、移植片対宿主病)は、造血幹細胞移植(骨髄移植など)や輸血で持ち込まれたドナー由来のT細胞が、宿主(患者)の組織を異物として攻撃する病態である。急性GVHDでは皮膚、肝、消化管が主な標的となり、皮膚には手掌・足底や耳介などから始まる斑状丘疹状の紅斑が出現し、重症では紅皮症や水疱・表皮剥離に至る。慢性GVHDでは扁平苔癬様皮疹や強皮症様の皮膚硬化がみられる。T細胞による細胞傷害が本態であり、肥満細胞の脱顆粒による一過性の膨疹(蕁麻疹)は典型的な所見ではない。

  2. ×b.  うっ滞性皮膚炎

    うっ滞性皮膚炎は、下肢静脈瘤などによる慢性静脈不全で下腿の静脈圧が上昇し、血流がうっ滞することで生じる湿疹性の皮膚病変である。下腿下1/3(とくに内果周囲)に、ヘモジデリン沈着による褐色の色素沈着、湿疹、皮膚の硬化(脂肪皮膚硬化症)がみられ、進行すると難治性のうっ滞性潰瘍を形成する。慢性に経過する病変であり、蕁麻疹はみられない。

  3. ×c.  自家感作性皮膚炎

    自家感作性皮膚炎は、貨幣状湿疹、うっ滞性皮膚炎、接触皮膚炎、熱傷後や細菌感染を伴う病変などの原発巣が掻破や感染で急性に悪化したのち、全身(四肢・体幹)に小型の紅色丘疹・漿液性丘疹・小水疱が散布性に多発するものである(散布疹・撒布疹)。病巣の分解産物や細菌成分に対して自己感作が成立するためと考えられている。湿疹・皮膚炎群に属し、皮疹は湿疹の性状をとるため、蕁麻疹とは異なる。治療は原発巣の治療とステロイド外用・抗ヒスタミン薬内服である。

  4. ×d.  Stevens-Johnson症候群

    Stevens-Johnson(スティーヴンス・ジョンソン)症候群(SJS)は、主に薬剤(抗てんかん薬、アロプリノール、サルファ剤、NSAIDsなど)やマイコプラズマなどの感染症を契機に、発熱とともに皮膚・粘膜が重篤に傷害される疾患である。口唇・口腔のびらん、眼の結膜充血・偽膜形成、外陰部のびらんといった粘膜病変と、多形紅斑様の紅斑・水疱・表皮剥離(体表面積の10%未満)を呈する。細胞傷害性T細胞による表皮細胞の壊死が本態であり、蕁麻疹は本症の病変ではない。表皮剥離が30%以上に及ぶものは中毒性表皮壊死症(TEN)とよばれる。

  5. ○e.  食物依存性運動誘発アナフィラキシー

    食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)は、原因食物を食べただけ、あるいは運動しただけでは症状が出ないが、原因食物を摂取してから数時間以内(多くは2時間以内)に運動すると発症するIgE依存性のI型アレルギーである。運動により腸管からのアレルゲン吸収が亢進することなどが関与すると考えられている。症状は全身の蕁麻疹・紅斑から始まることが多く、呼吸困難、血圧低下などのアナフィラキシーに進展しうる。原因食物は小麦(ω-5グリアジン)が最も多く、次いで甲殻類である。アスピリンなどのNSAIDs服用が発症を促進する。中学生・高校生など若年者に多い。

蕁麻疹の病型分類

蕁麻疹は大きく次のように分類される。 ・特発性の蕁麻疹: 明らかな誘因がなく自発的に膨疹が出現するもの。発症から6週間以内を急性蕁麻疹、6週間以上続くものを慢性蕁麻疹とする(かつての国内指針では1か月を区切りとしていた)。 ・刺激誘発型の蕁麻疹: 外来抗原によるアレルギー性蕁麻疹、食物依存性運動誘発アナフィラキシー、非アレルギー性蕁麻疹、アスピリン蕁麻疹(不耐症)、物理性蕁麻疹(機械性、寒冷、日光、温熱、遅延性圧、水)、コリン性蕁麻疹(発汗刺激で小型の膨疹)、接触蕁麻疹。 ・血管性浮腫: 真皮深層から皮下組織の浮腫で、口唇やまぶたが数日かけて腫れる。遺伝性血管性浮腫(C1インヒビター欠損)やACE阻害薬によるもの(ブラジキニンが関与)がある。 ・蕁麻疹関連疾患: 蕁麻疹様血管炎(皮疹が24時間以上持続し色素沈着を残す)、色素性蕁麻疹(肥満細胞症。皮疹をこするとDarier徴候として膨疹が生じる)など。

アナフィラキシーと蕁麻疹

アナフィラキシーは、アレルゲンなどへの曝露後、急速に複数臓器にわたる全身性のアレルギー症状が出現し、生命に危機を与えうる過敏反応である。約8〜9割に皮膚・粘膜症状(蕁麻疹、紅潮、血管性浮腫など)を伴う。第一選択の治療はアドレナリン0.01 mg/kg(成人最大0.5 mg)の大腿前外側への筋注である。

FDEIAの対応

原因食物を摂取した後の運動を避ける(摂取後少なくとも2時間、可能なら4時間は運動しない)ことが基本であり、発症歴のある患者にはアドレナリン自己注射薬(エピペン®)の携帯を指導する。診断には、原因食物摂取と運動の組み合わせによる誘発試験や、ω-5グリアジン特異的IgE抗体の測定が用いられる。

POINT

・蕁麻疹は肥満細胞からのヒスタミン放出による真皮上層の一過性浮腫で、膨疹は24時間以内に跡を残さず消える。 ・I型アレルギーであるアナフィラキシー(食物依存性運動誘発アナフィラキシーを含む)では蕁麻疹を高率に伴う。 ・FDEIA: 原因食物(小麦のω-5グリアジンが最多)摂取後の運動で発症、NSAIDsで誘発されやすい、若年者に多い。 ・GVHD、Stevens-Johnson症候群はT細胞性の表皮傷害、うっ滞性皮膚炎・自家感作性皮膚炎は湿疹・皮膚炎群であり、蕁麻疹とは異なる。 ・急性と慢性の蕁麻疹の区切りは現在6週間。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。